【インタビュー】BREAKERZのAKIHIDE、ソロ10周年10thアルバム完成「集大成と現在と未来を感じてもらえる」

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■三部作の一作目である『Three Stars』
■そのエンディングから二作目へ繋がる

──今回のアルバム『Three Stars』は最初の3曲からしてバリエーションに富んでいまよね。1曲目の「Singing in the Starlight」ではイントロ、間奏、後奏と熱いギターソロを弾きまくっていますし。

AKIHIDE:前作『UNDER CITY POP MUSIC』はシティポップで、その前の『LOOP WORLD』はアコースティックでジャズテイストの曲が多かったので、原点に立ち返ってロックギターを弾きたいという気持ちがすごく強かったんです。ブルースロックというか、熱く弾きまくったので指が痛くなりましたね(笑)。歌詞は、物語の登場人物の“お姫様”と星々を旅している“絵描き”が出会うシーンとリンクしています。閉鎖的だった彼女の気持ちが開いていって、嫌いだった街並みも綺麗に見える…恋の始まりの曲ですね。おっしゃっていただいたように最初の3曲ってとても重要だと思っているんです。今はサブスクが主流なので曲順に沿って聴く人は少ないと思うけれど、僕はCD世代なのでCDショップの試聴機で何時間も聴いていたタイプなんですね。当時はそんなにお金がないから、試聴機で聴くことのできる最初の3曲を聴いて、買うか買わないかを決めていたんです。


▲『Three Stars』初回限定盤B

──わかります。

AKIHIDE:だからこそ、バリエーションも意外性も重要だと思っていて。1曲目はAKIHIDEっぽくない意外性があってインパクトのある曲にしたかったんです。2曲目の「⻘ノ祭」はアップテンポで華やかでBREAKERZにはあったとしても僕のソロではあまりなかったタイプの曲。そこから僕らしいマイナーなミドルバラード「嘘」に移行するという流れですね。歌詞のストーリーで言うと、2人が出会って、祭りで仲良くなって、やがて別れてしまう寂しさ。起承転結の“結”に行く手前までを3曲で表現しています。AKIHIDEソロの集大成と現在と未来を感じてもらえる3曲になっていると思います。

──10周年ライブで披露されたインスト「永遠の丘」からループペダルを使用した「鏡の国のキミ」の流れには癒されます。

AKIHIDE:「鏡の国のキミ」は、実はループペダルで録音してはいないんですが、後ろにシンセがうっすら流れていて、ドラムのような音も実は全部ギター。なので、オーガニックな感じがあってすごく好きですね。中盤にほわんとしたセクションがありつつ、アラビアンスケールを使った6曲目の「the Burning Star」から、だんだんヒートアップしていく構成になりましたね。


▲コンセプトアート“青の祭り”

──「the Burning Star」の歌詞は気になりました。“炎の星のテーマ曲”とおっしゃっていましたが、主人公は若者ではなく、夢が錆び付き、挫折を経験した上で、燃え尽きるように生きたいと思っている人物なのかなと。

AKIHIDE:この曲の歌詞はリアルな自分かもしれないですね(笑)。ファンの方も同じように年を重ねて、昔とは違ういろいろな経験をしていると思うんですが、自分を鼓舞したかったし、みんなを鼓舞したかった曲でもある。物語でいうと、人が住めるように必死で炎の星を開拓する労働者たちをイメージしているんですが、現実の世界でも誰もがもがきながら生きていると思うんです。

──パーカッシヴでリズムが変則的な「帰らずの森」は“赤ずきんちゃん”をイメージさせる歌詞です。ちょっと怖い童話の世界がAKIHIDEさんらしい。

AKIHIDE:曲はレゲエを取り入れた今までにない感じになっています。ドラムやパーカッションやシンセはサンプル音源を元にアレンジしているんですが、フレーズはライブでいつも一緒に演奏しているプレイヤーたちを想像しながら打ち込んでいます。打ち込みなんだけど人間っぽいというか、グルーヴィーに仕上がりましたね。たしかに“赤ずきんちゃん”をベースにした歌詞で、物語の中に出てくる絵本でもある。ああいうファンタジックで毒がある世界が昔から好きなんです。

──そこからさっき触れていただいた「白猫のランデヴー」からインスト「赤い戦慄」が続きます。

AKIHIDE:「赤い戦慄」は完全にストーリーがベースになっているというか、映画のサントラのようなポジションですね。炎の星がほかの星に攻め入るような戦争のイメージ。バックには破壊的な音が入っていて、竜が鳴いているような音もギターで表現しています。


▲コンセプトアート“青の祭り” 原画

──そしてリードトラックの切なく泣ける曲「君を描いて」でアルバムが締め括られます。

AKIHIDE:ストレートなバラードです。自分にとって大事な曲なので、歌詞のやりとりをスタッフさんと幾度となくしました。『Three Stars』の物語とも絡んでいるんですが、背景にあるものを知らなくても、何か共感できるものを感じてほしいなって。僕は大事な人を失くした喪失感を綴りたい気持ちが強くて、そういう曲を歌うことで自分も救われるんです。それは今までもそう。日々、いろいろな人との出会いや別れがある中、少しでも聴いた人が笑顔になるように、と心に描きながら書いた曲です。最後に絵描きのピュアな想いが残る曲でもあり、現実に照らし合わせるとウクライナのことや、悲しいことがいつまでたってもなくならないから、どうするべきか。そういう想いも音に反映されています。

──エンディングも凝っていますもんね。

AKIHIDE:そうなんです。三部作の一作目である『Three Stars』エンディングから、二作目へ繋がるような。

──映画でいう“TO BE CONTINUED...”ですね。

AKIHIDE:そうですね。


▲『Three Stars』通常盤

──お話を聞いているとコンセプトストーリーにとらわれなくてもいいし、自分の生活と照らし合わせても聴ける。歌もギターもサウンドも含めていろいろな角度から楽しめる作品ですね。

AKIHIDE:そもそも僕はアニメや映画の裏設定とか、考察系の文章や動画を見るのが大好きなので、そういう奥行きを出せるようにずっと作品を作ってきたんです。もちろんストレートに楽しんでもらってもいいし、このインタビューを読んで“そういう意味があったんだ!?”って聴いてもらったら、楽しさが2倍3倍に膨らむと思います。

──AKIHIDEさんが音楽でいかに聴く人を癒して、さりげなく勇気づけたいか、その想いが伝わってくるアルバムでもあります。

AKIHIDE:「鏡の国のキミ」では“思うよりきっと 上手くゆくから 大丈夫だよ”って歌っていますよね。これはコロナ禍で僕が、ずっと鏡に向かって自分に言っていた言葉なんです。歌詞のまんまなんですが、1日の始まりの朝にいつも自分に向けて言っていた…だから、みなさんにも同じことを言ってあげたいなと思ったんです。今回はそれだけ、そのままの自分が出ているのかもしれないですね。

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