【インタビュー】布袋寅泰「またケンシロウとラオウに会える」

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布袋寅泰が9月19日、ニューシングル「202X」をリリースする。表題曲は『北斗の拳』連載35周年を記念した「202Xテーマソング」として書き下ろされた楽曲だ。

2010年以来、8年振りとなる今回のコラボレーションにあたり、布袋は「またケンシロウとラオウに会える」と、まるで旧友との再会を懐かしむように語る。そして、制作を進めるうえで「自分の中でちょっと眠らせていた熱いギターのリフや、疾走感のあるビートに立ち戻れたところがあった」と明かした。最新作であり、シグネチャータイプの曲でもある「202X」。封印されていた「熱き布袋モード」をその耳で聴いて、感じてほしい。

  ◆  ◆  ◆

■前半はのんびりとするつもりだった
■いまだにちょっとプレッシャーはありますね

──「202X」のお話に行く前に、まずは2018年上半期のことをお聞きしていこうと思います。昨年2017年末にアルバム『Paradox』のツアーを終えた後、2018年に入ってからはブライアン・セッツアー・オーケストラの25周年記念来日ライブや、トリノとミラノで開催されたズッケロの<WANTED Italian Tour 2018>など、ライブにゲスト出演されることが多かったですね。

布袋:『Paradox』は自分の中でとても満足のいく作品になったし、ファンのみなさんとそれをツアーで共有できたんですよ。そこから次の作品に向けて気持ちを切り替えたかったんだけれど、やはりツアーの余韻や疲れもありますから、前半はのんびりとするつもりだったんですよね。そんな中でブライアンから連絡があり、「東京に行くから、布袋も来るよな?」という光栄なお誘いがあったので、マネージャーに「帰るぞ」と(笑)。

──(笑)。

布袋:ブライアンは、僕がBOØWYの頃から尊敬しているギタリストですから、そんなふうにステージに誘ってもらえるなんて夢のようだし、断る理由もないからね。ズッケロは、ヨーロッパに比べると日本での知名度はないかもしれないけど、本国のイタリアでは本当に神のような存在で。そんな彼にとっても、とても重要なコンサートに声をかけてもらえたというのは、やはりミュージシャン冥利につきるし、声をかけてもらったからには期待に応えるプレイを彼と彼のオーディエンスにも届けたかった。ブライアンやズッケロとのコラボレーションは、単なる数曲のセッション、ただのゲスト出演以上に、多くのことを学ぶことができましたね。

──あとは、<ARABAKI ROCK FEST.18>、<hide 20th memorial SUPER LIVE 「SPIRITS」>、<GBGB“G-Beat Gig Box”>といった国内のフェスに出演されることも多かったです。

布袋:それぞれに主旨や思いがあるものだったんですよね。hideくんとはギタリスト同士、やっぱり馬が合うというか。遊び心満載で、今までになかったフューチャリスティックなロックンロールを奏でたいという思いは一緒だったから、そんな彼の没後20年に行なわれるファンのみなさんとのイベントも、断る理由がなかった。<GBGB>は、前々からお誘いをいただいていたんだけど、なかなかタイミングが合わなくて。でも、彼らがやっていることは素晴らしいと思うし、<ARABAKI>は、もう「震災以降」という思いだけでフェスが成り立っているわけではないとは思うけど、生前交流のあった忌野清志郎さんがとても愛したフェスということもあって。自分も『Paradox』という作品で、世界で起こっていることや、「ヒトコト」という楽曲で、「アイシテル」という言葉と初めて真正面から向き合ったときに、清志郎さんの「愛しあってるかい?」という言葉の意味みたいなものがとても強く返ってきたから、<ARABAKI>もどこか彼に呼ばれるかのようなところがあって。だから2018年の前半は、ルーティーンや予定通りの活動ではない、そういったサプライズみたいなものに参加させてもらうことで、いろいろなヒントを得ましたね。



──そういった中で、映像作品『HOTEI Paradox Tour 2017 The FINAL ~Rock’n Roll Circus~』のリリース記念イベントで、「『Paradox』が100点満点だっただけに、この言葉を使いたくないんだけどスランプなんじゃないかってぐらい前に進まない」「目の前に壁があって、無数の釘を打ち続けている」というお話をされていましたよね。

布袋:そうでしたね。そんな話をしました。

──2018年上半期は、制作においては試行錯誤の時間が長かったんでしょうか。

布袋:自分のアーティスト人生の中で、これこそ自分の代表作だと言い切れる作品、あらゆる面で自分らしいと思える作品として『Paradox』を作れたことは喜びでもあったし、自分のハードルをあげることができた。そうやって自分に課した苦しみを乗り越えていくことがアーティストの宿命ではあるんだけど、『Paradox』はツアーファイナルもよかったし、完全なるものを作り上げることができたので、いまだにちょっとプレッシャーはありますね。

──それぐらい『Paradox』は大きな作品だったと。

布袋:特にあの作品は言葉の部分──自分がロンドンで暮らしながら、目の前で起こるテロや社会情勢について描いたんだけど、それから1年が経ち、トランプ政権や北朝鮮の問題は何かが前進したように見えるけれども、テロも以前よりも少しは収まっていながらも、結局はまだ何の解決もしていない。そういった問題を繰り返して表現していくことが、はたしてポジティブかというと、そうは思えないので。だから、どんな世界を描くべきなのか、あと、次はまたワールドワイドのほうにもしっかりアプローチできる作品にしたいと思っていたので、その気負いも含めてスタートが重かったけれども、だんだん調子出てきましたよ。

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