【インタビュー】The Whoops、耳と心に残るグッドメロディばかりが収録された1stフルアルバム『Time Machine』

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6月12日に1stフルアルバム『Time Machine』をリリースした3ピースバンドThe Whoopsを取材するにあたって、オフィシャル・ウェブサイトを見てみた。なんだこの“初期ホームページビルダー感”。Windows98で止まってる人かな? なんか変だけど見た目は若くて爽やかっぽいし曲もすごくいい。音楽×映画の祭典「MOOSIC LAB」短編部門の準グランプリ作品「内回りの二人」(柴野太郎監督 )のEDテーマとして使われた「Soda」や、胸に迫る王道バラード「行方」、賑やかで楽しいけどなんだか泣ける「踊れない僕ら」等、耳と心に残るグッドメロディばかりが収録されている。じつは結構真面目で、ただただ天然な人たちなのかも。そんなことを思いながらインタビューしてみたところ、むしろ思った以上に変だった(だがそれがイイ)。最後の切実なメッセージまで、余すことなく読んでいただきたい。

■こういうポケモンいるけど、どう?
■すごく根暗でキモチ悪いドラマーがいるけど、どう?


――プロフィールに「埼玉県北浦和発」のバンドとあるのですが、みなさんはバンドを組む前から知り合いだったんですか?

宮田翔平(Vo.Gt):バンドを組んでからですね。僕は群馬県出身なんですけど、埼玉の大学でバンドを組んで、北浦和KYARAというライブハウスによく出ていて。その後、ベースのメンバーが抜けたときに、ライブハウスとかの繋がりで森ちゃんを紹介してもらったんです。

森確実(Ba.Cho):イメージ的には、ライブハウスの店長が“こういうポケモンいるけど、どう?”って言ってくれた感じです。

宮田:“そのポケモン、ベース弾けるんだ?”っていう感じで(笑)。森ちゃんというポケモンの存在は知っていたんですけど、ベースを弾けるポケモンだったことは知らなくて。バンドに入ってもらったら意外とハマってくれたんです。その次にドラムが抜けちゃったときに、今度は“すごく根暗でキモチ悪いドラマーがいるけど、どう?”って言われて。

須長宏紀(Dr.Cho):原文ママ、ですね。

宮田:僕も切羽詰まっていたのか、それで紹介してもらって。そうしたらハマったんで、そこからはこのメンバーでやっています。

――もう1人メンバーがいたんだとか?

宮田:ああ~(笑)。今年4月に催眠術師を新メンバーに迎え入れたんですよ。

――催眠術師?

宮田:そうです。昨年、催眠術師のパートを募集したんです。最初はおふざけだったんですけど、本当に入れたら面白いなと思って。夢幻颯人(むげんはやと)さんという、マキシマム ザ ホルモンのYouTubeの番組に出ていたりテレビに出ていたりしている結構有名な催眠術師さんで。ライブで僕らに催眠術をかけてもらって、目が開かないとか足が動かないとか、わさびを食べても辛くないとかってやったんですけど、お客さんからは“ああ、やってんな”みたいに思われてしまって。それでステージからお客さんに催眠術をかけていって催眠にどっぷりかかった6名をステージに上げて、再度催眠術をかけたんです。そうしたら、最終的に人が憑依するというところまで催眠術がかかってしまって(笑)。オモロさと怖さでざわつきがすごかったです。

――なんでまたライブでそんなことを?

宮田:催眠にかかった状態でライブをしたら、僕らもお客さんも羞恥心なく純粋に楽しめるんじゃないかというテーマがあったんです。まあ結果、カルトな感じになっちゃったんですけど(笑)。夢幻颯人さんはその日に脱退してしまったんですけど、今も仲良しです。

――ちょっと音楽自体の話もしていいでしょうか(笑)。宮田さんはどんな音楽をやろうと思ってこの3人で始めたんですか。

宮田:僕が前にやっていたバンドと音楽性は変わっていないです。ずっとThe Whoopsというバンドで、既存の曲もあったので。そのまま続けてみようという感じでした。


――後から入った2人は、既存の曲を聴いて入りたいと思ったわけですか。

森:どうだったんだろう? そう言われてみると入りたかったのかなあ?

一同:(笑)。

森:最初はサポートだったんです。色んなバンドを掛け持ちでやっていたんですけど、そんなに器用じゃないので、メキメキとThe Whoopsの活動が主になっていったんです。活動頻度も多かったし、(宮田が)やる気に満ちていたので。それに曲が溢れてくるのがすごいなと思ったので、一本化しました。

宮田:他にもベースの加入候補がいたんですけどスタジオに入ったら音が小さくて。僕は大きい音が好きなんですよ。それで、森ちゃんとスタジオに入ったら“うわっはっは~!”みたいな堂々たる笑い方をしていて。そのときのドラムが“森ちゃんは笑い声がいいよね”って言ってたから、メンバーにしようと思ったんです。

森:ベースの音じゃなくて発声が認められたみたいですね。

宮田:すごいボリュームで笑っているので。明朗快活でいいなと。

――

▲宮田翔平(Gt.Vo)

それだけ自分を表現できる人だと認定されたわけですね。須長さんはその後に入ってきたわけですね。

須長:そのとき僕は別のバンドを組んでいて、At The Drive-inになりたかったんですが気付いたら9mm Parabellum Bulletみたいなバンドになっていて、そのバンド自体がなくなってしまって。ドラムを叩きたいと思っていたときに友人のバンドの解散ライブを観に行ったら、他のバンドのドラムがいないから入ればって紹介されて。それがThe Whoopsだったんです。ライブは観ていなかったんですけど(笑)。まあ暇だしやろうかなみたいな感じで、気付いたらこうなっていました。

森:どっちも音楽に惚れて“入れてください!”みたいな感じが一切ないという(笑)。

宮田:大丈夫かなあ(笑)。

――3人が好きな音楽に共通点があるとかっていうことはないんですか。

宮田:いや、そんなにないっすよ(きっぱり)。

森:ただ、2000年代のJ-POPはめちゃめちゃ崇拝していますね。ちょっと懐メロみたいな歌謡曲っぽい音楽を。


▲森確実(Ba.Vo)

――なるほど、アルバムを聴くと歌を覚えて歌いたくなる曲が揃っていると思いました。“歌が良い”というところが3人の好きな音楽なんですね。

宮田:2人がすごく厳しいかもしれないです。基本的に曲は僕が全部書いるんですけど、僕もポップスがすごく好きなので、ちゃんと口ずさめるようなものを作ろうとしているんです。でもスタジオで曲を2人に聴かせたときに、サビとかが地味だったりすると、2人に“いや、ないっすね”ってボツにされます。

須長:でも、そんなに意見が食い違うことってそんなにないよね?

森:うん、そうかもね。

宮田:でもまあ“そうか、これも無しか……”ってなりますけどね。

――そこは2人のセンスを信頼しているからこそ、NGだったらしょうがないという感じですか。

宮田:そうですね。客観的な意見なので。

森:普通、怒ってもいいと思うんですけど怒らないんですよ。すごく良い人なんですよね。

宮田:“これはいける!”っていう曲は推したりしますけど、そんなにはないですね。

――このアルバムで推した曲というとどれでしょうか。

宮田:「踊れない僕ら」です。アルバムの中では異質ですからね。この曲は(須長が)すごい渋っていて。打ち込みなのでドラムを叩いていなくてコーラスを録音したんですけど、全然やりたがらないし歌詞も譜割りも覚えてこないし(笑)。

須長:自分がこういう曲を聴いたことがないから違和感があったんですよ。

宮田:もともとこの曲はボーナストラックのつもりで、おふざけ枠で作ったんですよ。


▲須永宏紀(Dr.Cho)

――確かに、突然カッコイイ感じのピアノで始まるので逆に面白いというか。

宮田:“なんだこれは?”ってなりますよね(笑)。最後に1曲違う曲が出来て入れちゃったので、本編に昇格した感じです。でもこの曲がSpotifyで色んなプレイリストに入っていたりするんですよ。自分たちの5角形のパラメーターに1つ別の角が増えた感じがしていて、結果的に良かったと思います。

――ライヴでは演奏している曲なんですか?

宮田:催眠術師加入ライブで1回だけやりました。

――催眠術がかかった状態で聴かせたということですか(笑)。

宮田:そういうことですね。まさしく「踊れない僕ら」のテーマにもなっていて、恥ずかしかったりその場に馴染めなかったりっていうことを気にしないで楽しめればいいなっていうのがあるんですよね。だから曲のテーマもそうですし、催眠術師を呼んでそれをやってみたかったというのもあるんです。

――近年、バンドのライブって“踊ろうぜ!”って煽られることが当たり前になっていますが、人によっては気恥ずかしさも絶対あると思うんです。バンド側としてはどう思っているんですか。

宮田:“踊ろうぜ!”なんて言えないよね?

森:我々は特に言えないですねえ。

須長:思ったこともない、俺は。

森:ネタっぽくなっちゃうよね、我々がやると(笑)。

宮田:言わなそうだからわざと言ってるみたいになるかもね。でも、盛り上がって踊ってるのを見ると嬉しいよね。ただ、あんまり煽れないですね。

――そういう性格の3人が集まっている?

宮田:そういう性格です。バンドによっては“なんで踊らないの!?もっと前に来なよ”ぐらいの人っていますからね。でも“あなたたちがカッコよければみんな前に来るのでは”とか思ってしまうんですよ。そういうひねくれもあって、自分たちではあんまり言えないんです。

――そういう気持ちも「踊れない僕ら」には入ってるんですね。結果的にすごく踊りたくなる曲になっていますよね。

宮田:そうですね、そう聴いてもらえたら嬉しいです。

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