【ライブレポート】新生BABYMETALの幕開け「道なき道を進んでいきます！」

2023年4月2日、神奈川県・ぴあアリーナMMで開催されたBABYMETALの＜BABYMETAL BEGINS - THE OTHER ONE -＞“CLEAR NIGHT”は、新生BABYMETALの幕開けをファンの歓喜の声が包みこみ、圧倒的な祝祭空間と化していた。まるで新たな天地創造の夜のように。

今回の公演は、前日の4月1日にも“BLACK NIGHT”と銘打って行われ、棺の前に新衣装でメンバー3人が立ち、終演。そして4月2日午前0時、公式サイトのバイオグラフィーが更新され、SU-METAL、MOAMETAL、MOMOMETALの写真と名前が掲載された。それを受けて4月2日の公演は、新章の幕開けに胸を踊らせるファン1万人が詰めかけ、その歓声がフロアを揺らさんばかりに轟いた。10周年を機にライヴ活動を封印した後、2023年1月に幕張メッセ国際展示場でのワンマンライヴで復活したBABYMETAL。彼女たちが新章へのページをめくろうとしていることに、ファンたちは開演前から興奮を隠さなかった。

赤い光が会場を埋め尽くすなか暗転すると、後光が差し、SU-METAL、MOAMETAL、MOMOMETALが、巨大な玉座とともに登場。ファンの歓声が、まるで歓待の叫びのように響く。そして、3月24日にリリースされたばかりの最新作『THE OTHER ONE』の冒頭を飾る「METAL KINGDOM」が始まると、会場はいきなりシンガロングの渦に。ハードになるサウンドとともにフロアも急激に高揚していく。

「Road of Resistance」では、イントロが鳴った瞬間に、フロアにサークルが形成されはじめた。私が数えただけでも8個。圧巻である。メンバーはフラッグを掲げ、ステージでは炎が吹きあがる。ファンが突きあげる拳は、まるで海原のように広がった。SU-METALが「道なき道を進んでいきます！」と宣言し、「みんなの声、聞かせてください！」と呼びかけると、1万人の歌声が会場に響いた。

「いいね！」では、シリアスさやヘヴィさだけではなく、キュートさもメタルダンスユニットであるBABYMETALの本領発揮だと感じさせられる。タイのラッパーをフィーチャーした「PA PA YA!! (feat. F.HERO)」は南国感に満ちており、さらに炎も吹きあがり、会場はまるで熱帯に。

『THE OTHER ONE』からの「Mirror Mirror」は、テクノのイントロから雄大なスケールへと展開していく濃密さをたたえていた。同じく『THE OTHER ONE』からの「Light and Darkness」は、BABYMETALと神バンドによる生身のダイナミックな歌声、ダンス、演奏を満喫させる。ドラマティックに「生」を描きだすのだ。レーザーが青い海をフロアに現出させ、さらにレーザーが激しく明滅しながら飛び交い、「Light and Darkness」のパフォーマンスは幕を閉じた。

「KARATE」では、ステージ上に3人組が左右に2組登場した。1組はもちろんBABYMETAL。そして謎のもう1組が登場するのは、幕張メッセ国際展示場のときと同様だ。まるでパラレルワールドのBABYMETALのような存在である。ギターのアルペジオのパートにはリリカルさがあり、そこからシンガロングへと流れ込んだ。

『THE OTHER ONE』からの「Monochrome」は、SU-METALが歌いあげるサビのメロディーに美しい儚さがあり、このライヴでもシンガロングが湧き起こった。彼女が「この暗い世界をみんなで照らしてほしい！」と呼びかけると、ファンはスマートフォンの灯りで照らし、それは光の草原のように広がった。

やはり『THE OTHER ONE』からの「METALIZM」は、エスニックなヴォーカリゼーションを多用した楽曲であり、ライヴでも異彩を放つ。「Distortion (feat. Alissa White-Gluz) 」では、サークルが発生し、その光景がステージ上のモニターにも映だされた。

『THE OTHER ONE』からの「Divine Attack - 神撃 -」は、SU-METALが作詞した楽曲。それゆえに、彼女の生身から放たれるヴォーカルの言葉の強靭さを体感させた。また、静と動のコントラストも、この楽曲をより魅惑的なものにしている。「THE ONE」では、穏やかに、そして艶やかに歌うSU-METALの両脇にMOAMETALとMOMOMETALが寄り添った。そして、メンバーとファンは、フォックスサインの拳を高く掲げていく。

少し間をおいて、映像とナレーションが流され、「首の準備はできているか？」とファンに問いかけた。そして始まった「BABYMETAL DEATH」では、花火がステージ上で炸裂。さらに「SU-METAL DEATH!!」「MOAMETAL DEATH!!」「MOMOMETAL DEATH!!」と、3人の自己紹介が繰り返された。特に大きな歓声が上がっていたのがMOMOMETALであったことは言うまでもない。BABYMETALは過去を乗り越えて未来へと向かうという表明のような一曲だった。

この日の最後は、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」。会場を震わせるほどのコールが響き、サビではメンバーとファンが一斉にジャンプ。そして、BABYMETALは「We are!!」「BABYMETAL!!」のコールアンドレスポンスをファンと繰り返し、ファンはBABYMETALのフラッグを高く掲げ、ステージ上での火薬の大爆発とともに終演を迎えた。

終演後には、新生BABYMETALについて映像とナレーションが流され、ワールドツアーではSabatonとのヨーロッパツアーに加えて、アジア、オーストラリア、アメリカにも向かうこと、そして日本でのフェス出演や2024年のツアーファイナルもアナウンスされた。

BABYMETALは、2023年3月に人気YouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」に出演し、「Monochrome - Piano ver. 」を披露し、SU-METALとMOAMETALのヴォーカルは高い評価を受けた。さらに『THE OTHER ONE』はiTunesのメタル・アルバムで1位を獲得するなど、グローバルな人気も揺らいでいない。それでもなお、SU-METAL、MOAMETAL、MOMOMETALの3人は、ライヴで語ったように「道なき道」へと歩みだそうとしている。＜BABYMETAL BEGINS - THE OTHER ONE -＞のパフォーマンスは、なおも変化を続けようという意気込みに溢れており、圧倒されたほどだ。その姿勢こそが、この日のBABYMETALとファンの熱狂的な交歓を生みだしていたのだ。

Text by 宗像明将
Photo by Taku Fujii
Photo by Takeshi Yao

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