【インタビュー】吉田栄作、歌手デビュー30周年「旅のように思えるんです、人生っていうのが」

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■50歳を迎え、30年所属した事務所から独立して
■ここからが起承転結の“転”

──今回、音楽の活動としては「Runners High」「Annie」がリリースされます。

吉田:僕の中では、新しい始まりのちょうどいい機会なんです。俳優っていう部分に関しては、起承転結をつけたいなっていうのが自分の中であって。そういう意味では、第一章の“起”が若い時で、デビューしてから7年くらい。渡米して帰国してからが第二章の“承“ですね。で、帰ってきてからのこの第二章が、ほんとに長かった。どこで閉じるかなって、この4~5年ぐらい、ものすごいもがいてましたね。で、50歳になり、30年お世話になったワタナベエンターテインメントを辞めさせてもらい、独立して、こっからが第三章の“転”だと思うんですね、はい。

──いまレコーディングされてる曲は、全曲をご自分で作られたんですよね。

吉田:ずっと音楽はやり続けてるんですけど、自主製作盤も多かったので、今回、正式にレコーディングしてリリースできるのは、僕としてはとても嬉しいです。それこそ記録に残る形にできるわけじゃないですか。歌い続けてきた曲には、思い入れがあるので。

──吉田さんて、人生哲学っぽいことをすごく考えてますよね。どういうふうに演じるとか、どういうふうに生きるかとか。歌詞もいろんな暗示に聴こえておもしろい。

吉田:ああ、なんか旅のように思えるんですよね、この人生っていうのが。僕の曲って、デビュー曲から旅の曲が多いんですよね。最初のヒット曲もカバーですけど「心の旅」だし。自分で書いた「Runners High」も「Annie」も、旅の途中の出会いとか、旅の途中で感じたことが詞になっているので、僕の中の哲学かもしれないですね。

──ラブソングが多くなるわけではないんですか?

吉田:ないですねえ。「Annie」なんかはラブソングなんだけど、むしろ自分の心の中を比喩した感じですかね。

──歌詞の中で、今は幸せだけど、いつかは過ぎてしまうのかもしれないとも歌う。

吉田:それって、ある程度経験をしていくと、とてもリアルだと思うんですよね。そうじゃないものは、ないと。人生って、浮かれている時に絶対にボーンと、イヤなことが来るじゃないですか。

──来ますね(笑)。

吉田:だから幸せに感じていることって、いつか失うよなって思うように、だんだんなってくるんですよね。

──アレンジも素敵ですよね。ウエストコーストの風を感じたり、本当にそれが新鮮に聴こえて、いいなあって。

吉田:曲自体に、僕の中ではもう風情がある。季節があって、風が吹いている。プロデューサーの佐久間さんは、音楽を制作する人であり、レコードマンじゃないですか。で、今回参加してくれた、阿部潤くんたちはミュージシャンで。それぞれに音楽を愛する人たちとコラボレーションすることで、僕の曲の風情みたいなものが、みなさんが作ってくれるものと、うまくコラボできたらなあと。そこはすごく楽しみなところですよね。

──男性が聴いてわかってくれて、一緒に歌ってくれたら、嬉しいなとは。

吉田:もちろんもちろん。「お前まだやってたんだ」とか「歌ってたんだ」とか。「心の旅」で止まってるけどっていう人に聴いてもらって「おお、なかなかいいじゃないか」とか。「歌いたいな」ってなってくれれば、それは嬉しいですよね。


▲ニューシングル「Runners High」

──ツアーに出る予定は?

吉田:プロデューサー的には、なにかできたらいいよね、みたいには言ってくださってるので、実現したいなあと。でも僕ね、本当にずーっとやり続けてるんですよ。ひと知れずといいますか(笑)。デビュー20年の時にも「心の旅(ver.2009)」を出して、北海道から鹿児島までインストアライブをやって。それでけっこう全国からオファーがきた。予算に応じて、場合によっちゃマネージャーも連れずに、僕がギターを抱えてひとりで現地に行って歌って(笑)。ずっといろんな場所でやってきたんで、今回の30年というのがフックになって、「お、またやってる」って思ってもらえたらいいなと、思いますけどね。

──“歌”に関しては、どんなふうに続けていこうと思っていますか?

吉田:第一章を終える時に、アメリカに行く前に思ったのは、これからは大きなホールやアリーナじゃなくても。一人のお客さんが目の前にいてくれたら、その人のために歌うぞっていうような、その精神があればいいのかなあと。結果それが何人になっても。

──歌うことが好きだし、すごく自然なことなんでしょうね。

吉田:そうですね。もう、職業は何かって聞かれたら、僕は間違いなく“俳優”って言う。「じゃあ音楽は?」ってなったときに「いやいやいや、好きだから続けているんです」と。お金にならないかもしれないけど、だって好きなんで(笑)。

──渡米から25年が経ち、ロサンゼルスには今でも、毎年、行ってるのだとか。

吉田:行ってます。向こうでもライブをやってます。音楽仲間がいるので、アコースティックライブをやったり、バンドをやったり。あそこは、肌に合うんですよねえ。ここにいる自分以上に、向こうの方がリアルというかね、自分が等身大だと思える。やっぱり特殊な仕事だからですかね。どうしても日本にいると、キュークツな感じがしますからね。自分をアピールするとか、自分の意見を言ったりするのに、手足をボーンと伸ばすと、ハミ出ちゃう気がするんですよ。でもアメリカって、手足を伸ばしても、ぜんっぜん、まだまだ足んないよっていうような。僕が背が高いからかもしれないけど(笑)。

──ということは25年前の強い思いを、ライフスタイルとして実現させたのですね。変わらないんですね、自分の足で立って、体ひとつで進んでいきたいという思いは。

吉田:そうです。僕が今年、立ち上げた会社の社名がドゥータって言いまして。ズタ袋の、ズタの語源なんですね。インドの修行僧がぶら下げている袋が、ドゥータっていうらしいんですよ。人生は旅で、修行で、いただける対価に感謝と。

──吉田栄作さんのインタビューで、そこに結論が行くと思いませんでした(笑)。

吉田:そうですか? とにかくズタ袋一個で生きていきたいっていう話ですね。

──じゃ、これからも旅はつづくと。

吉田:そうです、旅はつづきます。

取材・文◎高山まゆみ

音楽デビュー30周年記念シングル「Runners High」

2019年6月5日(水)発売
FNFY-44 ¥1,080(税込)
1. Runners High
2. Annie
3. Runners High -original karaoke-
4. Annie -original karaoke-


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