【ライヴレポート】MUCC × NIGHTMARE、ツーマンツアー<悪夢69>完遂「夢を見てる奴らに贈るぜ」

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MUCCとNIGHTMAREによる初のツーマンツアー<悪夢69>。結成27年目のMUCCと24年目のNIGHTMAREだが、メジャーデビューは共に2003年の同期でもある。ヴィジュアル系のフィールドでそれぞれに個性を磨き上げ、独自の進化を遂げながらしのぎを削って来たベテラン同士がようやく、この2023年に互いの活動を交差させた。愛知、大阪と巡り東京Zepp Hanedaで開催されたファイナル公演、8月24日の模様をレポートする。

◆MUCC × NIGHTMARE 画像

先攻はNIGHTMARE 。時計の針の音が響き始め、オープニングSEに乗せてRUKA (Dr)、Ni~ya (B)、柩(G)、咲人(G)が登場。最後に右手を挙げてYOMI (Vo)が合流し、お立ち台へ。大歓声と拍手の中、「BOYS BE SUSPICIOUS」のイントロに乗せて、「行こうか! 揺らしていくぜ!」と煽った。ファンは髪を振り乱し、二階から見下ろすフロアは壮観な眺めだった。

激しさの中にしなやかな強さを宿すメロディアスな最新曲「FAREWELL」、間髪入れずドラマティックな展開で意表を突く「DIRTY」を投下。会場の空気を攪乱していく。YOMIはツーマンに声を掛けてくれたMUCCに感謝を述べ、「大阪も名古屋もすごい、いいライヴになりました。ツアーファイナルもみんなで、いいツーマンにしていこうぜ!」とオーディエンスを煽った。


▲YOMI (Vo)


▲柩(G)


▲咲人(G)


▲Ni~ya (B)


▲RUKA (Dr)

「ピラニア」では咲人と柩がお立ち台に並んで乗り、ユニゾンでギターソロをプレイ。YOMIはジャケットを脱ぎ捨ててフロアへ放り投げ、剥き出しになった腕を突き上げて「手を挙げろ!」とシャウトし、「mimic」へ突入。Ni~yaの勇ましいコーラスが高揚感を掻き立てる。「お前らの頭振るところ、俺たちに見せてくれ! 掛かってこい!」(YOMI)と焚きつけてスタートした「極上脳震煉獄・弌式」では、ファンもメンバーも怒涛のヘッドバンギング。RUKAのバスドラムが強靭な高速ビートを繰り出していた。

「先ほどは勢い余って自分のジャケットを脱いでしまったんですけれども、後で返してください。お願いします!」と頭を下げたYOMI。笑いが起きて空気が和み、逹瑯(MUCC/Vo)が差し入れしてくれた“そぼろ納豆”が「めちゃくちゃウマかった」など、微笑ましいエピソードを明かしていく。柩はツアーがファイナルを迎えたことを悲しみ、「もう毎年やりたいですね」とコメント。MUCCに訊く前にRUKAの意向を尋ねると、「面白かったですね」(RUKA)と回答。「あるかもね」というコメントにメンバーも観客も大いに盛り上がった。MUCCとの距離が今回の初ツーマンで縮まった喜びを口々に語りつつ、楽屋でこのMCを聞かれているかを気に掛けながら、柩が「ミヤ(MUCC/G)さん、昔怖かった~(笑)」と本音をこぼすと、大きな笑いが起きた。YOMIは逹瑯へのリスペクトから、久しぶりに裸足でステージに立っていると語り、「元々インディーズの時に、逹瑯さんの影響で裸足でライヴをやっていて、その時の初心を今回のツーマンツアーで思い出せて良かった」と感慨深そうに語った。



▲NIGHTMARE

その後、ツーマンライヴならではの企画として、「With」にYUKKE(MUCC/B)をヴォーカリストとして招き入れてセッション。

「MUCCの“ベースの”YUKKEです。ラジオで“好きな曲”とは話していたんですけど、叶うもんですね。まさか歌えるとは」──YUKKE

YUKKEは、「“「With」がすごく大切な曲だよ”って人いる?」とファンを気遣って申し訳なさそうに尋ねたかと思えば、次の瞬間、「……本当の悪夢を見せてやるよ!」とお立ち台に足を乗せて豹変。キーを確かめて「行こうか、Zepp Haneda!」と煽り、「With (with YUKKE)」がスタート。YOMIと交互に、時には一緒に歌っていたのだが、落ちサビでは突如オリジナルにはない語りパートを入れて度肝を抜いた。更には、ワイパーのフリを付け加えるなど、YUKKEならではの独自解釈を自由に繰り広げ、会場を沸かせた。



▲NIGHTMARE+YUKKE

「YUKKEさんでした!」と掻き回しの音が鳴る中でYOMIが送り出すと、一瞬の静寂の後、グリーンの光の中MUCCの「流星」をカバー。YOMIは胸に手を当てて切々と歌い、ギターソロは柩が演奏。Ni~ya は大きく脚を開きゴリゴリとした音色でプレイした。ラストはRUKAのシンバルが華やかに轟き、柩と咲人のギターが余韻たっぷりに響いた。MUCCへの敬意が伝わってくるカバーだった。

赤い光に切り替わり「ジャイアニズム天」が始まると、RUKAのドラムは怒涛の高速ビートを繰り出して、タガの外れた狂乱の世界へ。ラストの「極東乱心天国」では、激しさの中にもYOMIは艶っぽい歌声を聴かせ、柩はセンターのお立ち台でギターソロを響かせた。咲人、Ni~ya、YOMI、柩が揃ってお立ち台に足を乗せ、ヘッドバンギングしながら音楽に没入。誰しも晴れやかな表情で、眩しく光り輝いて見える。ファンに歌唱を求め、清らかな合唱に耳を澄ます場面も印象的。「最高だったぜ、お前ら!」とYOMIは叫び、「NIGHTMARE 、11月からツアーがあります。良かったら遊びに来てください!」と語り掛けステージを去った。


▲逹瑯(Vo)


▲ミヤ(G)


▲YUKKE (B)

約15分のセットチェンジの後、後攻のMUCCのステージが幕開けた。「球体Instrumental」をSEとして赤い光の中サポートメンバーの吉田トオル(Key)、Allen(Dr)が登場。背後にフラッグが掲揚されていき、最新曲「99」のイントロが鳴り始めるとミヤ、YUKKE、そしてゆっくりと逹瑯がステージ中央へ到達。身体を反らせ、地獄の底から聴こえてくるようなスクリームを放った。

「準備はいい?」(逹瑯)と気怠く問い掛けてスタートした「咆哮」では、ファンも大きな声でコーラス。「踊ろっか?」(逹瑯)と誘った「ファズ」では、EDMとバンドサウンドが融合して繰り出される華やかなダンスビートでフロアを揺らした。ハンドモーションを織り交ぜながら魅惑的に歌唱していた逹瑯は、曲間でこう叫んだ。

「今日で終わっちまうんだってよ。これを始まりにするか? これが1回目のツアーだ! 全員で行こうぜ!」──逹瑯

次曲は、終わらせたくはない夏の一夜にふさわしい「謡声」を投下。ミヤもYUKKEもターンしたりジャンプしたり腕を大きく回したり、エネルギーに満ちたアクションと共に音を鳴らしていた。

この日のMUCC、息を飲んだのは何と言っても「君に幸あれ」である。ミヤの物悲しくブルージーなギターが場の空気をまずは醸成。歌い出した逹瑯は、直前まで煽っていたフロントマンとはまるで別人になっているように感じられる。サビで暴発するエネルギーに息を呑み、声を出す直前、全身全霊を込めるブレスが身体を震わせる凄みに戦慄した。YUKKEの地を這うようなベースラインが、ミヤの狂おしいギターソロを際立たせる。歌唱、演奏、全てが合わさって、深い黄昏の世界を立ち上げていた。


▲MUCC

「“MUCCいろんなバンドとツーマンしてきたのに、なんでNIGHTMAREとツーマンしてないの?”って。思い出したんだ、俺は。同期のNIGHTMARE はどんどん売れ出して……悔しかったんだと思うんですよ、すごく。羨ましかったし、悔しかったし、でもそれを口に出して認めてしまうと、自分のアイデンティティが崩れるような気がして。自分たちは自分たちだ、みたいな感じでいろんな感情を押し殺しながら無理やり笑ったりもして。
 君たちも同じだと思います、いろんな感情を押し殺して無理に笑わなきゃいけないこととかたくさんある中、いろんな時間を過ごして来て、それがいつの間にか本当の笑顔に変わったりもして。
 当時はこんな未来があるとは思ってもみなかった、未来です。いつか今日のこの日もまた、“あの時こうだったね”なんて思い出話になるように、これから一緒に生きて行きましょう、よろしくお願いします。あの頃めちゃくちゃ悔しかった曲、思い切り気持ち込めて歌います。聴いてね」──逹瑯

紫色のライトに染まるステージで歌い出したのは、NIGHTMARE の「the WORLD」だった。叙情的なメロディーを包み込むヘヴィーなバンドアンサンブル…こうして文字で表現すると、MUCCの楽曲を描写する時の形容とも近しく、この2バンドの共通点と相違点に想いを馳せてしまう。逹瑯の身体を通して歌われたこの曲は、逹瑯の魂の叫びとして届いてきたし、ミヤのギターも、YUKKEのベースも然り、すべてがMUCCの音として鳴っていた。かつて感じた悔しさを口に出して言えるようになった今だからこそツーマンが実現し、揺るぎないアイデンティティーを獲得したからこそ、この曲をカバーできたのだろう。


▲逹瑯+咲人


▲ミヤ+咲人


▲YUKKE+咲人

「YUKKEさんがNIGHTMARE にお世話になりましたね」と逹瑯が語ると、YUKKEがペコリとお辞儀。「MUCCもNIGHTMARE をお世話してやろっかね?」(逹瑯)と咲人を呼び込み、ミヤは「咲人が弾きたいって言った曲やるから」とコメント。鳴り始めたのは「娼婦」のイントロだった。咲人はYUKKEと背中合わせでプレイしたり、ミヤに跪かれギターのフレーズを分け合って奏でたり、逹瑯に肩を抱かれたり…4人は絡まり合う糸のように目まぐるしくステージを動き回りながら、華やかな見せ場の数々を生み出していった。

咲人を送り出した後は、「オルゴォル」で不穏なムードを充満させ、とどめを刺すように「蘭鋳」へ。曲間で「全員座れ」と逹瑯は指令すると、スリリングな静寂の中、こう語った。

「本当にいいツーマンになったと思います。ありがとうございます。またやろう。ちょっと北に寄るけど水戸と仙台やろう!」──逹瑯

互いの地元開催を約束してファンを沸き立たせた後、「全員死刑!」(逹瑯)の宣告、カウントから一斉にジャンプ。ラストは「リブラ」で締め括り、深いカタルシスをもたらした。




▲LUNA SEA「End of Sorrow」SESSION

アンコールでは、偉大な先輩バンドのカバーセッション。まずは逹瑯とYOMIが登場した。対バン経験をあまりしてこなかったというNIGHTMAREだが、「いちばん楽しい対バンでした!」とYOMIは声を弾ませた。

ほどなくしてYUKKE、咲人、柩、Allenを呼び込み。咲人が上手側、柩が下手側の立ち位置に就くのを見て、「LUNA SEAの時はこうなんだね?」と逹瑯。YUKKEはLUNA SEAのJモデルのベース(ESP TVB)を用意し、ボディー裏に書かれたサインを会場に見せた。咲人も敬愛するLUNA SEAのSUGIZOモデルのギター(ESP PR)で臨んだのだが、実家にある別のモデルを取りに行こうか迷った、とのエピソードも明かした。

「With with YUKKE」を振り返り、YOMIは「あんなに盛り上がる「With」はなかったよね」とうれしそうだったが、「人様の曲のノリを変えちゃいけないよ?」と逹瑯。柩はYUKKEが独自アレンジで加えたパートを「あそこ、語り入れたほうがいいかも」と本家で採用する可能性に言及。「Ni~yaが入れるのはどうか?」という案も飛び出した。セッション1曲目は「End of Sorrow」(LUNA SEA)を披露。歌い出しはYOMI、その後を逹瑯が引き継いで、ツインヴォーカルで表現していく。柩はINORANのクリーントーンを再現したアルペジオを爪弾き、咲人はギター演奏、音づくりはもちろんコーラスまでSUGIZOを完全コピーしていた。



▲BOØWY「DREAMIN'」SESSION

続いてミヤ、Ni~ya、RUKA、吉田トオルを呼び込むと、BOØWY「DREAMIN'」のセッションへ。ファンにサビの歌詞をレクチャーし終えた逹瑯が、「あれ? RUKAさんサングラス(※BOØWYの高橋まこと[Dr]のトレードマーク)は?」と尋ねると、「なかったです」とRUKA。「じゃあ氷室(京介)さんかな? カンペも用意したので」と逹瑯、戸惑うRUKAにミヤがカンペを差し出すと会場は大爆笑。選択を迫られたRUKAは、ヒムロックの伝説の曲振りMCを再現することに。「最後に、夢を見てる奴らに贈るぜ、「DREAMIN'」」と読み上げて、演奏がスタートした。

この曲は逹瑯が歌い出しを担い、続いてYOMIが歌唱、サビでは声を合わせた。黒サングラスはNi~yaが着用。ミヤはギタリズム柄があしらわれた布袋モデルとローランド製JC-160を組み合わせ、BOØWY時代のサウンドシステムを彷彿とさせるスタイルだ。ファンもシンガロングし、底なしの楽しさに満ちたセッションとなった。




▲LUNA SEA「WISH」SESSION

「全員でもう1曲やろうか!」と逹瑯が呼び込もうとした時、柩がケーキの乗ったカートを運んできて逹瑯のバースデーセレモニーが開幕。NIGHTMAREからのプレゼントとしてハットも渡され、更には「逹瑯さん、NIGHTMARE方式で……」(YOMI)と一気飲みコーナーへ。ノンアルコールだが逹瑯はグラスの飲み物を一気に飲み干し、YOMIは「この対バンは逹瑯さんと柩から始まったということで、柩!」と指名して、柩も一気飲み。わらわらと結局全員が飲む流れとなり、賑わった果てに最後の一曲「WISH」(LUNA SEA)をオールメンバーでセッション。

2バンドが入り混じり一列に並んだ様子は華やか。やがてNi~yaが吉田トオル、Allen、RUKAの元へと近づいたり、ミヤと咲人がギターソロをハモったり、YUKKEとベースを交換したりするなど、ステージのあちこちで胸の熱くなるシーンが同時多発的に生まれていた。


▲LUNA SEA「WISH」SESSION

吉田トオルがピアノで奏でる「ENDLESS RAIN」(X JAPAN)をBGMに最後の挨拶をして、記念撮影の後、約3時間のツーマンライヴは終演。先輩後輩ではあるが同期でもあり、共に同じシーンで長きにわたり活動をし続け、ライバルであり同時代を闘ってきた戦友同士でもあるようなMUCCとNIGHTMARE。同じ時代を共に過ごしてきたファンに寄り添う気持ち、これからも共に生きて行こうという連帯感も感じ取ることができるツーマンライヴでもあった。そう遠くない再会を予感をさせる、希望のあるツアーファイナルだった。

取材・文◎大前多恵
撮影◎冨田味我

■<NIGHTMARE × MUCCツーマンツアー『悪夢69』>2023年8月24日(木)@Zepp Haneda (TOKYO) セットリスト

【NIGHTMARE】
01. BOYS BE SUSPICIOUS
02. FAREWELL
03. DIRTY
04. ピラニア
05. mimic
06. 極上脳震煉獄・弌式
07. With (with YUKKE)
08. 流星 (MUCCカバー)
09. ジャイアニズム天
10. 極東乱心天国
【MUCC】
01. 99
02. 咆哮
03. ファズ
04. 謡声
05. 君に幸あれ
06. the WORLD (NIGHTMAREカバー)
07. 娼婦 (with 咲人)
08. オルゴォル
09. 蘭鋳
10. リブラ
【Encore Session】
11. END OF SORROW (LUNA SEAカバー)
 ※逹瑯(Vo), YOMI(Vo), 柩(G), 咲人(G), YUKKE(B), アレン(Dr)
12. DREAMIN' (BOØWYカバー)
 ※逹瑯(Vo), YOMI(Vo), ミヤ(G), Ni~ya(B), RUKA(Dr), 吉田トオル(Key)
13. WISH (LUNA SEAカバー)
 ※ALL MEMBER

▼2023年
8月17日(木) Zepp Nagoya
8月18日(金) Zepp Osaka Bayside
8月24日(木) Zepp Haneda(TOKYO)
出演:NIGHTMARE / MUCC

■<MUCC 25th Anniversary TOUR 「Timeless」〜カルマ・シャングリラ〜>

▼2023年
10月01日(日) 仙台 GIGS
10月04日(水) 渋谷 CLUB QUATTRO
10月07日(土) 松山W studio RED
10月09日(月・祝) 広島 CLUB QUATTRO
10月14日(土) 長野 CLUB JUNK BOX
10月15日(日) 金沢EIGHT HALL
10月21日(土) 札幌PENNY LANE 24
10月22日(日) 札幌PENNY LANE 24
10月24日(火) 青森Quarter
10月28日(土) 福岡BEAT STATION
10月29日(日) 福岡BEAT STATION
11月04日(土) 名古屋ボトムライン
11月05日(日) 名古屋ボトムライン
11月11日(土) なんばHatch

■<MUCC 25th Anniversary TOUR Grand Final Bring the End to「Timeless」&「WORLD」>

▼2023年
12月28日(木) 東京国際フォーラム ホールA
open17:00 / start18:00
▼チケット
●福野家席/岩上家席/矢口家席:15,000円(税込)
※福野家席=下手側、岩上家席=中央、矢口家席=上手側 (1F前方より10列目まで)
※特典付き
特典(1) 岩上家席:ペットボトルキャップ、矢口家席:ギターピック、福野家席:ベースピック
特典(2) ラミネートパス
特典(3) 物販優先レーン使用可能権
●夢烏席(通常指定席):7,800円(税込)
●御祝席(※1F後方または2F後方席):5,569円(税込)
※営利目的の転売禁止、未就学児入場不可
一般発売日:2023年11月26日(日)

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