【コラム】THE FOOLSドキュメント映画の衝撃、40年近い活動歴と度重なる逮捕や相次ぐメンバーの死に充満する“本当さ加減”

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バンドの終わりはボーカリストの死。それだけだったらロックの歴史では珍しくない。けれども1980年に結成されたバンドが以後、20人近いメンバーが、死亡も含め入れ替わり立ち代わりしつつ持続し、ついに2017年ボーカリストの獄中死で終了、というのはマレなケースだろう。特に日本においては。そんなバンド、THE FOOLSのドキュメンタリー映画『THE FOOLS 愚か者たちの歌』が現在公開中だ。

◆『THE FOOLS 愚か者たちの歌』画像

同映画のオフィシャルサイトを見ると俳優の浅野忠信、田口トモロヲをはじめ実に様々な分野の人間が熱いコメントを寄せている。映画本編中でも甲本ヒロトが「何かができるってことを自慢するバンドじゃない。“本当”なかんじがした」と語っていたりする。たしかに! この作品にはメンバーたちの本当さ加減が充満しており、そこが広く見た人を強く魅了するのだと感じた。


そういう意味ではこの作品、単なる音楽映画ではない。もちろん音楽好きだったらTHE FOOLSの、ストーンズ的なロックンロール・テイストと同時にファンクビートでぐいぐいグルーヴする一面にも注目してしまうだろう。

その上で、特にボーカルの伊藤耕の生き方に着目すれば、同じ人間として自由に生きることの意味を考えてしまう。映画では冒頭、彼の何度目かの出所シーンから始まる。最近ではいろんなラッパーが同様な場面をYouTubeで公開していたりするが、どんな強面ラッパーであってもカメラの前では衒いを隠せない。その点、伊藤は底抜けな陽気さで登場する。

バンドが流れに乗りそうになると捕まってしまう伊藤。となれば残されたメンバーは大変だ。本作では彼らの葛藤も余すことなく捉えている。そういう意味では度重なるバンドメンバーの死も同様。が、不思議なもので、40年近い活動歴の中で当たり前のように巻き起こる事件の数々はやがて、人生につきものの障害物競争のようにも見えくる。そう思えて以後は、爽やかな気分だった。伊藤の獄中死のくだりも人生のゴールのテープを切った彼の姿が浮かんだ。



本作を監督した高橋慎一さんは音楽〜オーディオ系のカメラマンであり、ライターでもある。2015年にはキューバ音楽に焦点をあてた作品『Cu-Bop』で海外でも高く評価されている。そして今回は約10年にわたって取材をしたのだそうだ。

が、本作の読後感“…”は10年分ではない。'80年からのバンドの足跡をきっちり追体験した気になる。それは10代のころからTHE FOOLSのファンだったという高橋さんが込めた想いのなせるワザなのだろう。

なお、今後の公開スケジュールに関しては同映画のオフィシャルサイトを参照して欲しい。

取材・文◎今津 甲

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