【速レポ】<JOIN ALIVE 2022>ACIDMAN、“最高の1日”を目指したバンドの挑戦

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してやられた。そして、心を揺さぶられた。いや、今年2022年、ライブ活動開始25周年およびメジャーデビュー20周年を迎えるACIDMANの術中にはまったと言うべきか。

◆ACIDMAN ライブ写真

ACIDMANの3人を手拍子で迎えた観客がその手拍子をぴたっと止め、固唾を呑むように3人が鳴らす第一音を待っている中、3人が奏でたのは、休符も聴かせるコードのギターリフ、グルーブを作るベース、そしてタイトなドラムのビートだった。<JOIN ALIVE>に5年ぶりに帰ってきたACIDMANが1曲目に選んだのは、大木伸夫(Vo,G)の囁きかけるような歌が胸に染みる「リピート」だ。

40分という持ち時間を有効に使うため、いきなりぐっと盛り上げるのかと思いきや、それとは違うちょっと意外な始まりには、どんな意図があるのだろう?

「戦いのない、大切な1分1秒をみんなで過ごして、最高の1日にしましょう。よろしく!」という大木による短い挨拶を挟んでから、バンドが繋げたのがメランコリックな「夜のために」、大木が軽やかに奏でるカッティングに佐藤雅俊(B)のスラップが絡むファンキーな「Rebirth」、絶妙なコード進行も含め、ネオアコ風なんて言ってみたい「赤橙」なのだから、この日のACIDMANがフェスのお約束と言える盛り上がりを作ろうとしていないことは明らかだった。




もちろん、盛り上がっていないわけじゃない。「Rebirth」と「赤橙」の2曲で浦山一悟(Dr)がバスドラのキックで鳴らす4つ打ちのリズムに観客が心地よさそうに身を任せ、踊る姿は、大木が言った「最高の1日」の中の一コマになり得たんじゃないかと思うのだが、どことなくいつもの彼ららしからぬ大人っぽい印象も。

「制約がある中でライブをやるのは心苦しい。でも、少しずつライブも戻ってきている。もう少しルールを守りつつ、未来を見据えながら、ともにがんばっていきましょう」

そんなふうに語った大木は11月26日と27日の2日間、バンドの地元、埼玉県にあるさいたまスーパーアリーナで主催フェス<ACIDMAN presents SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI” 2022>を5年ぶりに開催することと、そこにMr. Childrenをはじめ、大木曰く「すごい」バンドが出演することを伝えると、こう付け加えた。

「こうしてライブができるのは、ライブに来てくれるみんなのおかげです。制約はいろいろあるけど、たいしたことじゃない。明けない夜はない。どうせみんないつかは死んでしまう。僕らはその悲しみの中で生きている。だから、今を楽しむんじゃないの? 僕はそう思います」

そして、「そんな歌です」と披露したのがバラードの「世界が終わる夜」。なるほど。声を出せないのなら、隣同士、距離を空けなければいけないのなら、じっくりと聴かせるライブをやろう。自分達にはじっくりと聴かせられる曲がいっぱいあるんだからと今回は考えたんじゃないか。しかし、そんな想像は、「世界が終わる夜」の間奏からぐっと熱を高めていった3人の演奏とエモーショナルに歌い上げる大木の歌声にあっさりと否定された。渾身の演奏を繰り広げる3人は、たとえバラードでも激熱の演奏にできると訴えかけているようだった。




「世界が終わる夜」が終わっても、バンドの演奏は止まらない。ステージの3人はそのままラストナンバーの「ある証明」になだれこむ。佐藤が手を振れとジェスチャーで観客にリクエストすると、観客が一斉に拳を上げる。最後の最後に飛び出したアンセミックなロックナンバーに観客も興奮を隠そうとしない。力いっぱい叩き続ける観客の手拍子が響き渡る中、大木が観客に語りかける。

「みなさんの代わりに思いっきり叫びます。心の中で叫んでください。Yeahhhhh!!!!」──大木伸夫

そこから最後のサビを歌う大木の歌は、もはやシャウトだった。その気迫に圧倒された。そうか。この一瞬のための全6曲だったのか。そう考えたら、ぐっと来た。ベテランバンドの挑戦に胸が熱くなった。

傾き始めた太陽よりも眩しいライトが浮かび上がらせたのは、そんな彼らの雄姿だった。

取材・文◎山口智男
撮影◎中河原理英

<JOIN ALIVE 2022>

日程:2022年9月3日(土)、4日(日)
時間:開場 9:00 / 開演 11:00 / 終演 20:30予定 ※雨天決行
会場:北海道・いわみざわ公園〈野外音楽堂キタオン&北海道グリーンランド遊園地〉(北海道岩見沢市志文町794番地)

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