【ライブレポート】ザ・クロマニヨンズ、“今、此処”だけのロックンロール「宇宙でいちばんすげえ夜だから!」

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ザ・クロマニヨンズが10月3日、ライブハウスツアー<ザ・クロマニヨンズ ツアー 月へひととび>の東京公演をLIQUIDROOMで開催した。

9月4日の山梨・甲府CONVICTIONを皮切りに、10月11日の愛知・ボトムラインまで全13公演で行われた今回のツアー。1stアルバム『ザ・クロマニヨンズ』(2006年)から今年リリースされた最新アルバム『MOUNTAIN BANANA』までを網羅したセットリスト、そして、(いつもの通り)最高&最強のロックロールによって、幅広い年齢層の“クレイジー・ロックンロール・ピープル”を熱狂させた。

「オーライ!ロックンロール!」という甲本ヒロトのシャウトから始まったオープニングは、1stアルバム『ザ・クロマニヨンズ』の1曲目に収められた「キラービー」。続けて最新作『MOUNTAIN BANANA』から「ランラン」「暴走ジェリーロック」、さらに「オートバイと皮ジャンパーとカレー」では「Oi!」という観客のコールが響き渡る。17年前の曲と新しい曲を並べてもまったく違和感がないのは、バンドとしての芯が1ミリもブレていないから。このバンドにとっては当たり前のことなのだが、「やっぱりスゲエな」と改めて思い知らされた。

「ありがとう!よく来てくれました!」「アホみたいに騒いで帰ってくれ。いちばん楽しい夜だから。宇宙でいちばんすげえ夜だから!」という甲本のMCの後も、様々な時期の楽曲が演奏された。

〈あの時急に 動き出したもの/あれからずっと 止まらない〉というフレーズが心に響いた「キスまでいける」。甲本の切なくて温かいメロディ、真島昌利のギターソロが共鳴する「犬の夢」。「<月へひととびツアー>へようこそ! ロックンロール!」(甲本)というシャウトに導かれた「ムーンベイビー」では、甲本のブルースハープが炸裂する。





「僕は君たちのことはぜんぜん好きじゃないけど、愛してるよ。愛してるっていうのは、好きとか嫌い、関係ねえからな。今日はそういうことにしといてくれ」(甲本)という言葉を挟み、シングル曲3連発。桐田勝治(Dr)が両腕を上げまくって観客を煽った「雷雨決行」では〈引き返す訳にゃいかないぜ/夢がオレたちを見張ってる〉というフレーズの大合唱が発生。甲本が左手を突き上げてサビを歌った「エイトビート」、そして、生きることの本質をシンプルな言葉で射貫く「生きる」を続けざまに放ち、オーディエンスの興奮は早くもピークに達した。「やっと声が出せるようになったし、よかった。どさくさに紛れて、大好きな人の名前を叫んでください。今日は自由に、自分の楽しいことに使ってください。もしも万一、俺たちのことが好きだったら、俺たちの名前もデッカイ声で呼んでください」という甲本の言葉によって、さらに大きな歓声が巻き起こる。

ここからはザ・クロマニヨンズの奥深い音楽性を実感できる場面が続いた。クリーン・トーンのギターの音色が50‘sのロックンロールを想起させる「グリセリン・クイーン」(シングル/アルバム『MONDO ROCCIA』)、ブルースハープとギターの絡みが激しくも切ないブルーズにつながる「底なしブルー」、ボ・ディドリー・ビート直系のリズムと〈ロックンロールにさらわれる〉という歌詞によって圧倒的な高揚感を生み出した「暴動チャイル (BO CHILE)」。背景にあるのはルーツミュージックへの造形の深さ。それをしっかりと血肉化し、この瞬間の感情と肉体がぶつけることで生まれるステージはまさに圧巻だ。演奏のボトムを支える小林勝(Ba)、桐田のリズム隊の素晴らしさも、改めて記しておきたい。





「エルビス(仮)」からライブは一気にクライマックスへと向かう。〈どん底だから あがるだけ〉のリフレインに血沸き肉躍る「どん底」、「まさに今日は宇宙で一番スゲエ夜!」(甲本)というタイトルコールに導かれた「GIGS(宇宙で一番スゲエ夜)」。「紙飛行機」も強く心に残った。爆発的なパワーで突き進むバンドサウンドと大らかでゆったりとした歌メロの組み合わせはやはり、このバンドだけの発明だ。

本編ラストは1stシングル「タリホー」。彼らの原点とも言える楽曲だが、リリースから17年経った現在も、そのインパクトはまったく変わっていない。“今のほうがもっとすごい”ではなく、当時も今も同じようにすごいのだ。言うまでもなく、こんなことは他のバンドではあり得ない。ザ・クロマニヨンズは時空を超えているのかもしれない。
 
鳴りやまない歓声に導かれ、4人が再びステージへ(甲本、真島、小林はいつものように半裸)。「今はもう5類で。だから乳首も5類で…何言ってんだ、俺は(笑)」「名残惜しい。もうちょっとやらせてくれ!」(甲本)というMCから「イノチノマーチ」。さらに「ギリギリガガンガン」、「ナンバーワン野郎!」というアンセムを続け、大歓声と拍手とともにライブはエンディングを迎えた。「ありがとう、楽しかった! またやろう!」(甲本)「またね」(真島)と挨拶し、ステージを去ったザ・クロマニヨンズ。一瞬とも永遠とも思える時間のなかで、“今、此処”だけのロックンロールをダイレクトに体感できる最高のステージだった。



ザ・クロマニヨンズは、10月18日にライブアルバム『ザ・クロマニヨンズ ツアー MOUNTAIN BANANA 2023』をリリースする。アルバム『MOUNTAIN BANANA』を携えたツアーの音源を収録。完全生産限定盤はCDと2枚組のアナログ盤に加え、3月30日に行われた中野サンプラザ公演を中心にツアーの模様がドキュメント的に収められた約90分のDVDも。映像は全編8ミリフィルム、モノクロで収録され、ツアー中の生々しい空気をたっぷりと味わえる仕上がりだ。ライブに生きる4人のリアルなステージをぜひ、追体験してほしい。

文:森朋之
撮影:柴田恵理

  ◆  ◆  ◆

<セットリスト>

1.キラービー(アルバム『ザ・クロマニヨンズ』/2006年)
2.ランラン(アルバム『MOUNTAIN BANANA』/2023年)
3.暴走ジェリーロック(アルバム『MOUNTAIN BANANA』)
4.オートバイと皮ジャンパーとカレー(シングル/アルバム『Oi! Um bobo』/2010年)
5.キスまでいける(シングル/アルバム『GUMBO INFERNO』/2014年)
6.犬の夢(アルバム『GUMBO INFERNO』)
7.ムーンベイビー(アルバム『MONDO ROCCIA』/2009年)
8.雷雨決行(シングル/アルバム『ACE ROCKER』/2012年)
9.エイトビート(シングル/アルバム『FIRE AGE』/2008年)
10.生きる(シングル/アルバム『レインボーサンダー』/2018年)
11.グリセリン・クイーン(シングル/アルバム『MONDO ROCCIA』)
12.底なしブルー(アルバム『Oi! Um bobo』)
13.暴動チャイル (BO CHILE) (アルバム『MUD SHAKES』/2020年)
14.エルビス(仮) (シングル/アルバム『JUNGLE 9』/2015年)
15.どん底(シングル/アルバム『ラッキー&ヘブン』/2017年)
16.GIGS (宇宙で一番スゲエ夜) (アルバム『レインボーサンダー』)
17.紙飛行機(シングル/アルバム『CAVE PARTY』/2007年)
18.タリホー(シングル/アルバム『ザ・クロマニヨンズ』/2006年)
<アンコール>
19.イノチノマーチ(シングル/アルバム『MOUNTAIN BANANA』)
20.ギリギリガガンガン(シングル/アルバム『CAVE PARTY』/2007年)
21.ナンバーワン野郎!(シングル/アルバム『ACE ROCKER』)

ライブ盤『ザ・クロマニヨンズ ツアー MOUNTAIN BANANA2023』 

2023年10月18日発売
■完全生産限定盤:BVJL-100~103 ¥7,500(税抜)/¥8,250(税込)
【完全生産限定盤豪華スペシャルパッケージ】2LP(180g重量盤)+1CD+1DVD+28P写真集付
■CD:BVCL-1300 ¥2,913(税抜)/¥3,204(税込)
【通常盤】1CD+28P写真集付

<収録曲>
01 ランラン
02 暴走ジェリーロック
03 ズボン
04 カマキリ階段部長
05 でんでんむし
06 一反木綿
07 スピードとナイフ
08 クレーンゲーム
09 ごくつぶし
10 イノチノマーチ
11 ドラゴン
12 もうすぐだぞ!野犬!
13 キングコブラ
14 さぼりたい
15 心配停止ブギウギ
16 ペテン師ロック
17 エルビス(仮)
18 紙飛行機
19 ギリギリガガンガン
20 ナンバーワン野郎!
21 突撃ロック
22 タリホー
23 クロマニヨン・ストンプ

【全国ツアー「ザ・クロマニヨンズ ツアーMOUNTAIN BANANA 2023」】スケジュール
https://www.cro-magnons.net/live/tour2023/

ニューシングル「あいのロックンロール」

2023年12月13日発売
■CD:BVCL 1349 / ¥1,000(税抜)/¥1,100(税込)
初回仕様のみ紙ジャケット仕様(無くなり次第プラケースに切り替わります)
■完全生産限定 7inchアナログ盤:BVKL 23 / ¥1,200(税抜)/¥1,320(税込)
’60年代フリップバックE式盤を可能な限り再現
<収録曲>
01 あいのロックンロール
02 SEX AND DRUGS AND ROCK’N’ROLL

<ザ・クロマニヨンズ ツアー 月へひととび>

9月4日(月) 山梨県 甲府CONVICTION
9月7日(木) 高知県 高知X-pt.
9月8日(金) 愛媛県 松山W studio RED
9月18日(月・祝)鹿児島県 鹿児島CAPARVOホール
9月20日(水) 長崎県 長崎DRUM Be-7
9月22日(金) 滋賀県 滋賀U☆STONE
9月24日(日) 奈良県 奈良EVANS CASTLE HALL
9月25日(月) 大阪府 なんばHatch
9月29日(金) 岩手県 盛岡CLUB CHANGE WAVE
9月30日(土) 青森県 青森Quarter
10月3日(火) 東京都 LIQUIDROOM
10月6日(金) 静岡県 Live House浜松 窓枠
10月11日(水) 愛知県 ボトムライン

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