【音楽ギョーカイ片隅コラム】Vo.112「イギリスの宝、QUEEN(2)~ロンドンのおばあちゃんの話~」

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第91回目アカデミーの幕開けを華やかに飾ったのは、クイーン+アダム・ランバート。ボーカルのフレディ没後27年が経過し、オリジナルメンバーの2名が不在の状態にも関わらず、今も尚、世界屈指のアートを讃える儀式においてそのポジションに立てるバンドはクイーン以外に存在しません。そのクイーンをモデルにした映画『ボヘミアン・ラプソディ』でフレディ役を演じたラミ・マレックの手にはオスカーが輝き、主演男優賞、編集賞、録音賞、音響編集賞の4部門を受賞。これはまさに、クイーンというロックバンドを音楽界のみならず、これまで以上に世界的に一般化させた作品である証なのでしょう。ひとつのアート(音楽)が、違ったアプローチのアート(映画)を通してその素晴らしさを伝授するという良き連鎖は今後も続いて欲しいですよね。

さて、このコラムの(1)を執筆した際、タイトルに「イギリスの宝、QUEEN」としたのには訳があります。

イギリスでホームステイをしていたある休日前夜のこと。ステイ先のママから翌日の予定を尋ねられたので、アールズコートにあるフレディの旧家を再訪したいので探しに行くと告げると彼女から返ってきた言葉が「クイーンは私たちの、イギリスの宝よ」でした。

そして前述の映画の中でも描かれていた、1985年7月13日にイギリスとアメリカで開催された20世紀最大のチャリティーコンサート<ライブエイド>を知っているかと聞いてきたので「もちろん知っている」と答えると、当時を思い出しながら「その日のイギリスは大変な騒ぎだったわ!<ライブエイド>がここ、ロンドンで開催されたことを誇りに思っている」と話してくれました。


彼女はロンドンのグリニッジ近くで生まれ育った生粋のプロテスタントで、イギリスでは一般的な規模の3階建ての自宅で留学生受け入れホームステイ業と年金受給で生計を立てている当時65歳位の若いおばあちゃんで、娘たちは巣立ったものの、事情を抱えた娘の代わりに画に描いたようなイギリスのやんちゃなティーンの孫2人の面倒を見ながらドラッグディーラーの息子を3人持つという気の良いパートナーのおじいちゃんと暮らす、極々普通の女性でした。

普通のおばあちゃんに「クイーンは私たちの宝」と言わしめるほど、フロントマン亡き後も国民から支持される強大なバンドを輩出したイギリスでは、音楽が人の生活に根付いています。彼女のようにイギリスに住まう人を羨ましく思ってしまう最大の理由は、音楽を楽しんで過ごすことがいとも簡単にできるからです。


土壌の異なる日本では、お茶の間と音楽ファンの双方に支持されるロックバンドは今のところ存在しませんが、日本のポップ・アイコンを誕生させられるかどうかは表現者たちの才だけではなく、聴き手である私たちにもかかっているんですよね。

そんなことを考えながらも、イギリスの魅力にまだまだ取り憑かれている私。今日も当時ハウスメイトだったメキシコ人の友人からメッセージが届きました。そんな日は、いつかまた、あのどんより空が広がる飯の不味い国で暮らしたい! とやっぱり思ってしまうのです。


文◎早乙女‘dorami'ゆうこ

◆早乙女“ドラミ”ゆうこの【音楽ギョーカイ片隅コラム】
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