【ライブレポート】MIRAGEが帰ってきた

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遂に迎えたKISAKI率いる第三期MIRAGE。25周年を迎え、22年ぶりの復活。ここから新たな伝説が始まる。

◆ライブ写真

1997年に結成され、わずか3年という活動期間にも関わらず‘‘伝説のバンド‘‘として名を残したMIRAGE。2022年、結成25周年を迎える彼らは1月に第三期MIRAGEとして活動再開を発表し、待ち望まれたステージが<Carve of BIOGRAPH>と銘打って5月に大阪と東京で行われた。

東京公演は目黒鹿鳴館。鹿鳴館と言えば、コロナ禍でのライブハウス存続支援としてKISAKIが制作した『鹿鳴館伝説』が記憶に新しい。今、まさに伝説のバンドがまたロックの聖地、鹿鳴館のステージに降り立つ。


90年代から現在のヴィジュアル系シーンを牽引しているKISAKIが、自身のキャリアの中でも重要なバンドと語るMIRAGE。今回22年の時を経て 新メンバーに舜(G/覇叉羅~JILS)、YOMI(D/[zo:diaek])を迎えた第三期始動だ。


「GRAVE~古エノ眠リ~」から始まるステージは流石の貫録と神々しさに満ちていた。シルエットが映る幕がゆっくりと引かれると、そこには真っすぐに見つめるメンバーの姿があった。

復活に先立って発売された1stフルアルバム『BIOGRAPH』にも収録されている「…Air」が始まると空気が一瞬にして変わった。真っすぐと前を見つめながらAKIRA(Vo)は歌い、YOMIが力強く叩き、YAYOI(G)、舜、KISAKI(B)は互いに見つめあいながら奏でていく。


MIRAGEが帰ってきた──。

そうはっきりと感じる瞬間だった。結成から25周年、各々に一言では言い難い歴史がある。それはこの日集まったファンも同じだ。それぞれの時間を過ごし、共に迎えたこの一瞬。

待ちわびたこの瞬間を噛みしめるように一音一音奏でるYAYOIからは「待ってたよな?」と投げかけるような笑みがこぼれていた。今回加入となった舜からは、MIRAGEとして立てる喜びと心地よい緊張感が伝わる。会場のこれまでの期待は高揚感となり、押さえきれぬ感情を開放していくように続々と上がる拳でフロアーは埋め尽くされていった。

さぁ、想いを確かめ合ったら後は突き進むだけだ。「Wind Whisper」「ESCAPE」「流星」と次々と繰り出されるセットリストに興奮で息が止まりそうになる。舜とYAYOIの合わさる音色が真っすぐに会場を突き抜けていくと、フロアーからは次々と拳が沸いていく。


「久々に鹿鳴館に帰ってきました(AKIRA)」一時は解散の道を進んだMIRAGEが鹿鳴館でこう言ってくれるのをいったいどれほどの人が待っていただろうか。

そして美しいストリングスに引き込まれる「BURIAL」。メロディアスな楽曲もMIRAGEの魅力の一つである。

「──君が見たこの世界の夢を
いつの日か抱きしめて命をまた灯すよ──」


MIRAGEには様々にメンバーチェンジや死去があった。その歴史も全て、今のMIRAGEに繋がる大切な出来事である。

続く「Wheel of Fortune」ではYOMIの叩き上げる振動が、また始まっていく物語をさらに漕ぎ進めるように響き渡る。過去を振り返るだけでなく、第三期として新たに築き上げる決意を感じさせた。


新曲も交えながら披露されていく楽曲たちに会場内はグッと惹き込まれていた。今、自分たちは凄いものを見ている──そう確信させるステージが目の前にあった。

その興奮をさらに滾らせたのが「I.D」。会場は一気に荒々しく、ヘドバンで埋め尽くされる。「そんなもんか?」と言わんばかりに煽るAKIRAを筆頭に、メンバーもそれぞれ前に乗り出していった。KISAKIの奏でるベースは図太く狂気じみた気迫を感じさせる。彼のようにバンドの中で、いや、ライブ全体の中でこんなにも存在感を感じさせるベーシストは希少な存在であろう。久しくステージに立っていなかったKISAKIの音が、一気に放出されると共に感情も大きく投げ出され、会場全体が1つのエネルギーとして揺れ動く──あとは狂い倒すだけだ。

ここでなんと大阪、東京と2公演共サポートしてきたLeetspeak monstersが乱入し、会場はステージもろとも一気にカオスな状態へ。


気が付けばKISAKIのベースはAKIRAの手元へ移り、KISAKI自身マイクを握っては直接畳みかけ(鹿鳴館でこの光景が見れるとは、まさにKISAKIがバンドを始めるきっかけになったというX JAPAN YOSHIKIの煽りを彷彿させる)、乱入したmonster達は互いに腕を取り合い激しいヘドバンを繰り広げている。

フロアーは一心不乱に髪を振り乱す者、拳を振り上げる者でひしめきあっていた。もう誰にも止められない。いや、止めたくないのか? 何度も何度も、マイクや楽器を互いに奪うかのように繰り返される煽りに、観客たちはまだまだ!と言わんばかりに応戦する。これこそまさに「ライヴ」であると感じずにはいられない。

ラストに捧げられたのはバンドの代名詞でもある「百花繚乱」。「I.D」でとっくに振り切ってしまった会場は「百花繚乱」でさらに燃料を注がれたように乱れていく。危険な中毒性を帯びた曲に揺れる身体が心地よい。咲き乱れ、恍惚の表情で身をゆだねるフロアーがなんとも印象的であった。


「まさか、MIRAGEで目黒鹿鳴館に戻ってくるとは思ってもいませんでした(KISAKI)」

KISAKIは、先ほどまでの白熱したステージで完全燃焼し今にも倒れてしまうのではないかという姿になりながらも感慨深く話す。鹿鳴館店長PEPE氏をステージに招き、また戻ってくることを約束。ヴィジュアル系を、鹿鳴館を愛する彼らしい演出であった。最後の最後まで手を差し伸べるファンたちを彼は目に焼き付けるように見渡し、名残惜しそうに去ってステージは終幕した。


夏にはすでにリリースと東名阪のツアーが発表されている。当時のファンたち、そしてヴィジュアル系を愛してやまない者たち。見届けた者たちには今回のステージどのように映っただろうか。私たちの知っている伝説は、今も尚歩みを止めず時を刻んでいた。マイペースに活動するとKISAKIは言っていたが、この日はきっと第三期MIRAGEの序章に過ぎないのであろう。

文◎茉奈佳
写真◎ zoi
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