【インタビュー】CREAM、5thアルバムの到達点「時代の音をどんどん乗りこなす」

ポスト

ヒップホップを軸に世界のトレンドをキャッチしたサウンドを織り交ぜて、“NEW J-POP”を標榜する2人組CREAM。

◆撮り下ろし画像

自分たちの出したい音をシンプルに貫いたという最新作『Sounds Good』では、EDMの要素が影を潜め、ミニマルかつキャッチーなダンストラックが並んだ自信作に仕上がっている。ここでは新作の制作や音楽面での変化などを2人に語ってもらった。


  ◆  ◆  ◆

■もっと音にフォーカスした作品にしたい気持ちがあった

――ニューアルバム『Sounds Good』のコンセプトを教えてください。

Staxx T:今まではコンセプトをがっつりと掲げてきたんですが、今回はそういうものはないんですよね。もっとラフに作ろうってところから『Sounds Good』ってタイトルも、今までもより軽く“Sounds Good(いいね)!”って感じと、ダブル・ミーニングで“良いサウンドが入っている”みたいな意味もあって、もっと音にフォーカスした作品にしたい気持ちがありました。5枚目のアルバムだしCREAMのサウンド自体もより濃くなってきたから、アルバムを通して単純に良い音だなって感じて欲しいっていうか。その気持ちがアルバムのジャケットにも表れています。撮影現場で実際のラジカセを赤くして、ステンシルをして作ったんですよ。CGじゃなくて、CGで作れそうなものをアナログで! …って言ったのが間違いでしたが(笑)。

Minami:前日にダンボールでラジカセを試作してて“これいけるわ!”とか言ってたけど、素材が違うから意味がなかった(笑)。撮影現場でも最後の最後までうまく出来るかどうかも不安だったね。

▲『Sounds Good』ジャケット

――どれくらいの時間がかかったのですか?

Staxx T:昼からやって次の日の夜中くらいまでかかりましたね。スポンジにスプレーを吹くのが難しいんですよ。そんな壮絶な戦いを経て、最後に出来上がった作品を撮って“やっと終わったー”って(笑)。

――そのおかげもあって、ジャケットのアートワークもいい感じに仕上がってますね。

Staxx T:そうですね、絶妙なDIY感が出せました。CGだったらこういうアラみたいなところは出なかっただろうし、シンプルだけど意外とこだわってるところが今回は多かったかもしれないです。

――アートワーク同様に、トラックにもシンプルだけどこだわりを感じました。

Staxx T:音数は少ないけど、ピアノのフレーズにこだわりがあったりして。音のシンプルさもですけど、歌詞カードを入れないとか、ブックレット開いたら全部真っ白とか。そうやっていらないものを全部省いた時に、どうなるんだろうって考えていました。ずっと日本の音楽って盛り盛りな時代が続いていたし……スーパーメガ盛り120分MIXを無料で付けて!みたいな(笑)。もう、そこまでしたらアルバム買わなくて良くない?って思ってたんですよね。だからこそいらない物を全部引いて、必要なものだけにした方がスッキリしていいんじゃないかって。

▲Staxx T

――作品で聴けるミニマルな音作りは、アメリカのポップ/ヒップホップのシーンのトレンドからの影響も感じます。その一方、J-POPは今指摘していたようにサウンド的にもまだまだ詰め込んだ音が主流です。そういった日本と世界の音楽のトレンドとの差についてはどう考えてますか?

Staxx T:J-POPは独自の文化ですよね。日本以外のポップスはワールド基準であることが当たり前になっている気がするし、だからこそ世界に羽ばたく日本のアーティストってポップスじゃなくて、ストリート・ミュージックが多いと思うんです。日本も今、ヒップホップ・シーンがけっこう盛り上がっているし、世界から注目される日本人のヒップホップのアーティストも増えていて、良くなってきていると思います。

Minami:個人的には“J-POPってもはや何?”って思ってて。独自の感じもあるけど、どのJ-POPのアーティストも世界の音楽のトレンドは取り入れているし。その取り入れ方が何でこんなに違うのかなとも思います。後は、曲が売れてるのか、アーティスト自体が人気なのかの違いもありますよね。洋楽ではアーティストのことを知らなくても曲が人気なこともあるし。出してるCDの枚数は多いけど曲を知らないってのも、日本だと多いなって。

Staxx T:あと不思議なのが、自虐的にふざけているものが流行ったりすること(笑)。カッコつけているよりも、若干自虐入っている方が受ける文化って一体なんだ?って思いますね。もっとカッコよく行こうぜって思うんだけど、ちょっとカッコつけすぎると、やりすぎだろってなっちゃう。あとはミュージックビデオも明らかに洋楽のパクリなのに、それが売れちゃったりするのは本当に謎です。パクるんじゃなくて、インスパイアされてオリジナリティを出すってのが重要かもしれないですよね。

Minami:そういった面で、K-POPはすごいよね。オリジナリティがめちゃめちゃある。

Staxx T:だから世界に響いているんだろうし、レベルもすごい高いです。

――CREAMの音も、世界のトレンドを意識しつつも、J-POPでもあって……そういう意味ではすごいバランス感を持っていますね。

Staxx T:CREAMはなんだかんだJ-POPっていう場所に籍を置きつつも、その中で最大限にJ-POPらしくないことをやっている。そうやって新しい基準を持ったアーティストでも、J-POPという土俵でやるっていう見え方があってもいいと思います。でも、僕らは“こんなイレズミだらけで金歯つけてる奴がJ-POPなの?”って思われることもあって。でも、そういうジャンルっていうのは各々が決めることですよね。“作っている音楽は何ですか?”って聞かれたら、ヒップホップも作るし、EDMもたくさん作ったし、J-POPもある。どんなジャンルでも好きな音楽を作ってるだけ、みたいな感じでいいかなと思っていて。それが今のJ-POPってシーンに響いていけば何かが変わるかもしれないですし。

◆インタビュー(2)へ
この記事をポスト

この記事の関連情報