【インタビュー】miwa、最新アルバム『Sparkle』への5年間で見えてきた景色

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たっぷりと瑞々しく乗った倍音の気持ちよさ、透き通るように抜けていくくっきりとしたmiwaの声質の美しさは、最新作『Sparkle』でも一点の曇りなく輝いている。まさにスパークルな心地よさを存分に堪能できる好作品の登場だ。

◆miwa 画像

誰ひとり例外なくコロナ禍という環境を強いられる中で、miwaはその歌声のごとく、芯の通った、そして清らかに笑顔のまま胸焦がすようなラブソングを歌いこんでいる。「Storyteller」や「神無-KANNA-」など、目を背けることのできない心の叫びを刻んだ作品もあるけれど、アルバム『Sparkle』を鮮やかに彩らせているのは、悲壮感のないmiwaの前向きなバイタリティと確実な一歩を踏み出す未来に向けた歩み方によるものだ。

前作アルバムから5年という年月の間に、miwaの目に映った景色はどのようなものだったのか。話を聞いた。

   ◆   ◆   ◆

■ひとつになって、自分らしく輝いていきたい
■祈りのような願いを込めて


──2018年に髪をばっさり切ってから、初のアルバムになりますね。ショートヘアmiwaの新作というわけで。

miwa:そうですね。あのとき結構バッサリ切ったので、びっくりされるのと同時に、それまでのmiwa像…みなさんが持たれているイメージと少し違うというか、新しいスタートを切った感じもあって、私的には切って良かったです。

──女子が髪を切っただけで大騒ぎするのは、男子の悪い癖でもありますが(笑)。

miwa:ベストアルバム(『miwa THE BEST』(2018))でそれまでの自分の作品がまとまったのもあって、そこからまた新しい自分を始めてもいいのかなという気もして、切るタイミングだったのかな。自分の中では変化したいなという思いがある反面、踏み出せずにもいたんです。ベストアルバムで「これが今までのmiwaです」というものが出せたので、ショートヘアでベストアルバムのツアーを回って、そこから「新しい自分が始まるよ」みたいな意味合いも持ってできたかなと思っています。

▲『Sparkle』初回生産限定盤A




──『Sparkle』には数年分の作品が詰まっていますが、コロナ禍の影響はどのように感じますか?

miwa:アルバムの一曲目に入れてアルバムタイトルにもなっている「Sparkle」は、コロナ禍の前に書いていた曲なんです。その当時はライブも意識していて「みんなでシンガロングできたらいいな」「みんなでひとつになって、大きな感動を生み出したり、自分らしくひとりひとりが輝けたらいいな」って、そんなイメージで作っていたんです。

──たしかにそういう輝きのある曲ですね。

miwa:そこから今、この曲をリリースするにあたって「こう届いてくれたらいいな」っていう私の中でのイメージが少し変わりました。今、ライブではみなさんが声を出して歌うことは難しいですし、ライブを通しての一体感というよりは、この先の未来でまだ出会ったことのない感動が待っているかもしれないし、同じコロナ禍の時代を生きている私たちがひとつになって、自分らしく輝いていきたいという祈りのような願いを込めて歌いたい…そういうふうに「Sparkle」が届いたらいいなって気持ちに変わったんです。この曲が持つ届き方、意味合いが自分のなかで整理できたんですよね。

▲<miwa concert tour 2022 "Sparkle">より

──コロナ禍にあり、同時に音楽の伝わり方も大きく変わるなか、アートとエンタメの両側面を持つミュージシャンは、自分自身を見つめる時代でもある気がするのですが。

miwa:そこはすごくおもしろいと思っています。私、今大学院にいて音楽神経科学を専攻しているんです。そこではまさにそういう議論があるんですね。「私たちはなぜライブに行くのか」みたいな。音楽ってどこでも聴けるし、ライブ映像も見られるし、VRとかもあるし、どこまで現実的、リアリティを求めるのかって議論もすごくあります。その中でも私たちはライブに行きたいという動機がある…ライブにしかないものってなんだろうってことも研究のテーマとしてあるんです。まさにそこと日々向き合っているんですよ。

──それは興味深い。

miwa:一方で、音楽/エンタメ/アートが身近なものになっている感覚もあって、誰でも表現者/アーティスト/発信者になれる時代が来ているので、たぶんこの先「職業にするぞ」という意識もなく、誰でも日常的に発信者/表現者になれるし、境目がどんどんなくなっているのかな。そんなことを感じつつ、そこで職業としてシンガーソングライターをやっている意味を考えたときに、私はライブのムーブメント/感動みたいなものにすごく興味があるので、そこをテーマにやっているんです。その場にいないと起きないことってあるよな…みたいなところを研究しています。

──ライブへの思いが強くなると、ほんと新型コロナウイルスって迷惑な存在ですね。

miwa:そうですね。色々な研究にとってコロナは壁になっていますし、進まない研究もたくさんありますね。

──そういったもどかしさは、アルバム制作に影響を与えませんか?

miwa:楽曲作りに関しては、一緒にスタジオに入って対面で制作する機会はぐっと減ったと思います。結構リモートで行なっていて、メールなどで音源や歌詞のやりとりをして、レコーディングの時しか会わないとか。リモートは便利ではあるけど、ちょっとした気付きなどメールのやりとりではこぼれ落ちている可能性はあるなって思います。できなくはないけれど、見逃してしまっている文字にならないものってあるんじゃないかな。
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