【ライブレポート】GLIM SPANKY、ツアー<Velvet Theater>東京公演に二人の深み「特別ですよ、今日」

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GLIM SPANKYの東名阪ワンマン<Velvet Theater 2023>が11月9日の名古屋公演でファイナルを迎えた。同ツアーより8月5日に恵比寿ガーデンホールで開催された東京公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。

◆GLIM SPANKY 画像 / 動画

GLIM SPANKYが2013年にリリースした初のEP『MUSIC FREAK』は、1960年代から2000年代のリバイバルも含めたブルース/ガレージロックからの影響が色濃いストレートで荒々しい作品だった。あれから約10年。松尾レミ(Vo, G)、亀本寛貴(G)の二人が歩んできたキャリアを改めて辿ると、その音楽性は時に緩やかで、ときにめまぐるしい変化と拡張を繰り返してきたことがわかる。そこには、自身の成長、メジャー移籍により環境が変わったこと、時代の移り変わりなど、さまざまな要因があったことだろう。いずれにせよ人はただ息をしているだけでも、時とともに変わっていくもの。

そう考えるとごく当然のことだと考えられるが、2020年リリースの5thアルバム『Walking On Fire』や6thアルバム『Into The Time Hole』で、ネオソウルやR&Bを前面に打ち出してくるところまでは予想できなかった。しかしそこに違和感はまったくない。とにかく柔軟で自由、しかしある部分ではそれと同じくらい頑固。だから何をやってもそれはGLIM SPANKYのロックになる。


では、そのGLIM SPANKYをGLIM SPANKYたらしめる理由は何のか。その答えのひとつは、主にサイケデリックカルチャーに由来する“GLIM=幻想的な世界観”と、聴く者の感情をダイレクトに揺さぶる“SPANKY=アグレッシヴな姿勢”という、バンド名が示す二つの軸を表現の源に持っていることだ。私はGLIM SPANKYの、それらの間にあるグラデーションや、それらを起点にした変化や開拓精神に魅せられ続けてきた。

<Velvet Theater>は、そんなGLIM SPANKYの“GLIM”な側面にフォーカスしたコンセプトライブで2015年から不定期開催、今回で4回目となる。松尾はサイケデリックロック、アシッドフォーク、スウィンギングロンドン、ビートニクスや幻想文学といったレトロカルチャー/ムーブメントから受けた刺激を、作詞作曲だけでなくマーチャンダイズのデザインなどのさまざまなワークスに落とし込み、自身のSNSアカウントでもファッションやライフスタイルを発信し続けている。亀本はそんな松尾の世界観を現在進行のロックやポップという概念と融合させる重要な役割を担い続けてきた印象が強い。すなわちこのパーティーには、二人のオールタイムアティチュードの深みを表現するという、ワンマンライブやフェス、対バンイベントとはまた異なる、並々ならぬ思いが込められているのだ。


今回の会場はいつもの東京キネマ倶楽部ではなく、恵比寿The Garden Hall。キネマ倶楽部は、昭和のグランドキャバレーの風情を残した内装にして、キャパ600人という中規模ならではのパーティー感、鶯谷という都心から離れた立地など、あらゆる要素がGLIM SPANKYフリークスが集う<Velvet Theater>とマッチしていた。それだけにオールマイティーなホールでキャパも3倍近くに膨れ上がったThe Garden Hallでの公演に対して、期待と若干の不安もあったが、結論から言うと素晴らしいステージだった。

松尾と亀本をサポートするバンドメンバーは、GLIM SPANKYを初期から支えるベーシストであり、その静かな佇まいが若き日のビル・ワイマンと重なる栗原大。「私が言葉で伝えた抽象的なイメージを音にしてくれる」と松尾が紹介したキーボードの中込陽大。GLIM SPANKYの二人と兼ねてから交流のある同世代の売れっ子ドラマーでサイケデリックという共通のルーツを持つ大井一彌(DATS / yahyel)。映像は<Velvet Theater>だけでなく<フジロックフェスティバル>などにも帯同していたGLIM SPANKYのサイケデリックな世界観の演出には欠かせないOverLightShow~大箱屋~の大場雄一郎とVJ石榴が担当した。まさに盤石。松尾と亀本の精神の奥深くから湧き上がるイマジネーションがビッグなスケール感で鳴らされる。ステージ奥のビッグなスクリーン。そこに、1960年代のリキッドライトを踏襲しつつ独自の技法でアナログの可能性を突き詰める大場と、デジタルからレトロもモダンも捉えた石榴のアシッドな映像が映し出され、バンドのサウンドに輪をかけて没入感とトリップ感を煽っていた。


メンバーが静かに登場し、1曲目は「Velvet Theater」。アーシーなサイケデリックロックからブリッジでテンポアップして超自然的なサウンドスケープへ。そこからテンポを戻して亀本の泣きのギターソロに繋がる流れがたまらない。続いては最新アルバム『Into The Time Home』から「レイトショーへと」。R&Bやジャズとサイケデリックロックの融合によって生み出されるグルーヴに体が揺れる。松尾は肝の据わったハスキーボイスに注目が集まりがちだが、高音域の地声からファルセットへと移るグラデーションの繊細な美しさにもうっとりする。そして『アーヤと魔女 SONGBOOK ライムアベニュー13番地』収録の「A Black Cat」と、続けて横ノリを演出しフロアを温めた。

「今日は最高のパーティーにして、最高な夜の世界にみんなで迷い込もうと思います」と松尾が話し、「NIGHT LAN DOT」へ。そしていよいよGLIM SPANKYのディープな世界観が炸裂する。大陸が音を上げているような大井のドラムと東洋的な亀本のギターフレーズ、松尾の砂漠に対する想像力が溢れる言葉とメロディのシナジーが凄まじい「MIDNIGHT CIRCUS」は、シルクロードの過酷な旅の途中に見る夢のようだ。


続いて松尾がアカペラで“夜景画の山肌に月が顔出して”と風景を歌う始まりからサイケデリックな世界の深みへと誘う「闇に目を凝らせば」。リキッドライトというアナログパフォーマンスだからこその生命力や色彩と、VJのデジタルが描く神秘の世界が入り混じる映像もリンクして、東京都渋谷区の夕刻という感覚が飛ぶ。そしてタイトルからして挑発的なガレージロック「ダミーロックとブルース」、松尾のポエトリーリーディングから入るタイトル未定曲、柔らかでドリーミーなフォーク「AM06:30」と、一言で“幻想的”と言ってもさまざまなアプローチをみせる。そこから120BPMのディスコ「In the air」、さらにテンポと温度を上げた「吹き抜く風のように」と、サイケデリックに根差しながらフロアにダンスの魔法をかけた。大きな歓声と拍手とともにMCへ。

「<Velvet Theate>なんでね、特別ですよ今日」と松尾が話していたように、GLIM SPANKYが8曲も立て続けに演奏することは珍しい。「ガーデンホールってね、こっからみるとわりとZeppっすね」と、ここでようやく亀本のアットホームな言葉が飛び出し、観客からも大きな笑い声が。松尾はサブスクリプションサービス/プレイリスト時代に入り、聴かれにくくなったアルバム曲について、「そうならないように1曲1曲を同じレベルの愛情で作っている」と話し、続けて「今回はそれをタイトルにしました。1曲1曲を、今まで以上に開けた感じの曲も作っているし、楽しく作っています」と、11月15日の発売に向けて絶賛制作中のニューアルバム『The Goldmine』への想いを語った。


ステージは後半へ。GLIM SPANKYのオリジナル作品には未収録だが、「ずっと演奏したかった。アシッドフォークやバロックポップから影響を受けた趣味爆発の曲。<Velvet Theater>にはぴったりだと思う」と松尾が話し、『アーヤと魔女SONGBOOK ライムアベニュー13番地』から「The House in Lime Avenue」を演奏。のどかな田園にサイケデリックの風が吹くようなナンバーで会場を優しく包み込む。続いてコロナ禍で外出制限のあった時期に作った宅録音源がベースになっているR&B調の「こんな夜更けは」、夢見心地でほのぼのしたサウンドとアンセミックなサビのメロディのマッチングが印象的な「美しい棘」と、<Velvet Theater>な世界観から生まれた代表曲を続けた。

そして亀本が「GLIM SPANKYのライブですから、ロックなやつ?(中略)やっぱやりてえよなっ。どうでしょうか!」と、ガツンとくる“SPANKY”なロックを演奏することを示唆し、「Breaking Down Blues」を演奏。そのキャリア中、もっともヘヴィなリフとビートが鳴った瞬間、フロアには揺れる頭と突き上がる拳の波が。これまでのパフォーマンスとのコントラストで松尾のエッジーなボーカルもさらに鋭さを増して聴こえてくる。そして最速の代表曲「怒りをくれよ」で場内のエモーションは爆発。爽快なロックンロールもボトムの低いブルースも、サイケデリックな色彩感も併せ持つ最新曲「Odd Dancer」でフィジカルな盛り上がりがさらに高まり、最後はライブでのビッグアンセム「大人になったら」。好きなことを突き詰める人たちの背中を押すような曲だけに、松尾と亀本のパーソナルな側面の強い<Velvet Theater>で浴びるとひとしおだ。


アンコールはシンセベースを惜しげもなく鳴らして宇宙を描くようなサイケデリアと、ビッグスケールなダウンビートで2020年代のGLIM SPANKYの新機軸を示し、目に見える盛り上がりという意味では速い曲が目立っていたライブにも風穴を開けた「Circle Of Time」。その魅力は健在。圧倒的に深く強く熱狂的な動きとムードに満ちたフロアは絶景だった。そして最後の最後は30代に入った二人が高校生の頃に作った曲で、2014年にリリースしたメジャーデビューEPのタイトル曲「焦燥」を演奏。ヘヴィなブルース、ガレージサイケと疾走するオルタナティブロックが感情を絞り出したようなメロディとともにめくるめく展開する、GLIM SPANKYワールドの原石のような曲が、観客のテンションを引っ張り、フロアに激震を起こしてこの日は幕を閉じた。

「<Velvet Theater>が初めてのGLIM SPANKYのライブだという人?」とMCで亀本がフロアに向かって訊くと、予想以上の数の手が上がったことに驚いていたが、それこそが今のGLIM SPANKYなのだと思う。二人は世界的にロックの存在感が薄まっていく2010年代をロックバンドとして生きてきた。そんな時代の流れを見据えながらも決して迎合することなく、なおかつかつて隆盛を誇ったロックにしがみつくこともなく、自らの信じるロックと向き合い、その魅力を拡張させてきた。その結果生まれた多彩な作品群が、サブスクリプションサービスの台頭によりリスナーが多様化する時代にフィットしているように思う。ジャンル特化型のリスナーから、ロック云々関係なくただGLIM SPANKYが好きなリスナーまで、この場所に集まった人々の理由もさまざまだったのではないだろうか。だからこそ、11月15日にリリースされるニューアルバム『The Goldmine』が世の中にどう響くのか、GLIM SPANKYがこれからどのような道を歩むのか、楽しみで仕方がない。


取材・文◎TAISHI IWAMI

■<Velvet Theater 2023>8月5日@東京・恵比寿The Garden Hallセットリスト

01. Velvet Theater
02. レイトショーへと
03. A Black Cat
04. NIGHT LAN DOT
05. MIDNIGHT CIRCUS
06. 闇に目を凝らせば
07. ダミーロックとブルース
08. タイトル未定曲
09. AM06:30
10. In the air
11. 吹き抜く風のように
12. The House in Lime Avenue
13. こんな夜更けは
14. 美しい棘
15. Breaking Down Blues
16. 怒りをくれよ
17. Odd Dancer
18. 大人になったら
encore1
en1.Circle Of Time
encore2
en2.焦燥

▼<Velvet Theater 2023>
8月05日(土) 東京・恵比寿ガーデンホール
8月20日(日) 大阪・味園ユニバース ※開催延期
 →振替公演:11月05日(日) 大阪・味園ユニバース
8月31日(木) 愛知・DIAMOND HALL ※開催延期
 →振替公演:11月09日(木) 愛知・DIAMOND HALL

■デジタルシングル「Glitter Illusion」

2023年11月1日(水)配信開始
https://glimspanky.lnk.to/the_goldminePR
※アルバム『The Goldmine』より先行配信


■7thアルバム『The Goldmine』

2023年11月15日(水)発売
https://glimspanky.lnk.to/the_goldminePR
※デジタルアルバム予約キャンペーン詳細
https://www.universal-music.co.jp/glim-spanky/news/2023-11-01/


▲初回限定盤


▲通常盤

【初回限定盤(CD+DVD)】TYCT-69288 ¥5,280(税込)
※初回限定盤には松尾レミが制作したアナザージャケット付【通常盤(CD)】TYCT-60219 ¥3,080(税込)
▼CD収録曲 ※初回限定盤/通常盤共通
01. The Goldmine
02. Glitter Illusion
03. 光の車輪
04. ラストシ-ン
 ※Paravi『恋のLast Vacation 南の楽園プーケットで、働く君に恋をする。』主題歌
05. 真昼の幽霊 (Interlude)
06. Summer Letter
07. Odd Dancer
 ※NHK放送技術研究所『技研公開2023』体験展示起用曲
08. 愛の元へ
09. 不幸アレ
 ※BS-TBS『サワコ~それは、果てなき復讐』主題歌
10. Innocent Eyes
-Bonus track-
11. 怒りをくれよ (jon-YAKITORY Remix)

▼DVD ※初回限定盤のみ
<Into The Time Hole Tour 2022>@昭和女子大学 人見記念講堂(2022.12.21)
・シグナルはいらない
・ドレスを切り裂いて
・褒めろよ
・HEY MY GIRL FRIEND!!
・It’s A Sunny Day
・美しい棘
・Breaking Down Blues
・時代のヒーロー
・Looking For The Magic
・Velvet Theater
・レイトショーへと
・怒りをくれよ
・ワイルド・サイドを行け
・愚か者たち
・不幸アレ
・NEXT ONE
・Sugar/Plum/Fairy
・形ないもの
encore
・ en. ウイスキーが、お好きでしょ
・ en. By Myself Again
・ en. 大人になったら
・ en. Gypsy



●『The Goldmine』スペシャル応募企画 賞品内容
・Aコース:応募者全員「ライブ会場ミート&グリート」(メンバー直筆サイン入りフォトカード付)
・Bコース:応募者全員「メンバー直筆サイン入りフォトカード」
・Cコース: 応募抽選「The Goldmine Release Party」ライブご招待 100組200名様
※CD封入のシリアルナンバーを使用して応募
※“シリアルナンバー付応募券”は初回限定盤、通常盤共に初回生産分のみに封入いたします
※上記いずれかのコースを1つ選んでご応募ください
https://www.universal-music.co.jp/glim-spanky/news/2023-10-06/

●店舗別CD購入特典
・TOWER RECORDS:クリアファイル(A4)
・HMV:クリアポスター(A4)
・Amazon:缶バッチ(75mm)
・楽天ブックス:アクリルキーホルダー(60×60mm)
・UNIVERSAL MUSIC STORE:クリアファイル (A4)
・その他一般店:ポストカード
※アルバム『The Goldmine』を各CDショップ&インターネット販売サイトにてご購入のお客様に先着で特典を差し上げます。


▲松尾レミ制作アナザージャケット


▲メンバー直筆サイン入りフォトカード


▲メンバー直筆サイン入りフォトカード

■<7th Album『The Goldmine』Release Tour「The Goldmine Tour 2024」>

▼2023年
“The Goldmine Release Party”
11月30日(木) 東京・恵比寿LIQUIDROOM
▼2024年
1月20日(土) 神奈川・横浜ベイホール
1月27日(土) 高知・X-pt.
1月28日(日) 愛媛・松山サロンキティ
1月30日(火) 香川・高松DIME
2月01日(木) 滋賀・滋賀U☆STONE
2月03日(土) 鹿児島・CAPARVO HALL
2月04日(日) 熊本・熊本B.9 V1
2月06日(火) 静岡・浜松窓枠
2月09日(金) 千葉・柏PALOOZA
2月10日(土) 福島・郡山HIPSHOT JAPAN
2月15日(木) 鳥取・米子AZTiC laughs
2月17日(土) 岡山・YEBISU YA PRO
2月18日(日) 広島・広島CLUB QUATTRO
2月20日(火) 京都・磔磔
2月24日(土) 新潟・NIIGATA LOTS
2月25日(日) 石川・金沢EIGHT HALL
3月01日(金) 北海道・札幌PENNY LANE24
3月03日(日) 宮城・仙台Rensa
3月08日(金) 福岡・DRUM LOGOS
3月10日(日) 愛知・名古屋市公会堂 大ホール
3月20日(水祝) 大阪・NHK大阪ホール
3月24日(日) 東京・日比谷野外大音楽堂
3月30日(土) 長野・長野市芸術館 メインホール
▼チケット
●2023年11月30日(木)恵比寿LIQUIDROOM〜2024年3月8日(金)福岡DRUM LOGOS
・オールスタンディング ¥5,000 (整理番号あり/別途ドリンク代必要)
●2024年3月10日(日)名古屋市公会堂〜2024年3月30日(土)長野市芸術館
・全席指定 ¥5,500
※未就学児入場不可 (小学生以上チケット必要)
※学割あり (当日学生証提示で¥1,000バック)
http://www.glimspanky.com/

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