【機材レポート】B'z、<LIVE-GYM 2019 -Whole Lotta NEW LOVE->松本孝弘サウンドシステムの全貌

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B'zが6月8日の鹿児島アリーナを皮切りに、9月10日のマリンメッセ福岡まで、全国16ヵ所計36公演のアリーナ&ライブハウスツアー<B'z LIVE-GYM 2019 -Whole Lotta NEW LOVE->を開催した。最新アルバム『NEW LOVE』を引っ提げて行われた同ツアーではサポートメンバーを一新。『NEW LOVE』で切り拓いた新境地はもとより、これまでの代表曲の数々にも進化したグルーヴが息づいていたことはライブレポートでご紹介したとおりだ。

◆<B'z LIVE-GYM 2019 -Whole Lotta NEW LOVE->松本孝弘機材 画像

BARKSは9月3日および4日に行われた幕張メッセ 幕張イベントホールのステージ上にて機材撮影を実施した。同ツアーの松本孝弘のギターサウンドシステムの全貌をご紹介したい。

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アルバム『NEW LOVE』レコーディングは松本孝弘自身が所有するヴィンテージギターを中心に行われたもの。これに加えて大きなトピックは、昨年のレコーディング前に入手していたGibson Jeff Beck 1954 Les Paul Oxblood #10の新登場にあった。結果的にアルバム収録全13曲中、9曲で使用されるなど『NEW LOVE』ギターサウンドの中核を担った存在のひとつと言って過言でない。そして開催された<B'z LIVE-GYM 2019 -Whole Lotta NEW LOVE->でも“Oxblood”が大活躍。また、B'zのステージを思い浮かべるとき、いつもそこには“アンプの壁”が鎮座していたが、今ツアーの“アンプの壁”はこれまでとは一味異なるもので、開演を待つオーディエンスの高揚感を増幅させた。


<B'z LIVE-GYM 2019 -Whole Lotta NEW LOVE->で松本孝弘が使用したサウンドシステムは、昨年のツアー<B'z LIVE-GYM 2017-2018 “LIVE DINOSAUR”>や<B'z LIVE-GYM Pleasure 2018 -HINOTORI->時のシステムを踏襲しつつ、今回のツアー用にモディファイが施されている。とりわけ、コントロールシステムは約10数年ぶりに刷新されていた。

ステージ上で使用されたギターはアコースティックを含めて全7本。Gibson Jeff Beck 1954 Les Paul Oxblood #10、Gibson Les Paul Gold Top 1957 Reissure 1991 #1-8283といった2本がセットリストの半数以上でプレイされていたことをはじめ、半音下げチューニングのナンバーでGibson Flying V Korina 50th Anniversary 2008 #8-8163、トレモロアームを使用するナンバーでErnie Ball Music Man EVH Model PINK #86255、「マジェスティック」でFender Stratocaster 1969 Reissue、半音下げ(6弦のみC#)チューニングの「RED」でGibson Tak Matsumoto Les Paul Canary Yellow prototype #001、アコースティックで披露された「裸足の女神」前半部でGibson CJ-165EC #02227034が登場した。

つまり、“Oxblood”と“Gold Top 1957 Reissure”といった2本のレスポールをメインに、チューニング違いやアーム使用などの用途に応じてギターがセレクトされていたようだ。ギターテック曰く、「今回もリハーサルでいろいろなギターを試しながら、イメージするサウンドにベストマッチするものをセレクトしていった」とのこと。以下、使用ギターの1本1本について解説したい。

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【GUITAR編】


▲<Gibson Jeff Beck 1954 Les Paul Oxblood #10>

1970年代前半にジェフ・ベックが愛用した“Oxblood”(オックスブラッド)を完璧に再現した限定50本のプレミアムなモデル。ジェフ・ベック本人が1本1本実際に試奏し、直筆サインと製造番号が施された。“Oxblood”とは、レコーディングのためにテネシー州メンフィスを訪れていたジェフ・ベックが立ち寄った際に出会ったギターであり、モディファイのために楽器店に持ち込まれていた1954製レスポールだ。オリジナルのゴールドトップがOxblood(くすんだ濃赤色)にリフィニッシュされているほか、オリジナルのP-90ピックアップはハムバッキングPUへ、50年代初期のラウンドネックはよりスリム化され、ペグも新しいものに交換されていた。なお、リアピックアップの上部ラインを基準に下方向ザグリ加工を行なったために、通常よりもブリッジ側に寄るという特異な仕様となっている。その結果、サウンド面でもトレブリーにシフトし、他のレスポールにはない独自のトーンを持つ。

ステージ初登場となった同モデルは、ブリッジとテイルピースが一体のバーブリッジによるテンション感とそのサウンドを松本孝弘自身が気に入ったことによって、アルバムレコーディングおよびライブでも多用されている。今回のツアーでは「今夜月の見える丘に」「OCEAN」「有頂天」「Da La Da Da」「ゴールデンルーキー」「Rain & Dream」「SICK」「きみとなら」「裸足の女神」で使用された。



▲<Gibson Les Paul Gold Top 1957 Reissure 1991 #1-8283>

アルバム『NEW LOVE』レコーディングでは「兵、走る」「SICK」で使用された1991年生産の1957年製ゴールドトップリイシュー。ピックアップにはオープンタイプの57クラシックを搭載。もともと付いていたピックガードを取り外し、ビス穴を木材で埋め込んでいる。

ツアー<B'z LIVE-GYM Pleasure 2008 -GLORY DAYS ->や<B'z LIVE-GYM 2015 -EPIC NIGHT->等でも活躍した同ギターは今回、「WOLF」「俺よカルマを生きろ」「トワニワカク」「声明」「イチブトゼンブ」「Still Alive」「デウス」で使用された。



▲<Gibson Tak Matsumoto Les Paul Canary Yellow prototype #001>

松本孝弘の初号シグネチャとして1999年にリリースされたGibson Custom Tak Matsumoto Les Paul Canary Yellowの最新モデルは、<B'z LIVE-GYM 2017-2018 “LIVE DINOSAUR”>でステージ初登場。ルックスは初号シグネチャのままに、ネック形状を本人所有のGibson TAK MATSUMOTO 1959 LES PAULと共通化することでプレイアビリティを統一した。

<B'z LIVE-GYM 2019 -Whole Lotta NEW LOVE->では、半音下げ(6弦のみC#)チューニングの「RED」で使用された。



▲<Gibson Flying V Korina 50th Anniversary 2008 #8-8163>

ツアー<B'z LIVE-GYM 2015 -EPIC NIGHT->でステージ初登場。自身の長いキャリアの中で初となったフライングVであり、コリーナ材を使用したフライングVが1958年に発売されてから50年後の2008年に100本限定で生産されたアニバーサリーモデルだ。ディープジョイントのセットネック構造に加え、ネックの仕込み角やヘッドアングルもオリジナルが再現されている。サウンドは煌びやかな明るい高域が特徴的で、音抜けが素晴らしい。

<B'z LIVE-GYM 2019 -Whole Lotta NEW LOVE->では「マイニューラブ」「MR. ARMOUR」「兵、走る」「さまよえる蒼い弾丸」といった半音下げチューニングの楽曲で使用。



▲<Ernie Ball Music Man EVH Model PINK #86255>

1990年代中盤のB'zのライブで活躍したErnie Ball Music Man EVH Model。アルバム『DINOSAUR』レコーディングでは表題曲「Dinosaur」Introductionのアーミング部分でAXIS #88923 (BLACK)が使用されたが、EVH Model PINK #86255は約20年間行方不明となっていたものの、オフィシャルSNSでの情報発信による公開捜査によって発見されたモデル。無事に戻ってきた同ギターは<B'z 30th Year Exhibition “SCENES” 1988-2018>で展示され、話題となった。

今回のツアーではアームが必要なナンバー「恋鴉」「ultra soul」「juice」で使用された。



▲<Fender Stratocaster 1969 Reissue>

ストラトキャスター1969リイシューはステージ初登場となるモデル。2016年リリースのソロアルバム『enigma』取材当時、「3年くらい前にLAのギターセンターで見つけて買ったんです。これはレコーディングで使える!って」と松本本人が語った同ギターはアルバム『NEW LOVE』レコーディングにて「兵、走る」「デウス」「SICK」で使用された。

<B'z LIVE-GYM 2019 -Whole Lotta NEW LOVE->では「マジェスティック」演奏時に使用。ギターテック曰く、松本孝弘がストラトタイプのギターをステージで使用するのは「2008年にサドウスキーのストラトタイプを使用して以来。ここ10年は使用していなかった」とのこと。重量的な程よい軽さはヴィンテージならでは。



▲<Gibson CJ-165EC #02227034>

GibsonJ-200のボディースタイルを小型化したCJ-165は2007年製。1930年代スタイルのワイドスキャロップドX-ブレーシングを採用することで、小さいボディからは想像出来ないワイドレンジなサウンドを響かせる。

<B'z LIVE-GYM 2019 -Whole Lotta NEW LOVE->では「裸足の女神」のアコースティックパートで使用。

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