【インタビュー】Waiveの田澤と杉本が語る“解散中”という新たな概念「バンドにとって死を意味すると思うんです、解散って」

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■Waiveというバンドが命を持った
■という感じはすごくしたな

──1本1本積み重ねてきたツアーの時間がとてもいいものだったんだな、というのは4月30日Zepp TokyoのMCを聞いていても感じることで、杉本さんからはWaiveに「救われた」という言葉がありました。ツアーで過ごした時間は、今振り返るとどういうものだったんでしょうか? ツアーが始まる前と比べて気持ちはどう変化しましたか?

杉本:Waiveは2005年に解散して、2010年、2016年と、なんだかんだ言って細かく活動していて、その都度「復活だ」とか「再演だ」とかいう言葉に対して疑問を抱きつつも(笑)、とはいえ、違う言葉は特にないし、みたいな中でやってきていて。今回はたしかに、Waiveというバンドが命を持ったのかな?という感じはすごくしたな。こんなに公演ごとの間も開いたツアーだから、“ツアー感出ないでしょ?”と最初は思ってたけど、めちゃくちゃツアーをやってる実感があったし。

田澤:うん。

杉本:言葉悪いけど、とても3ヵ月ダラダラと(笑)やったとは思えないぐらい、密度濃くメンバーとも過ごせたような気がするなぁ。

田澤:そうやなぁ。

杉本:久々に“Waiveがバンドをした”のかなって気はした、うん。

──どういうところが、これまでの再演と違ったんですか?

杉本:まぁ、当然本数が違ったというのはある(笑)。でも、なんなんやろう? 別にスタンスもそんなに変わらんしね。

田澤:うん、別になにも変わってないのにな。

──ツアーが始まる前のインタビューで杉本さんは、「メンバー各自のWaive以外の音楽活動にはあまり触れないスタンス」だとお話しされていましたよね? そういう距離感をあえて保っている、とのことだったのに、2月にはRayflower (※田澤がヴォーカルを務める5ピースバンド)が出演した対バンライブを観に来られていて、すごく驚いたんです。ツアーの中でのやり取りが生んだ心境の変化なのかな?と思ったんですけど。

田澤:どうなんやろね?

杉本:いや、結局は些細なことの積み重ねみたいなところがあって。大きなきっかけとして“これだ”というのはないんですけど。

田澤:うんうん。

杉本:めちゃくちゃ細かいことを言うと、Rayflowerはその日、感覚ピエロと対バンをしていて、僕は前から感覚ピエロに“観に行く観に行く詐偽”をし続けてたんです(笑)。まずそれが一番外側にある理由。ただ、それは大義名分に一番しやすい、逆に言うとね。

田澤:まぁそうやな。ワンマンよりは来やすいやろうしな(笑)。

杉本:うん、楽屋に行かんでも自然やし(笑)。<MUD FRIENDS>ときの話に戻るんですけど、僕はとにかく自分のライブって後でビデオを観るようなことはないんですよ。作品として販売するものは観ますけど、それ以外の映像はもう10年とかのレベルで観てなかった。だから<MUD FRIENDS>のときに映像を観たのは、自分的にはかなり奇跡的な出来事で。で、それを観て“へ~!”という感覚がすごくあった。例えば、貮方(孝司 / G)は今もう楽器も弾いてなくて(※音楽活動から身を引いているため)明らかにプレイは下手なのに、“お、こいつ一丁前にバンドの一部になっとるわ!”とか(笑)。我々もなんだかんだ言ってスキルが増しているから、“じゃあ、この人の良さを活かしながら、我々が立ち位置をちょっと変えて、違うバンドとしてWaiveを成り立たせよう”みたいなことをちょこざいにみんながやるわけですよ。それを観て、“あぁ、なんか素晴らしいことができているなぁ”と感じたんですね。

──はい。

杉本:“田澤くんはこういうヴォーカリスト” “(高井)淳はこういうベーシスト”みたいな凝り固まった考え方を僕はみんなに対して持ってたから、“いつの概念で観てんねん、俺?”とふと感じちゃったんです。自分に対してもね。“俺ってこういうプレイをしてる人”と思ってたけど、過ぎていく時の中で自然と変わってきていて、“え? いつの間にか全然違うプレイヤーになってた”と気付いたし。それで、“田澤くんは、よそではどういう風に歌うんだろう? どうリードするのかな? 観てみたいなぁ”とも単純に思ったんですよね。生意気な言葉かもしれないけど、いいところも悪いところも俯瞰で観られるチャンスなのかな?と。自分らのバンドの場合はそうやって映像でしか観られないですから。他のメンバーがなにをやってるのか、生で観てみてもいいんかもなぁというのが、そのタイミングであって。Waiveのツアーリハーサルのときにそういう会話がチラッと出たんですよね。

田澤:うん、そうだった。

杉本:「Waive × wyseの横浜公演の次の日が、Rayflowerのライブや」って言うから、「じゃあ行きやすいし、行こうかなぁ」となって。

──そうだったんですね。カジュアルに、そんな話の流れになること自体、心境や関係性の変化を感じて胸が熱くなります。

杉本:正直に言うとね、10月の<MUD FRIENDS>を経て、2月からWaiveのツアーが始まって、そのためのリハーサルとかを重ね、映像とリハーサルの音を聴くことを繰り返している中で、“あ、Waiveって結構ええバンドやわ”って改めて思っちゃったんですよ。もちろん音楽の好みは人によって違うから良し悪しとは違う意味でですけど、自分は自分のやっていることを愛しているわけで……。それでも、“自分だけでやっているソロと比較してハッキリと感じる別の良さを我ながらも感じる”と思った。明確にそれを感じるぐらい、“あぁ、なるほどな”とかなり腑に落ちたところがあったので、だからこそ“観たほうがいいんかもなぁ”って。

──なるほど。

杉本:例えば、僕が田澤くんに対して、Waive以外での活動を観もせずに“こうなんちゃうの?”と話すんじゃなくて、観た上で“俺はこう感じたよ”と伝えて、そのことで10個言って1個でも“たしかに”と田澤くんが思うところがあって変わったりしたら、そっちの活動も良くなるだろうし、個人も良くなって、それが結局Waiveに還って来て、ツアーの残りのライブを良くしていくのかなぁ?と思ったから。単純に、“Waiveはいいものをやれてる”という感覚があると同時に、どこかで全員が、さっき言ってた“決めてるライン”を越さないようなところがあるから、“壊せる位置にいるのが自分なんじゃないのかな?”とも感じたんですよね。他のメンバーはお互いに、Waiveが活動をしていなかった期間も、人間同士のコミュニケーションだけじゃなくて、お互いの音楽活動の中でのコミュニケーションをしてきていて。唯一僕だけが“寄せつけないし、近寄らない”をやっていたと思うから、それをバリン!と割れば、バンドっぽくなるんちゃうかな?と感じたんですよね。

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