【インタビュー】aiko、「19歳のときこの曲を作ってくれて本当にありがとう!」

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aikoが43枚目のシングル「果てしない二人」を10月12日にリリースした。

本作は、10月14日公開の映画『もっと超越した所へ。』の主題歌と「果てしない二人」とカルビーのポテトチップスCMソング「夏恋のライフ」、トオミヨウをアレンジャーに迎えた「号泣中」の3曲に、「果てしない二人」のインストゥルメンタルが収録された作品だ。

いずれも“aikoらしい”メロディセンスと“aikoらしい”言葉で恋愛の感情が綴られており、聴けば感情が揺さぶられてしまうこと間違いなし。変わらないaikoの魅力を感じることができるだろう。そんな3曲について、今回aikoにインタビューを実施。それぞれの楽曲に込められた思いと、秘話を明かしてもらった。

  ◆  ◆  ◆

──新曲「果てしない二人」は、聴き手を一瞬でハッピーにさせてくれる楽曲になりました。公開中の映画「もっと超越した所へ。」の主題歌として作っていったそうですね。

aiko:曲自体は数年前にできていたものだったんですけど、もっと自分がワクワクした気持ちで向き合えるときがくるまで置いておこうと思っていたんですよね。で、今回、主題歌のお話をいただき、事前に観せていただいた映画の内容がめっちゃおもしろかったんですよ。そのときに『あ、あの曲が合うかもしれないな』と思い、あらためてしっかり形にしていった感じでしたね。

──デモから変わった部分もあるんですか?

aiko:元々、今のサビはあったんですけど、AメロとBメロは違うメロディでした。映画を観終わったときにめっちゃ気分爽快になって、そのときにパッと浮かんだ新しいメロディを使うことにしたんです。歌詞に関しても部分的に書いていたところはあったけど、全体を書き上げたのは映画を観てからでした。

──タイアップする作品の内容を把握した上で曲を仕上げるのって、aikoさんとしてはかなり珍しいですよね。

aiko:そうですね。作品に引っ張られすぎてしまうから、タイアップ曲であっても普段はできるだけ作品のことを意識しないようにしているので。そういう意味で今回はほんまに珍しいケース、っていうか初めてのことだったかもしれないです。ただただハッピーなラブソングを作りたいという気持ちで作ってはいたけど、でも無意識のうちに映画の内容に引っ張られたところがあったかもしれないですね。それくらいおもしろい内容に興奮してしまったので。

──「果てしない二人」というタイトルが素敵ですよね。ものすごく深い関係性の二人の姿が見えてくるというか。

aiko:喧嘩するときもあるけど、でも老夫婦のように穏やかな時間もある。そんな恋人同士のいろんなすべて表現したかったので、このタイトルにしました。制作中に決めたんですけど、あんまり悩まなかった気がします。



──この曲に限らずですけど、タイトルや歌詞に用いるワード、表現にはaikoさんにしかないセンスが詰まっていますよね。それって、どんなところからインスピレーションを受けることが多いですか?

aiko:え、なんやろう。……自分、です(笑)。

──ですよね(笑)。すべてがaikoさんご自身の中から湧き出たものだと。

aiko:はい。でも、書き方としては2パターンあって。自分から一方通行で発信する場合と、第三者として自分に向き合って書く場合があるんですよ。感情にまかせて、『うわー』っと書きなぐってるときは一方通行の自分なんですけど、それを後で読み返したときに『これは違うんじゃないの?』と思って書き直すのが後者。2コーラス目の歌詞とかは、けっこうしっかり自分と向き合って書くことが多いですね。どうしてこう思って、その裏側にはどんな感情があるのか、どうしてこの人に対してそう思ったのか、みたいなことを自分で自分に問いただしていくというか。『こうやって書いてるけど、ほんまはこういうこと思ってたんじゃない?』『でしょ? じゃあ、それはどういう気持ちだったの?』っていう自分の中でのやり取りがあって、それをあらためて言葉にしていく感じなんですよね。

──へぇ! 1曲の中でも書き方の視点が異なる場合があるってことですね。

aiko:そうですね。1番は抱えきれへんくらいの感情がうわーっと出ていて、2番ではちょっと落ち着いて素直になった自分が出ている。最近はそういう書き方が多いかもしれないです。夜中に酔っぱらって書いた歌詞を翌日に見て、『クソみたいな歌詞や!』と思うことも多いですけどね。そういうときはわざとグシャグシャって音を立ててコピー用紙を丸めて捨てます(笑)。

──「果てしない二人」の歌詞では、2コーラス目のサビ、2ラインで四季の流れを表現しているパートがすごく好きで。こういう書き方をaikoさんはよくされますよね。

aiko:やりますね(笑)。とても気に入ってるフレーズです。今回、“2月の雨”ではなく“2月も雨”と書いたのは、以前に『4月の雨』という曲を出したから。ファンの方がここを聴いたとき、『4月だけじゃなく、2月も雨なんだ!』と思ってくれたらいいなと思って。

──この曲のアレンジは島田昌典さん。ハッピーな雰囲気を増幅させてくれる最高のサウンドになっていますね。

aiko:気分爽快で、とてもハッピーになるアレンジをあげていただけたのが嬉しかったです。だからね、歌うのもとにかく楽しかったです。息が足りなくて後半はすごくしんどくなるんですが、そこを頑張って乗り越えていくのもすごくやりがいがあって、楽しかったですね。あ、ちなみに今回、Aメロの後ですぐBメロに行くのではなく、ワンクッション間奏っぽいパートがあるんですよ。そういうのって今まであまりなかったので、浮かんだ時嬉しかったです。全体的に楽しくてハッピーな曲やけど、年齢を重ねた雰囲気も大事にして作っていった気がします。



──シングルの2曲目には、カルビー「ポテトチップス うすしお味」「じゃがいもチップス」CMソングとなっている「夏恋のライフ」が収録されています。19歳のときに作られた曲だそうで、先行配信されたタイミングではかなり話題になりましたね。

aiko:オリジナル曲がまだ5曲くらいしかない時期に作ったんですよね。メジャーデビューの前後に、ライブでも数回やった記憶があります。まだ3連とシャッフルの曲しか作れなかった19歳の頃の自分の代表曲のひとつだと思います。ずっと出したかった曲でもあるので、今回それが叶ってすごくうれしいです。しかも、また2年連続でポテトチップスのCMで使っていただけるなんてね。ポテトチップスが好きって言い続けてよかった(笑)。

──冒頭のノスタルジックなエフェクトがかかったパートがすごく印象的。曲の世界へ一気に引き込まれますね。

aiko:あそこのパートは、昔のデモテープを聴き返したときに、そういうふうに聴こえたんですよ。テープが伸びてるから、ちょっとくもった音になっているというか。その感じがいいなと思ったので、あえてラジオボイスっぽく加工してもらったんですよね。そのバランスはけっこう調整しました。ノスタルジックにしたいんですが、あまり加工しすぎると逆に今っぽい雰囲気になってしまうので。

──この曲もアレンジは島田さん。事前に共有したアレンジのイメージはありました?

aiko:この曲は絶対島田さんにお願いしようと思ってましたね。あんまり壮大で渋くなりすぎないロッカバラードにして欲しいですっていうことだけかな、事前にお伝えしたのは。風が吹いているなって毎回思わせてくれる、サビ前のフレーズが好きですね。あと最後の“さよなら/もう逢わない”のところは、島田さんのアレンジを聴いて思い浮かんだので、今回あらためて加えました。

──約27年前の曲のレコーディングを通して、何か感じたことはありましたか?

aiko:『19歳のとき、この曲を作ってくれて本当にありがとう!』ってめっちゃ強く思いました。この曲に限らずですけど、私は過去の自分に助けられていることがすごくたくさんあるんですよ。最近、コロナにかかってしまって。もう完治はしたけど、カラダの中には何かまだ根を張っているようなものがある気がするんです。でもね、過去の自分の音楽たちに励まされることで、そんな気持ちから抜け出せる感覚があるというか。占い師の方とかお婆ちゃんとかが、「今の行いが数年後の自分に返ってくるよ」ってよく言ったりするじゃないですか。それってほんまやなってすごく思いますね」

──曲を通して当時の記憶がよみがえることもありそうですよね。

aiko:あー、そうですね。27年前ともなると、細かいことってそんなに思い出せないものじゃないですか。でも、この曲の歌詞を眺めていると、細かい記憶がひとつずつ蘇ってきて、今の自分の中にパズルみたいにはまっていく感覚になりました。そういう意味でも、すごく懐かしくて、すごく愛おしい1曲でもありますね。

▲初回限定盤ジャケット

──では、19歳の頃と比べて、変わったことと変わっていないことを教えていただけますか?

aiko:えー! 変わったところはいっぱいあると思いますよ。変わらないところは……歌手になりたい気持ち、音楽に対する気持ち……って、そんな模範解答みたい感じになっちゃって恥ずかしいですけど(笑)。

──恋愛への興味も変わっていないところですよね、きっと。

aiko:うん、そうですね。そこはどんなに環境の変化があっても変わることはないんだと思います。あと洋服が好きとか、バッジとかワッペンとかシールとかをすぐ買ってしまうところも変わってないかな。

──aikoさんの曲を聴いていると、想いを寄せる相手のカラダのパーツがいろいろ出てくるじゃないですか。例えば年齢を重ねたことで、異性に対して注目するポイントに変化があったりはしないですか?

aiko:あー、最近は歯を見ることが多くなったと思います。その人に合ったキレイな歯を持っている人ってすごく素敵やなって思うので、めちゃくちゃ見ちゃう。歯は大事(笑)! 10代の頃なんかは顔全体とか、どういうズボン履いてるんだろうとか、そういうところばっかり見てましたけどね。

▲通常盤ジャケット

──では、もう1曲。シングルの3曲目には「号泣中」が。aikoさんのレパートリーの中ではかなり新しい雰囲気を持つ曲になりましたね。アレンジはトオミヨウさん。

aiko:この曲はギターとベース以外はすべて打ち込みになっていて。トオミさんが『楽器が弾けない人がアレンジしたら』というテーマでアレンジしてくださいました。デモの段階ではこんなに打ち込みの曲になるとは想像していなかったんですけど、トオミさんが上げてくださったアレンジを聴いたときに『すごく好き!』ってなって興奮しました。語弊があったら申し訳ないんですけど、トオミさんのエロ成分が全開というか(笑)。私の曲にこういうアレンジをしてくださったことがすごく嬉しかったです。

──歌詞では思いを寄せる相手への入り乱れる感情が描かれていますね。

aiko:最初は『もうダメだ』と思いながら、その想いを友達に打ち明けてるんですけど、女子の気持ちはコロコロ変わるので(笑)。今度は『やっぱり好き』って気持ちになってみたり。そんな行ったり来たりしてるややこしい気持ちを、ややこしいメロディに乗せてみましたね。実際、自分自身の中にもこういう感情はあるものだと思います。

──“君が寝てるか起きてるかさえ わかっちゃいそうな世の中は不便”というラインは、SNSのある今の時代性が見えてきますね。

aiko:そうですね。『今、あの人はどうしてるんだろう』って思ったときに、今はそれを知る術がたくさんあるというか。例えばLINEとかの背景が変わってたりすると、ちょっと気になったりもするし。電話だけしかなかった時とはまったく違いますよね。便利ではあるんだけど、一方ではとても窮屈というか。捕らわれた心を解き放ちたいのに、相手のことを知れるツールがあるからつい手を伸ばしてしまう。で、そんな自分自身のことを『めんどくさいな』とも思っているっていう。

──曲の後半にはちょっとトーンの変わるパートが用意されていて。その雰囲気もまたすごく斬新だったし、めちゃくちゃかっこいいなと思いました。

aiko:わ、嬉しい! っていうか大丈夫ですかね? こういうのは初めてやし、『aiko、イキってんな』とか思われないですかね(笑)。

──いやいや、まったくそんなこと思わないですよ(笑)。

aiko:あのパートは元々、フェイクなんかを入れるためのアウトロとしてトオミさんが用意してくれたものだったんですよ。でも私はそこでも歌いたいなと思ったので、ツアー中のホテルでちょっと詰め込み系なメロディと歌詞を考えて。で、それを事前に聴いてもらうことなく、レコーディングのときに突然ぬるっと歌ってみたんです。そうしたらトオミさんやスタッフの方から『あ、歌が乗るんですね。かっこいい!』と言っていただくことができて。そこでホッとはしたけど……CDや配信を聴いてくださる方はどう思うんやろうって考えるとまだめっちゃ不安です(笑)。

──あはは(笑)。ボーカルのレコーディングはいかがでしたか?

aiko:めっちゃ高かったです。ほんとに針の穴に糸を通すように、狭いところに当てて行かなきゃいけないメロディなので、今後もしっかり歌いこんでいきたいなって思いますね。最後のパートはセリフをしゃべってるような感覚で歌いました。自然と声が小さくなるので、マイクを近づけてみたり、逆にちょっと離してみたり、いろいろ試しながら歌いましたね。そういうのもすべて楽しかったです。

取材・文◎もりひでゆき

43rd Single「果てしない二人」

発売日:2022年10月12日(水)
予約:aiko.lnk.to/43rdSG
品番:PCCA-15008
定価:1,320円 (税込)
※初回限定仕様盤:カラートレイ & 8Pブックレット

CD収録内容
1.「果てしない二人」
2.「夏恋のライフ」
3.「号泣中」
4.「果てしない二人(instrumental)」

◆aiko オフィシャルサイト
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