【ライブレポート】ハイスタ主催<AIR JAM 2018>、全10バンド9時間の活力漲るパワー「日本に光りを、もっともっと!」

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Hi-STANDARD主催<AIR JAM 2018>が9月9日に開催された。あの伝説の2000年から18年ぶり、千葉・ZOZOマリンスタジアムで開催された同イベントは、灼熱の陽射しと熱演が終始会場内を燃え上がらせた。全10バンド約9時間の模様をレポートしたい。

◆Hi-STANDARD主催<AIR JAM 2018> 画像全81点

11時50分、「<AIR JAM 2018>へようこそ!」とHi-STANDARD(以下ハイスタ)の難波章浩(Vo/B)が挨拶すると、あの<AIR JAM>が18年ぶりにこの場所に帰って来たんだなと実感した。続けて、難波は諸注意を交えつつ、北海道、関西とまだまだ大変な深刻な状況を抱える被災地を思い、今日もNPOブースに募金箱を設置していることを告げた。そして、「日本を元気にしてやろうぜ!」と熱く呼びかけた。



<AIR JAM 2018>のトップを飾ったのはBRAHMANだ。「SEE OFF」で始まったライブに、すぐに怒号に近い歓声が沸き上がる。“待ってました!”と言わんばかりのマリンスタジアムの空気に「BEYOND THE MOUNTAIN」が追撃し、TOSHI-LOW(Vo)の魂の咆哮に心臓を鷲掴みにされた。

「俺たちの愛する'90年代に別れを告げ、今を生きるために……1回表勝負を決めるのは俺たちBRAHMAN!」──TOSHI-LOW

こう宣言すると、「賽の河原」へ。バンドの演奏はさらに加速し、その勢いを保ったまま今日の出演者でもあるSLANGのKO(Vo)を招いて「守破離」、次に細美武士(ELLEGARDEN / the HIATUS / MONOEYES)を迎えて「今夜」を熱唱する豪華リレーで場を沸かせた。

後半はTOSHI-LOWが客席に飛び込みオーディエンスの上に仁王立ちとなって、「3人組さ、復活してくれて、ありがとう。<AIR JAM>、ここに戻って来てくれて、ありがとう」と感謝の言葉を綴った。すると、「BRAHMAN、ずっとやってくれてありがとう」と難波がステージ袖からそれに返答するという場面も。

その流れから「真善美」をラストに披露。イントロを聴くだけで身体に震えを覚え、“♪さあ幕が開くとは 終わりが来ることだ 一度きりの意味を お前が問う番だ”という歌詞を最後にじっくり語りかける場面には鳥肌が立った。そう言えば、「<AIR JAM>に思い残すことはない」とTOSHI-LOWはMCで言っていた。その言葉の真意は想像するしかないものの、二度目のマリンスタジアム開催という事実に感慨深いものがあったのだろう。



いきなりクライマックスのごとき盛り上がりを見せたBRAHMANのバトンを受け取ったのはSiMだ。「Blah Blah Blah」で観客をヘドバン地獄に誘い、殺気立つオーラを解き放つ。

「千葉マリンスタジアムに帰って来た!」──MAH(Vo)

と歓喜の雄叫びを上げ、このステージに立てる喜びを全身で表現する。さらに<AIR JAM 2011>でハイスタの「Dear My Friend」を生で聴いて号泣したというエピソードに加え、少年時代、家にあったベースでハイスタのコピーをしていたというMAHだが、この日のために再びベースを練習したらしく、ベース兼ヴォーカルで「Dear My Frieds」をプレイ。同曲ではSIN(B)が横山健モデルと思わしきレスポールを持ってハイスタTシャツを着込み、MAHが少年のように澄んだ声で歌い上げる。曲の後半ではそこに難波が歩み寄り、MAHと肩を組んでマイクを分け合うシーンもあった。

「夢を見させてくれて、ありがとうございます!」と感極まるMAHの様子に観ているこちらも胸が熱くなった。



三番手に登場したのは、北海道から駆けつけたSLANGだ。この数日前、平成30年北海道胆振東部地震に見舞われ、バンド自体もここに来られるかどうかもわからない状態だったという。それもあって、「来れなかった北海道人のために、超ライブハウスにしろよ!」とKOが檄を飛ばした。

また、自らアリーナに降りて観客にマイクを向けて歌わせ、「ヘタクソ!」と愛のこもった暴言を吐く。そんな熱くも温かい空気を共有しながら、怒濤のハードコア・ナンバーを連発。

中盤、<AIR JAM 2000>に誘われたが、自身のヴォーカルの不甲斐なさに辞退したことを告白。それがずっと心残りだったようで、積年の思いをブチまけるような迫力漲るヴォーカルに心底シビれた。



バンド勢がひしめくラインナップの中で異彩を放っていたのはKOHHである。ヘヴィなディストーションを効かせた「Die Young」からステージをところ狭しと動き周り、ロックバンド同様にシャウトしまくる。

「めちゃくちゃ晴れて嬉しいので、薬物の曲を歌います」──KOHH

と「Drugs」を披露。何もかも白日の下に晒す生き様=ヒップホップは、パンクもロックも飲み込んだ唯一無二のスタイルを突きつけていた。



<AIR JAM 2018>の折り返し地点となる15時を過ぎたころ、ステージに現れたのはマキシマム ザ ホルモンだ。超絶ポップな「恋のメガラバ」を投下し、観客をダンス地獄に誘う。続けて「鬱くしき人々のうた」、「F」と剛腕を振りかざすヘヴィネスっぷりでスタジアムを制圧。

また、ナヲ(ドラムと女声と姉)が「初めて“紅”を引いてきました!」と口紅をアピールしたほか、曲間にスクリーンでTOSHI-LOWをネタに取り上げると、すかさずステージ袖にTOSHI-LOWと細美武士が姿を現すなど、これには観客も大笑い。

さらにホルモンは、後半にTOKIOのカバー「LOVE YOU ONLY」を仕掛けるやんちゃぶりを発揮。確か<AIR JAM 2011>でも嵐のカバー「A・RA・SHI」で観客の度肝を抜いたが、その過剰すぎるサービス精神こそ、ホルモンの真骨頂だなと痛感した。



痛いほどの陽射しが少し弱まり始めると、ここでHEY-SMITHの登場だ。

「ハイスタに憧れて始まったバンドやけど、勝手に管楽器を入れてやった。憧れたけど、別の道を行くためにこのギター(エクスプローラー)を持った。ハイスタにケンカを売りに来た、よく観て帰れー!」──猪狩秀平(Vo/G)

と言い放つと「2nd Youth」をプレイ。高ぶる気持ちをストレートにぶつける演奏はとにかく熱く、このステージに賭ける意気込みがビシビシと伝わってきた。

後半、「ハイスタがそうだったように、俺らが光になるから!」と宣言すると、「Goodbye To Say Hello」「Endless Sorrow」を立て続けに見舞う。特に後者の盛り上がりは凄まじく、ハイスタ愛を握りしめたまま、“大先輩を超えていきたい!”と力拳を突き上げるパフォーマンスに魅了された。



10-FEETの出番が来ると、アリーナやスタンドに色鮮やかなタオルが掲げられるお馴染みの光景は圧巻だ。ファンが彼らの登場を待ち望んでいたことがうかがえる。

奇想天外なミクスチャー曲「1 size FITS ALL」でライブの火蓋を切った彼らは、その後「RIVER」「1sec.」と畳み掛け、アリーナに複数のサークルモッシュを作り上げた。さらに怒濤の2ビートを配した「VIBES BY VIBES」で大合唱を起こした後、TAKUMA(Vo/G)がこう語った。

「ハイスタがいなければ10-FEETはなかった、ありがとうございます!」──TAKUMA(Vo/G)

そして「その向こうへ」を披露。ハイスタから受け取った音楽の力を数倍にして返すような渾身の演奏に引きずり込まれた。



「まさか俺たちが<AIR JAM>に出るなんて、ハイスタありがとう!」と発言したのはチバユウスケ(Vo/G)率いるThe Birthdayである。KOHHもそうだが、ジャンル関係なく、カッコいい音楽やバンドを抜擢するのも<AIR JAM>の理念と言っていい。

その演奏は、時に熱く、時に大人びたロックンロールを搔き鳴らし、陽もすっかり沈んだスタジアムと見事に共鳴していた。

個人的にはチバがフジイケンジ(G)のギターとの掛け合いでブルースハープを聴かせた「Red eye」から「涙がこぼれそう」の流れにグッと込み上げてくるものを感じた。ある意味では、オトナのロックを鳴らすThe Birthdayもまた、唯一無二の存在を撒き散らして、初登場の<AIR JAM>に深い爪痕を残した。



<AIR JAM 2018>も佳境に入り、残すは2組のみ。トリ前を務めたのは<AIR JAM>初参戦となる04 Limited Sazabys(以下フォーリミ)だ。彼らも10-FEET、SiM、HEY-SMITH同様に、ハイスタのDNAが汲むバンドのひとつ。

「夢みたいだけど、現実。時代と世代を超えていく!」──GEN(Vo/B)

こう宣言すると、彼らのステージは「monolith」からスタート。「<AIR JAM>、暴れろー!」とRYU-TA(G)も観客を激しく焚き付ける。1曲1曲、全力で立ち向かっていく演奏に感動を覚えるほどだ。

「世界一憧れたステージに立ってます! 1st(アルバム)の曲をやろうと思ったけど、今の俺らの曲にハイスタの遺伝子が入ってるんで、新曲やっていいですか?」とGENが言うと、「message」を披露。英語詞と2ビートを用いたショートチューンを堂々とブチかまし、「ハイスタに捧げます!」という言葉と共に「My HERO」へと雪崩れ込む。夜空に届きそうなキラキラのメロディを解き放ち、スタジアムを大きく揺さぶっていた。

後半のMCでは、<AIR JAM 2000>のVHSで人生を狂わされたこと、ELLEGARDEN、ハイスタがシーンに戻って来たことにも触れ、自分たちを突き動かしてくれた大先輩たちに対する愛を語り尽くして、その感情を「Buster call」で爆発させる。今日のフォーリミは星のごとき輝きで観客を眩しく照らす圧巻のライブを見せつけてくれた。



最後はハイスタを残すのみ。19時50分、横山健(G/Cho)、難波章浩、恒岡章(Dr/Cho)の順番でステージに姿を見せる。「Dear My Friend」で幕を開けると、一音一音の迫力が半端じゃなく、楽曲の求心力に言葉を失うばかり。「The Gift」を挟んだ後、「Summer Of Love」が始まるや観客総出でジャンプする至福の光景が目の前に広がっていた。

「(スタジアムが)揺れたねぇ」と難波が語ると、続く「Starry Night」では難波の歌声を掻き消さんばかりに観客が歌い上げる。そして、横山が力強くギターリフを弾き出すと、「My First Kiss」へ。途中でフォーリミのGENが飛び入りし、本人も何だか信じられないという表情で歌う姿が印象的だった。

中盤に「All Generation」「Fighting Fists,Angry Soul」「Teenagers Are All Assholes」「Another Starting Line」と新旧織り交ぜた楽曲を畳み掛け、それらが温度差なく観客から大きなリアクションを得ている様を観ると、ハイスタは18年の時を経て、全世代から愛されるバンドへと成長を遂げたのだなと感じた。「Brand New Sunset」で本編を締め括ると、アンコールに応えてメンバー3人が再び登場。




「日本に光りを、もっともっと! いろんなものを飛び越えて繋がれば凄いパワーが生まれる」と難波が言った後に「Stay Gold」が炸裂。その言葉通り、途轍もない一体感を生み出し、誰もが一瞬でキッズに戻り、笑顔で拳を突き上げていた。その熱気を受け継ぐように「Free」では“WOH WOH”の大合唱に沸き上がり、このマリンスタジアムでやることを想定していたのではないか?と思うほどの盛り上がりを記録。

曲が終わると、客席に飛び込んでオーディエンスの頭上にいたTOSHI-LOWに、「TOSHI君、愛してるぜ!」と横山が優しく声を掛ける一幕もあった。

ラストは照明が煌々とアリーナとスタンドを照らしたまま、「Mosh Under The Rainbow」を披露。大歓声と共にアリーナでは観客同士が肩を組んで輪になって踊り出す。いや、アリーナだけではなく、スタンドにいる人たちも肩を組んで身体を横に揺さぶっていた。加えて、ステージでは出演者も入り乱れて騒ぎ出し、<AIR JAM>名物のスケートランプではスケーターがガンガン滑っている。



しかも時間が押していたこともあるのか、曲を演奏している真っただ中にマリンスタジアムの夜空に花火がバンバン舞い上がり、もう何がなんだかわからなくなるカオス状態。こんなにハッピーでピースフルな光景が他にあるだろうか。

1990年代の<AIR JAM>は混沌としたエネルギーが渦巻いていたけれど、<AIR JAM 2018>は明るく開け、活力漲るパワーに充溢していた。この場にいたすべての人が明日に夢や希望を持ち、生きる上での原動力を貰ったのではないだろうか。改めて、<AIR JAM>とハイスタから、音楽が持つ無尽蔵の可能性を教えてもらった気がした。

取材・文◎荒金良介
撮影◎三吉ツカサ(BRAHMAN)/半田安政(SiM / HEY-SMITH / Hi-STANDARD)/本田裕二(SLANG / Hi-STANDARD)/岸田哲平(KOHH / Hi-STANDARD)/浜野カズシ(マキシマム ザ ホルモン)/Kohei Suzuki (10-FEET / 04 Limited Sazabys)/TAKASHI KONUMA (The Birthday / Hi-STANDARD)/


■Hi-STANDARD主催<AIR JAM 2018>9月9日@千葉・ZOZOマリンスタジアムSETLIST

【BRAHMAN】
01. SEE OFF
02. BEYOND THE MOUNTAIN
03. 賽の河原
04. 雷同
05. 守破離
06. 今夜
07. ANSWER FOR…
08. 警醒
09. 鼎の問
10. 真善美
【SiM】
01. Blah Blah Blah
02. TxHxC
03. Set me free
04. GUNSHOT
05. Amy
06. Dear my friend(Hi-STANDARD cover)
07. KiLLiNG ME
08. f.a.i.t.h
【SLANG】
01. BLACK RAIN
02. TOKYO SUICIDE HELL
03. THE IMMORTAL SIN
04. 失せし日常
05. 糞の吹き溜まり
06. リトルバーズ
07. MOVE AHEAD
08. fCONFIDENCE
09. The world of lunacy
10. 何もしないお前に何がわかる 何もしないお前の何が変わる
【KOHH】
01. Die Young
02. Living Legend
03. Now
04. Dirt Boys
05. It G Ma
06. Drugs
07. Mind Trippin'
08. Family
09. Hate me
【マキシマム ザ ホルモン】
01. 恋のメガラバ
02. 鬱くしきOP〜月の爆撃機〜鬱くしき人々のうた
03. 「F」
04. ロック番狂わせ
05. 糞ブレイキン脳ブレイキン・リリィー
06. 恋のスペルマ
【HEY-SMITH】
01. Living In My Skin
02. Dandadan
03. Don't Worry My Friend
04. 2nd Youth
05. Radio
06. Let It Punk
07. Summer Breeze
08. We sing our song
09. I'm In Dream
10. Goodbye To Say Hello
11. Endless Sorrow
【10-FEET】
01. 1 size FITS ALL
02. RIVER
03. 1sec.
04. 太陽4号
05. VIBES BY VIBES
06. その向こうへ
07. ヒトリセカイ
【The Birtheday】
01. くそったれの世界
02. 1977
03. 24時
04. Red Eye
05. 涙がこぼれそう
06. なぜか今日は
【04 Limited Sazabys】
01. monolith
02. fiction
03. escape
04. message
05. My HERO
06. swim
07. midnight cruising
08. Buster call
09. Squall
【Hi-STANDARD】
01. Dear My Friend
02. The Gift
03. Summer of Love
04. Starry Night
05. My First Kiss
06. My Heart Feels
07. Pacific Sun
08. All Generations
09. Fighting Fists
10. Teenagers
11. Another Starting Line
12. Brand New
13. Stay Gold
14. Free
15. Mosh Under The Rainbow

■映画『SOUNDS LIKE SHIT : the story of Hi-STANDARD』

2018年11月10日公開
特設サイト https://soundslikeshit.net

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