Hakubi主催<京都藝劇 2023>、過去最大のスケールで見せた夢の途中「私たちは絶対に忘れないし、あなたたちも忘れない日になっていてほしい」

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Hakubiが主催するライブイベント<京都藝劇 2023>が、8月11日に京都・KBSホールで開催された。

◆ライブ写真

今年は初の2ステージ制で実施出演キャンセルとなったHump Back、あるゆえを除いた、Hakubi、KALMA、G-FREAK FACTORY、TETORA、ROTTENGRAFFTYの5組が「右近ステージ」に、Hyuga、Brown Basket、RAINCOVERの3組が「左近ステージ」に登場。当日に向けて片桐(Vo, G)が、「<京都藝劇 2023>は、Hakubiの3人の大切なタイミングに刺激を与えてくれたバンドが集まってくれました。夢の続きであり、夢の途中であるこの日、目撃してください」と意気込み、年に一度の盛大な宴が過去最大のスケールで実現することになった。


<京都藝劇>は毎年ラインアップがガラリと変わるのも見どころの一つだが、TETORAは唯一の3年連続の出演。それだけで、彼女たちとHakubiとの盟友関係が分かる。昨年はトリ前でHakubiに強烈な刺激とプレッシャーを与えたが、今年は「<京都藝劇>はTETORAから始めます!(上野羽有音)」と「Loser for the future」で熱量たっぷりにイベントの幕開けを告げる。冒頭から「もう立派な大人」「言葉のレントゲン」「バカ」「嘘ばっかり」「素直」と容赦なく畳み掛け、これぞライブバンドの疾走感と焦燥感をガソリンに、弾丸のごとき一体感でどこまでも突っ走る。


翌日に北海道での大事なフェス出演を控えながらも駆けつけ、「ガラガラのライブハウスで、一緒に対バンしてた同い年のHakubi。全バンドが見られるタイムテーブルで、フェスと言うより対バンやと思ってます。最後のHakubiまで全バンド体感してみてください!」と、誰よりもHakubiの思いを理解し代弁するMCにもグッとくる。クライマックスも「わざわざ」「イーストヒルズ」と一心不乱に爆音をかき鳴らし、「Hakubiが本気やから、それを知ってるから。仲良しごっこじゃなくて、ショーでもなくて、戦友やからただ本気でやる!」と、全身全霊で右近ステージをブチ上げたTETORAだった。


「フロム京都、ローカルプライド、俺たちがRAINCOVERだ! ここをKBSホールじゃなくライブハウスに変えようぜ!(辻出凌吾)」

初出演の気負いや緊張などまるでない堂々のたたずまいで、1曲目の「コントレイル」からぶちかましたのは左近ステージのトッパー、RAINCOVERだ。「曲なんか、俺らのことなんか知らんでええねん。ちょっとでも心が揺さぶられたら体を動かそうぜ!」とほえれば、最後尾まで手が挙がるパンパンの左近ステージ。


「他人のイベントじゃなかったら自販機の上にも人を乗せてたと思います(笑)」と笑うのも納得だ。1stミニアルバム『Vanilla』の収録曲「ナイトライダー」「ボーイズソング」やライブの定番曲「秘密基地」、「Hakubiのマツイ(ユウキ・Dr)にやってくれと言われたんで」と「木屋町」「青い歌」ではモッシュも起きるなど、もらったチャンスに見事に応えた完全燃焼の25分間だった。


畑山悠月(Vo, G)の第一声から右近ステージをブチ抜く「Millennium Hero」で圧倒したのは、北海道出身のスリーピースロックバンド、KALMAだ。その後も、高速ドライブするベースラインに昇天必至の「隣」、「Hakubiの片桐さんが僕らを<京都藝劇>に誘ってくれたのは2022年12月31日。あの大みそかから今日までずっと妄想してました!(畑山)」となだれ込んだ瞬殺パンクの「モーソー」と、個性しかない楽曲群で翻弄していく。

「Hakubiと出会った3年前より、今の俺たちはカッコ良くなってるかな、ちゃんと進化できてるかなと考える。これと言ったヒット曲を生み出してもないし、ツアーをやっても即完するバンドでもない。でも、愛してくれるお客さん、バンド、ライブハウスがあるから、俺たちは何とかやれてる。そう思えるだけで一つの進化なんじゃないかって、今思っちゃった。それを今日この35分間で、ロックバンドなんだから、生のライブで証明する!」


有言実行の「ねぇミスター」「1分間の君が好き」と、生き急ぐようにエナジーを爆発させる北のアンファンテリブルは一転、「2017年、高校2年生のときに書いた歌」と始まったメロウでノスタルジックな「年上の、お前」で、ソングライターとしての確かな手腕も提示。重いドラムとサビのリフレインが心地良いミドルチューン「アローン」も素晴らしい限りだ。

危なっかしいピュアネスを背負った「逃げるなよ、少年!」も3人のシンガロングが爽快感抜群で、「夏の奇跡」で終わると思いきや「あと50秒あったから最後にもう一回!」とおかわり「モーソー」をぶっ込むなど、最後の一秒まで魅了したKALMAだった。


そして、ここからの右近ステージはレジェンド級のライブアクトが続く。青い光に包まれたKBSホールにG-FREAK FACTORYが現れるや、自ずと沸き立つ満場のクラップ。言葉を交わさずとも会場一体となって作り上げられていく「Too oLD To KNoW」から、茂木洋晃(Vo)が雄たけびを上げれば、見渡す限りの拳が目の前を埋め尽くす。理屈抜きに魂でつながる大合唱の中、「Fire」でも厳かなギターの音色とリリックが心臓を突き上げる。かと思えば「REAL SIGN」の躍動するビートとリフにたぎる高揚感と、体の奥底に侵食し命を沸騰させる唯一無二のパフォーマンスには、ただただひれ伏すのみ。

MCでは「ROTTENGRAFFTYとオーバーエイジ枠でこの場所をようやく勝ち取ってます(笑)」(茂木)とユーモアを交えて言ってのけ、「らしくあれと」を切々と届けていく。続いて、「人間は忘れます。忘れるから生きていける。でも、忘れられないくらい強烈な思い出を作ることができないかなと、今日も俺はステージに立ってます。音楽という平和な武器を使って、皆さんと一緒に1ミリでもいいから何かを分かち合って……トラウマになるぐらい最高な思い出、KBSホールで作って帰ってください!」と、8月15日=終戦の日を前に決して当たり前ではない平和を思い、「ダディ・ダーリン」を歌い上げる。


楽曲でもMCでもとにかく心にブッ刺さるメッセージの連続で、「20代ではかなく散るのがバンドだと思ってた。ところが俺はもうすぐ50歳。まだやれてる。まだ行こうとしてる。どんなにみっともなくても、必ずまた会いに来ます。ありがとうHakubi!」と、「GOOD OLD SHINY DAYS」でも絶えず絶景を生み出し続けたG-FREAK FACTORY。Hakubiに「10-FEET、ROTTENGRAFFTYをとっとと超えろ!」と熱いエールを送った、いまだ前進する群馬の雄の誇り高き伝説は、まだまだ終わりそうにない。


一方、左近ステージでは、滋賀発のソロアーティスト・Hyugaが、「この景色を日本中のフェスで当たり前にしていくので」と宣言し、「舞台は晴れ」「慕詩手帳」と切なる思いを刻み付けたフロウを放射。いかんともしがたい感情に打ちひしがれながらも、このままでは終われないと未来に手を伸ばすように、そのうそ偽りのないエモーションが問答無用に訴えかけてくる。親友のために書いたというウエディングソング「愛来る」にすら、彼の生きざまがにじみ出る。


「どんな思いでここまでたどり着いてくれたか計り知れないけど、出会ったことには必ず意味があると思うんです。どんなに時間がかかったとしても、それに気付くためにこれからも歌っていこうと思います」と誓った「26」や「蒼く燃える」しかり、彼にとってのMCはもはや詞であり願いである。シームレスなトラックに紡いだHyugaの人生劇場、ラストはその名も「セカンドステージ」。一人の表現者の紛れもない再生の地点がそこにはあった。


全くの助走なしでこの日のピークに瞬時に到達したさすがのROTTENGRAFFTYは、「秋桜」「D.A.N.C.E.」の2連発からエグいぐらいの盛り上がり。右近ステージを熱狂の渦に巻き込み、トップスピードで天井知らずの熱気を引き上げていく。分かっちゃいたが、Hakubiはとんでもないラウドモンスターを自らの出番の前に据えてしまった……そんな敗北感に襲われそうな「ハレルヤ」の破壊力たるや壮絶極まりない。「ハッキリ言ってHakubiのイベント、もっともっとテンションが高いと思ってました。京都のロットンが来てんねんぞ。お前らのホンマの顔を見せてくれ!」とオーディエンスのアドレナリンを一滴残らず絞り出し、「THIS WORLD」に突入。KBSホールがぶっ壊れそうな音圧でモノの違いを見せつける、ROTTENGRAFFTYは最狂にして最強だ。

「Hakubiは<ポルノ超特急>もとい<響都超特急>、ツアーにも出てくれて、やっと恩を返せました。<京都藝劇>、死ぬまでやり続けてください。でもな、京都は難攻不落。テッペン獲るにはまだまだまだまだ……!(N∀OKI)」


見る者に安息など与えない間髪入れずの爆裂「零戦SOUNDSYSTEM」のめくるめく重低音にぶちのめされ、和テイストの轟音頭「響く都」に踊らされ……。脳天直撃のハイボルテージアンセム「金色グラフティー」ではダイバーが大量発生。「京都のバンドには、俺らは絶対に負けません。いつまで経ってもライブハウス最強バンドはROTTENGRAFFTYやと言わせるぐらい、これからもやっていくんで(NOBUYA)」と言い切った、京都の途方もなく高くて厚い壁が、鋼の背中を見せてくれたすさまじいライブだった。


TETORAと共に<京都藝劇>に再度出演を果たした稀有な存在であるBrown Basketが、左近ステージのトリを任された理由。初っぱなの「BY MY SIDE」から灼熱と化したフロアが、その期待と気合いを十分に表していた。Hakubiと地元京都で切磋琢磨してきた彼らが、「俺らと一緒に心も体もぶっ飛べるヤツがどれだけおんねん? 踊ろうぜ!(岸本和憲)」と「ROLLING」を放り込む!


2年ぶりとなる『京都藝劇』で、その時間分の経験を音にしたポップソング「こころのこり」は、オーバーグラウンドへのポテンシャルをひしひしと感じさせる一曲。「Hakubiのマツイが好きだと言ってくれた、こんな日の歌」という「TVCM」を起爆剤に、「今の俺らの方が2年前より間違いなくカッコいいんで。左近ステージじゃ物足りねぇよな? 向こうのステージに行くぞ! その夢が一つあるだけで、俺らとあなたがまた会う理由がある」と、トドメは「もうひと頑張り」~「切に願う」! 汗だくでHakubiにバトンを渡したBrown Basketの渾身の全6曲だった。


約6時間にわたり音楽という絆がつないだ『京都藝劇 2023』を締めくくるべく、真打ちのHakubiがゆっくりと右近ステージへと現れる。ひずんだギターを奏で、「『京都藝劇』、本当に最高です。生半可な気持ちじゃ呼べないメンツで今日は開催しました。京都Hakubi、よろしくお願いします!」と片桐が叫べば、それと響き合う咆哮が方々から発される。静かで力強い「光芒」から、時間をかけて『京都藝劇』という空間を、信念を積み上げてきたHakubiの迫真の演奏に魅せられる。閃光を背にした「ハジマリ」ではエッジィなギターが空を切り裂き、スリリングな同期の旋律と人力のリズムが見事に溶け合う「Eye」では、Hakubi流のダンスナンバーにKBSホールが揺れる!


「今日はメンバー全員で右近ステージと左近ステージをずっと回ってたので、声を出し過ぎて息が切れてしまって……(笑)。心のこもった、血の通った一日にしたいなと思ってたんですけど、本当に素晴らしい一日になりました。音楽をやってて良かったなと思います。いろんなことがつながって今日になって、今日もまたいつかにつながるかもしれない。全員の光になれますように、いつか私たちの輝きがあなたを照らしますように(片桐)」

熱演続きの<京都藝劇 2023>つかの間の清涼剤となるような「栞」には、観客も思わずじっと耳を傾ける。8月9日に配信リリースされたばかりの「拝啓」は、片桐が今は亡き祖母へとつづった新曲。ドラマチックなサウンドスケープに乗せた独白が胸を打つ。


ここで、「絶対にまたHump Backを<京都藝劇>に呼びます。だからそのときにまた皆さんと会いたいです」と披露されたのは、ライブ活動の一時休止のため出演辞退となったHump Backの「星丘公園」のカバー。「Hakubiは最初、Hump Backのコピバンでした」というルーツからも、並々ならぬ覚悟で呼んだであろうバンドに捧げた一曲は、出演がかなわなかったからこそ聴けたワンシーンかもしれない。

後半戦は「過去最大の一日、最高のメンツ、夢のような日だ。でも、もっと先へ!」と絶叫し、「夢の続き」を皮切りにライブでは鉄板の「mirror」へ。曲間では「いつか先輩たちを越えてみせると思って作った<京都藝劇>。ずっとずっとライブハウスでやってきた仲間がいるから。京都のバンドとしてここで歌ってる。また今年も<京都藝劇>、最高の日になったよ!」と矢継ぎ早に心情を吐露する片桐。


「私たちは絶対に忘れないし、あなたたちも忘れない日になっていてほしいなと心から思います。どれだけ音楽にすがったっていいと思います。またこの先で音楽を通して会えますように。来年も<京都藝劇>を、必ず開催するので。コロナ禍にいつか歌えるように作った曲、去年は一緒に歌えなかった曲を……あなたがそこにいるって教えてくれ!」

そんな希望が声となりKBSホールに降り注いだ「悲しいほどに毎日は」は、ようやくたどり着いた<京都藝劇>の真の姿を見るようで……得も言われぬ感動がエンドロールを彩っていく。


アンコールでは、「私たちはまだ大ヒット曲を出せてないけど、いつか<京都藝劇>が大きくなったとき、一緒に歌ってほしい曲があるので」と、KBSホールの巨大なステンドグラスをバックに、TVドラマ『青春シンデレラ』主題歌「君が言うようにこの世界は」を贈る。続く「辿る」では片桐がモッシュピットにダイブ。 「Hakubiはこういうことを全然したことがないから(笑)」と、見よう見まねでクラウドサーフするレアな一幕も。こうして<京都藝劇 2023>は、またも最高を更新し終了した。

なお、今後のHakubiは、各地のフェスやLONGMAN、moon drop、Dizzy Sunfistらのツアーに参加後、11月4日に東京・Zepp Haneda(TOKYO)、18日に大阪・なんばHatchでワンマンライブ<賽は投げられた>を開催する。

取材・文◎奥“ボウイ”昌史
写真◎翼、

リリース情報


配信シングル「拝啓」
2023年8月9日リリース
配信リンク:https://lnk.to/h_haikei
ミュージックビデオ:https://youtu.be/j3IX2ug1cvc

ライブ情報

<賽は投げられた>
2023年11月4日(土)東京・Zepp Haneda(17時開場/18時開演)
2023年11月18日(土)大阪・なんばHatch(17時開場/18時開演)
[チケット] 4,800円 (税込)
[最終オフィシャル先行(チケットぴあ)]
受付期間:8月11日(金祝)12時〜8月17日(木)23時59分まで
受付URL:https://w.pia.jp/t/hakubi-to/

イベント出演情報

<MONSTER baSH 2023>
8月19日(土) @香川・国営讃岐まんのう公園

<Sky Jamboree 2023>
8月20日(日) @長崎市稲佐山公園野外ステージ

<WILD BUNCH FEST. 2023>
9月18日(月) @山口きらら博記念公園

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