【ライブレポート】The Novembers、ワンマン<20221110>に今までを超えていく飛躍の瞬間

ツイート
no_ad_aritcle

The Novembersが11月10日、デビュー15周年イヤーの始まりを告げる東京・恵比寿LIQUIDROOMワンマン<Beyond The Novembers - 20221110>を開催した。約3年ぶりのスタンディング、フルキャパで実施された同公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。

◆THE NOVEMBERS 画像

凄かった。11月はThe Novembersにとって特別な月で、毎年11日近辺には特別なワンマンが行われてきたが、<Beyond The Novembers>と題された2022年の公演は、まさにバンドが今までを超えていく飛躍の瞬間であった。


開演前のBGMはL'Arc-en-Cielやhide、ニルヴァーナにエリック・サティなど。高校の同級生から始まった彼らが、当時何を好んでいたかがよくわかる選曲だ。5年前なら、そこから派生して聴くようになったニューウェイヴなど、より玄人受けのする曲を並べていたと思う。しかしデビュー15周年の今はベタでOK。最高のロックスターになりたいし、なる。その心意気は、初の白シャツにスーツ姿で登場した小林祐介(Vo/G)の装いに表れていた。

オープニングの「ひとつにならずに」は、BorisとのスプリットEP収録のナンバー。定番曲ではない。鋼のような吉木諒祐(Dr)のビートが最も雄弁な、少し意外な幕開け。続いて「TOKYO」から小林はハンドマイクで舞台に君臨。深いグリーンのライトの中に浮かぶ一挙手一投足が悪魔的に美しい。猛烈にヘヴィでありながら、耳の疲れない音響も見事である。



この2曲からもわかるのは、The Novembersが、いわゆるインディ系ギターロックの域をとうに超えていることだ。ギターを掻き鳴らし、情熱さえあれば目の前の客に伝わるというような、狭い世界での満足は過去に置いてきた。照れを脱ぎ捨てたパフォーマンス能力、補完する照明デザインや音響技術までを含めて、これはもうライブハウスで見るものじゃないとはっきり思う。できるなら大バコで、可能ならアリーナで、この光景を存分に味わいたい。同じ会場だった去年は思わなかったことだ。リキッドルームはもう狭すぎる。

高松浩史(B)のベースラインがエグい「1000年」、ケンゴマツモト(G)が激しく頭を振るカバー曲「Ghost Rider」など、開始6曲で狂騒はピークに。凄まじいアクセルの踏み方だ。ただ、いい意味でリミッターは外さない。猛り狂った爆音だが、勢い任せの危うさは皆無。耳をつんざく小林の悲鳴も、音程までコントロールできているかのような完成度で場を支配する。杓子定規という話ではない。しいて言うならトップアスリートが脱力しながら完璧なフォームでゴールを決める、それくらいの修練を経た表現なのだろう。



中盤に「風」や「Misstopia」など柔らかなポップソングが並んでいたのも良かった。L'Arc-en-Cielから譲り受けたとおぼしき歌心が耳をくすぐる。そしてそれらは、ヘヴィ&ダークな楽曲の対極にあるわけでもない。天使のようなメロディも、悪夢みたいな絶叫も、どちらも本気で憧れた。どちらも自分たちの手で掴み取ってきた。過去を隠さない素直さは、冒頭のBGMにも通じる話。自分たちの歴史をオープンにすればするほど、今の4人の充足が伝わってくる。

ラストに向けては息を呑むハイライトの連続。特に初期の名曲「こわれる」では原点も見えてくるようだった。6弦を歪ませて、我を忘れるビートに乗せ、非日常の彼方にぶっ飛んでいきたい。きっと、すべての若者がロックバンドに託す究極の理想。それが目の前で繰り広げられている。腹の底から熱い快感が込み上げる。さらにはラスト手前の「BAD DREAM」、小林はサビの歌詞“You’re awake in〜”をすっ飛ばし、ただ“YEAHHH!”と叫び拳を突き上げていた。いよいよリミッターを超えていく瞬間。ニューウェイヴとかサイケといった分類はどうでもよくて、ただ、ロックバンドの理想的な爆発を見た思いだ。



アンコールはデビュー作より「バースデイ」。結びの言葉となる“清らかなあの気持ち”は、15年前よりもよっぽどピュアなものとして響き渡った。何度も生まれ直し、どんどん精度を高め、同時に清らかな初期衝動も取り戻していくThe Novembers。進化はどこまで続くだろう。ライブの後、来年4月に再びワンマンツアーが始まることが発表された。悪いことは言わないから、狭いキャパで見れるうちに、この姿は目撃しておいたほうがいい。

取材・文◎石井恵梨子
撮影◎西村理佐

■<Beyond The Novembers - 20221110>11月10日(木)LIQUIDROOM セットリスト

01. ひとつにならずに
02. TOKYO
03. 理解者
04. dysphoria
05. 1000年
06. Ghost Rider
07. mer
08. Halleiujah
09. 風
10. Misstopia
11. 鉄の夢
12. Down To Heaven
13. New York
14. こわれる
15. Blood Music 1985
16. BAD DREAM
17. Rainbow
encre
En1. バースデイ

■<The Novembers Tour 2023 “かなしみがかわいたら”>

4月11日(火) 東京・LIQUIDROOM
4月12日(水) 東京・LIQUIDROOM
4月19日(水) 大阪・Umeda CLUB QUATTRO
4月20日(木) 愛知・Nagoya CLUB QUATTRO
open18:00 / start19:00
▼チケット
・オールスタンディング ¥5,000(税込・D代別)
・中高生学割チケット ¥2,200(税込・D代別) ※チケットぴあのみの取り扱い。枚数限定。当日学生証の提示が必要
※電子チケットのみ
※購入時に同行者含め個人情報の入力が必要
※小学生以下入場不可(中学生以上のご入場はチケットが必要になります)
一般発売日:12月24日(土)10:00より各種プレイガイドにて
【オフィシャルHP先行受付(抽選)】
11月10日(木)21:00〜11月20日(日)23:59
https://w.pia.jp/t/the-novembers/
(問)SMASH 03-3444-6751

この記事をツイート

この記事の関連情報

*

TREND BOX

編集部おすすめ

ARTIST RANKING

アーティストランキング

FEATURE / SERVICE

特集・サービス