【ライヴレポート】HYDE、ツアー<ANTI WIRE>2日目「20年前から好きな音楽だけを作ろうって、それだけは変わってない」

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▲<HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE>12月27日(日)@ぴあアリーナMM

HYDEが12月27日(日)、ぴあアリーナMMにてソロ20周年の幕開けとなるツアー<HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE>の公演2日目を開催した。先ごろ公開した同ツアー初日のオフィシャルレポートに続いて、2020年最後のステージとなった同ツアー2日目のBARKSオリジナルレポートをお届けしたい。

◆HYDE 画像 / 動画

転んでもただでは起きない不屈の精神力。起き上がれたなら必ずや次への扉を開き、新たな領域を拓いて進んでゆく、先見の明と実行力。2020年、特に下半期のHYDEは目覚ましいスピード感で存分にその能力を発揮した。

コロナ禍でライヴやイベントの開催自粛が求められた2月からの数ヵ月間、その代替策として多くのアーティストやバンドが活路を見出し始めた無観客配信ライヴに対して、当初はあまり興味を抱けずにいたというHYDEだが、7月にテレビ朝日が企画したスペシャル配信ライヴ<LIVE EX BROADCAST SHOW>への出演をきっかけに、リモート技術を駆使することで配信視聴者とも画面を越えて繋がれることを体感。その手応えのもとに9月にはZEPP HANEDA (TOKYO)にて有観客&生配信ライヴ<HYDE LIVE 2020 Jekyll & Hyde>を5日間にわたって開催し、大成功を収めたことは記憶にも新しいだろう。

<Jekyll & Hyde>の成功はHYDE本人や彼のファンはもとより、音楽およびライヴ制作に関わる大勢の人々に福音をもたらした。行政の定める感染拡大予防のガイドラインを遵守し、さらに徹底した感染予防対策を行なうこと、それを来場者をはじめ、ライヴに関わる全員にあまねく入念に告知することでライヴというかけがえのない現場を取り戻すことができると証明してみせたのだ。


▲<HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE>12月27日(日)@ぴあアリーナMM

そうしてHYDEは次なる一歩を踏み出した。まもなく迎える自身のソロ活動20周年というアニバーサリーイヤーの幕開けとして開催されるアコースティックツアー<HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE>がそれだ。待望の地方公演を含んだ全国7都市11公演を2020年の年末から2021年にかけて、年をまたいで行なわれる同ツアーは会場もホールおよびアリーナと前回の<Jekyll & Hyde>からさらにスケールアップ。当然ながらよりいっそう徹底的な感染予防対策が敷かれるなか、12月26日、神奈川・ぴあアリーナMMにてツアーは初日を迎え、好スタートを切ったことは先日公開のオフィシャルレポートに記された通りだ。

ぴあアリーナMM2日目となった12月27日は17時06分、すなわち16時66分、HYDEが好む“666”の数字が並ぶと同時に開演した。紗幕が落ち、荒廃した近未来都市が描かれたバックドロップが露になるや、場内の温度がグンと上昇する。アリーナ、スタンドともに座席ありの仕様かつ観客は1席おき、さらに発声禁止と着席での観覧が義務づけられているため、立ち上がったり、歓声を上げることはできないが、代わりに<Jekyll & Hyde>のときと同様、タンバリンや太鼓、ラッパなど持ち込みが許された楽器やハンドクラップによってHYDEのパフォーマンスを支えるオーディエンス。

ちなみにタンバリンはミニミニサイズのものがツアーグッズとしてラインナップ(なお、グッズ購入は人と人との接触機会を減らすためにすべて事前予約制となっている)、なかなかに粋だ。制限を単なる“できないこと”と捉えるのではなく、新しい楽しみ方を発見する糸口に替える面白さ、そういった姿勢を率先してHYDEが示してくれるから、ファンも全力で応えられるのだろう。何より生身で対面できた喜びが場の空気をどこまでも熱くしているのは間違いない。バンドメンバーによるコーラスも声を出せない観客の想いをカバーしてくれているようで、会場には早くも一体感が満ち満ちる。


▲<HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE>12月26日(土)@ぴあアリーナMM

「ようこそ、<ANTI WIRE>へ! 今年の溜まりに溜まった恨みつらみは全部、吐き出していってもらおう。全部出しちゃって! よし、さっそくリリースされたばかりの曲をここだけのアレンジで!」──HYDE

HYDEがそう告げて、披露されたのは12月25日に配信リリースされた新曲「DEFEAT」だ。オリジナルに宿る激しさのなかの妖艶さにフォーカスして大胆にブーストをかけたジャジーなアレンジが耳に新鮮。まるでフリーセッションのように奔放自在なテンポ感、歌とアンサンブルの駆け引きもスリリングで、気づけば体が左右にスウィングしている。客席を見回せば、着席したままでも皆、思い思いに音楽を受け取り、歓喜を全身で表現している。歓声に遮られないぶん、音の機微の一つひとつがクリアに伝わってくるのもこのスタイルならではの利点かもしれない。

「口さえ閉じてればあとは何やってもいいんだよ、ここは」と言い、おどけつつ激しくヘッドバングしてみせてくれたこの日のHYDEの言葉にも励まされる。全体の出力を極力抑えて、流麗なピアノの音色と野獣を思わせる獰猛なHYDEのヴォーカルとのコントラストを際立たせ、オリジナルとは別種のただならなさを匂い立たせる「LET IT OUT」もまた白眉。衣装のフードを深くかぶって歌っているため、ステージ両サイドに設えられたスクリーンに映し出されるHYDEは真っ赤なその口元が強調され、まるで“LET IT OUT=吐き出せ”のメッセージを生身で象徴しているかのようにも思えた。


▲<HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE>12月26日(土)@ぴあアリーナMM

まだ始まって間もないツアーゆえ詳細を明かすのは控えたいが、神とも鬼とも呼びたい強力なリアレンジが、20周年を踏まえて彼のキャリアを隈なく網羅した、これまた強力なセットリストにラインナップされた1曲1曲に施されているため、イントロが鳴るたびに目をみはり、演奏が進むたびにその意外性や解釈の斬新さに驚かされ、終始、心を揺さぶられ続けてしまった。アコースティックツアーと銘打ってはいるものの、これはもう“アコースティック”の枠組みを遥かに超えているのではないか。まさかこの曲がこれほどにもメロウなグルーヴをたたえたシティポップに変貌するとは、だの、あのエモーショナルなアグレッシヴチューンがこんなにも美麗なバラードになるのか、だの、楽曲たちが見せる思いもよらぬ表情にとにかくワクワクドキドキさせられるばかりなのだ。それでいて奇を衒ったような違和感はまったくない。驚かされながらも、むしろどの曲もストンストンと気持ちいいくらいに腑に落ちる。ダイナミックなリアレンジを施してなお揺るがないメロディの強さ、核となる世界観の揺るぎなさがどの曲にも備わっているからこそ叶った試みだと言えるだろう。もちろんHYDEとともにリアレンジを手掛けたバンドメンバーの並外れたセンスと腕があってこそだとも思う。<Jekyll & Hyde>の“Acoustic Day”のときも大きな衝撃と感動を得たが、いっそうブラッシュアップされた今回は、それを凌駕して圧倒的だ。

そしてつくづくと思い知らされるのはHYDEのヴォーカリストとして、フロントマンとしてのポテンシャルの果てしなさ。フロアタムを叩きながら低く呪術的な歌声を響かせたかと思えば、ウィスパーヴォイスで切々とした情緒を紡ぎ上げ、また、1曲のなかでファルセットから野太いグロウルまで自在に操っては聴き手を翻弄する。最初は椅子代わりのドラム缶に腰掛けて歌っていたものの、曲が進むにつれ立ち上がってステージを闊歩、ストンプを踏んで「鳴らせ! 鳴らせ!」とオーディエンスを煽ったり、床に転がっては足をバタバタとさせながら声を張り上げたりと、その一挙手一投足にオーディエンスを惹きつける。腰に腿にと打ちつけて軽快にリズムを刻むタンバリン捌きも堂に入ったものだ。今回のツアーのテーマのひとつに“騒げるアコースティック”を掲げているHYDEだが、たしかに全身全霊でパフォーマンスする彼を目で追っていれば、動けないことも忘れ、場内を一緒になって駆け回っていると感じられる。オーディエンス全員の想いを背負って、一人ひとりをもれなく魅了するHYDEの勇姿にどれだけ力をもらったことだろう。


▲<HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE>12月26日(土)@ぴあアリーナMM

「よく“ブレないこと”をいいことみたいに言うけど、別の見方をすると頭が固いとも捉えられると思っていて。僕は正直言ってブレまくり。その時代時代で自分のやりたいことが変わってくるし、20年前にカッコいいと思ってたことも今思うとカッコ悪いと思ったりもする。良くも悪くもブレまくって、ここまで来たわけだけど。でも20年前から好きな音楽だけを作ろうって、それだけは変わってないんだよね」──HYDE

ソロとして歩んできた20年を振り返り、HYDEはそう客席に語った。ソロ1作目のアルバム『ROENTGEN』のときから最新アルバム『ANTI』に至るまで、その姿勢は変わっていないこと。それができるのはファンとスタッフが理解してくれているおかげだと思っていること。「今後も許される限り、好きなことをやらせてもらおうと思います」と宣言していたずらっぽく笑う。このツアーでは楽器に加え、叫べない代わりとして事前に声を吹き込んだヴォイスレコーダーの持ち込みも許可されており、タイミングよく再生された歓声に「いいね、かわいいね」と相好を崩すなど、通常のライヴ以上にファンとのコミュニケーションを積極的に取ろうとしている様子もとても印象的だった。

ツアーを安全に開催するため、本人含めた関係者全員にPCR検査を定期的に行なっていることも告げ、また、「なかなかライヴをやるのが難しいような状況ですけど、安全に自分なりのスタイルでライヴをやるとしたらと考えてこの形になりました。家にいて誰かが助けてくれるのであれば、それでいいのかもしれないけど、なかなか助けてもらえないので。だったら、なんとか仕事を安全にできる環境を作らないといけないと思ってます」と自身の決意を明かす場面も。

コロナ禍第3波という状況のなか周囲の反対など、今日ここに来るのも大変だったと思うとオーディエンスを労い、「もちろん安心できる環境があるから、みんなに来てもらってるわけでね。みんなの協力で、きっとこのツアーが成功すると僕は信じています」と言葉を続けると客席からは大きな賛同の拍手が起こった。「家に帰るまでがHYDEのライヴだからね、ちゃんと無事に帰ってください」と念を押し、「でも、みんなに会えてよかった。ほんと、これがなかったらもう“はぁ〜〜〜〜〜”(←腑抜けたため息)って感じだもん。みんなに会えて、なんとか終わりよければ、みたいな気分が少し味わえました。本当にありがとう」と笑顔で感謝を口にしたHYDE。ラストの曲では潤んだ目元を拭う一瞬もあった。

「また会いましょう。みんな、それまで元気で、首洗って待ってろよ!」──HYDE

去り難そうに何度もキスを投げ、2020年最後となったステージをHYDEはゆっくりと降りていった。残念ながらおそらくコロナ禍の収束にはまだまだ時間がかかることだろう。だからと言って、すべての行動を諦めていい理由にはならない。自分が本当にやりたいことは何か、それをするためには何をどうすべきか。そのふたつをしっかりと見据え、守るべきことはしっかりと守り、絶対に人を危険に晒さない覚悟で臨めば、自ずと進むべき道が浮かび上がってくる。この日、鳴り渡った音楽、そこに生まれた感動とともに、HYDEはそうした道筋を教えてくれたようにも思う。そしてそれは来たる2021年を照らす希望にもなるのではないか。そうあってほしいと心から願う。

取材・文◎本間夕子
撮影◎田中和子/岡田貴之



■「DEFEAT」

2020年12月25日(金)配信開始
https://hyde.lnk.to/defeatPR

■<HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE>

【2020年】
▼神奈川
12月26日(土) ぴあアリーナMM
open17:30 / start19:06
12月27日(日) ぴあアリーナMM
open15:30 / start17:06
(問)ディスクガレージ 050-5533-088
【2021年】
▼愛知
1月09日(土) 名古屋国際会議場センチュリーホール
open17:45 / start19:06
1月10日(日) 名古屋国際会議場センチュリーホール
open15:45 / start17:06
(問)サンデーフォークプロモーション 052-320-9100
▼大阪
1月16日(土) 大阪城ホール
open17:30 / start19:06
1月17日(日) 大阪城ホール
open15:30 / start17:06
(問)キョードーインフォメーション 0570-200-888
▼宮城
1月24日(日) トークネットホール仙台
open17:45 / start19:06
(問)キョードー東北 022-217-7788
▼東京
1月30日(土) 東京国際フォーラム ホールA
open17:45 / start19:06
1月31日(日) 東京国際フォーラム ホールA
open15:45 / start17:06
(問)ディスクガレージ 050-5533-0888
▼福岡
2月07日(日) 福岡市民会館 大ホール
open17:45 / start19:06
(問)キョードー西日本 0570-09-2424
▼北海道
2月13日(土) 札幌文化芸術劇場 hitaru
open17:45 / start19:06
(問)マウントアライブ 011-623-5555
※開場 / 開演時間は予定です。変更となる場合があります。
※お住まいの地域からできるだけ近い会場へのご参加をお願い致します。


【チケット】※全席指定
▼ぴあアリーナMM / 大阪城ホール
S席 ¥14,190
A席 ¥9,350
▼名古屋センチュリーホール / トークネットホール仙台 / 東京国際フォーラムホールA / 福岡市民会館 / 札幌文化芸術劇場hitaru
SS席 ¥25,300
S席 ¥14,190
A席 ¥9,350
※未就学児童入場不可
※お客様同士の距離を保つため、販売席の隣の席を空けております。
お座りいただくことはできませんが、隣の席を手荷物置き場としてご利用いただけます。
※チケットを複数枚ご購入いただいた場合でも、お連れ様との座席の間に空席を挟みます。
※着席でのご観覧をお願いいたします。
・一般発売:2020年11月28日(土) 10:00

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