【インタビュー】DIMENSION、増崎孝司が語る新体制の『31』「“楽しくフュージョンを”という今までにない感覚」

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■則竹くんや川崎くん、二家本くんからも
■「変わりましたね」って言われました

──全10曲中、増崎さんが作曲された5曲は、いずれもメロディが印象に残る曲ばかりですが、そのうえで5曲とも個性が違うというか、何かしら違ったスパイスが効いた作品に仕上がっていますね。

増崎:僕が日ごろ聴いている音楽って、例えば変拍子がバリバリ出てくるような、ものすごくアグレッシヴなものではなくて、割と牧歌的な曲が多いんですよ。ジャニス・イアンだったり、シンプルな音で構築されたものを好む傾向があるんです。ただそのうえで、1曲をスルッとは終わらせたくないという気持ちもあって。1曲の中に山や谷といったせき止められる何かが欲しい。そうした要素を、隠し味というよりは、シンプルなメロディをより印象付けるために加えるんです。例えば、何てことないリックでも、それを口ずさむことによって曲のイメージにつながっていくことがありますよね。でもそれって、口ずさめるものでないとダメだという信念が僕にはあるんです。舌を噛んでしまいそうな速いパッセージだったら、すごいとは思わせられるけど、印象には残らない。そうではなく、「あのフレーズね」っていう、メロディと一緒にキメまで歌えるようなものが欲しくて、スパイスを入れるような感覚で、それを曲に挟んでいくんです。

▲勝田一樹(Sax)

──なるほど。そういう意味では、例えば「Loop」だと、メロディの背景が移ろっていくようなストーリー性と、余韻の残るエンディングがとても印象的でした。

増崎:「Loop」は制作の初期段階で書いた曲で、まずギターのシンプルなメロディから始まって、ユニゾンのバースメロがあって、Bメロでちょっと憂いのあるような感じになるんです。そこからポジティヴになっていって、最後は弾きまくらないソロというか、大きなソロというイメージで終わるというストーリー性をかなり考えました。いわゆる、ポップス的な組み立て方ですね。だから、どこをとっても「どうだ!」っていう部分がないんですよ。「このソロはどうだ!」「このキメはどうだ!」っていう押すところがない、引いて、引いて作った曲ですね。そのほうが印象に残るんですよ。人って、大声で話しかけられると「はい、もういいです」という気持ちになるけど、小さい声で囁かれると、「えっ?」と耳を傾けたくなるじゃないですか。僕自身がそうなんです。なるべくミニマムに音楽を作っていきたいタイプなので、そういった引き算をして作りました。

──「ZEBRA」になると、また違う種類の引き算になるわけですね。

増崎:そうなんです。「Brand New Emotion」もそうですけど、どの曲にも必ず何かしら引き算をしているんですよ。一見すると「いくぞ!」って感じるところもありますが、でも実際はいかないように。だからレコーディングの時に、則竹(裕之 / Dr)くんや川崎(哲平 / B)くん、二家本(亮介 / B)くんといった生のリズム隊からも「変わりましたね」って言われましたよ。何が変わったかというと、ライヴ感というか、自分たちプレイヤーが、その瞬間にパッと感じたものをそのまま録っていくというやり方だったんです。必要最小限のテクニックを使って、その曲をどうよくするかという部分にテクニックを使う。それはまさに、ポップスのレコーディング手法なんですよ。自分がステージに立っている時の感覚を残しているというか。何ていうのかな……アーバンジャズというのは、こうするとこの街並みに合う、このライフスタイルに合うって、そこを考えて作るじゃないですか。それがアーバンジャズの良い面ですが、だけど悪い面として、どうしても流れていってしまう音楽になりがちなんですよ。BGMになってしまう。それは避けたかったんです。

──BGMになってしまわないように、どういうアプローチでレコーディングを?

増崎:1曲を通して、プレイヤーがそれ以上にもそれ以下にもならないギリギリのところに居続けることが大事なんです。そうするためには、ライヴを想定することが一番いいと思うんですよ。自分がバッキングを弾いている時に、ステージで横(のメンバー)を見渡した時の感覚、それを持ってレコーディングに臨む。もちろん、ライヴでは難しいようなリックを作れるといったレコーディングならではの面白さもあるんですけど、今回は、割とそこは排除した制作でした。だからこのアルバムは、ライヴでもほぼ同じ演奏を再現できると思いますよ。

▲DIMENSION

──テクニックで曲を作るのではなく、曲をよりよくするためにテクニックを使うというお話しが、とても興味深かったです。

増崎:自分がギターを弾いて、勝田くんがサックスを吹けば、それがDIMENSIONの音になるという、自分自身の納得感。自分が弾くことで、それ以上にも以下にもならないということが分かったんです。だったら、自分が感じたものを素直にやることが一番いいんだという結論にいきついたというか。

──その境地に到達された、と。

増崎:到達したのか、諦めたのか(笑)。それはわからないです。人間って、もっと上達したいと上を向くじゃないですか。でも、その間に忘れてしまうものも多々あるわけで。ギターに関していえば、練習すればするほど指は動くようになるし、より速くノートを弾けるようになるけど、それが手癖になってしまったり。音楽って、手癖で作ってはいけないと思っているんです。だから、自分をもっとよくしていこうと積み重ねていく部分と、忘れてはいけないものを上手くコントロールできるように、リスナーとプレイヤーの間に立ってアルバムを作っていきました。

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