【レポート】<朝霧JAM '22>、全ての参加者で築き上げた4年ぶりの楽園

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ⓒ 宇宙大使☆スター

10月8日(土)、9日(日)に富士山麓 朝霧アリーナ・ふもとっぱらにて、キャンプ・イン・フェス<It’s a beautiful day~Camp in ASAGIRI JAM'22>が行われた。前日まで、関東でも12月上旬並みまで気温が下がり冷たい雨まで降っていたが、4年ぶりの開催を祝福するかのように、朝霧JAMの初日は好天に恵まれた。朝にはダイヤモンド富士まで拝めたという奇跡的な景色からはじまった朝霧JAMには、大自然に抱かれながら音楽を体験することの無数の幸せがあった。

たとえばYogee New Wavesの演奏中のことだ。グッドフィーリングなパフォーマンスに体を揺らす観衆のすぐそばで、巨大なシャボン玉を飛ばすことに成功した母と子が全身で喜びを表していて、自ずと周囲の人々の顔もほころび幸せが伝染していた。そばには得意げにブカブカのサングラスをかけている子どもがいて、大人たちは久々の再会に盛り上がり、また、テントの主のように遠くからステージを眺めているおじいちゃんの姿も見える。愛犬とともに参加している人も多い。当たり前だと思っていたことが実はそうでないと痛感した今、そこには宝物のような光景が広がっていた。本稿ではそんな2日間のレポートを掲載する。



ⓒ 宇宙大使☆スター

筆者は今年も、全国7都市からツアーバスで会場へ直行するバスプランを利用し、らくらくとお昼前には朝霧の地に到着した。色とりどりのテントが並ぶ景色に、「これこれ!」とすでに感慨深い。深呼吸ののち、ツアーバス利用者限定のレンタルテントプランで用意されているテントにひとまず腰を落ち着けた。フェスの会場内に自分の巣がある安心感と身軽さもいい。なお、このレンタルテントは事前に会場に設置されており撤収も返却も必要ないため、自前のテントがなくてもキャンプを楽しめるという優れものだ。

ついに開演を迎えると、メインステージであるRAINBOW STAGEに朝霧JAM実行委員長の秋鹿 博氏が登場し挨拶をした。2019年は台風の接近に伴う悪天候により開催中止、2020年および2021年は新型コロナウイルスの影響により開催は見送りになっていた朝霧JAM待望の幕開けを前に、「朝のない夜はない」と説得力のありすぎる名言を放つと、『水戸黄門』の主題歌を歌い人生のロマンと勇気について伝えた。加えて、2日目に最後の野外フェス出演を控える加山雄三についても触れると大きな拍手が起こった。そしていよいよ開演すると、このステージでは富士宮市に根付く創作和太鼓団体「本門寺重須孝行太鼓」が力強く厚い和太鼓の鳴りを響かせ、対してセカンドステージであるMOONSHINE STAGEに足を踏み入れてみればTHE ALEXXのパフォーマンスにより白昼のクラブ空間のようなムードが広がっていて、いろんな音楽が共存する朝霧JAMのはじまりに胸が高鳴った。





▲本門寺重須孝行太鼓 ⓒ 横山マサト

初日のRAINBOW STAGEでは、2023年1月に日本武道館2days公演を控えるなど、その人気ぶりに比例するようにたくさんの観衆を集めたカネコアヤノ、急遽出演が決定したもののブルージーな歌と音で甘い世界に誘ったEGO-WRAPPIN'、こちらも急遽決定組だが鉄壁のアンサンブルでクールかつエモーショナルなパフォーマンスが圧巻だったTESTSET(砂原良徳×LEO今井×白根賢一×永井聖一)などが続々と登場した。





▲カネコアヤノ ⓒ 横山マサト





▲EGO-WRAPPIN' ⓒ 横山マサト





▲YONA YONA WEEKENDERS ⓒ Sotaro Shimizu

MOONSHINE STAGEに登場した君島大空が異彩を放った。それまで牧歌的な雰囲気に浸りながら幸福な風景を目にしていた最中、君島のステージには、リスナーひとりひとりの中にあるバグと交信してくれるような特別な包容力があった。人の美しさ、儚さ、危うさを時に微笑を浮かべながら秀逸なギターサウンドと共に正面切って表現する君島は、表現者としてとても素晴らしかった。





▲君島大空 ⓒ Sotaro Shimizu

また、MOONSHINE STAGEに見たことないほどたくさんのひとが駆けつけたのが、ダブポエトリーのユニット「いとうせいこう is the poet with 満島ひかり」。今年のフジロックの「Gypsy Avalon」ステージでも感じたが、特にこんな不透明な日々に刺さる鮮烈なユニットだ。本能で歌う満島の凛とした美声はもちろん、気高いメッセージを次々と放ついとうせいこうの再評価の声が周りからたくさん聞こえてきた。ラップも聴き慣れてるであろう若い層も「かっこいい!」と目を輝かせた。今夜は、欠けがあるからこそ満月よりも昔の人は大切に愛でたという「十三夜」だ、といとうせいこうが教えてくれて見上げた月の美しさもオーディエンスの目に焼き付いたと思う。そんな風に、朝霧JAMでは、同じくSMASH主催の兄弟フェスであるフジロックのようなタフな趣ではなく、あくまでも時の流れをゆったり味わうのが醍醐味だろう。日が暮れれば辺りを暗闇が包んで月や星が輝き、朝を迎えて日が昇ると真新しい1日がはじまることを肌で感じられるのは、現代人にとっては本当に貴重な機会だ。





▲いとうせいこう is the poet with 満島ひかり ⓒ 横山マサト

初日、RAINBOW STAGEのトリを飾ったのはTempalay。Spiritualizedのキャンセルによって予期せずしてトリをつとめることになったわけだが、フジロックを含めた大舞台で磨き上げてきたサイケデリックポップを壮大に鳴らし大役を務め上げた。MOONSHINE STAGEのトリはVegyn。4年ぶりに味わう野外レイブのような親密さと熱がとても嬉しかった。今年も、朝霧JAMならではのアクティビティである焚き火を他人同士で囲む贅沢なひとときを体験し、1日目は終了した。





▲Tempalay ⓒ Sotaro Shimizu





▲Vegyn ⓒ 横山マサト

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