【インタビュー】WSTが仕掛ける本気の勝負「常識は非常識」

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■365日の曲があればいいんじゃない?

──曲作りは、どんなふうに進めていますか。

Micro:今のところ、歌詞はほとんどシュウちゃんが書いていて、「親孝行」(3月リリース)も僕が書いたのは1,2行くらい。最初はとにかくすごい量の詞があって、「これは全部入らないよ」と。

Shu Doso:歌詞の書き方の、基本がわからないので(笑)。

Micro:音楽をまったく聴いていないかのごとく、ダーッと書いてくる(笑)。それをぎゅっと濃縮していって、歌ってみて、僕は語尾のちょっとした微調整をするだけ。とにかく鮮度が大事というか、「Offshore 〜Cafe Latte Song〜」(1月リリース)の、“当たり前に過ぎてゆく時間/当たり前にいてくれたから”とか、コロナになって、「当たり前なんてなかったね」ってみんなが口々に言っていることだから、「これはすぐにパッケージにしないと」と。とにかく思ったことをすぐに真空パック、という感じです。



▲第1弾楽曲「Offshore 〜Cafe Latte Song〜」

Shu Doso:僕は飲食店もやっているんですけど、去年はお店を閉める人が多かったんです。でもコロナが流行して気づいたのは、飲食や物資を供給できるような、「インフラになるマーケットは残るんだな」ということで、うちのお店はずっと開けていた。そこで文句を言ってくる人もいたんですけど、僕が思うのは…これは半分きれいごとになっちゃうんですけど、「仕事は義務だ」と言う人もいますけど、僕が大人になって、自分が生きがいとして感じられることは、人に必要とされることなので、仕事以外ないんですよね。そこに誇りを持っている人は、極端な話、これで死んでも本望だと思ってる。だから周りのお店がみんな閉まっている中で、食料を供給していくことに対して誇りがあったんですけど、文句を言ってる人たちの言葉を聞いてみると、結局メディアに流されていたり、又聞きした言葉をうのみにしている。じゃなくて、情報を一回自分の腹に落として、「じゃあコロナって何なんだ? 今はどうなっていて、これからどうなるんだ?」と。そこで自分の結論が出れば、100人いたら100人の行動が違っていいはずなんですよ。それでもやっぱり、99人は同じ動きをしてしまう、そんなことにすごくもやもやしていていた時期でした。だから、「メディアには流されてほしくない。きちんと自分の腹に落として自分の言葉で伝えてほしい。行きたいところがあれば行っていい。話したい人がいれば話したらいい」という思いを、そのまま書いたのが「Offshore 〜Cafe Latte Song〜」なんです。メロディはゆったりしてるんですけど、歌詞にはけっこう深い思いがあって書いてるんですよね。

──オフショアというワードは、サーフィン用語で沖へ吹く風ということでもあり、ビジネス用語で海外市場という意味もありますよね。ダブルミーニングになっている。

Micro:うれしい。なかなかそこまで読み解いてくれる人はいないので。

──その、1月リリースの「Offshore 〜Cafe Latte Song〜」を皮切りに、2月に「WHY」、3月に「親孝行」、そして4月に「温かなRoutine」と、今後1年間で12曲をリリースしていく予定なんですね。面白いアイディアですけど、これはどっちが言い出したんですか。

Shu Doso:それはもう、二人で。



▲第2弾楽曲「WHY」

Micro:もともとは、「1年で365曲作ろう」だったんですよ。今の時代にヒットソングが生まれない理由を、海の行き帰りに考えていて、細分化されてしまったメディア危機の部分や、ストリーミングになってああだこうだとか、そういう話をした時に、シュウちゃんが「売らないけど広めたいんだ」と言い始めた。「経済的な面で収益を上げたいから、音楽をやりたいわけじゃない。多くの人に届けるために、フリーでもいいと思ってる」と。それを聞いて「おいおい、それをされると俺がメシ喰えないよ」と(笑)。でもそこで思いついたのが、「365日の曲があればいいんじゃない?」ということで、毎日何か行事があるし、花言葉もあるし、日めくりカレンダーみたいに1月1日から12月31日までの曲があれば、山下達郎さんの「クリスマス・イブ」にも、レミオロメンの「3月9日」にも対抗できる(笑)。「そうすれば、毎日かかる曲ができるんじゃない?」というのが最初の発想だったんですよね。

──それはちょっと、ミュージシャンからは出て来ない発想かもしれない。

Micro:そう、音楽家にはない発想ですよね。そういう発想に僕もトバされて、「じゃあ、まずは1か月に1曲作ってみよう」と。

Shu Doso:僕がエンタメというものを客観的に見ると、たとえば金融とか、どこのマーケットとも変わらないと思うんですよ。「フリーでたくさんの人に聴いてもらいたい」という発想も、そこには必ずEXIT(※投資資金の回収)があって、普通はどうしても「お金」という流動性の高いものに変わっちゃうんですけど、これからの経済動向を考えた上で、お金ではないもので返してくれる人がきっとたくさんいる。そういった意味での豊かさが、何倍にもなって帰ってくる。そういうEXITのイメージはあるんですよね。生きていると、毎日の時間軸の中でみんな忙しいし、それぞれにやることがあるけど、それを言い訳にしていたら次のステージには行けない。短期的なことだけを追い求めるんじゃなくて、中長期的なビジョンを持って、今はとにかく自分たちのやりたいことをたくさんの人に伝えたい。そこで本物を作っていれば、長いスパンを考えれば、必ず返ってくるというふうに思ってます。



▲第3弾楽曲「親孝行」

──新曲「温かなRoutine」の「Routine」は「日課」「決まりごと」とか、必ずしもいい意味で使われない言葉ですよね。それを「温かなRoutine」という言葉で表現した、この歌詞ではどんなことが言いたかったんですか。

Shu Doso:僕は、人間はみんな光っているものだと思ってます。毎日学校に行ったり、スポーツしたり、会社に行ったり、誰もがみんな光ってるんですよ。それなのに、「あの人は光ってるけど、自分は違う」とか、そういうふうに思ってしまって、日々を楽しめていない人がたくさんいて、「それは違うよ」と言いたかったんですね。だから、朝起きて寝るまでの1日を、もう一度文章に落としてみて、その文章通りに自分が生活してみたらどれだけ楽しめるか?ということを、書いてみようと。特別なことをやったり、誰かと会ったりするから楽しめるんじゃなくて、自分が毎日見てる景色や、毎日ご飯を食べれること、寝れることや、当たり前にやっていることが全部幸せに感じられたら、もっとみんなが豊かになって輝くんじゃないかな?と。お金を持ってる/持ってないとかじゃなくて、人として何が大切か?というと、毎日一生懸命、朝起きて、満員電車で通勤して、働いて、家に帰って、次の日の朝のことを考えて早く寝る。そんな人たちに支えられてるんですよね、世の中は。これはそんな人たちの、希望の歌でしかないです。

Micro:「温かなRoutine」は、たぶん世界一「?」が多い曲だと思うんですよ。二十何個もあって、ギネスにも本当に登録しようと思ってるんですけど(笑)。「朝目覚めたら何をする?」「出かけ間際に何を思う?」「今朝はどんな空模様?」とか、全部質問になってる。歌って、普通はメッセージを出そうとするものですけど、この曲には実はメッセージはないというか、歌詞の文字を追うだけで気づけちゃう。「今日の服はどんな気分?」と歌われて、「そっか、着る服で気分が変わるよな」とか、気づくための歌なんですよね。

Shu Doso:1年365日あったら、毎日空模様も、家を出ていくシチュエーションも違うから、毎日当てはまるんですよね。小さな幸せを人生の中で見つけていく、という歌だと思います。



▲第4弾楽曲「温かな Routine」

──今後のリリースが楽しみですけど、ライブもぜひ見たいですね。

Shu Doso:いつでもやりたいです。ただ、歌う歌がないんで(笑)。もっと溜まらないと。

Micro:4曲じゃ、ツアー回れない(笑)。でもね、この人がまた、大きなことを言い始めてるんですよ。「来年、武道館でフリーライブをやろう」とか…。

──おおー。それはすごい。

Micro:やっぱり、音楽業界の人の発想じゃない(笑)。なんでそういうことができると思うの?って思うけど、ちゃんと答えがあるんですよ。

Shu Doso:必ず返ってきますからね。自分の財産というか、力になって。

Micro:とにかく、「でっかく戦うんだよ」と。今の音楽業界の発想は、「コロナだから、まずは小さいところから」という発想になっちゃうんですけど、やっぱり実業家でもあるアーティストは、ビジョンがでかいですね。でもWSTはそういう発想で、大きな会場でやりたいし、海外も狙ってます。「Offshore 〜Cafe Latte Song〜」や「WHY」は、オールイングリッシュで戦っていける楽曲だと思うので。ドメスティック戦と世界戦の違いを、このコロナで僕らははっきりわかったんですよ。Def Techはちょうど和洋折衷案でやってきて、そこに価値があったんですけど、日本がここまでナショナリスティックになってくると、日本向けにはフルに日本語で歌ってあげないといけない。英語のサビに逃げちゃうと、伝わらなくなるので、がっつり日本語は日本語で、そして世界向けには英語で。

Shu Doso:本気で勝負するのであれば、「常識は非常識」だし、本当の意味で突き抜けないといけない。10年かけてやるものを、1年でやれるとしたら、何が必要なんだ?と逆算していくと、こういう話になっていくんですね。

Micro:シュウちゃんに、「Def TechのMicroからさらに一皮むけるためには、経営者の目線を持ったアーティストにならなきゃダメだ」と言われて、数字の部分も含めて、全部の業務をなるべく自分でやるようになったんですよ。WSTは、楽曲のアップロードも含めて、ここまで全部自分たちでやってきているので、逆に今までマネージャーにやってもらっていたことのありがたみがわかるんですよね。40にしてそのことに気づけたので、シュウちゃんには本当に感謝は尽きないです。

Shu Doso:僕が言いたいのは、誰もが生まれた時から特別な存在で、育ててくれた人がいて、自分は必要とされてないと思ったりしても、必ず必要とされているということ。だからもっと命を大事にして、時間を大事にして、限界を決めないで、自信を持って生きてほしいと思います。

取材・文◎宮本英夫

リリース情報

「Offshore 〜Cafe Latte Song〜」
2021年1月15日(金)配信リリース

「WHY」
2021年2月12日(金)配信リリース

「親孝行」
2021年3月19日(金)配信リリース

「温かな Routine」
2021年4月23日(金)配信リリース

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