【インタビュー】MR.BIG、18枚組ライブCDリリース「ライブをやるために生きていて、生きるためにライブをやっているんだ」

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MR.BIGが、18枚組のライブCDをリリースした。タイトルは『ロウ・ライク・スシ 2017ジャパン・ツアー・オフィシャル・ブートレグ・ボックス リヴァイヴ2017』。その名の通り、オリジナルMR.BIG最後のジャパン・ツアーとなった2017年9公演を全て収録したビッグボリュームのBOXセットとなる。このライブの翌年2月に亡くなったパット・トーピーのパーキンソン病はこの時点でかなり進行していたが、そんな重苦しさを微塵も感じさせないMR.BIGらしい明るいパフォーマンスは、コロナ禍でロック・シーン全体が沈滞してしまったいま深く心に刺さる。この2017年の日本ツアーの模様、込めた想い、そしてパットの思い出などをビリー・シーンに聞くインタビューをお伝えする。

■パットが後どのくらいプレイ出来るか分からなかったけれども
■全てのショウで彼と一緒にステージに立つことが出来て嬉しかった


――世界的なコロナ感染症の影響で音楽活動もできにくいと思いますが、現在、どのような活動をしていますか?

ビリー・シーン:ああ、とてもラッキーなことに、世界中の人々が彼らの曲をメールで送ってきて、僕にベースをプレイして欲しいという依頼をたくさん受けたんだ。だから、このパンデミックが始まってから既に140曲くらいでベースをプレイしたのさ。それらの中にはアルバムが3~4枚含まれているし、ミュージカルの曲やらその他シングルの作品にも山ほど参加しているので、お陰様で順調に活動しているよ。もちろん僕にとって最も大事なのは、ライブでプレイすることだけれども、ライブが出来ない場合、レコーディングはレコーディングでまた別種のチャレンジであり、また別のルールがあるので、それはそれでとても満足しているし、大いに楽しんでいる。自宅にスタジオがあるから、家の階段を下りればすぐに作業に取り掛かれるし、わざわざ空港に行く必要がないので快適だね。(笑)

――音楽面以外での影響はいかがですか? メンバーが元気にしていると日本のファンに伝えるメッセージをください。

ビリー・シーン:ポールもエリックも非常に元気にしていて、とても嬉しいよ。それに、先日マット・スターから電話があって話をしたけれど、彼も元気にやっているとのことだった。みんなとても健康だと思う。僕もずっと健康だったけれども、実は3週間ほど前に新型コロナに罹ったんだよ。体調がイマイチだったので、PCR検査を受けたら陽性だと言われ、10日間自宅隔離を行なうよう勧められたんだ。で、実際にそうしたけれども、匂いや味がちょっと分からなくなっただけで、熱や寒気などの他の症状は全くなかった。まあ、体の節々が少し痛くなったり疲れやすくなったりしたので、いつもよりも睡眠を多めに取るようにしたけれども、それ以外全く問題なかったな。だから、僕が人々に知ってもらいたいことは、もちろん、マスクをして、手を洗い、人との距離を保つといったルールは真剣に受け止めるべきだけれど、それでも万が一感染してしまっても、そんなに重症化しない可能性は大いにあるということだ。場合によっては重症化することもあるので、気を付けなければいけないけれども、統計的に言って、多くの人々が無症状や軽症で済むのさ。実のところ、僕はコロナに罹っていた間も、抱えていたプロジェクトが山ほどあったので、自宅でずっと仕事をしていたんだよ。僕の家の裏手には小さな森があるので、森に行き、鳥やリスに餌をやったり、鹿とか、アライグマやオポッサムなどの様々な動物を眺めたりして、隔離生活もそんなに悪くなかったな。それほど具合が悪くなかったから、お陰でたくさんの仕事をこなすことが出来たしね。もちろん、みんながみんな軽症で済むとは限らないけれども、僕の場合は、それで済んでしまったし、1度感染したからこの先コロナに罹って重症化する心配をしなくてもいいので、本当に良かったと思う。だから、友達やファンのみんなに言いたいことは、きちんとルールに従い、気を付けて行動をしていれば、殊更にコロナを恐れる必要はないのさ。というのも、さっきも言ったように万が一コロナになったとしても、軽症で済む場合の方がずっと多いからね。


――では3月24日にリリースされた『ロウ・ライク・スシ 2017ジャパン・ツアー・オフィシャル・ブートレグ・ボックス リヴァイヴ2017』について。そもそもこのジャパン・ツアーを開催しようとした理由から教えてください。

ビリー・シーン:僕らはとてもツアーをやりたかったけれども、当時パット・トーピーの状態が悪かったので、やるかやらないか、どっちかを選ばなきゃならなかった。何か責任がある仕事を抱えていると、朝早く起きて仕事をしなければならないけれども、時にはそうするのがその人にとっていい場合もあり、やり続けようという意欲を起こさせることになるよね。だから、パットともその件についてよく話し合ったんだよ。彼はパーキンソン病の診断を受けて非常につらい思いをしていたにもかかわらず、一緒にツアーをしていた間、頑張って起き上がり、気を引き締めてステージに上がり、ライブをやるという理由を得られたので、パットにとって外に出てプレイしたのは良かったと思う。それにもちろん、日本でツアーをしたことがあるバンドなら誰でも知っているけれど、日本でツアーをやるのは楽しくて仕方がないんだよ。というのも、ホテルや会場はどこも素晴らしくて、食べ物も驚くほど美味いし、日本のファンは世界最高なんでね。だから、最も快適で最高に楽しいツアーをやるなら、やはり日本しかないと思ったんだ。しかも、日本には友達が大勢いるし、愛情溢れる素晴らしいファンが山ほどいるので、パットもとても喜んでくれたから、ジャパン・ツアーを行なうことに決めたのさ。だけど、パットはドラムをプレイすることが出来なかったので、マット・スターを起用することにしたんだ。彼は実に良い仕事をしてくれたね。僕らはただ日本の友達のためにプレイしたかっただけで、パットが後どのくらいプレイ出来るか分からなかったけれども、これら全てのショウで彼と一緒にステージに立つことが出来たなんて、こんな素晴らしい機会を得ることが出来て、とても嬉しかったな。彼がいなくなって本当に寂しいよ。これらのCDがリリースされることを嬉しく思う。まあ、全てライブなので完璧な演奏とは言えないけれども(笑)、30年間を共に過ごした4人の仲間でライブをプレイすることが出来て、とにかくとても楽しかったな。実を言うと、僕らはこれらのショウがレコーディングされていることを知らなかったんだよ。面白いことに、みんなはバンドのメンバーなら、駐車場がどこにあるかとか、チケットの料金がいくらかとか、座席の配置がどうなっているかとか、何でも知っていると思っているけれども、実際のところ、僕らは自分達のショウのこと以外は何も知らないんだ。そんなわけで、レコーディングしているとは知らなかったので、それを知った時はかなり驚いたし、エキサイティングだと思った。だから、これらのライブ・レコーディングを纏め上げてリリースしてくれた日本のレーベルにはとても感謝しているよ。彼らはMR.BIGに本当によくしてくれるのさ。彼らはとても親切だし、これらのレコードを出してくれて、嬉しく思う。

――このツアーを振り返ってみて。オリジナルMR.BIG最後のジャパン・ツアーとなったわけですが、このツアーにかける意気込みはどんなものだったのでしょうか。

ビリー・シーン:さっきも言ったように日本でプレイするのは楽しいし、非常に快適なんだよ。例えば南米とか他の国をツアーする場合、毎回飛行機で移動しなければならないので、午前2時に寝て、朝の4時には起きなければならないんだ。前回の南米ツアーの際は、クルーが殆ど時間に間に合わなかったくらいだ。というのも、彼らは午前2時に片づけを終え、ショウの後すぐに空港に向かわなければならなかったんでね。だから、ホテルで休むことも出来ず、とても大変だったよ。その点、日本はもっとずっと楽なんだ。日本でプレイ出来ることだけでも嬉しかったけれども、僕らにとって非常に重要だったのは、今では日本に素晴らしい友達がいるということだった。バンドによってはそれらの人々のことをファンと呼ぶかもしれないけれども、僕としてはファンのことを友達と呼びたいんだよ。何故なら、日本で行なった多くのショウやイベントで何十回となく会っているので、殆どのファンを知っているからだ。それに彼らは手紙やメールをくれたり、僕らのことについて投稿してくれたりするので、多くのファンの名前も知っているしね。だから、みんなにまた会って、演奏する機会を得られたことは、とてもエキサイティングなことだったのさ。オーディエンスを見渡して、それこそMR.BIGのデビュー当初から知っている顔を見掛けたりすると、本当に嬉しかったな。



――久しぶりに来日して、日本の印象はどうでしたか?

ビリー・シーン:僕は日本にしょっちゅう行っていたので、あの時も久しぶりという感じではなかった。多分、今回が最も長く日本に行っていないんじゃないかな。だけど、通常はかなり頻繁に日本を訪れているよ。僕らが日本で演奏することのもうひとつの素晴らしい点は、東京や大阪だけでなく、日本中で演奏していることだ。多くのバンドは、東京や大阪で演奏したら帰ってしまうけど、僕らは仙台、札幌、鹿児島と日本中を回って、他の多くのバンドや欧米人が見ることの出来ない日本の地方を見ることが出来たのさ。それってとてもエキサイティングな経験だったよ。というのも、札幌の美味しい食べ物や美味いビールを堪能したり、気候が違う鹿児島や沖縄などの美しい場所を訪れたりすることが出来たんでね。それこそ、日本の最北から最南、そして東日本も西日本も見ることが出来たのさ。それって本当に素晴らしいことだよ。残念ながら、どの国でもそうなんだけれども、世界の他の国々は、日本について1つのイメージしか持っていないんだ。だけど、実際にはそれぞれの地方ごとに異なる文化があり、食べ物も違えば、言葉の訛りも違うのさ。それは何も日本に限ったことだけでなく、イタリア、フランス、アメリカ、オーストラリア、イギリスでも同じで、それぞれの地方によって違うんだ。だから、日本の北から南まで様々な場所の違いを見ることが出来て、本当にとてもワクワクしたよ。


――ジャパン・ツアー全公演を丸々CD18枚組という大盛なライブ盤としてリリースしようと思った動機は?こんなこと前代未聞ですよね。普通は代表的な公演やダイジェストでライブ盤を作るのですから。

ビリー・シーン:実は、これはレコード会社のアイディアだった。ショウを全てレコーディングしてあるので、ボックス・セットにしてリリースしたいと彼らが言ったんだよ。さっきも言ったように、僕らはレコーディングしていたことを知らなかったので、「ワーッ、そいつはスゴイ。いいアイディアだ」と思ったのさ。僕らはこのアイディアに、そしてこのボックス・セットを作るために彼らが大変な努力をしてくれたことに感謝しているよ。というのも、親愛なる友人達と共に過ごした素晴らしい時間の記念碑となるからね。僕らのためにこのようなことをしてくれた深民さんや日本のレコード会社に改めてお礼を伝えたいな。確かに、CD18枚組のボックス・セットを出すというのはかなり冒険的だよね(笑)。世界中の人達から、このボックス・セットを手に入れたいという書き込みがあったのさ。僕も持っていないし、日本以外にどこで買えるのか分からないけれども、オーストラリア、ドイツ、イギリス、イタリア、台湾、フィリピン、タイ、韓国など、世界中の人々から入手したいというメッセージが届いていることを知って、とても嬉しく思っている。だから、十分な数の人が手に入れられることを願っているし、出来ればダウンロードも出来るようにして欲しいな。

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