【インタビュー】INORAN+真矢 [LUNA SEA]、「僕らはこれからも進んでいくけど、今、見てほしい」

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■真剣と頑なになるとは違うからね
■めっちゃ楽しみながらやってる──真矢

──スティーヴ・リリーホワイトと親交があったのはINORANくんですよね。どういういきさつがあって今に至ったんですか?

INORAN:海外プロモーターに共通の知人がいて、4年ぐらい前にスティーヴが初来日したときに「興味ある?」って聞かれたんですよ。「もちろんだよ」って答えて会わせてもらって、そのときに直接LUNA SEAのCDを渡したのが最初ですね。初対面ではまさか一緒にやることになるなんて思ってもないから普通に会話してたんだけど、そこから何回も会うようになって、彼が日本人のアーティストをプロデュースしたことがないって聞いて「僕ら、アルバムを出すタイミングなんだ」って言ったら「一緒にやろうよ」っていう話になって。

──そんなに前からあった話なんですね?

INORAN:そう。そのときは前回のアルバム『LUV』が出る前だったから間に合わなかったんだけど、スティーヴは2018年の日本武道館(<LUNA SEA The Anniversary 2018 The LUV –World left behind- FINAL>)にもさいたまスーパーアリーナ(<LUNATIC X’MAS 2018 -Introduction to the 30th Anniversary->)にも見に来てくれて。絆が深まっていった結果、今作の制作に入ったんです。お互いの仕事のタイミングもあったしね。僕らが彼の家に遊びに行ったときはちょうどU2の記念盤の作業中だったし。

──好きな音楽がそれぞれ違う5人が集まったバンドだけど、インディーズ時代からU2は共通して好きなバンドでしたよね?

真矢:5人でU2の東京ドーム行ったよね?

INORAN:ああ、行ったね。

真矢:メンバー全員で集合して見に行くほど好きで、影響を受けたバンドだよね。

INORAN:真ちゃん、滅多にライヴ行かなかったもんね。

真矢:全然行かなかった(笑)。そういえば昔、固定電話に「ただ今留守にしております」って自分の声で録音してたんだけど、俺、留守電のイントロをU2の『War』の曲にしてたもん(笑)。

INORAN:へえ〜。

真矢:だから留守だと“ダダダダッッダ”ってドラムが流れてくる(笑)。

──はははは。さっき「スティーヴ・リリーホワイトは少年の心を持ってる」っていう話をしてくれましたけど、それこそLUNA SEAが少年時代に憧れたバンドの傑作アルバムを手がけた人と一緒にやるわけですから、エキサイトする気持ちは、自然と曲や演奏に反映されたのでは?

INORAN:今そう言われて思ったけど、あったんじゃないかな。ただ一緒にやるからにはリスペクトし合っていい意味でぶつかり合っての真剣勝負。ストイックっていう意味じゃなくてね。スティーヴは僕らをリラックスさせて自分の懐に入れた上で引き出してくれるし、音楽人以前に人間としてできている人。本当の意味でプロフェッショナルなやり方でムードを作れる。さっき真矢ちゃんが言ってたように「勉強になりました」。

真矢:わはははは。

──最後の言い方が中学生みたいになってますけど。

INORAN:勉強になりました、マル(笑)。

真矢:スティーヴがすごいのはジャッジをしていく中でアイディアという形でヒントを与えてくれるの。「こうしなさい」って言うんじゃなくて「これはどう?」「あれはどう?」って。強制ではなく「こうしたほうがいいかもよ」っていう提案。だから、すごくやりやすかったし、「それはちょっとないかな」って言っても「OK! OK! じゃあ、こういうのは?」って。だから人間としてもミュージシャン、プロデューサーとしてもすごく引き出しが多い人なんだと思う。引き出しがないと自分が出したアイディアがボツになったら、違う提案ができないじゃないですか? すぐに新しい提案をしてくるからね。

INORAN:素晴らしいシェフだよね。

真矢:ホントにそう。

──LUNA SEAの曲に対する味付けのヴァリエーションを持っているというか。

真矢:そうそう。いちばん最初に「宇宙の詩 〜Higher and Higher〜」の音が上がってきたときに、イメージしてた音と少し違ったんですよ。ボーカルに例えたらドラムの音って声帯じゃないですか? 「僕の声帯はこんな感じ」ってスティーヴに送ったら「や、絶対こっちのほうがいい」とは言わずに尊重してくれる。それって音楽を真剣に楽しんでないとできないことだよね。スティーヴもSUGIぽん風に言えば“全身全霊”でやってるんだけど。

INORAN:ははははは。

真矢:真剣と頑なになるとは違うからね。「それ、いいねぇ!」ってめっちゃ楽しみながらやってる。だから、ものすごく貪欲なんだと思う。自分にないアイディアが出てきたら取り入れて、血とか骨にしていくというか。

INORAN:そうだね。武道館(<LUNA SEA 30th anniversary LIVE -Story of the ten thousand days->)が終わったあと、スティーヴとメンバーで今回のアルバムのデモテープを聴きながら「ここはこうしようか」「あそこはこうしたらどう?」って話して、そこでポテンシャルが上がって作業に入ったのも良かったし。

──そこまでガッツリ組んでやれる人じゃないと、っていう理由があって今までセルフプロデュースだったんですか?

INORAN:そういう部分もあるかもしれないよね。

──プロデュースしたいというオファーは今までたくさんあったと思うんですよ。

INORAN:基本、僕らは人を信じないところから始まってるから。

真矢:わはははは。

INORAN:最初から唯一無比なバンドを目指してたし、理解されない時期がけっこう長かったので。もちろん理解してくれる人が増えたから今があるんですけど。

──なるほど。今作はLUNA SEAの緻密さを活かしつつ、シェイプアップされている箇所もあって、歌も音色も曲によって違う。削ぎ落とされているせいなのかライヴを見ているようなグルーヴ感、エキサイトする生々しさを感じたんです。

INORAN:ありがとうございます。海外の方とセッションするときって、音楽人もカメラマンもそうだと思うんですけど、フォーカスが合っているから、“何を見せたいのか” “何を聴かせたいのか”を際立たせることに長けてるんですよね。そこは悔しい部分でもある。シェイプされて聴こえるっていうことを料理に例えたら、“この素材が主役ならコイツは脇役だろ”“脇役がないと主役が引き立たないでしょ”っていう発想。思考が立体的なんですよね。そういう意味でも今作のスティーヴのミックスダウンはすごいし、その音色もLUNA SEAへの愛があるゆえだと思います。

──2人が完成した音を聴いての驚きや発見は?

INORAN:ドラムはホントに変わりましたね。真ちゃんのドラムの間合いって独特で、真ちゃんにしか出せないじゃないですか? 今回の曲では、今まで弦楽器と合わさったことによってマスキングされていた部分まで聴こえてくるんですよね。それで“こんなふうに叩いてた?”って思ったりとか。「宇宙の詩 〜Higher and Higher〜」を聴いたときは、バックビートで叩いていないはずのBメロがバックビートに聴こえてビックリしたし。

真矢:それはさっきINORANが例えたように、スティーヴが何が主役なのかわかってるからじゃない? バックビートは脇役なんだけど、主役を引き立たせる。今回のレコーディングはスティーヴのアイディアを採用したことによって“なるほど。こういうふうになるんだ”って思いましたね。

INORAN:俺はこだわりがないわけじゃないんだけど、スティーヴが「これがいいんだよ」って言ったフレーズをそのまま活かしたりしましたしね。

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