【ライブレポート】崎山つばさ、“らしさ”溢れたBillboard Live Tour「今日この時のことを忘れないで」

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崎山つばさが、7月20日(火)に東京・Billboard Live TOKYOでワンマンライブ<Billboard Live 〜latte〜>を開催した。

本公演に先駆けて、5月14日にBillboard Live YOKOHAMA、7月12日にBillboard Live OSAKAでもライブを行っていた崎山。このBillboard Live Tourラストを締めくくるBillboard Live TOKYOでの夜公演をレポートする。

◆ライブ画像

崎山といえば、2.5次元舞台をはじめ、映画やドラマでも活躍する人気俳優。2017年にはアーティストデビューを果たし、2018年にはZepp Divercity Tokyo、2019年には新木場スタジオコーストとZepp Namba(OSAKA)でワンマンライブを成功させてきた。

そんな崎山が今回選んだBillboard Liveは、食事をとりながらゆったりと音楽を楽しむことができる大人な会場。間近に崎山の歌声やパフォーマンスを感じ、贅沢なひとときを過ごすことができるライブ会場だ。


そんな落ち着いた雰囲気のなか2階の客席から登場した崎山は、静かにステージに上がりスタンドマイクの前に立つ。普段は会場を激しく煽り、テンションの高いライブパフォーマンスを魅せる崎山とは打って変わった大人な演出に、客席の期待も静かに高まっていく。

今回のライブは普段と異なり、ギター、ピアノ、パーカッションによるアコースティック編成。横浜でのライブの際は慣れない編成に緊張すると話していた崎山だが、公演を重ねアコースティック編成にも慣れたのか、緊張する様子は微塵も見受けられない。落ち着いた様子でオープニングナンバーの「月花夜」を歌い上げると、会場は一気に崎山の世界に染められていく。月明かりを求めるように手を虚空へ伸ばす姿は、募る恋心を歌った切ない歌詞とリンクするようで、早速“俳優・崎山つばさ”の片鱗を感じさせた。


そのままカウントで「上弦の月」へ。緩急のついた楽器隊に呼応するかのように徐々に激しさを増す歌声は、情熱さすら感じさせるナンバーだ。アコースティックアレンジだからこそ、その切実な歌声が一層胸に響く。決して観客を煽ることはないが、客席のファンも崎山の熱を肌で感じているのか、深く頷きながら耳を傾ける。普段の取材では物静かで紳士的な印象を受ける崎山の、一体どこにこれほどまでの情熱が潜んでいるのか。のっけから崎山の七変化に圧倒され、彼の世界観にどんどん引き込まれていく。

続くMCでは、先ほどまでの激しさから一転して笑顔を交えながらファンに優しく語りかけた。「崎山つばさらしさを感じてもらえると思う」のひと言からは、普段と異なる趣向のライブでも観客を楽しませるというエンターテイナーとしての覚悟が感じられ、このライブに対する期待が高まる一方だ。

「幻想人」では客席から手拍子が沸き起こり、崎山の熱はさらに広く会場に波及していく。「月花夜」や「上弦の月」もそうだが、崎山の楽曲はタイトルや歌詞に「月」が多用されていることが特徴のひとつ。「幻想人」は崎山が作詞を手掛けているが、この楽曲も例に漏れず印象的なサビで「月」という言葉が使われている。さまざまなイメージを持ち合わせる「月」だが、静謐さのなかに激しさを持ち合わせる本ライブの崎山にふさわしい言葉と言えるだろう。


ここからは、自身によるギター演奏で「story」「螺旋」「叫べ」を歌唱していく。新型コロナウィルスによる自粛期間から始めたというギターは、そうは思えないほどの堂々たる演奏ぶり。横浜公演ではギター演奏後に「手汗がやばい」と笑っていた崎山だが、公演を重ねるなかで練熟し、手慣れた雰囲気を醸す。役者として忙しい日々を過ごす傍ら、ギターの練習にも励んだのだろう。決して表には出さないが、崎山の努力は計り知れないものがある。

「story」は崎山の父親が作曲を、崎山本人が作詞を手掛けた親子合作曲。父親による楽曲提供はアルバムリリースのたびに恒例となっており、昼公演で両親が楽屋に来た際は、「どうも、storyです」と挨拶していたと、親子仲の良さを感じさせる微笑ましいエピソードも。明るさのなかにも力強さが宿った歌唱は、崎山の父親への思いを感じさせられるようだ。

「螺旋」は、ギター演奏ver.は初披露となる特別な一曲。崎山の口から「螺旋」という言葉が出た瞬間には客席から小さく驚きの声が漏れ、ファン待望の歌唱だったことも見受けられた。ちなみに、「螺旋」のタイトルを出す際は「何だと思いますか?」と客席を焦らしつつ「まだ言わない」と茶目っ気たっぷりな崎山。横浜公演では、サプライズのギター演奏をうっかり先に言ってしまっていたが、こうしたギャップも彼が多くのファンに愛される所以なのだろう。

「叫べ」も、崎山自身が作詞を手掛けた本人にとって思い入れの強い楽曲。“ダークで苦々しい”をテーマに作詞したという歌詞は、役者としての道を希求する崎山自身の魂の“叫び”が重なるようで、より胸に迫る一曲だ。


続くMCでは、2枚目のシングルだった「螺旋」を振り返り、当時は「まさか2枚目が出してもらえるとは思っていなかった」と懐かしむ崎山。時間が経った今、当時の思いを別の形で聞いてもらえることができるのは嬉しく、「いつまで経っても色あせない曲」だと語った。

そんな崎山が音楽の楽しさを教えてくれたと語るバンドメンバーは、崎山を優しく見守る第二の父親のよう。演奏中もアイコンタクトを取りながら笑顔を交わす息の合ったパフォーマンスが実現したのは、バンドメンバーの実力と温かさはもちろん、誰からも好かれる崎山の誠実さ、真面目さゆえなのだろう。バンドメンバーは崎山が出演している舞台も観劇しているようで、思い出話に花を咲かせていた。

ハンドマイクに持ち直し、ここからは「キンモクセイ」「春始笑」「Salvia」と、花にまつわる楽曲をじっくりと聴かせていく。歌唱というよりはまるでセリフを発しているかのような、優しく語りかけるかのような表現力はまさしく“俳優・崎山つばさ”の真骨頂。いずれも故郷への郷愁や過去へのノスタルジーを歌った楽曲たちを、時に優しく、時に情熱的に歌い上げた。

なかでも、「春始笑」は崎山自身が作詞を担当した一曲。MCでは、コロナ禍で悔しい思いや悲しい思いもしたけれど、それでも季節は巡り花が咲いていくことが希望に感じ、そんな思いのもと書いた曲であると心情を吐露。同時に、今日この時のことを忘れないで胸にしまってほしい、と語りかけていた。


ライブ最後の曲となった「Salvia」では、曲の後半でステージ後ろに吊るされた巨大カーテンが開き、六本木の美しい夜景がファンの瞳を輝かせた。サルビアの紅を思われる情熱的な歌唱に、観客は最後まで真剣に聴き入っていた。

歌唱後、「ありがとう」の言葉でライブを締めくくりステージを後にすると、客席からは盛大な拍手が鳴り響く。まだまだ崎山のパフォーマンスを観ていたい、そんな思いが詰まった拍手に導かれるように再び登場した崎山は、窓から見える夜景を指し、「この景色をお前らに見せたかった」とひと言。さらに「Salvia」でカーテンが開いた演出について、どのタイミングでカーテンを開くか悩んだと語りつつ、ファンの反応を見て「作戦成功」と嬉しそうに目を細めていた。

アンコールでは「ふるさと」を歌唱。これは横浜公演でもアンコールに選んだ楽曲で、崎山のふるさとへの思い、両親への思いが詰まった特別な一曲なのだろう。改めて、崎山のライブからは両親への感謝や自身のルーツへの思いが透けて見え、歌に込めたその思いが彼の真摯な生き方の裏付けとなっていることを感じさせる。


何度も感謝を述べながらステージを後にした崎山だが、今回はツアーの最後ということもあってかアンコール後も客席の拍手は鳴り止まない。拍手に応えるように再び登場した崎山は、客席を隅々まで見渡しながら最後まで何度も感謝の気持ちを述べ、ライブを締め括った。

声を出しての声援は叶わなかったが、「拍手だけで何を言ってるかわかる」と語っていた崎山は、本当にファン一人ひとりを大切に思い、さらにその思いがファンに伝わっているからこそ、今回のように一体感のある温かなライブを作り上げているのだろう。この温かさこそが冒頭で語った“崎山つばさらしさ”であり、崎山の魅力につながっているに違いない。

また、本ライブのタイトルになっているアルバム『latte』については、過去のインタビューで「苦いエスプレッソコーヒーにミルクを加えて甘くなるように、収録された楽曲には、苦々しい曲や甘くて柔らかい曲が混ざったラテのようなアルバムになっている」と話していた崎山。まさに、今回のライブでは“甘”から“苦”まで変幻自在の崎山の魅力を見せてくれた。

手拍子をしながら、頷きながら、それぞれが崎山のパフォーマンスに真剣に聴き入る観客は、まるで崎山と対話しているかのようでもあり、崎山もその真剣さに応えるように丁寧に言葉を選び紡いでいく。まさしくファンと呼応しながら一体となって作るライブの姿を見たような気がした。

本ツアーを経て、崎山とファンはより一層強い信頼関係で結ばれたのであろう。次なるライブではどんな景色を見せてくれるのか、早くも高まる期待のなか、本ライブは閉幕した。

取材・文◎鈴木幸

セットリスト

1.月花夜
2.上弦の月
3.幻想人
4.story
5.螺旋
6.BAND sesson7.叫べ
8.キンモクセイ
9.春始笑
10.Salvia
11.ふるさと

◆崎山つばさ オフィシャルサイト
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