【特集 インタビュー vol.1】植田真梨恵、ライブを語る「物語の主人公として、心を空っぽに」

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■“最強!!”じゃなくて
■“楽しい!!”っていう無敵感

──西村さんとは、どの辺りが共通していますか。

植田:特にJ-POPですね。西村さんもすごく幅広いライブラリーで音楽を聴く人で、J-POPの流行みたいなものが頭に入ってる方なんです。高校時代のあだ名が、“歩くTSUTAYA”だったとかで(笑)。私も物心がつくくらいからずっと、ランキング番組とか見てJ-POPにかじりついていたので。

──体験が近かったんですね。

植田:嵐の「A・RA・SHI」という曲の“はじけりゃ”“Yea!”、“素直に”“Good!”って掛け合いがすぐにできるとか(笑)、瞬間瞬間にふと出てくるフレーズが似てるんですよ。出会いは、そんな感じだったんですが、ふたりでの初ライブは、2011年のアップルストア心斎橋店でのインストアライブでしたね。

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──そこで、いい手応えがあったんですか?

植田:楽しかったですね。とにかく弾き語りかバンド編成しかないと思っていたときに、より歌というものをちょうどいい大きさで届けられる──歌もピアノも生で、音量的にもそうだし、電気を通さない状態でも音が鳴ることがすごく自然体だと思えたし、可能性が広がって面白かったんですよね。

──これは自分にとってライブの軸になるかもしれないなという感覚だったんですか?

植田:初めて心斎橋でやったときは、そこまではまだわからなかったですね。この編成でスタジオに入って“この曲やってみますよ”っていう作業って、ほとんど編曲なんですよ。“ここでこういうことを弾いてください”っていうふうに、私が口ずさんだフレーズをパパパパっと弾いてもらったり。そこで合わせたときのグルーヴから生まれていく展開が、流れとしてすごく自然だったんです。なんの違和感もなく1曲が出来上がっていくこと自体が、とても面白かったですね。

──アレンジで自分の曲がもう一回生まれ変わっていく感じですね。

植田:そうですね。むしろ、そうすることで曲が元々あるべき姿になったこともありましたし。それに、ピアノだけでここまでのパワー感を出せると思っていなかったんです。“これ本当にふたりでやるの?”っていうバンドアレンジの曲をふたりでやってみたら、バンド以上のエネルギーが出せたり。そういう面白さ。ただ、そこに気付くきっかけはライブではなくレコーディングだったと思います。「ソロジー」と「朝焼けの番人」を出会ってからわりと早い段階でレコーディングしたんです。その時にプリプロも含めて、顔をつき合わせて二人だけで一からアレンジを作り上げることで、二人でやる基礎みたいなものが出来上がった気がします。だから、編曲作業の面白さと、素の状態でステージに出たときの無敵感……“最強!!”じゃなくて“楽しい!!”っていう無敵感。そういう新たな風が吹いた感覚でした。私が音楽をやる上でとても大切な編成になりましたね。

──ふたりでやってみることで、ライブに対する考えとか、自分の音楽に対する思いが変わった感覚も強かったですか?

植田:例えば、舞台上で弾き語りを始めた瞬間に、スポットライトひとつで世界が見えるようなステージに憧れがあったんです。ただ、ひとりで弾き語りをやっていたときは、うまく言葉にできていなかったと思うし、それを意識できていなかったんです。ピアノとアコギの編成でライブをするようになって、その部分は変わりましたね。息をひと吸いしてブレスから曲に入るところとか、ふたりで呼吸を合わせることで、ひとつの時間を空間として作っている感覚が強いのかな。もともとお芝居みたいなライブが好きだし。

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──確かに<Lazward Piano>は、始まるぞっていう緊張感が頭からありますね。お芝居っぽくありたいっていうのは、自分がライブをする上で、最初のほうからあったんですね。

植田:物語が好きなので、それは書いてきた曲にも表れているとも思うんです。歌い始めたら、“その物語の主人公として、心を空っぽにして歌いたい”。それは、わざわざ言わなかった願望だけど、そういうところはずっと大事にしていたかもしれないですね。ふたりでのライブをやったことで、そこがより浮き彫りになったと思います。

──アルバムツアーなどでのバンド編成のライブや、<たったひとりのワンマンライブ>をはじめとする弾き語りライブ、また<Lazward Piano>があるほか、2014年には<UTAUTAU>がスタートしています。<UTAUTAU>はどういう経緯ではじまったもので、アルバムツアーなどでのバンド編成ライブとはどういう違いがありますか?

植田:いろいろな出会いやきっかけがあって、自分で作詞作曲したり、ギターを弾いて歌ったり、アートワークを手掛けたりっていう様々なことをさせてもらっていると思っているんです。そのなかでも、とにかく歌手になりたかった私が、“歌を歌う”ということに徹して真っ向から豪速球をストレートに投げるライブって、すごくカッコいいのではないか?っていうところから始まりました。歌が好きな私が、お客さんにもたくさん歌ってもらいたいって思いながらお届けしているライブ。<Lazward Piano>とは対極に位置しているのが<UTAUTAU>ですね。ドラマチックさとか幻想的っていうところと、<UTAUTAU>は遠いんです。表現するのが難しいんですけど……デニムにスニーカーを履いて、というイメージ。

──会場一体となって盛り上がるようなライブですよね。

植田:そうですね、伸び伸びと歌うイメージが<UTAUTAU>にはあるから。楽器隊のひとりひとりもそう。ギタリストにも歌を歌うみたいにギターを弾いてほしいと思っているから。

──そういうことはバンドメンバーとも共有しているんですか?

植田:<UTAUTAU>では自然とそうなりましたね。<Lazward Piano>のようにカッコつけないし、ドラマチックとかロマンチックを目指さない素顔の<UTAUTAU>が、泥臭くて、それはそれで好きなんです。

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