【インタビュー】ザ・ブラック・キーズ、パットが語るカバーアルバム「魅力はコラボによる即興アート」

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■トランス状態にさせられる
■本当に瞑想的な音楽なんだ

──『デルタ・クリーム』は自らのルーツに敬意を表した作品ですが、ブルースの何がそこまで魅力に思えたのでしょうか?

パトリック:俺はブルースに関してはすごく選り好みするほうで、好きじゃないブルースもたくさんある。好きなブルースとはどういうものかというと、冒頭でも話したように“どこか別の場所に運んでくれるようなもの”なんだ。それはどんなスタイルの音楽でもね。何かを感じさせてくれて、ここではないどこかにいるような気分になれる音楽。だから俺は、デュア・リパを聴くのが大好きでね。ミシシッピ・ヒル・カントリー・ブルースの曲とは全然違う場所なんだけど、彼女の曲もどこか違う場所に連れていってくれる。

──分かります。

パトリック:ミシシッピ・ヒル・カントリーは、スピリチュアルで瞑想的な音楽だから、聴いているとこの音楽が生まれた土地にいったような気分になれるんだよ。

──ええ、『デルタ・クリーム』を聴いて気づいたのは、“これらブルース楽曲が、瞑想的で癒しのような効果を持っている”ということで。そういった側面を伝えてくれるアルバムに仕上がっていると思います。

パトリック:ありがとう。ちょっとトランス状態にさせられるっていうか、本当に瞑想的な音楽なんだよ。

▲The Black Keys

──『デルタ・クリーム』というアルバムタイトルの意図と、ジャケット写真との関係について教えてください。

パトリック:アルバムリリースすることを決めた時は、まだ名前がなくてね。その時に「ウィリアム・エグルストン(メンフィス出身フォトグラファー)の写真を見てみよう」ってダンが言ったんだ。俺たちは彼の写真が大好きで、この写真を見つけて2人ともすごく気に入ったんだ。結果、アルバムカバーにして、ここに書いてある『デルタ・クリーム』をそのままタイトルにしたというわけ。このアルバムに完璧にマッチすると思ったんだよね。この写真が撮影された場所が、アルバム収録曲としてカバーしたアーティストたちが住んでいた場所だからね。

──なるほど。写真は昔のファストフード店でしょうか?

パトリック:アイスクリームとかホットドックを売ってた店だと思うよ。車で行って、車内で食べる形式の店だね。

──先ほど「去年秋にアルバムの発表を決めた」と言っていましたが、リリースを5月にした理由は、ツアーができそうになるまで待ったからですか?

パトリック:いや。今年秋に数本ライブをやる予定だけど、ツアーはしない。このアルバムを今リリースすることにした理由は、俺たちがツアーすることにはならないって分かってたからで。アルバムにはライブの感触があるから、コンサート業界の人たちやライヴが恋しい人達にとって、コロナ禍を乗り切るための助けになるかもしれないって思ったんだよ。

──コロナ禍でいろいろと考える時間があったかと思いますが、今後、音楽業界はどんな風に変わっていくと思いますか?

パトリック:多くのアーティストたちが楽曲を自主リリースし始めると思う。それに、ミュージシャンやアーティストがストリーミングだけで収益を得ることが、すごく大変だということが以前よりも明らかになってるよね。それに関しては真剣に声を上げる必要があると思ってる。今後、レーベル、アーティスト、SpotifyやApple Musicといったストリーミング会社が、フェアな契約を結べるようになって欲しいよ。現状だと、何百万人もの月間リスナーがいるアーティストにだけ、フェアな収益構造になってるから。たとえば、5万人ぐらいの月間リスナーを持つアーティストは熱心なファンを抱えてるのに、全く稼げてない。だから、ストリーム毎に収益が入るような構造に変えないといけないよね。バンドキャンプがそれを始めたから、今後もっとそうなってくれるといいよね。

──では最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。

パトリック:日本でザ・ブラック・キーズがプレイしたのは一度だけ、それも17年前なんだ。でも俺は、その間に妻のミシェル(・ブランチ)のツアーで日本に行って、数公演やっている。俺は本当に日本が大好きで、だから日本に戻ってザ・ブラック・キーズのショウをやりたいと思っている。本当は2015年に行くはずだったんだけど、俺が肩を壊して行けなくなってね。ミシェルは来年アルバムを出す予定だし、俺たちもアルバムを出せたらいいなと思ってるから、来年にはどちらかで日本に行くつもりだよ! 楽しみにしてる。

取材・文◎鈴木美穂 (May 4th, 2021 収録)
撮影◎Joshua Black Wilkins



■カバーアルバム『デルタ・クリーム』

2021年5⽉26⽇(水) 日本盤リリース
WPCR-18426 2,420円(税込)
※日本盤(初回生産分)のみエクスクルーシヴ・ステッカーシート封入
ダウンロード/ストリーミング:https://Japan.lnk.to/TBK_DKPu
▼収録曲
01. Crawling Kingsnake / クロウリング・キングスネイク
02. Louise / ルイーズ
03. Poor Boy a Long Way From Home / プア・ボーイ・ア・ロング・ウェイ・フロム・ホーム
04. Stay All Night / ステイ・オール・ナイト
05. Going Down South / ゴーイング・ダウン・サウス
06. Coal Black Mattie / コール・ブラック・マティ
07. Do the Romp / ドゥ・ザ・ロンプ
08. Sad Days, Lonely Nights / サッド・デイズ、ロンリー・ナイツ
09. Walk with Me / ウォーク・ウィズ・ミー
10. Mellow Peaches / メロウ・ピーチズ
11. Come on and Go with Me / カム・オン・アンド・ゴー・ウィズ・ミー



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