【対談】Psycho le Cému × Waive、同期バンドの歯に衣着せぬ本音「今日は発破を掛けに来た」

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■最近僕、正直なところ
■Psycho le Cémuに全く興味なくてね

──Waiveのライブに刺激を受け、表現者としての在り方を自らに問い直したということですか?

DAISHI:うん。言うてもWaiveもPsycho le Cémuも同じ頃に関西から出てきたバンドで、そんなWaiveに“これはすごいな”と思わされましたからね。

杉本:でも、僕は今の話を聞いてて、”意味分からん”としか思わないですよね。

DAISHI&seek:ははははは!

杉本:だって、2000年にWaiveが始まった時に僕らを観て「これは勝たれへんわ。Psycho le Cémuは武器を使おう」と思ってそうしてきたのに、20年経った今、今度は「裸一貫で勝負しよう」って。

DAISHI:いやいや(笑)、気持ちはな。武器も使いながらですよ。

杉本:最近僕、正直なところPsycho le Cémuに全く興味なくてね。僕からしたら、“もっと武器鍛えや!”と思っちゃうんです。これはseekにも伝えたんですけど、ライブにも足を運ばなくなったし、配信ライブのURLも毎回くれるけど、正直観てないんですよ(笑)。“なに良くなってんねん?”みたいな感じでしかなく。“もっとPsycho le Cémuの唯一無二のものを探してよ”という気持ちがあるんですよ。時が流れていく中で、Psycho le Cémuの二番煎じみたいなものっていっぱいあると思うんです。それだけシーンを牽引してきたすごいバンドだと思うから、そこがブレたら、何か分からへんねんけど?というのが僕にはある。“ミュージシャンとしてやりたい”とかは大事なことかもしれないし、だからこそ“武器だけじゃない”というのもたしかにあると思う。でもそれを一朝一夕でやって、例えばDAISHIが田澤くんより歌が上手くなるとか、たぶんこの世にそんなことないでしょ(笑)?

DAISHI:あはは! ま、そうや。

杉本:絶対そう。だから、今、DAISHIは筋トレ(2020年8月、フィットネス大会『メンズアスリートモデル ノービス +40』に出場)やってるけど、筋トレもそうじゃないですか? 蓄積でしかない。今日来た奴がいきなりムキムキになったりしない。僕らがいきなりコスプレして、剣持って“いえーい!”とかやったとしたら、たぶん1回目はオモロイですよ? でも絶対、Psycho le Cémuの熟練されたあの感じとは全く違うものになる。イロモノとしてしか楽しんでくれないだろうし、積み重ねてきたものには勝てないので。やっぱり僕は、“ここで勝負する”と決めたフィールドの最強であれよ、と正直思うんです。だからこの間、seekとかMUCCのYUKKE(B)とかと飲んだ時に「<MUD FRIENDS>をまたやりたい」という話が出たんですけど、みんな仲良いから分からんでもないけど、“俺はこうやって飲んでるだけでええわ”と思ったんですよ。だって、“そのマインドだったら、やる意味ないもん、お前らと”って思っちゃう。勝ち負けとかじゃないはずなんですよ、個と個と個であって。時を経て、観に来てる人らも角が取れて、いろんなエンタメを受け入れられるようになって、“3バンドとも全部いいね“と言ってもらえるイベントにしたかったはずで。それがズレていって、個と個が混ざる部分が増えれば増えるほど……こう言ったらなんだけど、正直、歌とかは僕らのほうが上手いに決まってるんですもん(笑)。でも、どの声が好き、どの曲が好き、どのルックスが好きっていうのは、たぶん受け取る人によって全部違っていて、みんな全部いいんですよ。ただ、“上手い”という尺度は、テストの点数みたいに絶対的なものだから、勝ち負けですよ。これは僕自身がソロワークでも歌ってきたから思うことだけど、“田澤くんより上手くなろう”と思ったって、なれるわけないねんもん(笑)。

seek:まぁ、そうですね。

DAISHI:いやホンマ、そう思うよ。

杉本:無駄、そこは。絶対もったいない時間ですって。


▲杉本善徳 (G / Waive)

──Psycho le Cémuがキープしている異物感って、ものすごく稀有で貴重だと思います。

seek:異物感をキープしているからこそ、“異物が異物じゃなくなってくる”感覚っていうのもやっぱりあって。

田澤:あぁ~、なるほど。

杉本:それ、めちゃわかる。

seek:その話を最近、善徳さんとすごくするんですよ。

──異物感がデフォルトになっていく、という感じですか?

seek:そうやし、僕らで言ったら、一度止まっていた活動が再始動して、一時期は再始動したこと自体がひとつの喜びになってたバンドで、それを続けることも理由のひとつになってくる。俺は今、“Psycho le Cémuはこれからどうなっていくか?”を考える局面にあると思うんです。Psycho le Cémuって休止以前の活動が6年だったんですよね。それで今、復活して6年経ってる。やっぱり今がその時期なんだと思うんですよ。

杉本:なるほどね。

seek:“Psycho le Cémuってこれからどうなっていくの? 前は壊れたよね? 今回はどうしていく?”という節目だと思ってるから、正直、バンド内でもそういう話はするし。時を同じくして善徳さんからそういう意見……さっきみたいな否定的な感じじゃなくて(笑)、“Psycho le Cémuって、もっとこうあるべきだと思うで?”みたいな意見を唐突にLINEしてくれたりとか。

杉本:だって、ずっとやってたら勝手に上手くなるやないですか?

seek:うん、続けてればね。

杉本:それよりもやっぱり、楽器に触れてない、歌ってない、みんなで会ってない時に、できることを考えて足すのがPsycho le Cémuの良さだと僕は思うから。“もっとそこをしいや! 筋トレばっかりしてへんと”と思ってましたね(笑)。

DAISHI:筋トレばっかりしてたのは、僕です(笑)。

杉本:いや、それをしながら考えてもいいねんけど。絶対にもっとやることがあるって!

DAISHI:(溜息交じりで)まあなぁ……(一同笑)。

seek:ちゃんと受け止めてもうた! 真正面に善徳さんの言葉を(笑)。

DAISHI:俺は昔から善徳くんが言うことはちゃんと受けとめるからな。

田澤:完全に受け止めたな(笑)。

杉本:もったいないんですよ。だって、Psycho le Cémuは日本一のバンドのひとつですよ? 僕が知ってる中では、少なくともこのジャンルで日本一のバンドだから。“なんで他のことやろうとしてんの?”って思う、マジで。

DAISHI&seek:嬉しいですね。

杉本:那須川天心がどれだけ無敵状態でも、“キック続けぇや”と僕は思う派なので。もちろん、ボクシングに挑戦したいのも分かるんですけど、“別にキック捨てなくて良くない?”と思っちゃうんですよね。そこがどうしても分からんな。


DAISHI:そうねぇ。うちのAYAくんとかも、まさにそこに陥ってる感じもするしなぁ。ステージで全く動かなくなったもん。

田澤:ええっ、そうなん!? じゃあ今、あの人は何してるの?

DAISHI:ちゃんとギターを弾こうとしてる(一同笑)。

田澤:あはは! それはオモロないな。

DAISHI:オモロないやろ(笑)? 善徳くんがPsycho le Cémuを「面白くない」って言う原因のひとつにそういうのがあるのかもな。Waiveが芝居やってもオモロないように、AYAくんが真面目にギター弾いてもな。

田澤:マイクを口紅だらけにするのがあの人やんか? いきなり「ヴォーッ!」って叫んでマイク押し下げたり。

DAISHI:そうやねん。それが一時期から変わって。

seek:AYAくんはAYAくんなりに考えてるんですよね。20代の2〜3年間の必殺技としてあったものが、30〜40代になった今、その方法を自分自身が背負いきれなくなってきていることも感じてるみたいだし。

田澤:そうか……。

seek:AYAくんなりに新しい武器を探して辿り着いたのが今の形なんですけど、“それって本来のあなたの武器じゃないでしょ?”っていう。AYAくも不器用やから、遠回りしちゃうしね。そのことに善徳さんは、いち早く気付いていたんですよね。

DAISHI:バンドって生き物やからさ。当時、ああいうスタイルでギターをナメてるAYAくんを見て、俺は“世界で一番ギターを弾かないギタリストや”と思ってたの。そこに関しては世界1位をつけれてあげられたのよ。それやのに、ギターをこんなに上のほうで構えて、弾きやすさを考える人になっちゃって。

田澤:逆にオモロいな~、それ(笑)。

DAISHI:実は俺、真ん中に立って歌うのが好きなボーカルやのに、AYAくんが動かなくなったぶん、俺とseekがステージ上をすごく動くパフォーマンスをするようになって(笑)。ないぶんを補填しようとして、バンドのステージングが変わってきてるんだよね。

杉本:そういうのって本当に難しくて。格闘技でたとえてばかりだけど、AYAくんは今まで“こういうキャラクターで、これをやるならAYAくんです”という、いわゆるプロレスをやってきたんだと。それをずっと続けることによって、最近で言ったら武藤敬司さんみたいに、またチャンピオンになれるかもしれないわけですよ。だから、それを続けるのも正解。一方で、“俺、もう歳やわ。引退して若いのを育てよう”ってトレーナー側になっていくとか、あるいはキャラクターを変えて“負けるけれども、応援されるやり方で戦おう”とか、選択肢は無数にある。だから、AYAくんが今、選んでることが間違ってると言う気はないんですよ。選ぶことも変わることも大事、変わらないを選ぶことも大事。だから、それは構わないんだけど、“本当に正しいか?”ということをロジカルに考えているのかが分からない。なんとなく、今までやってたことがしんどくなったから別のことをやってるんじゃないか?というふうに僕には見えていて、好みのやり方ではない。

seek:はいはいはい。

DAISHI:それ当たりやと思う。そのまんまやと思うのよ。

seek:Psycho le CémuがWaiveと違うところは、続けることを選んでるところで。だから俺は、もっと長いスパンで考えている部分もあるんです。“ここからまだ10年間バンドをやりたい”と思ってるから、“10年あるんやったら、もっといろいろチャレンジしたらええんちゃう?”と。ただ、善徳さんが言う「その10年の使い方をロジカルに考えているのか?」ってことに対しては、いろいろ思うこともあるんです。だけど、それがPsycho le Cémuらしさになるかは分からんけど、今なにかひとつ武器を探しとるんやったら、それは探してみればいいんちゃう?っていう気持ちなんです。

DAISHI:今日はこんな深い話になると思ってなかったけども……原因としては、僕の薬物事件で、求心力というか僕はそういう力をなくしてしまったんです、このバンドに対して。十字架を背負ってるんで。

田澤:その話……いけるの? そもそも載る(笑)?

seek:えらい深い話になったな。もう対談始まってから50分過ぎたけど、大丈夫? この話あと10分で終わるの(一同爆笑)?

DAISHI:ただね、そこはもう、申し訳ないですけど僕がまとめきれなくなってしまった。

杉本:メンバーを? ファンを?

DAISHI:メンバー……メンバーさんを。

seek:メンバーさん(笑)。

──メンバーに遠慮するところもあると?

DAISHI:遠慮の塊みたいな時期もありましたよ、もちろん。今はフラットに振る舞っているつもりでも、やっぱりパワーバランスは全然違いますし、あの事件以来。単純に、さっき善徳くんがズバッと言ったぐらいのこと、僕も思いますけど。

──思っても、メンバーに面と向かって指摘することに躊躇するんでしょうか?

DAISHI:ふわ~っと優しく言います。「前みたいなステージングぅ?みたいなぁ~?」とか、かわいく(笑)。

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