【ライブレポート】新山詩織、ツアー<何者 ~十年十色~>ファイナルで「皆さんの声、レスポンスが欲しい」

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新山詩織が4thアルバム『何者 〜十人十色〜』リリースを記念して東名阪ツアー<新山詩織 Live 2023『何者 ~十年十色~』>を開催した。7月14日に愛知・BL cafe’、7月15日に大阪・ヒルズパン工場、7月21日に東京・SHIBUYA PLEASURE PLEASUREで実施された同ツアーよりファイナルとなった東京公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。

◆新山詩織 画像

一時離れていた音楽の世界に復帰してから2年。フルアルバムとしては実に6年半ぶり、7月5日にリリースしたデビュー10周年記念アルバム『何者〜十年十色〜』を引っ提げて行われたツアーが<新山詩織 Live 2023『何者 ~十年十色~』>だ。音と映像が絡み合い、さらに深みと攻めの世界観が増したファイナルでは、10月にアコースティックツアーが開催されることも発表となった。

この日は、後輩にあたるレーベルメイトのRanがオープニングアクト。新山詩織もお気に入り曲だという「sheets」をはじめ、3曲を披露するなど、初々しくも堂々としたパフォーマンスで会場を温めた。

その後、開演までのひと時に流れたBGMは、The Birthday、THEE MICHELLE GUN ELEPHANT、The pillows、BUMP OF CHICKEN、ART-SCHOOLなど。新山詩織が影響を受けてきたフェイバリットソングに触れられるこの時間も、毎回ファンの楽しみの一つになっている。


そして、いよいよ本編がスタート。和久井沙良の幻想的なピアノ演奏に乗って登場した新山詩織は、盛大な拍手を浴びながら颯爽とステージ中央へ。白いノースリーブのブラウスにすらりとしたパンツルック、かなり明るめのカラーリングにウェーブがかかったヘアスタイルがぐっと大人っぽくなった印象だ。

1曲目はニューアルバムから「Spotlight」。表題曲「何者」と共にキーになっているというナンバーだ。ジャジーなサウンドに横揺れしながら、心地よいヴォーカルをハンドマイクで響かせる新山詩織。冒頭からこんなにもラフで動きのある彼女を見るのは初めて。アルバム『何者〜十年十色〜』は、誰しもが抱える心に負った“かすり傷”をテーマに、それをあえて隠さずさらけ出した作品でもある。気持ちを解放したことでステージングにも変化が表れているのだろう。様々な変貌にワクワクが止まらない。

2曲目は「アーティストとしてのターニングポイントとなった曲」と自らが語る「絶対」を披露。愛器ギブソン製ES-335を鳴らしながら、魂を震わせて歌う姿に、この曲がいかに彼女にとって大切な存在であるかを感じさせられた。


「先週の名古屋、大阪に続き、ここ渋谷PLEASURE PLEASUREに立てることを本当に楽しみにしていました。何より今日は、新曲をがっつり含めたセットリストになっていて、皆さんからの声、レスポンスが欲しい曲がたくさんあるので、最後まで楽しんでいってください」──新山詩織

客席を明るくしてオーディエンスの顔をしっかりと見ながら丁寧に語りかけた後は、部屋で一人過ごす日常シーンを切り取った2曲へ。まずは、20歳で初めて一人暮らしをした際、ホームシックになってしまった時に作ったという「ワンルーム」。アコギの優しいストローク、ファルセットと地声が行き来する素朴な歌声が味わい深い。続く「夜の魔法」はニューアルバムからのナンバーで、スクリーンには歌詞とシンクロするアニメーションが映し出された。肩の力が抜ける軽快なサウンドに自然と手拍子が起こり、新山詩織も笑顔を浮かべるなど楽しげだ。曲終わりには客席から「イエーイ」と歓声が起こる盛り上がりをみせた。

そして、新山詩織と和久井沙良以外のサポートメンバーは一旦退場。創造性豊かなピアノのインプロビゼーションから「I can’t tell you」へ。相性も呼吸もぴったりの二人は、互いの感情の波を重ね合わせながら深遠な空間を作り上げる。曲終わりで「ヒュ〜!! ブラボ〜!!」の歓声がここでもまた響いた。

「この曲は去年9月のアコースティクライブのツアーで、(和久井)沙良ちゃんと何度もいろんな場所で披露してきたのですが、改めて今日ここで歌うことができて本当に嬉しいです。前回は配信リリース後の披露で、今回はアルバム収録曲としての披露ということで、また違った気持ちで演れました。とにかく沙良ちゃんのイントロが凄すぎて、ずっと聴いていたい(笑)!! 本当に素敵で感謝しかありません」──新山詩織

この言葉に「ちょっと長すぎたかな?」と、ツアーのバンドマスターを務める和久井沙良が、少し照れた様子。そんなアットホームな雰囲気の中、イシイトモキ(G)も加わり、ニューアルバムの中で唯一のバラード曲「あなたに」をオリジナルとは異なり、ピアノとアコギと歌のみのシンプルなアレンジで披露した。ラブソングが少ない新山詩織作品の中で、美しく尊い恋心を鮮やかに描いた今作が、トリオ編成によって新たな一面をみせた場面だ。


新山詩織のツアー初参加となるまきやまはる菜(B)と山近拓音(Dr)がステージに戻って、再びバンド編成に。新山詩織のアコギ弾き語りで静かに始まったのは、盟友・山崎あおいとの共作「Free」だ。儚く伸びのあるピュアな歌声、それに寄り添う情感たっぷりのギターソロも秀逸である。

中盤は「Do you love me?」「Keep me by your side」とミディアム調のゆったりしたナンバーが続く。アルバム収録されたこの2曲は、日々の中で感じる“寂寥感”や“生きづらさ”が綴られた歌詞だが、ハートフルなアレンジと包容力のある演奏が、“大丈夫、無理しなくていいんだよ“と優しく包み込んでくれるような安心感と居心地の良さを与えてくれる。

ここから一気にギアチェンジ。それまでの柔らかな照明から一転、真っ赤なライティングに色を変えたフロアにノイジーな爆音が轟くと、新山詩織は激しく客席を煽る。

「ここからは皆さん立ってもいい時間です。最後まで一気に盛り上がっていきますが、皆さん行けますか!?」──新山詩織

アッパーな楽曲を連打する後半戦はまず、2ndアルバムに収録されたロックナンバー「Dear friend」で会場のボルテージを急上昇させる。これには、じっと聴き入っていたオーディエンスもスタンディングで拳を振り上げ、手に持ったタオルを振り回すなどで応えた。それでもなお「皆さん、もっと行けるんじゃないですか!?」と促す新山詩織は、自身もES-335をかき鳴らしながら気迫のこもったプレイを披露した。

ホーンをフィーチャーしたノリの良いロックンロール「Hate you」は、しゃくに触る相手に向けて“あなたが嫌い”と繰り返す歌詞を生々しいヴォーカルで痛快に歌い切った。熱量が増し続ける中、ニューアルバムから新境地を窺わせるファンクテイストな「約束」へ。フロア全体に響くクラップに、巧みなヴォーカリゼーションで応える新山詩織。曲間ではソロ回しをしながらのメンバー紹介もあり、客席とステージの一体感は一層の高まりを見せた。

「皆さん楽しんでますか? あっという間に次の曲で最後になります。ニューアルバムの中でまだ演ってないこの曲をラストに持ってきました。この曲で皆さんと最後盛り上がっていきたいと思います!」──新山詩織

そう語って現在の心の内を最もリアルに投影した「何者」を投下。歯切れの良いバンド演奏が生み出す立体サウンド、揺るぎない歌声、クールに決まったポエトリーリーディングもカッコ良く、この日のクライマックスを迎えて本編は幕を閉じた。


鳴り止まぬアンコールに応じてツアーTシャツ姿で再登場した新山とメンバーたち。センターに立つ新山詩織にスポットライトが当たり、「ふっ」っと大きく息を吸い込んだ後、弾き語りで「だからさ」を歌い始める。10年前のアーティストデビュー曲をアンコール1曲目に配置するという原点回帰の趣も漂わせつつ、2番からはバンドが加わり、どっしりと叙情的な歌声をフロアの隅々にまで響き渡らせた。

そしてツアーを締めくくるラストナンバーはデビューシングル「ゆれるユレル」だった。明るくなった客席を広く見渡しながら、バンドと一丸となって伸び伸びと歌い、開放感溢れる晴れやかなエンディングを迎えた。

ライブ後は、8月にMaica_nとのスプリットインストアツアーが決定したこと、去年好評を博した和久井沙良とのアコースティックライブを10月に開催することを発表した。デビュー満十年。アルバムタイトル通り“十年十色”の経験を重ね、音楽性を培ってきた新山詩織は、表現者としての成長を鮮明に浮かび上がらせて、今後も進化を重ねていくはずだ。

撮影◎達川範一(B ZONE)

■<新山詩織 Live 2023『何者 〜十年十色〜』>7月21日@渋谷 PLEASURE PLEASURE セットリスト

01. Spotlight
02. 絶対
03. ワンルーム
04. 夜の魔法
05. I can’t tell you
06. あなたに
07. Free
08. Do you love me?
09. Keep me by your side
10. Dear friend
11. Hate you
12. 約束
13. 何者
encore
en1. だからさ
en2. ゆれるユレル

▼サポートメンバー
和久井沙良(Key&ライブアレンジ)
イシイトモキ(G)
まきやまはる菜(B)
山近拓音(Dr)

■<新山詩織 アコースティックツアー>

10月14日(土) 北海道・札幌 くう
10月15日(日) 東京・ブルースアレイジャパン
10月21日(土) 愛知・BL cafe
10月22日(日) 大阪・ヒルズパン工場
出演:新山詩織(Vo, Ag) / 和久井沙良(Pf, Key)

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