【インタビュー】森山達也(THE MODS)「憂鬱な状態の中で、音楽は心を打つ」

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T.MORIYAMMERってだれだ?

それはTHE MODSの森山達也が、30数年ぶりにリリースするソロプロジェクトの名前だ。コロナ禍でバンドが動けない中、自らの内にあるロックンロールのルーツを掘り下げた森山が、盟友・KOZZY IWAKAWA(岩川浩二/ザ・マックショウ、ザ・コルツ)とふたりで作り上げた、それはとても強くて優しい音楽だ。

50's、60's、70'sにまたがるご機嫌なルーツロックのサウンドに乗って、この憂鬱な夜をぶっとばせ。生命力と包容力に満ちたT.MORIYAMMERの歌声のおかげで、僕らはまたロックンロールが好きになるだろう。


──このソロのプロジェクトは、どんなふうに始まったんですか。

森山達也:まず2019年から始まった<KICK ON BOOTSツアー>の途中に俺がヘルニアで倒れて、静養していた時に、時間があったから曲を作りだしたんですね。<KICK ON BOOTSツアー>のあとには、アコースティックアルバムのリリースとライブツアーを予定していたから、それ用の曲を作っていたわけ。で、2020年に入ってツアーが再開になって、いい感じでやっていたら、新型コロナウイルスのニュースが入りだして、結局3月の頭に中断した。最初はすぐ収束するのかなと思っていたから、とりあえずテンションを下げないようにしようと思っていたんだけど、だんだん世の中の様子が「これは長引きそうだぞ」という感じになって、それで緊急事態宣言が出ましたよね。

──それが4月の初めでした。

森山:アコースティックアルバム用の曲を仕上げてデモテープも作っていたから、すぐにレコーディングできる状態だったんだけど、なにせ非常事態宣言になったもので、一旦バラした。時間がもったいないから、曲は作り続けていたんだけど、その時は全部「コロナのクソッタレ」みたいな歌詞しか出てこなくてさ(笑)。これは良くないなと思って、一旦そういうことは全部忘れて、とりあえずロックンロールだから楽しい感じの曲がいいなと思って作っていたら、「ソロでやってもいいかな」と思える曲がいくつかできてきた。それで今回に至ったわけですね。

──なるほど。THE MODSのアコースティックアルバム用の曲とは、まったく違う作り方をしている。

森山:それはまったく別。アコースティック用は今でもストックしているし、バンド用はバンド用でストックしているし、それとはまったく別の、新たに作った曲ですね。

──最高の4曲だと思います。THE MODSとはまた違う、森山さんのルーツがよくわかるというか。

森山:そう言ってもらえると、うれしいですね。


──曲ごとにテーマとなる年代が違うなと思ったんです。1曲目が50'sのエルヴィス・プレスリー風のR&Bやロックンロールだとすると、2曲目が初期ザ・ビートルズの感じで、3曲目がレイト60'sのカントリーロック、4曲目が70'sのパワーポップ、ニック・ロウとかエルヴィス・コステロあたりのフィーリングが良く出ている。時代がちゃんと分かれているなと感じたんですよね。

森山:今のところ、全部正解(笑)。

──マジですか(笑)。何かうれしいですね。

森山:俺の狙ったのは、そこです。THE MODSとはもちろん違うようにしたいし、だからといって、まったく新しいものは俺はできないから、自分のルーツにあるものを極力THE MODSっぽくならない感じでやっていきたい。そういう意味では、岩川浩二が参加してくれたのは助かったよね。やっぱり違う血だから。

──岩川さんとは旧友で、ここ数年はまた絡むことも増えましたね。

森山:あいつは昔、エピックソニーで一緒だったし、そのあとスカーフェイスというレーベルでも一緒だったし、若い頃からよくつるんでいたしね。それが今こうして一緒に仕事ができるのは、すごくうれしいなと思うし、よく残ってくれているなと思いますよ。

──真っ先に、彼に声をかけようと思った理由は?

森山:あいつがハウススタジオを持っているわけよ。とりあえずデモテープを作ろうと思った時に、浩二に「スタジオ使わせてよ」って言ったら「いつでもいいですよ」と言ってくれて。コロナが怖かったから、ふたりとも消毒して、誰も入れずにふたりきりで作業を進めて。

──ということは、演奏もふたりだけ?

森山:ふたりです。ドラムは浩二が叩いていますよ。

──うまいですよね。いい味出している。

森山:コンピューターでエディットできるから多少の修正はできるけど、基本は浩二が叩いていますよ。

──ベースは?

森山:ベースも浩二。俺がやったのはギターと歌で、いつも通り。まず俺がリズムとギターでベーシックトラックを作っておいて、それに浩二が音を重ねて、最後に俺が歌うという。

──「ジョンとヨーコのバラード」みたいですね。ポールとジョンがふたりだけで作ってしまったという。

森山:そういうことだね。


──せっかくなので、1曲ずつ深堀りさせてください。リード曲「GET YOURSELF」は、50'sのムードいっぱいの、リズム&ブルースの色が濃いロックンロールという感じがします。

森山:そうだね。ロックンロールというか、ロカビリーというか、プレスリーにしたって、結局自分が好きなアーティストの、ザ・ビートルズ、ストーンズ、クラッシュとかもみんなそこを通っているんですよ。そこの匂いやセンスを感じるから、聴いているうちに自分も大好きになって血になっているから、何も考えないで作った時に、ああいうリフやメロディがすぐに浮かんでくるのはごく自然でしたよね。

──ドゥワップのコーラスも入っていますよね。

森山:そこはね、浩二のおかげだね。あれはTHE MODSじゃなかなかできないわけよ。

──リリックは、今のことを歌っている感じがしました。「嵐の中で太陽を見つけよう」とか「取り戻そう笑顔」とか。

森山:さっき言ったみたいに、最初は「コロナのクソッタレ」みたいな詞ばっかりで、THE MODSならいいけどソロじゃないなと思ったんだよね。それよりも元気になってほしいし、楽しんでほしい。楽しみが奪われている状況だからこそ、せめて楽しんでほしい。この4曲を聴いている瞬間は心が躍りだすような、そうなってほしい気持ちはありますね。どうしてもコロナの問題は避けて通れないね。

──直接的なワードはなくとも、背景にはコロナの影響が入っていますよね。そこが深みになっているんだと思います。2曲目「GOOD ROCKIN' DAYS」は、岩川さんと共作のクレジットになっていますね。

森山:まず俺が持って行って「こんな感じの曲なんだ」と伝えて、サビでちょっと悩んだ時に、浩二が「こうしたらもっとかっこよくなるね」と言ってくれたから、浩二のクレジットも入れてあげたかったんだよね。

──この曲の、初期ザ・ビートルズに重なるイメージは、最初からあったんですか。

森山:これはね、自粛中に時間があったから、いろんなロックバンドのビデオを見たんですよ。そこでザ・ビートルズの『アンソロジー』というDVDがあって、買った時に見たきりぜんぜん見ていなかったから、久しぶりに見てみたわけ。そしたら、やっぱり素晴らしいバンドだなと。そういえばザ・ビートルズっぽい曲はあんまり作っていないし、作ってみようかなと思って、歌詞もとりあえずザ・ビートルズのタイトルを散りばめて、自分に置き換えて作ってみたんだよね。

──ザ・ビートルズを知っている人には、ニヤリとするポイントがいくつもあります。

森山:浩二もマックショウみたいなバンドをやっているから、ザ・ビートルズ的なアレンジは得意なんだよね。

──ちなみに、ほかにどんなビデオを見たんですか。

森山:片っ端から見てみようと思って、Netflixに入ったんだけど、プレスリーとか、サム・クックのストーリーとか、やっぱりルーツ的なものを多く見たよね。一番新しくてグリーンデイぐらいかな。それでも古いけどね(笑)。そういう、今じゃもうモノクロの感じだけど、音楽が素敵だった時代、文化としてもファッションとしてもいろんな意味で音楽に力があった時代のミュージシャンはすごいと思うし、オーディエンスもすごいと思う。それがあるから今があるわけで、そこをもう一回ちゃんと見直したことが、今回のソロにつながっているんじゃないかなと思いますね。


──間違いないですね。そして3曲目が「LA-DA-DA」。これはカントリーロック、ですかね。

森山:そう。ここ最近、アコギでライブをやりだしてから、アコギの良さに気づいたというか、やっていて気持ちいなと思って、そういう曲も作りたいよなというのがあった。いわゆる力が抜けたやつをね。サビでみんながスキャットでハモれて、元気を出せるような曲を目指しましたね。カントリー、ヒルビリー、ロカビリーとか、そのへんの音楽も、もう一回見直したいと思っているんですよ。

──カントリー、ヒルビリーは、ロックンロールの大事なルーツですよね。

森山:カントリーって、日本だとイメージ的にいまいちだけど、アメリカに行くと、ぜんぜん普通に流れているからね。本当に土着的なカントリーはさすがにわからないけど、俺の好きなバンドはほとんどカントリーをやっているから。たとえばCCRを今聴くと、当時はよくわからなかったけど、めちゃくちゃいいカントリーロックよね。ああいうニュアンスの、カントリーをベースにしたロックをやりたいというのは、最近よく思うんですね。

──すごく似合っていると思います。そしてリリックは、これも「今」を歌っている感じがしますね。「こんな時だから/グチは無しだぜ」という出だしから、メッセージがある気がします。

森山:自分に置き換えてね。やっぱり、ついついグチを言うというか、テレビを見ていて、政治家に対してとか、やっぱり最初はあったわけ。でもまあ、どうしようもないことはどうしようもないし、グチばかり言ったところで何にもならない。それなら逆に「いつでもみんな会えるよ」と。夢を見れば夢の中で俺と会えるし、過去のDVDを観ればTHE MODSに会えるし、音楽にはそういうパワーがあるはずだから、それを歌にしておきたかった、というふうには思いましたね。

──そして4曲目は「ライトを照らせ」。

森山:これはもうコステロ。いわゆるパンクではなく、パワーポップというか、そっち系を作ってみようと思って、うまくハマったよね。できあがった瞬間「THE MODSに取っておけばよかったな」ってちょっと思ったけどね(笑)。

──確かに、この中では一番THE MODSにハマりそうな曲ですね。

森山:そうそう。で、この歌詞は、最初は自分が倒れた時のことを書いてるんだよね。ツアー中にヘルニアになって、その時に書き始めていた歌詞で、それをもう一回作り直した。

──「刹那に飛ばしたツケが/閉ざされた夜に倒れ」、ああ、そういうことですか。

森山:そしたらちょうどコロナが来たものだから、うまくミックスしたという感じ。

──偶然か必然か、いろんなことが重なって、よりエモい曲になったと思います。

森山:そうなんだよね。だから、俺はまったくソロを作る気分じゃなかったけれど、タイミング的には「作らされた」というか、そういう気がします。

──という、森山さんのルーツと、ロックンロールのルーツをわかりやすく提示した全4曲。そして今回、アーティストネームが「森山達也」ではなくて「T.MORIYAMMER」なんですよね。


森山:これはね、シャレで、たまに使っていたわけよ。でも今回のソロで、「森山達也」は何か嫌だったというか、遊び的に「T.MORIYAMMERでいいんじゃない?」と。俺のソロだけど、バンドっぽい感じでもあるし、だから30数年前に出した森山達也のソロとは意味合いがちょっと違うよ、という感じ。

──説明するのも野暮ですけども、これはもちろんジョー・ストラマーに引っ掛けたシャレということで。

森山:たまたまね、「マー」が合っていたから(笑)。

──でも本当に、森山さんのジョー・ストラマー愛は永遠ですよね。

森山:博多でやっていたアマチュア時代は、ザ・ビートルズやストーンズ、そういう音楽を夢中で聴いていて。でも「プロになるんだ。これでメシを喰うんだ」ということを意識させてくれたのが、クラッシュだった。歌詞を書くという作業を教えてくれたのはジョー・ストラマーかなと思いますね。彼がいなかったらたぶん、オリジナル曲なんかあんまり興味がなかったと思うし、今のTHE MODSのスタイルもないよね。だからやっぱり、俺にとって絶対に必要なアーティストのひとりですね。

──確かにクラッシュも、音楽的には、特に中期以降はロックンロールのルーツ探しでしたよね。そこに、リアルタイムのメッセージを乗せてぶつけていく。

森山:そうだね。いろんなジャンルのルーツミュージックを、彼らはすごく勉強していたし、俺もそれが大好きだったし、教えられたと思う。今でもすごいバンドだったなと思いますよ。

──このあと、ソロのフルアルバムができるとすると、『ロンドン・コーリング』みたいなロックンロールのルーツ巡りみたいな作品になるかも?

森山:いやあ、そうなると、THE MODSのほうかな?とも思うし、難しいんですよね。「いい曲できたな」と思うと、つい「THE MODSに取っておこう」みたいなね。来年が40周年で、果たしてできるかどうか今のところわからないけれど、40周年にはTHE MODSのアルバムを出したいと思っているから。そういうニュアンスの曲は、THE MODSのために取っておかないと。メインはTHE MODSだからね。

──はい。

森山:ソロはあくまで個人的なもので、今できることをみんなに届けられたらいいなぐらいの発想だからね。まあ、いい曲ができて悩むというのは、ぜいたくですけどね。

──今後の予定は?

森山:今回出したのは4曲だけど、レコーディングしてる曲がまだ何曲かあるわけ。だから「このシングルで終わってないよ」ということは、言っておきたいと思います。THE MODSが動けるまでは、それをやろうかなと思っていますね。

──ファンにとっては、ソロの森山達也を楽しめる、いい機会だと思いますよ。森山さんのルーツにあるものも、あらためていろいろわかるので。

森山:俺も気づいたというか、いろんなアーティストのビデオを見て、やっぱりロックっていいな、ライブっていいなとあらためて思ったし、ずっと憂鬱な状態の中で、音楽は心を打つ。今はその感覚が奪われているじゃない?それがこんなにつらいことなんだと気付いたし、まず音楽を作って聴いてもらって、その瞬間だけでも楽しんでほしいということが、俺が今できることのすべてですね。そう思って聴いてほしいなと思います。

取材・文◎宮本英夫

T.MORIYAMMER「GET YOURSELF」


2020年9月23日発売
RHR-201 / 1,500円(tax in)
※通信販売・デジタルリリースになります。一般のCDショップでの販売は行いません。
1.GET YOURSELF
2.GOOD ROCKIN' DAYS
3.LA-DA-DA
4.ライトを照らせ

◆THE MODSオフィシャルサイト
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