【インタビュー】“ノラ from 今夜、あの街から”、2つの物語を持つ初ソロ曲完成「歌うことが創造の原点」

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■自分で歌いたいと思って作ってるけど
■自分が歌える曲は作ってない


──では新曲「Chase Me」について聞かせてください。“ノラfrom今夜、あの街から”名義でリリースしたのはどうしてなんですか?

ノラ:アニメ(TVアニメ『レベル 1 だけどユニークスキルで最強です』)のオープニングにふさわしい曲を書くというのが前提だったんですが、同時に“今夜、あの街から”の作品でもあるんですよね。“今夜、あの街から”はノラとレイラの生き様を楽曲を通して描いてきたわけで、そちらの物語も進めなくてはいけない。アニメとのバランスを考えたときに“今夜、あの街から”のノラにフォーカスしたほうがいいなと思って、今回は自分一人で歌うことにしました。作詞は大変でしたね。すべての言葉がダブルミーニングにならないといけないし、めちゃくちゃ苦労しました。

──1曲のなかに2つの物語が流れているわけですからね。

ノラ:そうなんです。“今夜、あの街から”のノラくん、アニメの主人公の佐藤亮太くんのどちらの立場からも成立していて、どちらの世界にも矛盾が生じちゃいけないので。面白い曲になったと思うし、楽しんでもらえるんじゃないかなと思ってます。


▲「Chase Me (VOCALOID version)」

──ノラくん目線では、どんな物語を描いているんですか?

ノラ:“今夜、あの街から”のスピンオフ的な楽曲という位置づけですね。ストーリー的には、相方のレイラに会う前のことを描いていて。“今夜、あの街から”の最初の曲「ショウニントウソウ」は二人が一緒に活動しはじめるところから始まるので、その前日譚という感じです。“僕を見つけてくれ”と発信して、もがいているというか。

──ではアニメ『レベル 1 だけどユニークスキルで最強です』の主人公・佐藤亮太の目線に立つと?

ノラ:亮太くんはブラック企業に勤めていたことがあって、すごく辛い過去を持ってるんです。それゆえの優しさ、強さがあって、転生後の世界でも周りの人たちを幸せにしていく。それを踏まえて「Chase Me」には“辛い経験があって人は優しくなれるし、強くなれる” “ひどい世界だけど頑張っていこう”というメッセージも込めています。

──なるほど。「Chase Me」の歌詞には、ノラさん自身の経験も入ってるんですか? それとも完全に切り離している?

ノラ:あくまでもアニメから着想を得て書いた曲なんですけど、図らずも自分の経験にも重なるところがあったんですよね。自分は言ってみれば“今夜、あの街から”のノラくんの中の人で、ブラック企業に勤めたことはないんですけど、曲作りで徹夜は当たり前だし、似たような生活をしていることもあるので。あと、自分は以前“成宮亮”名義で曲を発表してたんですけど、アニメの主人公と名前の漢字が一緒だと思って(笑)。

──確かに(笑)。もちろん“ノラくん”自体にも、自分自身が反映されている?

ノラ:それも当初はあまり意識してなかったんですけど、作っていくうちに“自分だな”と思うようになってきました。ノラくんはやりたいことはめちゃくちゃあって意志も強いんだけど、実は優柔不断で、なかなか踏み出せないというキャラクター設定なんですよ。最初は“このキャラクターを演じよう”と思ってたんですけど、今は“すっかり自分だよな”と。


(c) 三木なずな・講談社/「レベル1」製作委員会

──「Chase Me」はサウンドメイクもすごく個性的ですよね。

ノラ:ありがとうございます。特に指定はなくて、アニメのイメージに合わせて作らせてもらいました。OKをもらってからアップデートしましたけど、デモの段階で8割くらいは出来上がってましたね。

──ギターもかなり重なっているし、ピアノやベースのフレーズも目立っていて。主役が何人もいる状態というか。

ノラ:音数は多いですね。「入れ過ぎ」って言われることもあるんですけど(笑)、どうしても入れたくなっちゃうんですよね。そうすることで何度聴いても飽きない曲になるのかなと。アレンジも一人でやってるので、好きなように作らせてもらってますね。

──そうやって積み上げていくことが好きなんでしょうね。

ノラ:そうですね。ゲームもよくやるんですけど、“時間をかけたり、がんばった分だけ強くなる”という感じが好きなので。

──ちなみに「Chase Me」は生演奏できるんでしょうか?

ノラ:できない可能性は全然ありますね。それもボカロPらしさだと思うんですけど、演奏できることを前提にすると、どうしても幅が狭まっちゃうんですよ。なので作ってるときは生演奏することを意識しないようにしてます。もしかしたら腕が4本くらいないと弾けないかもしれない(笑)。

──ボーカルも当然、難易度が高いですよね。

ノラ:はい、めちゃくちゃ高いと思います。何て言うか、常に“自分で歌いたい”と思って作ってるんですけど、“自分が歌える”曲は作ってないんですよ。そこも挑戦というか、やりたいことでもあって。難しい曲を歌いこなせたら気持ちいいじゃないですか(笑)。制作中はいいメロディを作ることしか考えてなくて、“歌うときはどうにかなる”と勝手に思っているというか…。「Chase Me」の歌のレコーディングはすごく時間がかかって。歌も一人で録ってるんですけど、“これ作ったの、誰だよ!?”って何回も思いましたね(笑)。

──自宅のスタジオで?

ノラ:そうです。家に簡易防音室みたいなものを作っていて、そのなかで歌ってます。

──ミックスまでご自身でやってるんですよね。

ノラ:はい。「Chase Me」はトラック数がめちゃくちゃ多くて、“この音をイジりたい”と思っても探すのが大変なんですよ。まとめるのがいちばん大変な曲だったけど、今までいちばん良くできたんじゃないかなと。プロの方にお願いすれば、いい音になると思うんですけど、自分らしいサウンドにはならないじゃないですか。だからこそ、自分でやる意味があるのかなと。


──ミュージックビデオに対してもアイデアを出してるんですか?

ノラ:そうですね。イラストを誰に頼むかとか、どんな内容にするかも考えて。「Chase Me」のイラストは“ひのつかさ”さんという方にお願いしたんですが、「こういう構図にしてほしいです」という参考になるようなビジュアルをお送りしました。ノラくんがビルの屋上にいて、街を見下ろしながら、自分のことを見つけてくれる誰かを持っているというイメージだったんですけど、すごくいい形で表現していただけました。動画に関しても「こういうことを表現したいです」ということはお伝えしていますね。

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