【インタビュー】BAND-MAID、2万人動員全米ツアー総括「幸運をさらに来年は開花させたい」

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去る10月9日から11月1日にかけて、フェス出演を含む全14公演のアメリカツアーを実施したBAND-MAID。各地でソールドアウトの連続となり、トータル2万人もの動員を記録したというこのツアーを経て、この日本ならではの稀有なロックバンドは確実にさらなる進化を手に入れている。その片鱗がうかがえたのが、帰国直後に彼女たちがガンズ・アンド・ローゼズ来日公演のスペシャルゲストに起用された11月6日、さいたまスーパーアリーナでの最新ライヴパフォーマンスだった。

わずか30分間というコンパクトな時間枠の中にBAND-MAIDなりの激烈さと美しさ、多様さが凝縮されたそのステージは、このバンドに予備知識のない人たちを惹き付け、歪んだ先入観を抱いていた人たちに「もっと前から聴いておくべきだった!」と思わせるだけの魅力に溢れていたし、2023年1月9日に実施される東京ガーデンシアター公演に向けての期待感をいっそう高めるものになっていた。コロナ禍で通常のお給仕(ライヴ)活動がままならない状況下においても立ち止まることのなかった彼女たちにとって、この10月から11月にかけての時間の流れがとても意義深いものだったことは疑う余地もない。その裏付けを得るべく、11月のある日、5人に話を聞いた。

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■自分はコレが好きだったんだよな、というのを再確認できたツアー

──10月9日、サクラメントでの<AFTERSHOCK FESTIVAL>出演を皮切りに11月1日のシカゴ公演まで続いたアメリカツアー。改めて振り返ってみて、今はどんなふうに感じていますか?

AKANE:海外でのお給仕自体が久しぶりだったわけですけど、とにかく熱量がすごすぎて! こっちとしても「やっぱお給仕ってコレだよなあ!」と実感させられましたし、ひたすら楽しく回れた約1ヵ月間でした。ライヴを通じて得るものって大きいなと感じましたし、バンドの成長を確認できたところもすごくありましたね。

KANAMI:あまりにも久しぶりだったので、初めて海外に行った頃のような感覚もあったんです。本当にアメリカに自分たちのご主人様お嬢様(ファンの呼称)はいるんだろうか?」って。実際に行ってみて「ああ良かった、ホントにいる!」みたいな安心感もありましたし(笑)、ツアー全体を通じていろんなインスピレーションが得られたというか。回っているうちに「あ、次はこういう曲を作ろうかな」みたいなアイデアも出てきて、すごく楽しかったです。

MISA:“声出し”がOKというお給仕もしばらくやってこなかったじゃないですか。だからもう、そこにお客さんがいて声を出してること自体にも感動してしまって……1本目のお給仕の前半では、ずっと泣きそうでした(笑)。背後のアンプから聴こえてくる音と、目の前にいるお客さんの声に挟まれて、すごく幸せを感じましたね。できればもう“声出し”がNGの状況には戻りたくないな、と思いました。


──そんな幸福感を味わえると、お酒もますます美味しくなるはずで。

MISA:そうなんですよ。あっちのお酒がまた美味しくて。ビールにしても好みの味のものが多かったです(笑)。

──SAIKIさんはどうでしたか?

SAIKI:コロナ禍でもバンドとしての歩みを止めないように進み続けることを心掛けてきたつもりなんですけど、ちゃんとそれができていたんだなってことを実感できたというか、自分たちでも確認できた1ヵ月間でしたね。自分自身の成長も、バンド全体の成長も日々感じてました。だから、これまでやって答きたことが無駄じゃなかったという報われた気分にもなりましたし。あと、やっぱり音楽って素晴らしいな、やっと本来の日常が戻って来たんだな、ということを強く感じました。自分はコレが好きだったんだよな、というのを再確認できたツアーでもあったし、ツアー自体を通じて答え合わせができたような部分もあったし、いい感情しかなかったですね。

小鳩ミク:なんかもうひと通りみんなに言われちゃったんですけどっぽ(笑)、行く前はホントに不安がいっぱいあったんですっぽ。海外は3年ぶりだし、その前に日本でのプレお給仕があったとはいえ本数も限られていたので、ちゃんとツアーらしいツアーを回るのは久しぶりだったから「大丈夫かな?」「現地のご主人様お嬢様は集まってくださるのかな?」という気持ちもあったんですっぽね。だから実際に行ってみて「ああ、ツアーってこういうものだったっぽね」という感覚を日々取り戻しながら回っていた感じではありましたっぽ。ご主人様お嬢様と触れ合える環境ってすごく特別なものなんだな、というのを改めて実感させられましたっぽね。

──全13本の単独公演のうち何本かは早々にチケット完売になっていましたよね。そういった情報が伝わってきてはいても、やっぱり実際に客席を目にするまで安心できないようなところもあるわけですね?

SAIKI:そうですね、やっぱり自分の目で見るまでは信じられないというか。

小鳩ミク:うん、数字だけだと安心できないですっぽね。


──日本ではコロナ禍の間にBAND-MAIDを知ったという人が少なくなかったようですけど、アメリカでも同じような傾向があったのかもしれませんね。

小鳩ミク:それは感じましたっぽ。今回のツアーでもMC中に「初めて来た方!」って質問してたんですけどっぽ、そこでの手の上がり方も多かったし、おそらく配信リリースやオンラインお給仕とかを通じて知ってくださった方も多かったんじゃないかなと思いますっぽ。以前から知ってはいたけどオンラインお給仕を観たことで実際に有観客お給仕に足を運んでみる気になった、という人も少なくないはずですっぽ。

──そうした意味でもコロナ禍での地道な活動が報われたというか、きちんと結果に繋がっているわけですよね。それにしてもツアーの初っ端が大規模なフェス出演というのもすごい話ですよね。<AFTERSHOCK FESTIVAL>での出演時間は30分程度ではあったはずですけど、そこでの手応えはどうでしたか?

SAIKI:最初がフェスということについては結構みんな不安だったんですね。だけど実際にやってみて思ったのは「逆にフェスから始められて良かったね」ということで。あの30分間で、今のアメリカの雰囲気みたいなものを、ぎゅっと一気に理解できたというか。

MISA:うん、確かに。

SAIKI:「ああ、今のアメリカってこういう感じなんだ」というのが伝わってきたんですよね。それがツアー本編へのいい予習になったというか、それを経たうえでワンマンで回れたのは良かったね、みたいなことはメンバー間でもよく話してましたね。

──それこそ日本とは違って“声出し”が全面的にOKになっていたりもするし、その時点でどれくらい自由さが戻ってきているのかを把握することができたわけですね。そのうえで単独公演に臨むことができた。

MISA:しかも野外というのもすごく久々だったので。まさに野外ならではの空気というのもあったし、とにかく暑かったし。

小鳩ミク:うん。暑かったっぽー。とても10月とは思えない暑さでしたっぽ。

SAIKI:気候がいいだろうとは思ってたけど、正直、なめてたよね(笑)。

小鳩:なめてたっぽ(笑)。誰も正直、あそこまで暑いとは思ってなかったですっぽね。

MISA:しかもステージも大きくて、お客さんもいっぱいいて。これを乗り越えられたらちょっと自信がつくぞ、ぐらいの感覚でもあったんですね。そして実際、その1回のステージだけで一気に自信を取り戻せたというか。

小鳩ミク:フェスならではの空気も楽しかったですっぽ。メキシコのWARNINGというガールズバンドと一緒になったり、PRETTY RECKLESSのテイラー・モムセンさんと一緒に写真を撮らせていただいたり。あれは、テイラーさんを見つけて「一緒に撮らせてください!」って言いに行ったんですっぽ。

SAIKI:そうそう、呼び止めちゃってね。逆にWARNINGのみんなは向こうから声を掛けてきてくれて。私たちのことを知ってくれてたんですよ。

小鳩ミク:そうなんですっぽ。そこで「是非いつか一緒にやりたいね」みたいな話もしましたっぽ。 

SAIKI:彼女たちはメキシコのバンドなんで、わたしたちもまたメキシコに行ってみたいし、WARNINGと一緒に回れたら楽しいかな、なんて思ったりもするし。

──お互いの国に招き合えたら素敵ですよね。

SAIKI:そうなんですよ。実際、そんな話もしたし、曲をコラボできたら面白いかもね、みたいな話にもなったし。これまで他のバンドとそういう会話をしたことがなかったので、それ自体も新鮮でした。いい感じで交流できたし、いい経験になったなと思います。

──そして、そのフェス出演の3日後にはシアトルを皮切りに単独ツアーがスタート。全13公演のうち特に印象に残っているお給仕、場所というのはありますか?

小鳩ミク:MISAと私は誕生日にお給仕があったので、やっぱりその日はすごかったですっぽね。


──MISAさんの誕生日は10月15日のロサンゼルス公演当日。ステージ上でテキーラを飲んだらしいという情報まではつかんでいるんですが。

MISA:忘れてた(笑)。確かに飲みましたね。

小鳩ミク:その前日にもサンフランシスコでお給仕があったんですけど、その時点ですでに誕生前夜祭みたいな感じで盛り上がってたんですっぽね。その時もMISAは客席を煽りながらお酒を飲んでたんですけど、翌日のリハの時に「ショットでも飲もうかな」とか言っていて。

MISA:ぼそっとね(笑)。

小鳩ミク:で、「ホントに?」って確かめたら「うん」という返事だったので、一応スタッフにも前もって言っておいたんですけどっぽ、まさかホントに飲むつもりだとは思ってなかったみたいで。だから本番中にMCで「MISAのショットをお願いしますっぽ」って言ったらすごく焦ってましたっぽ(笑)。

SAIKI: MISAもMISAで「私のショット、まだ来ないの?」みたいな感じで小鳩を煽ってて(笑)。なんかもう、祭りみたいな感じだったよね?

小鳩ミク:うん。MISAが日本でも毎回やってる“開封の儀”(缶ビールの開封音を観客に聴いてもらうセレモニー)というのがあるじゃないですか。あれをそのまま向こうでも毎回やってたんですっぽね。そしたらそれがすごい盛り上がりに繋がって。誕生日は特にそれがすごかったですっぽね。

──缶ビールを開封する“ぷしゅっ”の一音で観客を沸かせるというのはすごいことだと思いますよ。

小鳩ミク:確かに他のバンドのライヴではないことですっぽね。

MISA:ふふっ。いい音で開ける練習もしましたね、缶ビールを飲むたびに。ゆっくり開けるより速く開けたほうがいい音がするなって。

SAIKI:そんなところにまで音へのこだわりが(笑)。

MISA:いい誕生日になりました。しかもあの日のベラスコという会場が、美術館みたいに素敵なところで。

小鳩ミク:すごく歴史ある建造物らしいですっぽ。

──古い劇場とか教会が改築された会場も多いですよね、欧米には。

小鳩ミク:そうなんですっぽ。そういう会場だと、ステージから観てるこっちもすごく楽しめるというか。それもすごく海外ツアーならではの楽しみでしたっぽね。

AKANE:会場として面白かったのはニュージャージーのアメリカン・ドリーム。遊園地というかテーマパークみたいな施設の一部で、ライヴハウスとかホール的な場所ではない特殊な会場だったんですけど、意外にも私的にはそこがいちばんやりやすかったというか。音の面でも良かったし、実際にやってみないとわからないものだなって思いましたね。

SAIKI:あの会場が結果的にやりやすかったのは、スタッフも含めてみんなにとって未知すぎる場所だったからでもあると思うんですよ。どんな音になるんだろうっていうのがあまりにも予想できない環境だったから、ホントにめちゃくちゃ念入りに準備してくれたので。いつもみたいな会場だと音もだいたい見当がつくから、そこまで事前に研究したりしないじゃないですか。だけど、どうなるかわからない環境で限られた機材でやらざるを得ない状況だったし、その会場で“バンドがライヴをやる”ということ自体ほぼ初めてに近かったらしくて。だから会場側もしっかり準備してくれてたし、それがAKANEがやりやすかったと感じた理由でもあると思います。

小鳩ミク:しかも当日は、リハ時間を確保できないっていうのもありましたっぽ。


──なるほど、遊園地の来場者がいるわけですもんね。

小鳩ミク:そうなんですっぽ。その人たちが退場してからのごく短い時間で準備しないとならなかったので、全然リハーサルはできなかったんですっぽ。

SAIKI:ホントにスタッフに大感謝でした、あの会場では。やっぱりいちばん不安だったので。でも「どうなるんだろう?」と思いながら初めてみたら「ん? やれるじゃん!」みたいな。そこでまた経験値が上がったなと思いましたね。

──フェニックスの会場も、ステージの両脇にもお客さんがいるような特殊な構造だったようですね。

小鳩ミク:そうですっぽね。ステージが低かったりするわけじゃないんですけど、両サイドがすごく長くて、天上が低くて、奥行きがあまりない感じでしたっぽ。

SAIKI:だから2階席の人とかがすごく近くて。そういう意味ではすごくライヴハウスっぽかった。ホントに自分たちの真横、180度のところにもお客さんがいて、ちょっと不思議な作りの会場でした。横浜のベイホールをもっと横長にした感じというか。

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