【インタビュー】人間椅子、鈴木研一が語る『苦楽』と尿路結石「痛めつけないとダメなんですね」

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前作『新青年』から2年2か月振りのニューアルバムとなる『苦楽』は、人間椅子にとって通算22枚目となる新作だ。全世界が新型コロナウイルスに翻弄される直前の2020年2月に初のヨーロッパツアーをギリギリで敢行し終え、ライブ映画『映画 人間椅子 バンド生活三十年』の全国公開をはさみながらも、彼らは粛々と新作への構想を練っていたというわけだ。

◆鈴木研一 [人間椅子] 画像 / 動画

例によってBARKSでは鈴木研一にアプローチ、『苦楽』の詳細を聞き出すべく取材を始めたものの、鈴木研一はいきなり取材用レコーダーに食いつきを見せた。

   ◆   ◆   ◆

■和嶋君が「お、いいな」
■って言った時の快感たるやね

──では早速ですが、新作『苦楽』について…

鈴木研一:(ICレコーダーをガン見して)これ、小っちゃくていいな。僕はこれで曲を作るんですよ。

──これ?

鈴木研一:ギターを持って録音するんですけど、音が悪いんですよね。これオリンパスか…覚えとこ。

──これは取材用ですから、音楽専用のもっといいICレコーダーがありますよ。

鈴木研一:ああいうのは音はいいけど、操作が面倒くさかった。これ、楽でいいですね。


──ICレコーダーでさっとメモをとるということですか?

鈴木研一:そう。今回はアルバム用に600メモしたかな。

──600?それはすごい。聞き直すのも大変だ。

鈴木研一:すっごい大変なんですよ(笑)。だから聞き直して多少良かったものの番号をノートに書いておくんだけど、それを見ると今回は400いくつあたりにすごいいいリフができてたんですよね。

──その辺がキテた?

鈴木研一:ここがゾーンだったんだって分かる。その前にはやたら良くないリフが並んでて、まだその頃は本気じゃないんすね(笑)。そのうち段々脂がのってきて300…400くらいからのってきて、すごいいいリフが出てくる。で、その後がまたいまいちなんですよ(笑)。一瞬のほんとに逃しちゃいけないタイミングで曲を作る。

──600のメモから、最終的に何曲くらい出来上がるんですか?

鈴木研一:まずは50くらいまで絞って、そこからさらに20とかにする。でもその50に入ってるのは、メインにならなくてもイントロに使えそうとか後奏に使えそうとかってやつですね。

──ゾーンに入ったリフ群は、自分で作ったにもかかわらず「初めまして」みたいな感覚なんですか?

鈴木研一:そうなんですよ。頭がぼけてるのかもしれないんですけど、完全に忘れてるんですよね。それでハッとするくらいいいのがあって「これは使える」とか思う。

──神様からのプレゼントかな。

鈴木研一:降りてきている時なんですよね。それを◎にして「55、二重丸」みたいな「逃すな」印をつけといて。

──それを基にしたものは、楽曲として完成に至りますか?

鈴木研一:もう、何がなんでもそれを活かすために集中して肉付けしていくんです。これを無駄にしたくないという思いで。


──その作り方は昔から変わらない?

鈴木研一:そうですね。和嶋君とかと違って、音楽的に何かこういうものを作りたいからといって降りてくる訳じゃなくて、数でなんとかその域に近づこうという作り方なんですよね。すごい才能のある人に近付くために、才能の無い人が数で勝負するみたいな作り方。なんだろう…音楽のプロの人たちがやるのじゃないやり方(笑)。

──…と、プロが言ってますが(笑)。

鈴木研一:いやいや、ほんとにね、プレイも作曲もプロのレベルじゃない…ほんとにアマチュアレベルですよ。でも、ハードロック愛はまあ人並み以上にあるんで、それだけでバンドやってます。

──それ以外は何も必要ないですけどね。

鈴木研一:ああ、そうですね。

──というか、皆さん相当数打っているんじゃないかとも思いますが。

鈴木研一:そうかもしれないですね。みんなテレビとか雑誌では「空を見てたら…」みたいなカッコいいこと言ってるかも知れないけど(笑)。

──カッコいい発言の練習もしておいたほうがいいのかな(笑)。

鈴木研一:自分は、朝から晩まで部屋のソファでひたすらギター弾いてて、弾き始めて「ああ、もう手疲れたし、やりたくない」って思った時に降りてくる。そこで「全然出てこないよ、全然良くないのしか浮かばないよ」って諦めるとそれっきりで終わっちゃうんだけど、それを越えて「うーん、まだまだ」って眠いの我慢したり腹減ったの我慢したりして「これでもか、これでもか」ってやってると、何故か上の方からね(笑)。「ちょっとこんなに頑張ってるんなら少し、ほいっ」って降ろしてくれてるのかな。


──それがレコーディングされていくんですね。

鈴木研一:ある程度まとめて曲にして、スタジオで和嶋君に聴かせて、和嶋君が「お、いいな」って言った時の快感たるやね。なんだろ、お客さんがいいって言ったり、自分でいいのができたとかより、和嶋君が「いいのができた」って言ってくれるのが一番うれしいですよね(笑)。

──それこそ、バンドの大基本、理想形とも思います。

鈴木研一:曲作り期間は、相手の気持ちを考えずにむちゃくちゃ正直にズバズバ言いますよ。「このリフは良くないんじゃないの?」なんて。普段だったらね、和嶋君に「その○○○、全然カッコよくないよ」なんて絶対言わないけれど、曲に関してはお互いにすごくシビアに正直に言うから、それだけに「これ、いいんじゃない?」って言われたときは嬉しいんですよ。

──それが人間椅子の魅力の秘密か。

鈴木研一:で、さっきの話の続きだけど、そうやってリフだけひたすら作っていた時を経て、曲に肉付けしていくのを経て、和嶋君にいいねって言われた時期を経て1曲になって。で、さらに和嶋君が詞を書いてその曲に一番合うであろうという文字を付けて完成するんですけど、その時の感激もまたね…和嶋君の歌詞が、5点くらいの出来の曲を10点くらいにまで持って行ってくれるんですよ、和嶋君の詞の才能…そこがすごいところなんですよね。

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