【インタビュー】井出靖「『COSMIC SUITE』を作ることで“圧倒的”に自分に勝ちたいと思ったんです」

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井出靖が本人名義では8年ぶりとなる1曲36分の大作『COSMIC SUITE』をリリースした。既報通り、ジャンルや国籍を超えた各著名人よりコメントも届いており、これまでの井出靖のミュージックライフを総括する、井出が言うところの「圧倒的な作品」であることは間違いないと言えるだろう。今回はそんな井出に加え、本作のプログラミング/エンジニアリングを担当したWATUSI(COLDFEET)にも同席してもらい、話を聞いた。

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■ヘッドフォンでも自宅でも
■聴いてもらえるような作品に(井出)

──『COSMIC SUITE』制作のきっかけが、初めは金原千恵子(ヴァイオリニスト)さんの作品でジェフ・ミルズがプロデュースをした楽曲の原盤が井出さんの手元に数曲って、それにサックスなどを加えて別バージョンくらいに、と思っていたそうですね?

井出靖:まずコンセプトとしては、THE MILLION IMAGE ORCHESTRAで、ああいう形を披露した上で、自分の過去……東芝EMIからソロ作品としてLonesome Echoを出したときにはU・ロイがいたり、今や大俳優のヴィゴ・モーテンセンがいたり、例えばLonesome Echo Stringsでもさまざまなアーティストと録音したけれども、そのときに一瞬話題になっても埋もれてしまうじゃないですか? それってもったいないなと思って、2〜3年前から何かできないかと動いていて。例えばワーナーミュージックと話して、ストリングスだけ貸してくれますか? トニー・ジョー・ホワイトのパートだけ貸してくれませんか?とか、一曲づつ作っていこうかなと思ってたんです。そんな中で、ジェフ・ミルズの原盤をうちのレーベルで持っていて、実際にライブでも披露していたので、最初はジェフの許可を得て、過去の作品をリコンストラクションするつもりでWATUSI君のスタジオに向かったわけなんです。

ジェフ・ミルズからもらっていた断片は「STARLIGHT」という曲と、もう一曲、そのほかにもいろんなパーツをもらってたんですね。で、ジェフにはOKもらってるからと、そのまま作り始めたわけです。そこでコロナ禍になってしまい、実際に作品を作るときに、これは一曲一曲作るのではなく、もっと力のある何かを作らないとダメなんじゃないかと、思い始めたんです。3月くらいにはここまでの大作になるとは思ってなかったけど。フェスとかで盛り上がる曲になればいいなと思っていたけど、今後そういうことができなくなるんじゃないかという不安もありましたしね。だったらヘッドフォンでも自宅でも聞いてもらえるような、ものにしていきたいというのがひとつのテーマ。

もうひとつはジェフのたくさんの断片を……組み合わせると何曲もできるくらいの断片を……すごかったよね?

WATUSI:パラデータとか別バージョンとか、2ミックスなんだけど、こういうのどうだろう?と、(井出が)たくさん投げてきたのがあるの。

井出靖:ミュージシャンとエンジニアがスタジオに入って録音しますよね? で、トラックができたと僕のところに送ってくるのは1トラック。でも実は数トラック録っていたわけで、そういうものがたくさん残ってるんです。開けてみるとすごい量があって。

──アーティスト本人がトラックを持っていたということですか?

井出靖:例えばジェフ・ミルズはうち宛に10トラック送ってくれた。でも僕は2トラックしか聞いてなかった。あと8トラックは当時のレコーディング・エンジニアが辞めて数年経って存在することが判明したわけなんです。

WATUSI:そもそもその前に、内田勘太郎さんのアルバム『LONESOME ECHO PRODUCTION starring 内田勘太郎_MELLOW VIBES DUB』を作ったときにたくさんのハードディスクを確認したんだよね。(井出靖は)ものすごい原盤所有者なんですよ。それをいちいち確認していったの。こういうのがある、ああいうのがある、と。で、使えそうな、かつ井出靖本人がこういふうにリメイクしたいというアイデアがあって、それを探しながらハードディスクの中身を見ていったわけ。すると膨大なアーカイブがある。そこにインプロで勘太郎さんに弾いてもらうだけで、アルバムが一枚パッとできちゃうくらい。ある意味簡単な作業でね。こういうふうにして、アップデートしたオリジナリティ溢れるものができるんだ、と。もったいないからこういうのをドンドンやろうねと。

井出靖:あれがひとつのきっかけだったね。ジェフ・ミルズのマネージャーにはちゃんと連絡して、こういうふうになってますと途中経過を送っていたんですけど、その途中経過がコロナ禍で聞かれてなかった。ジェフからもらったいくつかの断片の中で「STARLIGHT」から逸脱しているものは、「STARLIGHT」の一部なのか、どの曲なのか分からないから、どんどんそれを嵌め込んでいったら、現代音楽を超えるような作品が出来上がったんです(笑)。

WATUSI:ジェフのネタがそもそも凄かったからね(笑)。

井出靖:でもこれでやっていこうって。で、普通はプリプロをして本番なのに、途中から尺も決めないでダビングに入ったもんね?

WATUSI:みんなパーツを貼っていって足りないところは、それに準じたものを打ち込んだり……。

──その時点で一曲36分は決まっていた?

井出靖:いや何も決まってないです。

WATUSI:いくつかの曲を並べるだけ並べてた感じかな。それにちょっとトッピングして打ち込んでと、なんとなく5〜7分くらいのループ状態のものがいくつかあった感じだね。

井出靖:で、最初に西岡ヒデロー君を呼んだんだけど、曲も何も無いのにパーカッションをダビングするって……パーカッションって普通最後じゃん(笑)? 何にもないところによくヒデロー君を入れられたよね?

WATUSI:こんな感じで?みたいな(笑)。全部、元のジェフの断片にインスパイアされたネタを入れていった感じなんだよね。

井出靖:普通とは逆な作り方ですよね。それで、そのヒデロー君の音を入れたらまたハマってきたから……

WATUSI:このループいいねとなって言われるまま貼っていくと、また曲が広がって……。

──井出さんがもともとお持ちのたくさんの原盤があって、それをなんとなく重ねていって、実際に演者を呼んでさらにダビングする、という行為を積み重ねていった感じですね。

WATUSI:で、ダビングしたものをベースにしてさらに広げて、みたいな。

井出靖:スタジオを持っている演奏者はスタジオで録音したものを送ってもらって……次、ギターの(藤本)一馬は来てくれたんだね。


■井出靖は基本的にどこまででもポジティブでタフだから
■何がなくなろうが全然気にしない(WATUSI)

井出靖:ある程度作品ができたら、ジェフのマネージャーがようやく聞いてくれて、「井出さん、さすがにこれは無理だ。ジェフのトラックがこんなにたくさん使われるとは思わなかった」と。もともとはジェフが作ったトラックに演奏を重ねるという話だけだったので。それが彼のトラックの一部だけ使って、違うものをズーッと組んじゃった。あちらからは全部差し替えてくれないかと……。

WATUSI:テンポも変えちゃってるし、元の音とは全く違う。さらにそれにインスパイアしたものを入れちゃってるから……。

井出靖:でももう生楽器を差し込んじゃってるしなぁと。

WATUSI:すごいよね、それであの時点でジェフの音を全部抜いたの。ものすごいプログレッシブなものを作ったんだけど、全部抜いた。ただジェフの音を元にしたベースとかピアノを打ち込んでいたからなんとなく曲らしくはなってたんだよね。一馬君まではジェフの音入りのトラックを聴きながらレコーディングできたんだよね。で、そこで“梯子”がなくなったわけ(笑)。

井出靖:要するにギターとパーカッションとWATUSI君が弾いたベースやピアノだけが残って……。どうしよう?と。

WATUSI:ただそうなったら逆に自由だからやるしかないね、と。

井出靖:自由だからね(笑)!

WATUSI:キーとテンポと雰囲気が決まったらこれでうやっていこうと。(井出は)基本的にどこまででもポジティブでタフだから何がなくなろうが全然気にしないの。

井出靖:逆にチャンスっていうのかな、ジェフ・ミルズに楽曲制作のヒントをもらえた形。「STARLIGHT」という曲じゃなくなったわけだけど。そこから、僕が恐ろしいアーカイブを持っているために、いろいろと持ってきちゃうわけ。それにミューシャンを呼びながら、アイディアを練りながら、ここはレゲエになっていこうとか、ここはLCDサウンドシステムを聴きながら、『リメイン・イン・ライト』風にとか、少しづつパーツができていって、それは自分がDJしているときの感覚なのかな。ドンドン曲が変わっていって、それが曲になっていく……。

WATUSI:言ってみれば、Grand Galleryレーベル/井出靖アーカイブのサンプリング大会だね。

井出靖:今回山木(秀夫/ドラマー)さんの音も使ってますが、10年くらい前にその音がすごく良かったし、将来使うかもしれないから、もう一曲分の使用料をお支払いしてレコーディングしてあったものなんです。また上原“ユカリ”裕さんのドラムに関しては昔すごく予算があるころに、青葉台スタジオで20分以上のドラムブレイクを叩いてもらったんですよ。

WATUSI:意味わからないよね(笑)。

井出靖:山下達郎さんのドラマーだったじゃないですか? それがやっと日の目を見たという……。前にWATUSI君と7インチでも出そうかという話で盛り上がったこともあるんだけど。

WATUSI:彼のブレイクビーツが7インチのA面、B面あったらヤバイよね?

井出靖:今回ドラムは3人起用していますが、録っているものがあるからできちゃうわけ。

WATUSI:しかもそのサンプリングが2ミックスじゃなくて、マルチベースでできる。山木さんやユカリさんのパラデータがあるから。

──やりようによっては何でもできる。

井出靖:まだスタイル・スコットのドラムもあるし。

WATUSI:だから今回400トラックになったわけ(笑)。マルチベースで並べてるからね。

■いろいろな表記のセンスがあると思うけど、
■僕は今回の作品を“組曲”と呼ぶことにした(井出)

──いろいろなパーツが出来上がって、じゃあ一曲にしてしまおうとなったのはどの時点ですか?

井出靖:作業をしながらテーマを考えていったんですが……まずはアルバムから出そうと思っていたんです。今ってレコードにもダウンロードコードが付いてたりしますよね? 最初は僕もレコードとコードでリリースすることを考えていたんだけど結果音の良さからCDも出すことにしたんですね。で、以前、東洋化成の西谷(俊介)君にレコードでは33回転なら18分以降は無駄ですから、と言われたことを思い出したんです。じゃあ、片面18分づつ、両面で36分くらいで諦めないといけない。

ミュージックビデオ、短編映画……いろいろな表記のセンスがあると思うけど、僕は今回の作品を“組曲”と呼ぶことにしたんです。Calmがマスタリングを単装してくれたけど、最後に「PQ(編注:CD/CD-DAに含まれる付加情報のひとつで、曲の開始位置や演奏時間などがおさめられたもののこと)打たないんですか?」と言われたので、「打ちません」と。PQを打たないことで組曲になれると思ったから。うまく言えないけど、僕はこの一曲を“大変に”聴いてほしい。レコードは気分が変えられるようにA面、B面になるけど。こういうもろもろの事情を鑑みて、音の良さも含めてコンセプトが明確になった。

WATUSI:今回はいろいろ面白いんだよね。スタジオがある人はほかで録ってもらったわけだけど、どんな演奏をするのか、客観的にもなるし、(井出からの)要望を自分で考えなきゃいけないわけ。そうするとミュージシャンからのネタがたくさんくる。ひとつのネタだけを使うんじゃなくて、このフレーズはここで使うけど、ほかのフレーズは後ろのこの部分で出したいとか言うわけ(笑)。

井出靖:僕がいうのは簡単だけど、小節数が全部ズレるんだよね、そうすると(笑)。

WATUSI:キーも違うけどテンポも違うものをはめ込んでいくからね(笑)。作品が一曲なので、一個のPro Toolsのセッションファイルにしなくてはいけない。2小節ズラすだけでグチャグチャだから(笑)。言われたら「ごめん、ちょっと時間くれる?」と。

井出靖:で、また修正してくれた音を最初から聴いて、「ここ、ズレてます」と言うわけ。言うのは申し訳ないの分かってるんだけど(笑)。制作中は黒澤明みたいになっちゃうんだよね。この空はこうなってほしい、みたいな。

WATUSI:テンポがバラバラのマルチがやたらあるってすごーく大変なの(笑)。後からもしかしたらここをもう少し早くしたいとか言い出すかもしれないので、すべて単音づつ並べて作業したんだよね。最後は結果400トラック。

井出靖:昔のレコーディングなんて2チャンネルでよかったのにね(笑)。

WATUSI:マルチだから全部のバランスを取りつつ、プラグインとか挟んで質感整えつつ、しなきゃいけないわけ。でもまだダビングするとか言うから「ちょっと時間もらって整理していい?」と。結果、途中でいろいろ削ったんよね。

井出靖:ジェフのトラックも少し使った部分はもちろん許諾を取って使いました。ジェフが今リリースしている音源がちょうどジャズとエレクトロニック・ミュージックがミックスされた作品で、今回の作品と似ていてジェフもびっくりしていたみたいですね。

最後にちょっと心残りなのが、タップダンスとバンドネオンを入れられなかったこと。今回の作品は「COSMIC(宇宙)」だから、次の作品は「深海」。ものすごいアンビエントで、ダブで、バンドネオンで作っていったら面白いかなと。WATUSI君はやりたくないと思うけど(笑)。

──最後はどんなところが決め手でフィニッシュしたのですか?

井出靖:最後は分数で決めました。

WATUSI:いっ時もっと長かったんだけど。音質のことと、もうちょっとタイトにしとうかなと。

井出靖:音質を考えたね。WATUSI君がすごくいい音で仕上げてくれたから、次の段階としてマスタリングは、以前クリス・ココのアルバムですごい音像の作品を仕上げてくれたCalmに頼みたいと思った。すごくこだわっていて、マスタリングは音を整えるだけじゃなくて、こうだ、こうだとすごくいい話をしてくれて……。

WATUSI:レコードとの相性も良くて、マンマ以上の音に仕上がったね。

井出靖:またレコードとCDの出音が違くて面白い。レコードだと中島ノブユキ君のRhodesがバーっと前面に出てきたり。そのノブユキ君と連絡を取ってたら、WATUSI君が「まだそこ録りますか?」と(笑)。もうベーシックなトラックにRhodesの音が入ってるのにさ。

WATUSI:あの音で、作品の雰囲気にこのジャケットの感じが増えたよね。

井出靖:あそこと石井(マサユキ)君は本当に面白くて、ここはこう弾いてください、ここはデヴィッドTウォーカーみたいに、ここは「リメイン・イン・ライト」風に……そこにノブユキ君が、ジャズ・パートだけをリクエストしたんだけど、ファンキーなRhodesが入ってきて……。

WATUSI:アフリカンな感じでね。

井出靖:ウェルドン・アーヴィン、バーニー・ウォレルが入ってる感じで……みんな文章で分かってくれるから、電話したことないんです。イメージが湧かないかなと。例えばicchieには「○分○○秒から■分■■秒まで、エレクトリック・マイルスのこの感じで吹いてみてもらえますか?」みたいな。

──そうすると井出さんの思い通りの音源が届く?

井出靖:はい。それ以上のものをあげてくれる人に頼んでいるから。

WATUSI:みんな悩んで録音してくるからテイク数が多くてねー。別テイクを何個も送ってきて、オレが大変だろ!と(笑)。

井出靖:で、別テイクはほかの場所に使ったり……。

──メンバー選びは基本的に井出さんが?

井出靖:すべて僕です。

WATUSI:オレは早くダビング終わらねえかなーと思ってるだけで(笑)。

井出靖:最初のコロナ禍の外出禁止みたいなときは、仕事もあまりなくて。

WATUSI:それもあったね。みんな急に時間ができたタイミングだったし。

井出靖:ただみんなが動いてきても僕、終わらない(笑)。いやホントWATUSI君がいなかったらできなかった。


■簡単に進むかなと思ったけど、
■こと自分の作品になるとこんなに細かいんだなと(井出)

井出靖:先日の川久保玲さんのインタビューが素晴らしくて、畑は違いますけど、極端なものしか……圧倒的に自分に勝ちたいと思ったんです。だからジェフのトラックを丸々使うんじゃなくて、ここまで作ることができてよかったなって思います。もちろんWATUSI君のおかげなんですが。

WATUSI:いやいや……最初からあんなこと言われたらやらなかったよ(笑)。

井出靖:やらないよね(笑)!

WATUSI:延々だからね。2週間おきにスタジオにやってきて、来てはダビング、来てはネタ出し……それが1週間おきになって。ある意味、修行だね。自分で作るんだったらわかるけど、人の作品だし、責任もあるし。

井出靖:WATUSI君と作った(内田)勘太郎さんの作品と同じように進むかなと思ったけど、こと自分の作品になるとこんなに細かいんだなと。すごく細かい。いま映像作品を作ってるけど、やっぱりうるさいんですよね、僕(笑)。

WATUSI:同じ沼にハマってんだ。

井出靖:自分が細かくてクタクタになって、なんでこんなにくたびれてるんだろうと思うけど、36分の作品だったら頭から確認し直すんです。26分何秒から気になるときも頭から確認する。だからこんなに疲れちゃうんだよね。

とある出来事があって、圧倒的なものになりたいと思ったんです。今は簡単に配信でカバー/コピーできるし、音楽も3分でいいとこ作る、みたいな風潮がありますよね? 僕はそういうのじゃないところにいかないと、自分は成長しないなと思ったんです。もちろん3分ですごい曲を作ることも大事だけど──WATUSI君は特に(笑)──僕はもうそこはいいかなと思ったんだよね。そこでジャケット写真を作ってくれた、今や世界を席巻するGALLERY DEPT.のジョシュ・トーマスにたどり着くわけです。ジョシュには協奏曲みたいなデモの段階から聴いてもらっていて……。

WATUSI:井出靖関連のアルバムのほとんどのジャケを見てきてるんだけど、これには笑った。とにかく笑った。こういう気持ちね!と。

井出靖:これまでだったら、世界的な著名な写真家を使って、すごくディープでスピリチュアルな写真になっちゃうんです。

WATUSI:なると思ったよ。いい意味でスノッブな、そういうものになるかと思ったけど、ああ、これか!と。

井出靖:僕もジャケットを初めてみたときに「これかー!」と、敵わなかった。109みたいなキラキラしたイメージに見えたんだけど、ちょうどブラック・マターリヴスが酷かったときで、そんな状況にこのジャケットが届いたわけなんです。ジョシュはジャケットを手掛けるのが初めてで、しかも今やニューヨークタイムスに特集されるくらいの人。そんな人にお願いするのに、ギャラはどうしようかな……と悩んでいたら「GIFT」と(笑)。

ジョシュ・トーマス周りはミュージシャンやアーティストが多くて、35〜36歳。そういう若い人たちと仕事できるのが光栄で。例えば僕のコネクションを全部集めるだけ集めるとベテランのアルバムになってしまう。そこは気をつけながら……そして今回は音がすごくいい、時間で諦めてよかった。(レコードの)20何分以降は自分の思い出だけですからって言われてよかった。

WATUSI:60分のものを作ってたらまた印象が違っただろうね。


■還暦祝いのライブができなくなったけど
■この作品はお祝いだね(WATUSI)

──WATUSIさんは、どのあたりからこの作品は(両方の意味で)ヤバいなと思い始めましたか?

WATUSI:一番面白かったのはジェフ・ミルズが一回無くなったときかな。あれはエポックだった。これは大変なことになるぞと。

井出靖:これはもうできないのかな、と思ったりね。

──ジェフ・ミルズのトラックありきで始まったわけですよね?

WATUSI:あれを活かすために、いろいろなバッキングを作ってきたからね。それがなくなるわけだから、これはいろいろとヤバいことになるなと(笑)。

井出靖:あれで作品のイメージが完全に変わっちゃったよね。あとはジェフのマルチが見つからなかったり……まあ、いろいろな原盤を探すことで、今回は過去を検証すると言う意味でも勉強になりましたよね。

──まだまだ使っていないトラックがあるわけですよね?

井出靖:山ほどあります。

WATUSI:300トラック近くは使ってないんじゃない? 死ぬほどあるね。

井出靖:今回のプロジェクトを「Universal Music Connection」と呼んでいますが、このプロジェクトでどんな作品を出していこうかなと検討してます。Pro Toolsは自分が見るものじゃなくて。エンジニアが見るものだと思ってたから……こんなにトラックがあるとは……。

WATUSI:勘太郎さんのときからハードディスクの整理してたもんね(笑)。「使いたい音はあの曲の、あそこに入っているはずだ」、「いや、そこにない」みたいなやり取りの応酬で。

井出靖:だから奇跡的にできましたよ、この作品は。すごく自信あるし。WATUSI君いなかったらできなかったけど。

WATUSI:二人とも“やってればできる”って世代だから。目標に向かってやるのは、時間がかかるものとかからないものがあるけど……やってりゃいいものができるってお互いが思ってたからね。暗黙の了解。

井出靖:WATUSI君とは長い付き合いだけど、そういう仲で今回できたのが良かった。でもまさかこんなに細かいとは思ってないかったでしょう(笑)。でもこんな狂ってるくらいじゃないと作れないよね?

WATUSI:自分の作品を作っている自分を見るようなもんですからね(笑)。個人的には今年還暦だったじゃん? だからお祝いにライブをとか、周りはみんな思ってたはずだよね。それができなくなったのは切ないから、僕からのせめてもの祝いだね。

井出靖:祝いがなかったらギャラが払えなくて銀行からの融資を大きくもらわないとダメだったかも(笑)。


『COSMIC SUITE』

2020年11月11日(水)リリース
Grand Gallery
LP ¥3,500+tax CD ¥2,500+tax (LPジャケット仕様)
LP:GRGALP-0003 CD:GRGA0109
LP SIDE A:Cosmic Suite Chapter 1
CD Track 1:Cosmic Suite
SIDE B : Cosmic Suite Chapter 2


※LP、CDとGALLERY DEPT.×COSMIC SUITEの記念Tシャツ(定価¥20,000-)とのセットを限定で販売中。
販売サイト https://grandgallerystore.com
A. ALL SET¥27,800-+tax
B. LP/ T-SHIRT SET ¥22,000-+tax
C. CD/ T-SHIRT SET ¥21,000-+tax
*全てのセットに記念ステッカーが付きます。

Written by Yasushi Ide
A.Guitar:Kazuma Fujimoto
E.Guitar:Akihiro
E.Guitar:Masayuki Ishii
Drums Sampling:Gota Yashiki
Drums:Hideo Yamaki
Drums:Yukari Uehara
Rhodes:Nobuyuki Nakajima
Keyboards:Mitsuhiro Toike
Percussion:Hiderow Nishioka
Steel Pan:Gen Tamura
Trumpet:icchie
Sax:Motoharu
Electronics:Jeff Mills
Rhythm Treatment:Tomoyuki Tanaka, Hiroshi Nakamura
Vocal Sampling:Osunlade
Dub Poet Sampling:Mutabaruka
Programming,Keyboards:Watusi
Recorded at Brickwall,STUDIO OPPE,studio valley,Kunitachi DUB Laboratory,Sound Dimension Studio,Sunshine Studio, Never Ever Recordings(Tokyo, JAPAN), NN’s L’ATELIER,Mixing Lab Studio,Spider Formation Studio
Mixed by Watusi at brickwall
Mastered by Calm (Music Conception) @Studio 9 o’clock
All Conducted by Yasushi Ide

Artwork Design by JOSUÉ THOMAS (GALLERY DEPT.)

◆Grand Gallery オフィシャルサイト
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