【インタビュー】a flood of circle、爆発するグルーヴの作り方「未来のバンドであるために」
a flood of circleが3月6日、通算9作目のフルアルバムにして、アオキテツ(G)正式加入後の初アルバムとなる『CENTER OF THE EARTH』をリリースする。メジャーデビューから10年を迎えた今、バンドの原点を見つめ直したような疾走感とエネルギーに溢れた新作の完成だ。
◆a flood of circle 画像
そのレコーディングはクリックを極力排除して行うというものだった。グリッドに則した規則的なビートを否定し、ロックの自由を獲得するために構築したアプローチと新たなグルーヴ。結果、彼らがそこに封じ込めたのは、生身の4人による爆発的な躍動感と枠に収まりきらない膨大な熱量だ。UNISON SQUARE GARDENの田淵智也プロデュースによる「夏の砂漠」「美しい悪夢」を含む全12曲に描かれたセンスは時代を追い越そうとする彼ら自身の未来。こんなパワフルなアルバムを生み出した彼らの今を、佐々木亮介(Vo,G)が忌憚なく語ってくれた。
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■ロックバンドがみんな一緒に聴こえてきて
■“これはヤバい”と思ってたんですよ
──ニューアルバム『CENTER OF THE EARTH』は、新生a flood of circleの第一歩ということでしょうか?
佐々木:そうですね、テツは前作『a flood of circle』ができてから正式加入したので、このアルバムがアオキテツがメンバーになって最初のレコーディングで。そもそもテツは一般公募で入ってきたメンバーで、お試し期間といったら悪いけど、俺たち自身はもちろん、テツにもa flood of circleを試してほしくて。その結果、できたのが前回のアルバム。完成した直後に、テツに「メンバーになってくれない?」って話したら、“テツが泣きながらうなづく”って言うかなりエモいシーンが……キャップのツバで顔を隠すっていう古臭いシーンがね(笑)。そういう経緯があってからの今回の『CENTER OF THE EARTH』なので、逆に言えば変な言い訳ができない状態でもあってね。“このメンバーでやっていくぞ”と決めて、最初のアルバムになった。
──バンド感を大切にしてる作品だと思ったんですけど、そういう意識が現れてるんですね。
佐々木:そうですね。特に1曲目「Flood」がそうで。最近はほとんどのバンドがライヴやレコーディング問わず、ドラマーがイヤフォンでクリックを聴いてたりするでしょ。それは現代的で合理的なんだけど、自分がソロ作(『大脱走E.P. / The Great Escape E.P.』2018年10月発表)で、トラップとか、今の機械的な音楽にどっぷりハマってたこともあって、ロックバンドが中途半端に機械的なやり方にいってもダメだなと思ったんですよ。スカパラが「ちえのわ」で“めんどくさいのが愛だろっ?”て歌ったように、面倒臭いのがバンドなんだなって。ラッパーとかYouTuberなら、iPhoneだけで音楽できるし動画も撮れるかもしれないけど、自分たちで大きな機材を運んで、それをライヴハウスに搬入しなきゃいけないのがバンドだから。そう思った時にライヴの爆発力を合理的なもので制御しないで、“バンドだからいいじゃん”ってところに立ち返りたかったんですよ。だから、今思うと相当恥ずかしいけど……そういう意志を込めて、自らのバンド名を冠したナンバーをアルバムの1曲目にするっていうね(笑)。
▲佐々木亮介 (Vo,G) |
佐々木:ナベちゃん(渡邊一丘 / Dr)とか、レコーディングではクリックに慣れてたし、もちろんそのほうが時間が掛からないのはわかってたんですよ。だから、メンバーを一人一人、居酒屋に呼び出して面接、説得するっていう(笑)。最初はみんな、「なんでクリック聴いて録らないの?」って言ってましたよ。でも俺は、世の中に音楽が溢れ返ってる中で、いい加減そろそろ、グリッドに合ってない音楽を聴きたい、みたいな気持ちがあったんで。とは言っても、グリッドに合ってない音楽って、壊れてる風になりやすいっていうか。ただメチャクチャにやってるものとか、あえてローファイにしてるものが多いんですよ。だけど、ちゃんといい音で、かつグルーヴィーな音楽をやりたかったんです。
──そこを3人は理解して納得くれたんですか?
佐々木:いや、最初はかなり疑心暗鬼でしたね(笑)。「時間かかるじゃん。後から直しづらいし」「いや直さなくて良くない?」みたいなやり取りをして。とにかく、クリックを使わなかったら、ヤバい感じが出ると思ってたから。“なんか、すげえ音だな”みたいな感じって、クリックを知らない人にすら伝わるんじゃないかって。それは「亮介はこういうこと言いたいんだな」って録りながら実感してくれたと思うし。そういう意味でも最初は実験でしたね。
──極端なところに向かったものですね。クリックを使ったブレのないリズムでやることへの反発?
佐々木:さっき言ったように、ロックバンドがみんな一緒に聴こえてきて、“これはヤバい”と思ってたんですよ。ロックバンドが大好きでやってるのに、たとえばストリーミングとかで普通のロックバンドが聴こえてきたら、その音楽を飛ばして聴いてる自分もいて。“それはなんでだろう?”って考えたら、みんながクリックを聴いて録ってるからだと思ったんですよね。“これだけトラップとかが流行ってる今、それに合わせなきゃ”って俺もそう思ってたし、“関係ない”って目を背けるのも違う。どちらにしても、それを“仕方がない”で終わらせない自分になりたかったんですよ。だったら、トラップの後の音楽になりたい。それが何かまだわからないけど、ロックバンドの生のグルーヴを爆発させるやり方が見つかったら勝てると思ったんですよ。時代とは関係ないって言ってしまうことはメチャクチャ簡単ですけど、それは言いたくない。
──時代を把握した上で、時代に乗っからないもの?
佐々木:今を生きてますからね。“現代はいろんな時代の音楽を簡単に聴けるから、昔の曲も新曲みたいに聴くことができる”とか言われることも多いけど、俺はそうは思わなくて。リアルタイムの新曲だからワクワクするという感覚は、過去の曲では味わえないでしょ。音楽ファンとかコレクターとかじゃなくて、“生きてる!最高!”と思いたいじゃないですか。もちろん過去のものも尊敬してるけど、そこについていくんじゃなくてね。だから、未来のバンドであるためのトライ&エラーですよ。今が完成形だと思ってない。
◆インタビュー(2)へ
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