【ライブレポート】UNISON SQUARE GARDENの「Normal」

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2月から始まったUNISON SQUARE GARDENの<TOUR 2021「Normal」>の追加公演が、横浜・ぴあアリーナMMにて開催された。

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本公演は2019年リリースのシングル「Phantom Joke」のツアーという位置づけ、さらには4月から<Revival Tour "Spring Spring Spring">が始まる直前に差し込まれた追加公演という、かなり異色なライヴ。そこに「Normal」と銘打たれているところにユニゾンらしさを感じてニヤリとしてしまう。ごくシンプルな単語だが、「ニューノーマル」が叫ばれる今の時代において、「Normal」という言葉の持つ重さは変わった。それでも、UNISON SQUARE GARDENは、彼ら流の「Normal」を貫き、「当たり前のようにライヴツアーをやる」というロックバンドの矜持を掲げ続けるのだ。


開演予定時刻を少し過ぎた頃、イベンターによる注意事項のアナウンスを経て、暗転。恒例のイズミカワソラ「絵の具」をSEに登場する3人を、オーディエンスが温かな拍手で迎えた。そして、斎藤宏介(Vo,G)が一礼してギターを構えると、一斉に3人の音が解き放たれる。軽いセッションパートから入るアレンジで始まったのは「Phantom Joke」。初っぱなから容赦のない音圧と迫力で、ぴあアリーナMMに残っていた静謐なムードを一掃し、その広い空間を一気に制圧してしまった。畳みかけられる緻密な展開の中、“まだ世界は生きてる/君が泣いてたって生きてる”と強いメッセージを乗せたメロディがひときわ胸に刺さる。

続いて「オリオンをなぞる」が投下されると、強力なシングル曲の連打に会場の沸点はますます急上昇。以前ならば大歓声が湧き起こっていたに違いないと思うと少し残念だが、おのおのジャンプしたり、手を掲げたり、声が出せないことなど気にならないレベルの大盛り上がりだ。田淵智也(B)がさっそくステージ狭しと暴れ回り、鈴木貴雄(Dr)のビートも加熱。トドメに斎藤のギターソロが高らかに響けば、そこにはたしかにユニゾンの「Normal」があった。


2020年、配信でのユニゾンのライヴも十分楽ませてもらったけれど、生音の力はまったく別物であることを思い知らされる。配信ライヴのようにメンバーの手元を見ることはできないし、表情もはっきり見えるわけではない。しかし、最後列まで震わせる音圧、絡み合うバンドサウンドの生々しさはやっぱり格別だ。

そんなシングル曲の威力は、ユニゾンの側面のひとつに過ぎない。3曲目の「meet the world time」の力強いビートが会場を揺らすと、異色なタイミングのツアーだからこそのマニアックなセットリストが幕を開けることになった。この「meet the world time」を始め、「メッセンジャーフロム全世界」「コーヒーカップシンドローム」などは、なんと2010年リリースの2ndアルバム『JET CO.』からの選曲。近年の楽曲よりはストレートなロックの息吹を感じる初期の楽曲たちに、今のバンドのパワーが上乗せされ、さらに骨太に生まれ変わっていることに驚く。同時に、ひと癖もふた癖もあるアレンジとポップなメロディの共存という変わらぬ芯を実感。レアな楽曲の演奏は、オーディエンスはもちろん、メンバーにとってもかなり刺激的なはずだ。曲間の時間に、オフマイクで話す3人の楽しげな声が漏れ聞こえてきて、ステージ上のテンションの高まりが伝わってくる。


「BUSTER DICE MISERY」では、テンポダウンしてから間奏のソロ回し、そこから斎藤の吐息を合図に寸分違わず展開するアンサンブルのキメが圧巻。鈴木のど派手なドラミングも、田淵のもはや踊っているかのようなパフォーマンスも、果てしなく自由なようでいて隙はなく、一瞬でピタリと3人の呼吸を合わせてみせる。このカタルシスがユニゾン独自のグルーヴだ。ポップなリズムに会場全体が跳ねた「instant EGOIST」、疾走感溢れる「10% roll, 10% romance」など、次々と繰り広げられる光景があまりに濃密で、この空間だけ時間の流れが違うような気分になる。

「おはようございます……」と斎藤の囁き声で始まったMCタイムでは「昨日も今日も、とっても静かにみんな待っていてくれて、結構すごいことなんじゃないかなと思ってて。僕らのことを思ってルールを守ってくれてるのかなと思うと、じんわり来ることもあります。来ていただいてありがとうございます」と感謝を告げる。一方で、「今回は“友達に連れてこられた人”ごろしセットリストです(笑)」と悪戯心を見せて笑いを誘った。


その言葉どおり、後半戦も、シングル「10% roll, 10% romance」のカップリング曲「RUNNERS HIGH REPRISE」や、再び『JET CO.』から「キライ = キライ」など、予想の裏をかく曲目で沸かせていく。温かなオレンジ色のスポットライトの下で鳴らされた「ぼくたちのしっぱい」の優しいサウンドでひとときの安らぎを感じ、「流星のスコール」の伸びやかなメロディに酔いしれるも、落ち着いている暇など与えられない。

ドーン!と雷が落ちたような音とともにスタートしたのはドラムソロだ。立ち上がって上着を脱ぎ、華麗なタム回しを炸裂させる鈴木にオーディエンスが盛大な拍手を贈る。また一段と温度が上がる会場に、間髪入れず「パンデミックサドンデス」が始まると、田淵がドラム台に上がったり、それに応えて鈴木が再び立ち上がって叩いたりと、ステージ上も狂騒状態だ。「君の瞳に恋してない」では、上手の端まで出張した田淵が斎藤を呼び寄せ、並んでソロを弾くシーンも。そのあと二人してダッシュでマイクに戻るところまで息ぴったりだった。

本編ラストは、まさに季節を迎えた桜色の照明が華やかな「桜のあと(all quartets lead to the?)」から、軽やかなギターリフが誘う「mouth to mouse(sent you)」へ。多彩なセットリストで翻弄した末に「Phantom Joke」のカップリング曲できっちり締めて「あ、『Phantom Joke』のツアーだった」と思い出させる演出はさすが。アップテンポな曲調に乗せた“さよならが聞きたいんじゃなくて/また会えると言ってほしい”という歌詞が、まるでこの場所にいる全員の想いを代弁するように強く響き渡った。ポジティヴな余韻を残し、「UNISON SQUARE GARDENでした! またね!」という斎藤の言葉とともに、3人はステージをあとにした。

満場のハンドクラップに呼ばれて始まったアンコール冒頭、「やっぱりライブ楽しいです」とツアーを振り返りつつ、「すげえいいツアーだったなって感慨深く思う前に、もう来週には次のツアーが始まってるっていう。これこそUNISON SQUARE GARDENの“Normal”だなって、ひぃひぃ言ってますけど(笑)」と斎藤。しかも、控えているのは2012年のツアーを再現するという意欲的なツアーだ。そうして異色の挑戦を続けること、活動を止めないことは、別に肩肘張って主張することでもなく、あくまで彼らにとって「当たり前」なのだと、この夜のライヴを観て改めて実感した。


ユニゾンの音楽は、ライヴの場で常に生まれ変わり続け、3人のグルーヴは進化し続ける。それは古い曲だろうが、最新曲だろうが関係ない。最後に贈られた「さわれない歌」からは、「ディスタンス」があろうが関係ないというメッセージも感じた。一度見失いかけた「Normal」を、私たちに取り戻してくれたUNISON SQUARE GARDEN。彼らのまっすぐにひねくれた信念と優しさはどんな時代でも変わらないし、どんな制約をもってしても彼らのロックは止められないだろう。次は「再現」という形で過去の自分たちに挑む3人がどのような景色を描くのか、今から楽しみだ。

取材・文◎後藤寛子
写真◎Viola Kam (V'z Twinkle)

セットリスト

01.Phantom Joke
02.オリオンをなぞる
03.meet the world time
04.アトラクションがはじまる(they call it "NO.6")
05.メッセンジャーフロム全世界
06.コーヒーカップシンドローム
07.BUSTER DICE MISERY
08.instant EGOIST
09.10% roll, 10% romance
10.RUNNERS HIGH REPRISE
11.キライ = キライ
12.ぼくたちのしっぱい
13.流星のスコール
14.パンデミックスサドンデス
15.スロウカーヴは打てない(that made me crazy)
16.君の瞳に恋してない
17.桜のあと (all quartets lead to the?)
18.mouth to mouse (sent you)
en1.さわれない歌

リリース情報

NEW LIVE BD/DVD『UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2021「Normal」at KT Zepp Yokohama 2021.03.02』
2021年5月26日(水)発売

Blu-ray盤 [BD + 2 LIVE CD] TFXQ-78190〜78192 / ¥6,500 + 税
DVD盤 [DVD + 2 LIVE CD] TFBQ-18234〜18236 / ¥5,500 + 税

ライブ情報

<Revial Tour「Spring Spring Spring」>
2021年04月01日(木)開場17:30 / 開演18:30 フェスティバルホール[大阪]
2021年04月02日(金)開場17:30 / 開演18:30 フェスティバルホール[大阪]
2021年04月10日(土)開場17:15 / 開演18:00 まつもと市民芸術館[長野]
2021年04月12日(月)開場18:00 / 開演18:30 仙台GIGS[宮城]
2021年05月07日(金)開場17:45 / 開演18:30 日本特殊陶業市民会館[愛知]
2021年05月11日(火)開場17:45 / 開演18:30 Zepp Fukuoka[福岡]
2021年05月16日(日)開場16:45 / 開演17:30 高崎芸術劇場[群馬]
2021年05月19日(水)開場17:30 / 開演18:30 東京ガーデンシアター[東京]
2021年05月20日(木)開場17:30 / 開演18:30 東京ガーデンシアター[東京]
チケット料金
全席指定¥5,800(税込)
宮城公演のみ¥5,500(税込)※立ち位置指定スタンディング ※ドリンク代別途
福岡公演のみ¥5,500(税込)※全席指定 ※ドリンク代別途

※小学生以下入場不可/中学生以上チケット必要
※新型コロナウイルス感染拡大防止ガイドラインに基づき開催

◆UNISON SQUARE GARDEN オフィシャルサイト
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