【コラム】色とりどりの個性がバースト。2023年、TikTokでバズった女性アーティストソング5選

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音楽トレンドと切っても切り離せない存在となった、TikTok。各音楽チャートの上位には、常にTikTokのバズ曲が並んでいる。そしてTikTokのバズがきっかけでアーティストの知名度が上がり、メジャーデビューや大型フェスへの出演に繋がることだって当たり前に。2023年もさまざまな曲がTikTokでバズを起こしてきた。しかもいろんな形態でのバズが起こっていて、それぞれがとても個性的な楽曲だ。本記事では女性アーティストソングの中から、筆者が興味深いと思ったTikTokバズ曲を5つピックアップして紹介する。



◾️ファジーネーブル/Conton Candy

「今年TikTokでバズった曲」と聞いて真っ先に思い浮かんだのが、「ファジーネーブル」だ。Conton Candyは2021年にリリースした「ロングスカートは靡いて」がバイラルヒットし、注目を集めていた。そんな矢先、今年4月26日に本曲が配信されると、《ファジーネーブルの匂いで 私どこかに行けそう》というキャッチーな歌詞とメロディが大ヒット。TikTokでは40億回再生、TikTok Weekly Top20で1位を獲得。情景の思い浮かびやすい切ない恋心の歌詞が多くのリスナーの共感を得たのも、人気になった要因のひとつだろう。さらにインフルエンサーによる振り付け動画が投稿されると、多くのユーザーが踊ってみた動画をアップ。

TikTokにてメインで使われているサビだけを聞くと可愛らしいイメージを持つリスナーもいるかもしれないが、よくよく聴くとしっかりとしたバンドサウンドが鳴らされていることがミソ。実際、YouTubeのコメント欄にはドラムやベースラインを絶賛する声も多い。可愛い女の子バンド…ではない、たまたま一曲がバズったバンド…でもない。バズるべくしてバズった、実力派バンドの名曲である。フェスやサーキットイベントに出演すると、軒並み入場規制がかかる事態に。ライブでの実力も確かなものだ。この年末年始も、<COUNTDOWN JAPAN 23/24>をはじめとする東名阪の大型フェスに出演が決定しているほか、2024年にはクアトロツアーの開催も発表されている。



◾️貴方の恋人になりたい/チョーキューメイ

TikTokでのバズをきっかけに急激に注目を集めたバンドを挙げるなら、チョーキューメイも外せない。2022年にリリースしたアルバム『するどいささくれ』に収録されている「貴方の恋人になりたい」がヒットすると、人気は国内だけに留まらず、韓国や香港、タイなどあらゆるところでチャートインを達成した。《貴方の恋人になりたい》というストレートな歌詞が心と頭に残ると共に、心地よいサウンドもクセになる。麗(Vo, G, Vn)の独特な歌声と、その裏で鳴るリズミカルなキーボードサウンドの絶妙な絡み合いが独自の中毒性を生んでいるのだろう。TikTok上には弾き語りカバー動画や倍速バージョンの音源など、様々な形で楽曲がアップされているのも特徴。アレンジ心をくすぐるのだ。楽曲の人気を経て、チョーキューメイは初となる<COUNTDOWN JAPAN 23/24>への出演も決定。ますます今後の活躍が期待される。



◾️オトナブルー/新しい学校のリーダーズ

首振りダンスが話題となり、TikTokの2023年上半期のトレンド大賞をの大賞受賞した「オトナブルー」。今年に入ってから本曲を知った人が大半だと思うが、実はリリースされたのは2020年。バズる曲が新曲とは限らないのが、TikTokの面白いところでもある。本曲の大ヒットを受け、制作されたMVは4700万再生超え。「THE FIRST TAKEに出演した動画は5000万再生を突破した。バズの火付け役となったのはサビの首振りダンスだが、昭和歌謡とディスコを組み合わせたような斬新な曲調も、多くのリスナーの心を鷲掴みにした理由のひとつ。さらにsuzukaの《わかってる ほしいんでしょ?》という妖婉な歌い出しもなかなかのインパクト。彼女たちのアーティスト力を再確認した。「オトナブルー」のバズにより、個性あふれるメンバーたちの知名度も急上昇。『NHK紅白歌合戦』への出場も決まり、国民的アーティストへの階段を駆け上がることになった。



◾️Baby you/有華

昨年にリリースした「Partner」がバイラルヒットし、長年の夢だったメジャーデビューを叶えた有華。メジャーデビュー曲となった「Baby you」も「TikTok Weekly Top20」で1位を獲得するバズ曲となった。ポップで明るいメロディに載せて大切な人への愛を真っ直ぐに伝える曲で、聴き手を元気にしてくれる。このまっすぐさは、TikTok世代にズバッと刺さると思う。リズミカルな《気づいてよ》のフレーズが特徴的で、思わず口ずさみたくなる魅力がある。TikTokでは可愛い振り付けも話題になり、踊ってみた動画が多数アップされた。振り付けが真似しやすいこともTikTok バズのひとつの大きな条件だとすると、本楽曲は誰にでもマッチするという理由で、まさに合致する。「TikTok上半期トレンド大賞2023」のミュージック部門賞も受賞し、有華はTikTokのバズでアーティスト人生が変わったとも言えるアーティストだ。


◾️けーたいみしてよ feat. はしメロ, maeshima soshi / MAISONdes


楽曲ごとに歌い手や作り手を替え、新曲がリリースされるたびに話題となっているMAISONdes。6月にリリースされた本楽曲は、はしメロが作詞・作曲・歌唱を担当し、maeshima soshiがアレンジで参加してた楽曲。一見するとポップなメロディの今どきなおしゃれソングなのだが、それとは裏腹な重ための歌詞が特徴的で、「中毒性がすごい」「めっちゃ耳に残る」という声が殺到。「ケータイ見せてよ」ではなく、あえて話口調の《けーたいみしてよ》というフレーズにしているところにリアルさが感じられて、良い。ゆったりと奏でられるAメロからBメロ、サビにかけて徐々に音数が増えていく強弱の付け方も心地よく、聴き手を自然にリズムに乗らせてくれる。TikTokでは束縛感のある恋人を演じて《けーたいみしてよ》と伝えるような動画が主にアップされている。こういうネタっぽく使いやすい歌詞があると、TikTokではバズりやすいという一面もあるだろう。しかしネタに振ってバズ狙いした曲は簡単に見抜かれて、当然バズらない。本楽曲はMAISONdesという最高のクリエイター集団だからこその、パワーワードだけによらない完成度に感嘆させられてしまう。

文◎伊藤美咲
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