【インタビュー】BAND-MAID、全米ツアーを経て届けたかった想い

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2月22日、「Memorable」と題された新曲を緊急リリースしたBAND-MAID。それが去る1月9日、東京ガーデンシアターでのお給仕(ライブ)の際に初披露された、あの印象度抜群のバラードであることは言うまでもない。

◆「Memorable」MV

そして今、まさにこの新曲登場を皮切りに、10周年のアニバーサリーイヤーを迎えている彼女たちの新たな猛攻が始まろうとしている。なにしろ3月23日には待望の全国ツアーが開幕を迎え、4月には映像作品がリリースされ、5月には昨秋に続いての全米ツアーが控えていて、さらにその先にも続く国内ツアーは11月に横浜アリーナでクライマックスを迎えることになる。そうしたジェットコースター的展開の日々到来を前に、今回は小鳩ミク(G, Vo)、SAIKI(Vo)、KANAMI(G)の3人に、この最新曲とミュージックビデオの背景やこの先のツアーのことなどをはじめ、オンラインインタビューでさまざまなことを語ってもらった。

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■3年ぶりのアメリカツアーを回ったこと自体が本当に忘れられない想い出

──まずは早速、新曲の「Memorable」について訊かせてください。1月9日の東京ガーデンシアターで初披露となったわけですが、楽曲自体については昨年の全米ツアー中にKANAMIさんが作った原案が基になったものという認識で間違いないでしょうか?

KANAMI:はい! ツアーの期間内でワンコーラスだけでもネタになるものが作れたらいいねって話をみんなとしていて。何公演かやっていく中で、現地のご主人様お嬢様(ファンの呼称)と久しぶりにお会いできたこと、声出しができたこともすごく嬉しかったですし、皆さんの笑顔を見ていたら、こういう曲を作りたいな、と。みんなの心がハッピーになるような、あったかいバラードを作りたいなという気持ちになって、アメリカツアー中に仕込んでいった感じでしたね。ちょうどバラードっぽい曲が欲しいなと思っていたところでもあったので。もちろん、そのツアーから帰って来てから、日本のご主人様お嬢様にも、自分たちが感じてたあったかい気持ちを伝えられたらいいなって思いながら作っていって……最初の原案は、ちょっと恥ずかしながらツアー中にSAIKIに聴いてもらいました。

──恥ずかしながら、だったんですか?

KANAMI:はい。ツアー中に「こんなメロディを作ったんだけどどうかな?」っていうのを弾き語りで歌うのを聴いてもらって……あれは恥ずかしかったです(笑)。

SAIKI:そうやって初めて聴かせてもらった時、こっちもなんだかあったかい気持ちになりましたよ。サビにあたる部分を聴かせてもらったんですけど、ちょうど何公演かお給仕をして、ホントにみんなで「お給仕ってこういうものだったよね!」というのを思い出したりとか、懐かしんだりとか……そこで共有してた想いがぴったりと重なった感じだったので。だからまだサビしかない時点で「めっちゃいいじゃん!」と思ったし、実際、そう言いました。KANAMIの優しさも出てるし、メロがとにかく良かったので「これはどうなるか楽しみだね~」という感じで。

──SAIKIさんとしても、そろそろバラードらしいバラードというか、そういう曲が欲しいなという気持ちがあったんでしょうか?

SAIKI:そうですね。よくみんなで話し合うんですけど、そろそろまた、ご主人様お嬢様の心を揺さぶるようなしっとりした曲ができるといいな、ということは話していたので。そういう意味でも求めていたものにぴったりで良かったな、と思いました。

小鳩ミク:ミーティングみたいな場でも、そういう曲も欲しいねって話が出ていたし、以前からバラードと呼べる曲がBAND-MAIDにはほぼ無いみたいに言われがちだったので、この機会に1曲そういうものができるといいねって話はしていたんですっぽ。そのタイミングがちょうどアメリカツアーの時期に重なったので、その期間中に1曲、KANAMIが書くよって言っていたので、これは絶対にいい曲になるはずだって思ってましたっぽ。

──どこからどこまでがバラードなのかという線引きというのも人それぞれですよね。実際、いただいている資料には「アコースティックな味わいのミディアムナンバー」と書かれていて、バラードという言葉は使われていません。もしかしたらBAND-MAIDとしてはあまり正面からバラードというものに取り組みたいわけではないのかな、と感じさせられる部分も少しばかりあります。

小鳩ミク:特にそういう意識はないんですけど、今まで自分たちがバラードだと思ってた曲が、ご主人様お嬢様だったりスタッフの人たちから見たらバラードではなかった、みたいなこともあって。自分たちの線引きとのギャップが結構大きかったので、敢えてそう呼ばななかったというのもありましたっぽ。それを聴いてバラードと感じるか否かは、やっぱり聴き手の判断に委ねられるところなので、そういう意味であんまり「これはバラード」「これはバラードじゃない」みたいなことを言ってないだけですっぽね。

SAIKI:うん。だから特に意識はしてないんですけどね。

小鳩ミク:なんなら「Daydreaming」も最初、バラードだと思ってたっぽね?

SAIKI:バラードだよね、あれは。



──僕もそう思います(笑)。

SAIKI:ですよね?(笑)。でもそういう解釈って人によって違うから。だからバラードって結構難しいものなんだな、とは思ってました(笑)。

KANAMI:私としても、この曲はバラードという意識で書きました。今度こそバラードだと思っていただけたら嬉しいなと思います。

小鳩ミク:「about Us」を出した時も、「やっとBAND-MAIDがバラード出してくれた」みたいな声がありましたっぽ。

SAIKI:あの時は「ようやく大人になった」とか言われてなかった?

小鳩ミク:確かに言われてたっぽ(笑)!



──前回、アメリカツアーを振り返りながら話を聞いた時にはKANAMIさんが「ツアーを経て成長して、こういう曲もできるようになったんだね」と言われるようでありたいという発言をしていました。

KANAMI:わ、そういうこと言ってたんでしたっけ(笑)? でも、そうですね。

SAIKI:実際、成長したよね?

KANAMI:成長しましたよ(笑)。

小鳩ミク:あはは! 今のはなんだか言わされてる感があるっぽ。

KANAMI:でもホントにアメリカツアーは、久しぶりというのがまず大きくて、初心に戻ったところも含めていろいろ成長できたと思えてるから、それが帰って来てからの作曲にもすごく生きてるんじゃないかなって思います。

──そのツアーでの体験や過去の記憶に対する想いもあれば、この記念すべき10周年イヤーを忘れられないものにしたいという気持ち。「Memorable」というタイトルからはそうした意味合いも感じられます。

小鳩ミク:そうですっぽね。やっぱりせっかくアメリカツアーの最中に考えてきた楽曲なので、こうしてコロナ禍明けのアメリカで数年ぶりにツアーができたことに対する気持ちだとか、そこで感じたことを歌詞にも入れ込みたいなっていうのが大きかったので。そういう意味で、この曲を聴いた時に一個一個のお給仕の想い出とかが浮かんできたりすることになればいいな、という気持ちがありましたっぽ。想い出、想い起こされる画というのを考えた時に“memory”とかに類する言葉を考えて調べて、そこで「Memorable」という単語を見つけて。実際に現地のMCの中でもその単語を使ってたんですっぽ。実際に自分たちで発してきた言葉を取り入れたいなっていうのもありましたっぽね。観に来てくれたご主人様お嬢様だったら「あ、小鳩があの時に言ってた言葉を入れたんだな」とか「そういえばあの時こんなこと言ってたな」と思ってくださるんじゃないかなとも思ってますっぽ。

──MCではたとえば「きょうは“memorable”な1日にしましょう」みたいなことを言っていたわけですよね?

小鳩ミク:そうですっぽ、そうですっぽ。


──そこで面白いなと思ったのは“unforgettable”ではなく“memorable”だということ。同じ“忘れられない”という意味の言葉同士ではあれ、“memorable”のほうが“思い出に残る”というニュアンスが感じられるように思います。

小鳩ミク:そうですっぽね。柔らかいニュアンスがあるなっていう部分でそっちを選ぶことになって。今回のアメリカツアーは通訳さんがずっと一緒で、その方に相談をしながらMCの内容も考えてたんですっぽ。なのでその時に「忘れられない日にしたい」ということを柔らかい感じ、優しい感じで伝えたいというふうに言った時に、この単語はどうかって提案していただけて。すごく耳に心地いい響きの言葉だなって思ったので、それでこの言葉を使うようになったんですっぽ。

──今回の作詞は小鳩さんとSAIKIさん。そういったテーマを掲げたうえでお互い言葉を出していった感じだったんでしょうか?

小鳩ミク:大まかな部分を小鳩がひと通り全部書いたものをSAIKIに渡して、そこでSAIKI自身が入れたい言葉だったり、「この部分はこういうふうに変えたい」という要望とか修正希望だったりを出してもらって、そういうやりとりを何回かして作っていったんですっぽ。そういう形での共作をするのは結構久々だったので。2人がそれぞれ書くっていうのは「Unleash!!!!!」とかでもやってきましたけど、今回の「Memorable」に関しては初期の頃にやっていたような共作のやり方になりましたっぽ。

SAIKI:結構、言葉を言い換えたいところがあって。小鳩が元々書いてくれていたのが、もうちょっと難しいというか、もっといろいろな捉え方ができる感じだったんですけど、そこは敢えて焦点を狭めて伝わりやすい言葉にしたほうがいいんじゃないか、みたいな感じで提案して変えてもらいました。

──この曲の場合はさまざまな解釈に繋がることよりも、同じことがきっちりと伝わることを重んじたかったということですね?

SAIKI:そうですね。やっぱり3年ぶりのアメリカツアーを回ったこと自体が本当に忘れられない想い出になっているので。コロナ禍も経験して、アメリカではライブ本来の声出しが解禁になっていたこともあって……「今まで当たり前だったことがこんなに嬉しいんだ!」っていう衝撃があったので。来てくれた人があの日の夜を思い出せるような歌詞にしちゃいたいなというのがあって、そっちに寄せさせてもらいました。

──ガーデンシアター公演の際、この曲を歌い終えた直後にSAIKIさんが「ありがと」と口にしたのを憶えているんですが。

SAIKI:あはは! 言ってましたね。でもあの時、ホントに気持ち良かったんです。泣きそうになってましたし。これは当たり前じゃないことなんだなっていうのをホントに痛感したです。この瞬間を噛み締めたいなと思って……もう、いろんな人の顔を見ちゃいました(笑)。

小鳩ミク:ウルウルしてるご主人様お嬢様も多かったですし、感極まってらっしゃる様子が見えたりもしてたので、その様子を目にしてると結構こちらもつられそうにはなりますっぽね。

SAIKI:私、結構集中して歌うタイプというか歌の世界に入り込む感じなんですけど、この「Memorable」を歌った時は、より多くの人の視線を頂戴してそれをこちらからも返す、みたいな。そういう感覚ではありましたね。みんなの顔を目に焼き付けたいなっていうのがすごくあったので、ずーっと見てました。

KANAMI:ガーデンシアターでこの曲をやった時は「皆さん喜んでくれるかしら?」っていう不安が少なからずあって。新曲を披露する時は毎回、それこそ配信(オンラインお給仕)の時とかでも緊張しちゃうんですよね。大丈夫かなあ、楽しんでいただけるかなあって。でもお客さんのお顔を見てたらウルウルしてる方もいらしたし「あ、これは多分ちゃんと届いてるな」と思えたので、嬉しかったです。

小鳩ミク:小鳩はこの曲でアコギを弾いてるんですけどっぽ……。

SAIKI:久々じゃない?

小鳩ミク:久々だったっぽ。お給仕でアコギを弾くっていうこと自体がかなり久しぶりだったので、まず小鳩がアコギを持った時点でご主人様お嬢様が「おっ!」という顔をしてザワザワされてたことには気付いてて。ちょうど曲間にMCも何もない無音状態だったので、そのザワザワ感によって一音目を出す瞬間はかなりビビり散らかしてましたっぽね(笑)。「わぁ、大丈夫かな。みんなすごくこっちを見てるっぽ」みたいな(笑)。

SAIKI:あの時、小鳩の肩がすごく上がってた(笑)。

小鳩ミク:緊張が肩に出てましたっぽ(笑)。でもいざ始まってみたら、ミディアムテンポの曲ということもあって、アコギを弾いてる時のほうが私としてはどちらかというとご主人様お嬢様の顔をいつもよりゆっくり見渡せるというか。そうじゃない曲の時って小鳩はだいぶ激しく動いてたりするので、客席をゆっくり見るってことがなかなかないんですっぽ。この曲ではそれができたし、もちろん初披露だったからこそ反応がいっそう気になるというのもあったんですけど、「こういう気持ちでアメリカに行ってきたんだよ」「今日も同じような気持ちだよ」というのが伝わるといいなと思いながらやってましたっぽね。

──客席の皆さんと目を合わせながら、想いを分かち合いながら演奏する曲。「Memorable」はこれから先もそういう曲になっていきそうですね。

小鳩ミク:そうですっぽね。もちろん他の曲もそうですけど、「Memorable」は特にそうじゃないかなって思いますっぽ。

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