【ライブレポート】JinnyOops!、レコ発<HINOARUKU>に鳴り響いた20年目の極上な音
JinnyOops!が12月9日、レコ発ライブ<JinnyOops! 20th anniv.EP Release party『HINOARUKU』>を開催した。
◆JinnyOops! 画像
のっけから鳴り響いた。新作『HINOARUKU』でも印象的だった“バンドの音”が。“ボーカルが”とか“ドラムが”、とかいう個々のメンバーの存在ではなく、3人が発した音の合算だ。これがなんとも気持ち良かった。トータルで弾力性のある強靭なゴムのような弾み方があって。
そのことを生でも確認して、ライブのタイトルに含まれていた文字が蘇ってきた。<20th anniv.>。やっぱこれは、20年も同じメンツでやってこれたバンドゆえのサウンドなのだろう。それぞれが発するものが溶け合って新たな1つになっている。
ライブは瞬間湯沸かしのようにいきなり発熱した1曲目「one shot one kill」の、そのテンションを落とさないままガシガシと進行していった。2曲目「君と僕」はミッドテンポのメロディアンスなナンバーだが、前曲と同じ勢いを保持しつつ。そこはニューシングル収録の3曲目「東京フロンティア」も同様。新曲というには他の曲と馴染んだ表現をみせつつ、起伏ある曲調を落ちることないエナジーでつないでいた。
続く「錆びれた希望」。ドラムが4つ打ち、ベースが反復するリフ、そこに思いっきりロックンロールなギターが載るこのナンバーは、メリハリの効いたアレンジがこのバンドの一面を伝えていた。大きなグルーヴを持つドラムとノリ的にもリードするベース、それらを埋めるギター、という。さらに6曲目は新作のタイトルチューンでもある「ヒノアルク」。曲の前後を重いノリのメロディアスパート、その間は速いスカ、という構成で、これもスムーズなグラデーションで曲調を変化させつつ、タイトルチューンらしいポップ感を振りまいていた。そしてMCへ。
「ふつうオニギリはてっぺんに海苔はないけどそこを隠した海苔の巻き方もいい」(普天間瞳 [Dr])という突然の、ある意味曲と同じくらいインパクトのある物の見方談を経て後半戦へ。新作から「TORIO ROOTS」、定番の「雷鳴SHOCKING」「カリフォルニアロックンロール」がプレイされた。
さらにアンコールは「まだ道の途中」という石橋のひとことから「嗚呼」。そして「ROSS DEATH MONEY」。ダイヴするファンをフォーメーションがあるかのように綺麗に受け止めるお客さんの姿に、バンドと共に進んできた人たちを感じる。演奏が終わって本日の対バン、レヴェラーズ・ユナイテッド、THE JUNGLES!!、BAD ATTACKのことを再び普天間が紹介。これもまた長い長い付き合いの仲間であることが語られていた。
これは家で新作『HINOARUKU』を聴いたときにも感じたことだが、収録曲3曲は故郷やブレない生き方や上京といったテーマを持っている。それがありがちな歌に聞こえないのは、冒頭で触れたバンド力のおかげなのではないだろうか? 詞の世界を音がより大きく聴かせている。というのが彼女たちの20年目なのかもしれない。
付け加えるなら、このバンドサウンドの美点を正確に届けてくれたライブハウス、東京・新宿Nine Spicesの音響にも感謝。本番中何度となく客席の中まで出て行って音をチェックしていたPAさんの仕事ぶりには美しいものがあった。
取材・文◎今津甲
撮影◎Takehiro Funabashi
■20th anniv.EP『HINOARUKU』
【CD】JHCA-1021 ¥1,210 (税込 / ¥1,100 税抜)
1. ヒノアルク
2. 東京フロンティア
3. TORIO ROOTS