【コラム】『FFXI』20周年記念のアナログレコード。記憶に残るメロディと美麗な音楽で彩りを

2022年に35周年を迎えた『ファイナルファンタジー』シリーズ。1987年に発売されたシリーズ第1作目から、タイトルごとに新たな挑戦を繰り返し、今もなお世界中のゲームファンを熱狂させているゲームタイトルだが、なかでもエポックメイキングのひとつになったのが、『ファイナルファンタジーXI』（以下、『FFXI』）だろう。

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『FFXI』は、シリーズ初のMMORPG（大規模多人数同時参加型オンラインRPG）として、2002年に正式サービスがスタート。いまやゲームをする上で、インターネットを通じて他のプレイヤーとコミュニケーションを取ることは当たり前になっているが、当時はまだ黎明期。さらに『FFXI』は、家庭用ゲーム機としては世界初のMMORPGとしても話題を集め、多くのユーザーを夢中にさせた。2022年に20周年を迎えた現在も、Windows版がサービスを継続していて、2020年から始まった新ストーリー「蝕世のエンブリオ」も公開中。後発のMMORPGに多大なる影響を与え、現在も稼働し続けているという事実から、『FFXI』はMMORPGの生ける伝説と言っても過言ではないだろう。



そんな『FFXI』の20周年を記念して、アナログレコード『FINAL FANTASY XI 20TH ANNIVERSARY BEST SELECTION VINYL』が発売された。本作は、2002年のリリース版から、拡張データディスク「ジラートの幻影」「プロマシアの呪縛」「アトルガンの秘宝」「アルタナの神兵」「アドゥリンの魔境」までに登場した大量の楽曲達の中から、10曲を厳選して収録。選曲は、『FFXI』のコンポーザーでもある水田直志が務めている。

「Vana'diel March #2」の力強くも柔らかなアンサンブルが冒険の幕開けを告げると、アコースティックギターとバイオリンが軽やかに跳ね上がるケルティックな「Selbina」へ。そこから雄麗な菅弦楽器が柔らかな3拍子で美しい世界へ誘っていく「The Grand Duchy of Jeuno」と、次々に景色が変わっていく。他にもオリエンタルな「Bustle of the Capital」や、物悲しくも繊細で美しい「A New Horizon - Tavnazian Archipelago」、軽快な打楽器とコーラスがなんとも心地よい「Mog Resort」など、改めてどれも美麗で、記憶に残るメロディを擁したものばかりであることに気付かされる。


また、作品を通して、スロウ〜ミディアムテンポで、朴訥とした温かみのある楽曲が並べられているのが特徴的だ。なかには「Ragnarok」のような緊迫感溢れるものもあるのだが、バトル曲よりもフィールド曲が多くピックアップされていることもあり、全体的に落ち着いたトーンでまとめられている。これは推測だが、この選曲は、基本的には屋内や自室で楽しむ「アナログレコード」という記録媒体だからこそのものなのかもしれない。穏やかで、しばし時間を忘れてしまうほどに美しい楽曲達が、ゲームの名シーンや当時の思い出に、深く、どっぷりと浸らせてくれる。

そんな記憶をより鮮明なものにさせてくれるのが、イラストレーター・皆川史生が描き下ろしたLPジャケットのイラストだ。『FFXI』の舞台であるヴァナ・ディールの各エリアが可愛らしいタッチで描かれていて、しかもそれがCDではなく、アナログレコードという大きなサイズで楽しめるのも嬉しいポイント。インテリアとして飾った本作を眺めながら、音に身を委ね、思いを馳せてみるのもかなり乙だろう。

また、本作はMP3のダウンロードコード付き、さらに現在は各サブスクリプションサービスにて本作の収録楽曲をまとめたプレイリストも公開されているので、ご自身の好きなシチュエーションで本作を楽しむことも可能。美麗でゆったりとした楽曲が多いこともあり、ヒーリング系のインストゥルメンタルミュージックとしても楽しめるような構成にもなっているので、『FFXI』未経験の方も、癒しの時間のおともにしていただけると幸いだ。


思い出はもちろん、リラックスタイムも彩ってくれるような1枚にもなった『FINAL FANTASY XI 20TH ANNIVERSARY BEST SELECTION VINYL』だが、現在『FFXI』は、歴代の『FFXI』関連の音楽情報をまとめた特設サイト「FINAL FANTASY XI MUSIC PORTAL」を公開している。歴代サウンドトラックやアレンジアルバムの情報などがまとめられているほか、音楽制作を担当した作曲家やゲームの歴代プロデューサーからのメッセージも掲載されているので、ぜひ本作をBGMにご一読を。記念のアナログレコード含め、これからも『FFXI』が多くのユーザーに愛される作品として続いていくことを願っている。

文◎山口哲夫


◆FINAL FANTASY XI MUSIC PORTAL