【インタビュー】sads、清春が語る活動休止とロックの本質「sadsも黒夢もヒストリーのひとつ」

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2018年をもって活動休止することを宣言しているsadsが10月24日、事実上の最終オリジナルアルバム『FALLING Ultimate Edition』をリリースする。本作は、ラストツアー<The reproduction 7th anniversary TOUR「FALLING」>の各会場で販売されている限定盤を一般流通させた新装盤だ。彩り豊かなメロディとドラマチックなコーラスワークが冴えわたるアルティメット(究極)なsadsが詰まった作品に仕上がっている。

◆sads 画像

ツアーもいよいよ最終局面へと移行する10月上旬のある日、都内にて清春に胸の内を訊いた。『FALLING Ultimate Edition』、<The reproduction 7th anniversary TOUR「FALLING」>を導入としたトークは、sads活動休止の真意、現在のロック論/バンド論、そして清春の本質にまで話がおよんだ。「僕は今、言いたいことは全部言わなきゃダメだと思ってる」と赤裸々に語ってくれた15,000字オーバーのロングインタビューをお届けしたい。

   ◆   ◆   ◆

■外に向けてのsadsのイメージよりも
■人生のタイム感のほうが大事

──ラストツアー<The reproduction 7th anniversary TOUR「FALLING」>が“chapter 2”の終盤まで来ました。本当にあっという間に終わってしまいますね。実感は出てきましたか?

清春:いや、特にないかな。

──淡々とsadsが終わっていく感じ?

清春:そうだね。

──“活動休止”という言葉には、やや暗いイメージが伴いがちですが。

清春:そういうのはないですよ。

──その辺は意外とサッパリしてらっしゃるんですね。

清春:メンバーのツアー中の様子とか対面具合とか、ものすごく普通ですね。

──ギクシャクしているわけでもなく?

清春:全然。メンバーがTwitter上でたまに“sadsで最後の松本です”みたいなことを言ってるよね。そういうのを見ると、“あ、そうなんだな”とは思うんですけど、基本的には特に何も思わない。


──清春さんは10月4日にTwitter上で、「サッズのラストツアー残り10公演です サッズデビュー以来 凄い本数のライブをやったうちのたかが10本とも言える 最後までやり尽くしましょうね」とおっしゃっています。そんなところに今の率直な気持ちが表れているんでしょうか?

清春:特にないんですよね。なんか、楽しいというよりは、体力との戦いというかね。ソロも含めて、ここ数本のライヴは鼻声で頑張ってます。

──sadsに関して言えば、初夏に対バンツアー<The reproduction 7th anniversary「EVIL 77」VS 7 days>があり、そこから活動休止前最後のワンマンツアー<The reproduction 7th anniversary TOUR「FALLING」>が始まりました。“chapter 1” “chapter 2”ときて、遂に最終章“chapter 3 TOKYO 7DAYS”へ。こうした時間の流れのなかで、何かしら変化はありましたか?

清春:“chapter 1”ではアルバム『FALLING』収録曲を全部やって、“chapter 2”ではちょっと減らして、激しい曲を少し戻してるんですけど。前半は『FALLING』で、後半は今まで通りベスト的な感じ。激しすぎる曲はやってない。

──ラストを飾る“chapter 3 TOKYO 7DAYS”は、特別な趣向を期待していいんでしょうか?

清春:全体的に全開になるっていうだけですね。この19年間にやってきた曲で、みんなが聴きたいだろうなって曲をやるということでしょうか。

──そんななか、まずはライヴ会場限定で販売された『FALLING』というアルバムが10月24日に、“Ultimate Edition”として装いも新たにリリースされます。この作品が一般流通することについては、どうお考えですか?

清春:いや、特に。メジャー流通っていうか、普通にも出せたらいいなって。もはや、インディーズもメジャーも本当に関係ない時代ですからね。

──Ultimate Editionを全曲聴いてみたんですが、各楽曲、より深みが増しているように感じました。

清春:うん。歌のテイクをちょっと変えてるのもあったのかな。音楽をよりスムーズに聴けるように、ピッチやヴォーカルの大きさを変えてるかもしれないですね。会場限定盤で僕が気になっていたところを直しただけなんですけど。

──“Ultimate”というのは、完成形としての『FALLING』をさらに理想的な姿に近づけたという解釈でいいんでしょうか?

清春:そうですね。ただ、1日ぐらいしか作業してないんで、そんなにね……。

──初回限定盤に付属するミュージックビデオも注目ですよね。YUTARO監督作品「ache」と小田切明広監督作品「freely」「gone」の3曲。

清春:作業をしたという意味では、そこがいちばんデカいですかね。

──それだけ労力がかかったと。特に再始動後のsadsは、黒を基調とするようなところもありましたが、この『FALLING』に伴う一連のヴィジュアルは、鮮明な色づかいが印象的です。Tシャツなどのグッズしかり。

清春:ほう。

──そこは清春さんのこだわりでもあるんですか? 各映像監督とはそういう話し合いをされました?

清春:特にないです。「ご自由に」としか言わないです。まあ、映像はチェックするんですけど、写真もジャケットもお任せで。指示するという、余計な行程はほとんどなくなりました。だいたいこうなるだろうって。何をされてもそんなに変わんないだろうと。



──なるほど。ちょっと細かいことをお訊きしたいんですが、「gone」のミュージックビデオの途中で、唐突にミッキーマウスの耳のようなものを付けていますが。

清春:ははは。

──油断して見ていたら、急にツッコミどころが出てきまして。ある種の狂気を感じましたよ(笑)。

清春:あれは「freely」の撮影が終わった後に、一発撮りしようということになって。スタッフがギャグであの耳を持ってきてたんで、思いつきで(※スタッフは撮影当日、ツノの生えたカチューシャも用意していた)。

──何か意味深なものを嗅ぎ取ってしまいそうになりました。

清春:そういうのはまったくないですね。カメラ一発、ワンテイクで回してるってことがわかるようにしたかっただけです。活動の最後には、そういう遊びもできたってことですね。そんなに深い意味もなく。まあ、sadsが集約されている最後のビデオという意味では、「freely」になるんでしょうね。「gone」は遊びです。時間が余って、“一発だったら撮れる”っていうんで。

──そういうことだったんですか。「freely」という楽曲自体も今のsadsのアンセム的な位置づけですよね。ライヴのなかでも、みんなで一緒に歌うような代表曲の一つとなりつつある。

清春:そうですね。まあ、『FALLING』を象徴する曲なんでしょうね。

──何者にも束縛されない感じが出ています。

清春:うーん……そうでもないんですけどね。

──ここまでお話を伺っていて思ったんですが、もしかしたら、sadsの活動休止というものに、清春さんはさほど大きな意味を持たせたくなかったりするんでしょうか?

清春:うーん、興味がないですね。

──そこまで言い切っちゃいますか。

清春:“よし、活動休止しちゃうぞ”っていう気持ちもないし、“もっとやろうぜ”っていう気もない。50歳になるこのタイミングでちょうどいいのかなって。再始動してから7年っていうのも、ちょうどいい。

──これまでの流れに区切りをつけるタイミングとして、今が本当に良かったと。

清春:そうですね。活動休止の理由ってバンドの内情とか集客がどうとか、だいたいそういうことじゃないですか。メンバー間の仲悪いとか、いまいちビジネス的にやっていけないとかね。sadsの場合はグッズも売れてますし、そういうのではないです。バンド内のことや外に向けてのsadsのイメージとかよりも、自分の人生のタイム感のほうが大事なんですよ。

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