【インタビュー】GLIM SPANKY、5thアルバム完成「進化し続けていることが伝わるような作品に」

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■ギタリストも人間味がある存在として居なきゃ
■成立しないと思うんですよ、ユニットとして

──今のお話は、まさに今日聞きたかった質問に対する回答でした。GLIM SPANKYはアルバムを作るたびに新しいことに挑戦しているじゃないですか。亀本さんは「GLIM SPANKYのステレオタイプ」とおっしゃいましたが、そういう確固たるサウンドを持っているにもかかわらず、なぜ新しいことに挑戦するのか、そもそもの理由を改めて聞かせてほしかったんです。

亀本:やっぱり、それだけじゃ自分らのモチベーションがなかなか続かないからですよね。ただ、いろいろなことをやりたいとか、新しいことをやりたいとか、ミュージシャンはみんな考えると思うんですけど、何をやったとしてもめちゃくちゃいい曲じゃなきゃダメですよね。一番大事なことは、いい曲であることなので、こういうサウンドを取り入れられたってところで満足してちゃダメだというふうには思っています。


──「Lonely Boogie」は、いわゆるGLIM SPANKYのステレオタイプというイメージに応える曲だと思うのですが、シンセベースを使うことで、ただレトロで、クラシックなだけじゃないロックサウンドを打ち出していますね。

亀本:「Breaking Down Blues」(2019年11月発売シングル「ストーリーの先に」収録曲)や「ハートが冷める前に」(2018年8月発売シングル)でも使っていたんですけど、個人的にリスナーとして聴く時も、ただ生バンドを録音しただけのサウンドはちょっと聴けないと言うか、“レンジ感的に下が必要ですよね”みたいなところがあるんですよ。生のベースを入れても、シンベを入れられるぐらい下の帯域って空いているんです。だから、補うために入れるって感じで、それでかなり全体の重量感が出て、生録音のギターロック的な軽さは減らせる。バスッて鳴るドラムのキックと生のべースだと、今の音楽シーンではさすがにスカスカ感が拭えない。モノフォニックのシンセは大好きなので、ガンガンに使っていこうと思うんですけど、ただ入れすぎちゃうと、リズム的に若干もったり感が出ちゃうので、そこはうまくバランスを取らないとって考えながらやっています。

──松尾さんは新しいチャレンジや新しい要素を取り入れることについては、どんな風にお考えですか?

松尾:亀本が言ったことは、もちろんだと思います。ただ、何でもかんでも取り入れたいと思っているわけではなくて、新しいことをやるにしても自分の中で血となり、肉となっている要素を使って、新しいことを表現することが大事だと思っています。なぜかと言うと、ただの真似で終わってしまったら、いい作品にはならないから。だから、やっぱりいい曲にするためっていうところが大事なんだと思います。

亀本:そうだね。

松尾:たとえば、「こんな夜更けは」は宅録で作ったんですけど、打ち込みと亀本のアコギと私の歌を、それぞれの家で録ったんです。そういう意味ではサウンド的にも新しい表現ができたと思うし、テイスト的にもネオソウルやファンキーな要素をここまで打ち出した曲は初めてじゃないかなと思っていて。でも、それは日本でも、海外でもネオソウルが流行っているからということではなくて、自分たちの中にそういうルーツがあったからこそ、そのテイストを取り入れることができたんだと思っています。新しいことをどんどんやっていこうとは思うんですけど、何を取り入れるか、その取捨選択は自分のセンスと実力を踏まえた上でやっていくべきなのかな。自分たちの中にロックミュージックっていうのは、本当にもう血となって流れているので、たとえば、めちゃめちゃポップなものに挑戦したとしても、ロック的要素は自然と入ってしまう。言い換えれば、ロックミュージックが本当に自分のものになっているという自信があるからこそ、新しいことに挑戦できるんだと思うところもあります。だから、恐れずに新しいことにもどんどん挑戦していきたいし、大好きなアシッドフォークやクラシックなロックも変わらずやっていきたいので、もう全部盛りみたいな感覚で考えています。


──新しい要素を取り入れる上で、松尾さんと亀本さんの間で意見が衝突することはあるんですか?

亀本:「これはイヤだ」ってけっこう言うよね、松尾さんは。

松尾:うん、めちゃめちゃ言う(笑)。今、ギリギリ20代の感覚として(笑)、若い世代が作るものもいいと思うし、カッコいいと思うんですけど、やっぱ自分の信じるロック的なサウンドってあって。

亀本:あるんだ。

松尾:私の趣味という意味でね。決して懐古主義ではないけれど、やっぱり1960年代後半のロックミュージックやフォークが好きなので、そういうものとあまりにもかけ離れると、現代的な音楽とかアプローチとかにちょっと拒絶反応を起こす場合もあります(笑)。だけど、だけど、だけど、今、流行っているものにも良いと思えるところはたくさんあるので、そういうところをちゃんと見極めて、自分の引き出しのひとつにもしていきたいと思っています。ただ、趣味が趣味なので、流行りや売れ線を追っていくだけだと、私は苦しいですね。

──じゃあ、亀本さんとしては、こういうこともやりたいけど、松尾さんが「うん」と言わないから、やっていないというアイディアもあるんですか?

亀本:松尾さんと同じで、個人の趣味として、こういうこともやりたいっていうのはありますよ。でも、松尾さんが言っていたように自分らの中にないものはやるべきじゃないと思うし、歌うのは松尾さんだから、単純にこれが好きだからというだけではできないですよね。松尾さんも言ってましたけど、別に、流行っているという理由では取れ入れてないんですよ。むしろ取り入れられていない。流行っているかどうかは関係なくて、自分のテンションが上がるものや好きなものを選んでいるだけだし、それが音楽制作だと思ってやっているんですけど、松尾さんの歌唱のスタイルとかけ離れているものは、自然とはじかれていきますよね。

▲『Walking On Fire』初回限定盤

──そんな、おふたりのせめぎあいが今のGLIM SPANKYのユニークさを際立たせているわけですね。

亀本:せめぎあっているのかな。どう、松尾さん。せめぎあってる(笑)? 僕は自分がステキだとか、ワクワクするとか思うものを自分流に作って、それを提案しているだけですけど。

──亀本さんが今、一番ワクワクする音楽と言うと?

亀本:やっぱり僕はギタリストで、松尾さんとふたりでやっていて、バンドじゃないというか、ボーカリストとギタリストじゃないですか。だからギタリストもちゃんと人間味があった存在としていなきゃ、成立しないと思うんですよ、ユニットとして。ただの伴奏ギターの人だったら、“あいつ要らなくね?”って僕は思うから、聴いている音楽も、“普通、これってギターは入ってなくない?”みたいな音楽にギターがめっちゃ入っているようなのに惹かれますね。たとえば、ジョン・メイヤーっていろいろロックじゃない──たとえばアリシア・キーズとか、ソウルのシンガーの作品にも客演しているじゃないですか。そういうの、すごく聴きますし、最近すごく好きなギタリストが、ポスト・マローンのプロデューサーもやっているアンドリュー・ワット。割とゴリゴリの80年代ハードロックみたいなギタリストなんですよ。ポスト・マローンがオジー・オズボーンとトラヴィス・スコットと作った楽曲「Take What You Want」のプロデュースもしているんですけど、曲はほぼトラップなのに、まさにランディ・ローズみたいなソロをアウトロで弾いている。そういう音楽にはかなりワクワクしますね。

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