KORGとVOXより爆音から耳を保護するノイズキャンセル搭載ヘッドホン登場

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KORGとVOXからブランド初となるヘッドホン「KORG NC-Q1」「VOX VH-Q1」が登場。ノイズキャンセリング機能搭載のオーバーイヤー型Bluetoothヘッドホンで、DJや楽器演奏者のための機能を盛り込んだ。発売は来春の予定。東京・中野で開催された「ヘッドホン祭2019」の会場で行われたプレス発表会には、DJをテーマにしたメディアミックスプロジェクト「D4DJ」のユニット「燐舞曲(ロンド)」のメンバーを演じる加藤里保菜さん、もものはるなさんがゲストとして登場した。


▲左からホワイトのVH-Q1 WH、NC-Q1 WH、ブラックのVH-Q1 BK、NC-Q1 BK。形状は両モデルとも同じで、ロゴやハウジング周囲のライン、ヒンジのパーツなどのカラーが異なる。参考出展ということだったが、ヘッドホンとしての質感は高く装着感も良好に仕上がっていた。

日常シーンで役立つ機能を搭載した2種のヘッドホン。KORGブランドの「NC-Q1」はおもにDJ向け、VOXブランドの「VH-Q1」はギターなどを演奏するプレイヤー向けで、Bluetooth接続とワイヤード接続の両方で使用可能。それぞれブラックとホワイトの2カラーをラインナップする。来春発売予定で価格はいずれも4万円前後の見込みだ。


▲独自開発の41mmサイズのPEEKドライバーを採用。内蔵バッテリーは、Bluetooth接続でノイズキャンセリングをONにした状態でも1日を超えるロングライフを実現している。

両モデルともドライバーは、中高域の再生能力が高いPEEK樹脂を使用。伸びのよいサウンドを生かすべくイレギュラーな41mmサイズのドライバーを独自開発している。ノイズキャンセリング(NC)はノイズを25dB以上減衰させられる仕様で、実測では30dB以上の効果が得られているという。NC用のマイクはヘッドホンの外側と内側の両方に搭載(フィードバック/フィードフォワード)。外側から生じるノイズを消しつつ、中に溜まるノイズも消すハイブリッド方式を採用した。BlutoothのコーデックはSBC、AAC、aptX、aptX HDに対応する。マルチファンクション機能により、音楽の再生・停止といったコントロールのほか、内蔵マイクでSiriやGoogleアシスタントを呼び出したり、通話も可能となっている。

本体にはUSB端子から充電できるリチウムポリマーバッテリーを内蔵。駆動時間はNCのみ(ワイヤード接続)で36時間、Bluetoothのみで29時間、そしてNCとBluetooth併用でも26時間。フル充電で1日以上もつ余裕のスペックだ。


▲左がKORG NC-Q1、右がVOX VH-Q1。ロゴやボタン、各パーツの色にはそれぞれシルバーとゴールドをチョイス。高級感のあるデザインとなっている。

■DJの耳を守る機能を搭載したKORG「NC-Q1」

今回発表されたヘッドホンは、いずれもミュージシャン向けの機能が搭載されているのが最大の特徴だ。KORGブランドの「NC-Q1」は、耳を傷めやすく難聴になる人が多いDJのために、耳を保護するための機能を搭載している。発表会ではDJの現場における問題点も含め説明がなされた。

DJブースのモニターからは105dB~115dBの爆音が鳴っている。また、100dBを超えると即座に耳を痛め、取り返しがつかないダメージが残る(ちなみに車のクラクションを耳元で鳴らし続けたくらいの音が100dBとのこと)。一方、DJミキサーからのキューモニターの音はさらに大きな音で、より耳を痛めやすい。そこで「NC-Q1」を使えばDJブースからの爆音をNC機能で75dB程度の健全な音量まで下げ、DJミキサーからのモニタリング音も相対的に下げることができる。また、オーディオ機器メーカーのヘッドホンのNCが乗り物のノイズなど低音を中心にキャンセルするのに対し、本機はより上の帯域を含むフラットなキャンセリングを行うことも説明された。


▲DJブースの外音は105dB、DJミキサーからはヘッドホン経由で112dBの大音量が耳に入る。NC-Q1を使えば、外音を75dB、DJミキサーからの音を80dBまで下げることができる。

一般的なNCヘッドホンはDJの現場では過大入力により正常に機能しないことが多いが、「NC-Q1」なら120dBを超える爆音にも対応。さらにDJユースに便利なモニタリング機能として、外からの音(外音)を内蔵マイクで取り込んで、DJミキサーからの音とともに聞ける機能も搭載。外音のモニタリングは本体のタッチパッド操作で片耳または両耳を選択可能だ。


▲本体のタッチパッドの操作で、片耳または両耳から外音を聞くことができる。オススメはケース2のインイアモニタリング。外音を音量を下げて聞きつつ(105dB→75dBに減衰)、DJミキサーからの音量も下られる(90dB→80dB)ので耳を保護できる。

▲ヘッドホンの操作でNC機能のオフや、外音の取り込みがコントロール可能。音場補正や外音を取り込む量をあらかじめプリセットしたSound Enhancingという機能も備える。NC用のマイクが歪んでしまう場合はマイクアッテネーターをONにすれば120dBでもしっかり機能する。


▲こちらはブラック。左がKORG NC-Q1、右がVOX VH-Q1。

■ギター練習に便利なVOX「VH-Q1」

VOXブランドの「VH-Q1」は“サイレント・セッション・スタジオ”と名付けられた。その特徴説明の前に紹介されたのは、最近のギター練習の環境についてだった。携帯オーディオプレーヤーやiPhone、小さいBluetoothスピーカーから曲を流し、それに合わせて小さなアンプでギターを鳴らすという形が最近は増えているという。便利ではあるが、大きな音が鳴らせない、外からのノイズに悩まされるなど、なかなか没頭できる環境が作りにくい状態にあるという。


▲ちょっと前まではオーディオセット&ギターアンプというのが一般的な練習環境だったが、最近は携帯オーディオ機器と簡易アンプの組み合わせが多いという。

▲コルグがヘッドホンを使ったアコギ練習の方法をリサーチしたところ、浮かび上がってきたのが、楽器音と曲の音(BGM)を聞くこれらの方法。イヤホンの上にオーバーイヤー型ヘッドホンをかける被せ技、片耳ずつ、楽器音のみをヘッドホンで聞くなど、いずれの場合も良い音とは言えない。

ヘッドホンを使った練習方法として挙げられたのは、曲はイヤホンで曲を聞きつつ楽器音は大きなヘッドホンを上からかけて聞く「被せ技」、そして、曲と楽器音を別々のヘッドホン/イヤホンで聞く方法など。いずれの場合も音がこもってしまう、いい音で聞けないという問題がある。


▲VH-Q1のマイクから楽器音(アンプ含む)を取り込み、曲の音はスマホからBluetoothで取り込む。両方をヘッドホン内でミキシングしてどちらも良い音で聞ける。

それに対して「VH-Q1」は、これまでにない方法でアプローチ。曲はBluetoothで取り込み、ギターの音はヘッドホンの外側に付いているマイクで集音し、それらを明瞭かつ迫力のある音で再生する。ここで使われるのが、Sound Enhancing機能。KORGブランドの「NC-Q1」では音響補正に使われる機能だが、VOXブランドの本機ではもっと音を物理的に加工し、小さな音を大きな音にしたり、ハイカットしたりとエフェクターのような効果を加えたうえでミキシング。曲の音量やマイクから取り込む音の調整もすべてヘッドホンで行うことが可能。外にはほとんど音を出さずに、ヘッドホンで没入型のジャムセッションができる=つまりヘッドホン自体が持ち運び可能なセッションスタジオになるというわけだ。


▲左から今回のヘッドホンの開発に携わったコルグの河村さん、ゲストのもものはるなさん、加藤里保菜さん、司会の藤本健さん。

11月2日に行われたプレス発表会にはゲストとして、DJをテーマにしたメディアミックスプロジェクト「D4DJ」内のユニット「燐舞曲(ロンド)」の青柳椿役の加藤里保菜さん、矢野緋彩役のもものはるなさんがゲストとして登場。DTM関連の書籍や記事でおなじみの藤本健さんを司会に、コルグの開発担当者を交えトークセッションが行われた。

「バンドリ!」や「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」に続き、ブシロードが送る新しいメディアミックスプロジェクト「D4DJ」。加藤さんが「DJとアニメとゲームで送る、まったく新しいDJの世界をお届けしようというプロジェクトです」と説明すると、もものさんが「D4DJは今、6ユニットいるんですけど、その中で私達は燐舞曲(ロンド)というチームに入っております。ロンドは洋服を見ていただいたらわかるんですけど、ちょっと大人でダークな雰囲気のユニットになっています」と続ける。加藤さん演じる青柳椿はボーカル、もものさんが演じる矢野緋彩はDJを担当、「ロンドの演出面や世界観などを見ております」とはもものさん。


▲もものはるなさん(左)は、「レゴチーマ アニマル戦士たちの伝説」エリス役、「スクールガールストライカーズ アニメーションチャンネル」高嶺アコ役、「ソラとウミのアイダ」榊原マリ子役など舞台、映画など多岐にわたり活動中。加藤里保菜さん(左)は、IDOLストリートとしての活動を経て個人としての芸能活動を開始。舞台、テレビ、ラジオパーソナリティなど幅広く活動している。

二人がかけているヘッドホンの内側が、VOXアンプと同じチェック柄になっていることに話題が及ぶと、「見ていただくと中にかわいい模様がついていて、女の子ってこういうトコ気にするので、細かいこういうおしゃれもかわいらしいなあと思いました」と加藤さん。チェック柄は黒・白モデルとも同じで、下地の色が異なる。コルグの担当者によると、ここまで細かくするのが難しく実現に10年かかったとのこと。また、楽器メーカーがヘッドホンを作ったきっかけとして、「最初は楽器を考えていたんですが、耳を痛める方がいたり、セッションが難しいという環境があって、そこにどうやってアプローチしようかと考えた結果として、ヘッドホンという形がうまくフィットした」「僕らにとってこれは楽器なんです」との答えが。

KORGブランドとVOXブランドのヘッドホン。音楽リスニングにおける性能の違いがあるかどうかも気になることろだろう。開発担当者によれば、ボイシングの方向性が異なり、KORGはモニタリングヘッドホンなのであまりクセづけせずに、DJモニターしやすいように低域がしっかりタイト、高域も音が取りやすいボイシング。フラットに近いが、少しドンシャリ気味にしているという。一方、VOXはより通常の音楽リスニングに適したボイシングとなっているという。

続いて、話題は普段のイヤホン、ヘッドホンの使用について。音楽を聞くシチュエーションを問われると「しょっちゅう聞いてますね。それこそ「D4DJ」で聞くことが増えたので移動中に覚えなきゃいけないとか、家に帰っても下手したらつけている時とかありますね」と加藤さん。「私もお仕事で歌を歌う機会が増えてきたので、移動中だったり、少しの合間だったりでもイヤフォンつけています」ともものさんが続ける。「覚えるためのうちにだんだんその曲がさらに好きになっているっていう」と笑顔。


「歌の仕事をする前と始めた後では音楽の聞き方が変わりましたか?」という質問には、「今まで気づけなかった、刻んでいるビートとかをしっかり聞き取るようになったので、それこそ音質とかより良いものにして普段から意識していかないと聞き逃しやすいものなので、もっといいものをしっかり聞いていかないとという意識に変わりました。」(加藤)、「普段だとただ聞いているだけだっけだったんですけど、お仕事をやるようになってダンスする機会もあって、その音に合わせたダンスが出てきたりもするので今まで気づけなかった音をちゃんと拾うようになりました。」(ももの)、とそれぞれ回答。

今回の新モデルのノイズキャンセリングの効果について「全然違いました!」と驚きの表情で答えたのは加藤さん。「操作もすごいカンタンで、片耳に付いているパッドを触るだけで片耳モニタリングになったり両耳モニタリングになったりするのがすごい便利で、仕事や私生活とか、いろんなところで便利に利用できるものだなと思いました」。もものさんが続ける。「私達のユニット、DJ役の子がいるので、いつもDJやっている時に片耳外すんですね。それをする必要がないって聞いたので、メンバーにすぐに教えたいなと思います。」

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