【インタビュー】Lefty Hand Cream、YouTube総再生数3億回シンガーのデビューアルバムに「“1LDK”くらいの親密な距離感」

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YouTube上にアップされた様々な邦楽アーティストのカバーが話題を呼び、YouTubeチャンネル登録者47万人超、総再生回数3億回を誇るシンガー。それが2020年1月22日にアルバム『1LDK』でデビューを果たしたLefty Hand Creamだ。

◆Lefty Hand Cream 動画

その透明感に満ちた歌声には、人懐っこいキュートさと同時に凛とした意志の強さがある。曲の世界を繊細に掬い取り、熱すぎず、冷めすぎず、絶妙な温度感で表現していく歌声は、聴き手の耳から全身へと柔らかに染みわたり、彼女にしか生み出しえない心地良い音楽体験を与えてくれる──。

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■似た人のいない少し珍しい歌声
■という自分なりの特徴を大事に

「2歳くらいからTVのCMで流れる曲を歌ったりしていたようなので、音楽を始めたのはその頃ですね(笑)。とにかく幼い頃から歌うことが大好きで、物心ついてからは両親が車の中で流していたスピッツさんやThe Beatlesさんの曲をよく聴いていました」

音楽の原体験をそう振り返る彼女。小学校に入るとすぐにピアノを習い始めるも、「私は音が色で見えることがあるんです。“ドは赤”“レは黄色”みたいな感じで。でも、レッスンで使うピアノの鍵盤に貼ってあったシールの色が私の見えている色と違ったから気持ち悪くなってしまって(笑)」という理由ですぐにやめてしまう。だが、音楽の授業では木琴を担当するなど、そこへの興味尽きることはなかったという。小学校6年生のときには、自らの意志でギターを手にした。

「スピッツさんやYUIさんの曲を聴く中で、“こんなに素敵な音が鳴るんだな”ということを知ってギターに興味を持ったんです。そこから家にあった父のギターをこっそり弾いて練習するようになりました。コードは本で学んだんですけど、1ヵ月経った頃には譜面を見ながら弾き語りができるようになって。中学に上がったタイミングで祖母にギターを買ってもらってからは、家の中で堂々と弾くようになっていましたね。誰かに聴いてもらうことはなかったけど、自分で音楽を奏でながら歌えることがとにかく楽しかったんです」


中学ではテニス部の練習と並行して、音楽にもよりどっぷりとハマっていく。友人とカラオケに行けば、その歌声を褒めてもらえることも多かった。文化祭では初めてのバンドを組み、ギター&ボーカルを担当。たくさんの歓声を浴びたことで、「緊張はしましたけど、人前で歌う気持ち良さを感じることはできましたね」という。その経験がきっかけとなり、高校生になってからはライブハウスで歌うようにもなった。新たに組んだバンドで他のメンバーが作ったオリジナル曲を披露することもあれば、1人で弾き語りカバーをすることもあった。音楽の楽しさはより大きなものとなり、自らの歌に対して少しの自信も手に入れたという。

「でも、その時点ではまだ音楽は単なる趣味でしかなかったんです。将来音楽でどうこうしようなんてまったく考えていなかったので、高校を卒業したらすぐ普通に就職しましたし」

働きながら、“趣味として”音楽を続ける日々。そんな中、知人の勧めで自らの歌をYouTubeにアップすることを始める。それが彼女にとっての大きな転機となった。ネット上に鳴り響いた彼女の歌は様々な人の耳を震わせ、ある1人のクリエイターの元へも届くこととなる。

「kobasoloさんから“一緒に歌ってみませんか?”と声をかけていただいたんです。たまたまネットで初めてkobasoloさんのことを知ったその日に、kobasoloさんからDMでそのお話をいただいたんですよ。そんな偶然ってすごいじゃないですか。だから最初は詐欺かなんかだと思っちゃって(笑)。でも、本物のkobasoloさんだということがわかったので、コラボさせていただくことにしたんです。それが「愛唄」で、結果的にものすごくたくさんの方に聴いていただけることになりましたね。そのことは純粋に嬉しかったです。でも私としてはそんなに浮足立った感じになることはなく。これからも趣味として音楽を続けていくんだろうなぁって思ってましたね。そういう性格なんだと思います(笑)」

気負わず、カバー動画をコンスタントにアップしていく日々。だが、2016年に勤めていた会社を辞めたことをきっかけに、本格的に音楽1本で勝負していくことを決意する。「今の私にできることは音楽しかない」と思った彼女は、Lefty Hand Creamとして新たなスタートを切ったのである。

「音楽が遊びでも趣味でもなくなったので、ボイトレに通ったりしつつ、毎日歌うようになりました。みんなが会社で働いている分、私は歌うんだっていう気持ちで。“誰かに負けたくない”みたいな気持ちは一切なくて、ただただ“いろんな方たちに聴いていただけるアーティストになりたい”という思いだけでここまで来た感じです。顔を出さないスタイルと、似た人のいない少し珍しい歌声という自分なりの特徴を大事にしながら、これからも活動していこうと思っていますね」

ジワジワと彼女の歌声と名前は認知度を高め、国内はもちろん、海外のファンも増えていく。そして今、その活動はいよいよメジャーへと飛び出そうとしている。メジャーデビューアルバムとなる『1LDK』には、過去にヴィレッジヴァンガード限定でリリースされたカバー集『Lefty Hand Covers』『Lefty Hand Covers II』からピックアップされた楽曲群に加え、新たに録り下ろされた「恋音と雨空」(AAA)、「Funny Bunny」(the pillows)、「100万回の『I love you』」(Rake)を収録。彼女の大きな根幹となるカバーを存分に楽しめる内容となっている。

「私はジャンルレスにいろいろな音楽を聴くので、嫌いな曲というのが一切ないんです。音楽ならなんでも好き。ただ、カバーする場合には自分の声質とのマッチングとかいろいろなことを考えて選曲はしていますね。けっこう感覚的に。原曲のファンの方のことを考えると多少のプレッシャーは毎回ありますけど、曲自体の良さを大切にしつつ、その上で自分の魅力も届けられたらいいなという気持ちで歌っています。私のカバーをきっかけに曲を知ってくださる方がいたら、それもまたすごく嬉しいことですね」

◆インタビュー【2】へ
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