【インタビュー】WOMCADOLE、ノベル・コンセプトアルバム第二弾にバンドの現在「欲望みたいなものが表れている」

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WOMCADOLEが7月7日、ノベル・コンセプトアルバム『旅鴉の鳴き声』をリリースする。2021年1月にリリースされた『共鳴howRING』はノベル・コンセプトアルバム第一弾であり、ウイルスがもたらした未曾有の事態に対して沸き起こった感情やメッセージ、そして新体制として動き出した情熱を高純度で閉じ込めた充実作だった。そこから約半年というスパンで早くも完成したのが、ノベル・コンセプトアルバム第二弾『旅鴉の鳴き声』となる。

◆WOMCADOLE 画像 / 動画

“変化、薄明、旅鴉”というコンセプトが設けられた『旅鴉の鳴き声』が物語るのは、現代の空気感であり、WOMCADOLE自身の今だ。これまでとは少し異なった表情を見せつつ、WOMCADOLEのノスタルジーまでもが封じ込められた作品だと言い換えることもできる。“旅鴉”とは旅人であるライブバンド=WOMCADOLEであり、“鳴き声”はそのサウンド。各プレイヤーの変わらぬ本質と新たなチャレンジが浮き彫りとなった『旅鴉の鳴き声』について、マツムラユウスケ[G, Cho]、黒野滉大[B]、安田吉希[Dr, Cho]の3人に(取材当日は樋口侑希[Vo, G]が体調不良のため欠席)、サウンド&プレイ面について深く語ってもらったインタビューをお届けしたい。

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■今まで無意識にやっていたことが
■実は自分が選んでたってことに気付けた

──前作『共鳴howRING』のBARKS取材で、「今はとにかくバンドが楽しくてしょうがない」というお話をされていましたが、今作『旅鴉の鳴き声』制作も、そのテンションのままなだれ込んだ感じだったんでしょうか。

安田:そうですね。曲を作るのも楽しかったし、樋口から送られてくる曲も、そんなに力み過ぎていない感じがあって。「ペングイン」のデモが届いたときに、インディーズの1〜2枚目みたいな若さとストレートさを持っていると感じたんです。衝動的というか、経験がないからこそのパワーというか。もちろん今は経験がないなんてことはないんやけど(笑)、小手先でこねくり回さずに、言いたいことをパっと出した歌詞とかメロディになっているという感触があって、その感覚を持って制作が進んでいったと思います。

▲マツムラユウスケ (G, Cho)

──「ペングイン」はおっしゃる通りの曲ですよね。ストレートであり、それだけではない側面もあるという。マツムラさんは今回の制作をどのように捉えてますか?

マツムラ:前作『共鳴howRING』とはまた全然違うテイストになっているし、僕自身、前とは違う引き出しを開けたフレーズも多くて。前回は話し合ってそれぞれのフレーズを作り込んだり、メンバー間のいろいろな絡みがあったうえで作り上げていったんです。だけど今回は、“歌メロがいいから、リードギターはこういうのを弾けば十分やな”とか、自分としても弾きたいフレーズが見えやすかったですね。前作以上に、ベードラ(バスドラム)を先に作ってもらった曲が多かったかな。

安田:うん。樋口のデモに俺がドラムを打ち込んで、すぐに(マツムラ)ユウスケに送って。

──メロディとリズムの骨格を先に決めて、そこからイメージを膨らませるような?

マツムラ:そうですね。それを聴いて、“じゃあこういう感じにしよう”とか決めていくなかで、曲として必要なことも、自分が弾きたいことも、しっかりと見えたかな。ギターソロは決め打ちしないんでけど、納得のいくテイクが録れましたね。何テイクも録ったので結構しんどいときもあったんですけど、会話として成立しているような、言いたいことが言えてるソロになったと思います。

──黒野さんはベーシストとしていかがでした?

黒野:今回の制作で、自分の好きなフレーズがどんなものなのかが、よりわかった気がしているんですよ。今まで無意識にやっていたことが、“実はそれって、自分が好きで選んでたんやな”っていうことに気付けたというか。

──というと?

黒野:僕は1〜2弦がめっちゃ嫌いで、これまで3〜4弦だけでフレーズを完結させようとしてたんですよ。これまで1弦を使ったのって、インディーズ時代の「アオキハルヘ」ぐらいなんで。

安田:それも樋口が「こういう感じで弾いて」って言ったからやんな?

黒野:そうそう。「こういうのがいい」って言われて、“ちっ、1弦か……”って(笑)。

──1〜2弦を使わずに、高音域は3〜4弦のハイフレットの範囲内で補っていたということですよね。運指としては、指板上を横方向に移動するよりも縦方向のほうがラクなときもあると思いますが、なぜ、そんなに1〜2弦を嫌ってるんでしょう?

黒野:わかんないんですよ(笑)。なんか嫌で。だから1弦は最悪切れても大丈夫です。なんとかなる。変なこだわりですけどね。でも、そこが大事かなって自分で思ってます。

──3〜4弦の太い響きを活かしたいということですかね。高音域への動きも横方向のスライドを多用することでフレーズをグルーヴさせるような。

黒野:自分は“どっしりとしたシンプルなベースラインが好きなんかな”と思ってたんですけど、今回、“低いところでうねるようなフレーズが好きなんやな”っていうことにようやく気付いたんですよ。そこを意識的にフレーズを作りましたね。

▲黒野滉大 (B)

──それが黒野さんの個性のひとつですよね。『旅鴉の鳴き声』のコンセプトは“変化、薄明、旅鴉”。これは今の時代やバンド自身を表した言葉でもあると思うんですが、いつ頃出てきたキーワードですか?

安田:ある程度、曲が出揃ってからですね。『共鳴howRING』と同じく、『旅鴉の鳴き声』もノベル・コンセプトアルバムですけど、並べた収録曲を樋口が俯瞰して見て、このタイトルとコンセプトがついたっていう感じです。

──では、“変化、薄明、旅鴉”というコンセプトありきで制作されたわけではなかったんですね。実際に今回の収録曲ができ始めたのはいつ頃でした?

黒田:1曲目に収録された「mirror」は、『共鳴howRING』を作っていたときにはもうありましたね。その後に「ペングイン」とか、ユウスケが作った「夜間飛行」とか、安田が作った「紫陽花」が出てきて……「hey my friend」はそのちょっと前にはあったのかな、たしか『共鳴howRING』リリースの直後ぐらいに。

安田:結構早い段階であった曲やな。

黒田:「この曲を次のアルバムの最後の曲にしたい」って樋口から送られてきたデモが「hey my friend」なんですよ。そんなこと初めてやったよな?

安田:うん。樋口はいつも、自分で打ち込んだデータと歌詞を同時に送ってくれるんですけど、「これがノベル・コンセプトアルバムのエンディングの曲やから」って、そこまで具体的だったのは初めて。だから、エンディングナンバーっていうゴールが、先に決まってた感じでしたね。

──なるほど。では、前作制作中にすでにあったという「mirror」から訊いていきたいんですが、キーワードの“変化”を端的に、音楽的に物語っている楽曲でもありますね。打ち込みでトラップビートを入れていたり。

安田:曲に引っ張られて出てきたビートではありましたね。鏡に映ったもうひとりの自分というか、もうひとつの世界っぽい感じがあったので、打ち込みビートを当ててみたらハマって。途中に出てくるベルのような音もパラレルワールドっぽい感じをイメージしたんです。そうやってサウンドに変化が生まれてきたところはあったけど、“これもWOMCADOLE”みたいな意味合いがありますね。

──楽曲の世界をより深く伝えるために、バンドサウンド+αで打ち込みや電子音を使っているところがいいですよね。流行っているからとかなんとなく入れてみたというわけではなくて、しっかり表現したいものがあるという。

安田:メンバー全員こういう性格なんで、“流行ってるものを作るのはいやだな”みたいな(笑)。自分らの物差しでいいと思ったものは入れるし、それがたまたま今っぽい打ち込みになったくらいの認識で、単純に曲が求めていたから入れたっていう。

──マツムラさんが作曲した「夜間飛行」は、これまでのWOMCADOLEのアップテンポチューンとは一味違う空気感がありつつ、転調も多い。

マツムラ:もともと転調するのが好きなんですよ。WOMCADOLEの曲って同じキーで進行することが多いんです。もちろん樋口はそういう曲を作ってくれたらいいし、そこにひとつのフックとして転調みたいなものがあればいいなって。

──楽曲全体に感傷的な雰囲気があって、使っているコード自体もオシャレですよね。

マツムラ:WOMCADOLEではあまり使っていないようなセブンスとかメジャーセブンスとか、テンション系のコードを使ってるんですけど、そこは無意識でしたね。今言われて、確かにこれまでなかったかもなって気付きました。

安田:俺と黒野は“メジャーセブンスってなに?”となってるで(笑)。

黒野:“何言ってんやろな”と思いながら聞いてた(笑)。

安田:たぶん樋口も一緒やで。(笑)。“なんかオシャレやん”ぐらいしかわからん。

マツムラ:そうそう。“響きがオシャレやん”っていうコードやねん。

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