【ライブレポート】ノエル・ギャラガー、4年半振り来日ツアーに進化し続けるロックレジェンドの姿

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ノエル・ギャラガー率いるノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズが、約4年半振りのジャパンツアーをスタートした。ここでは、同ツアー初日、12月1日の東京ガーデンシアター公演についてレポートする。
(※セットリストなどネタバレあり)


  ◆  ◆  ◆

ノエルは、約5年半ぶり通算4作目のオリジナルアルバム『カウンシル・スカイズ』を引っ提げたツアーを6月2日に北米からスタートし、UK/ヨーロッパのフェスのヘッドライン出演や大型単独公演も行った。そして韓国での3公演を終え、いよいよ日本へ上陸した本ツアーでは、オアシス時代を含めて30年以上、今も決して歩みを止めることなく進化し続ける、ノエルのロックレジェンドとしての勇壮かつ新鮮味にあふれる姿を目の当たりにした。





開演を待ち侘びる観客たちで満員となった東京ガーデンシアター。客電が落ち、「Pretty Boy」のリズムトラックが流れるなかノエルらバンドメンバーがステージ右袖から登場。ノエルがおもむろにアコースティックギターをかき鳴らしたのを合図に、同曲から公演は幕を開けた。最新の電子音楽やダンスミュージックの影響も感じさせる「Pretty Boy」は、ライブ映えするアップテンポなチューンで、ノエルが今なお挑戦を続ける姿勢が新作アルバムから垣間見えた楽曲だ。観客も歓声を上げながら体を左右に揺らすなどし、ライブを存分に楽しんでいる。

続けて演奏されたアルバムタイトル曲の「Council Skies」では、ノエルの伸びやかな高音を堪能できた。『カウンシル・スカイズ』とは、ノエル曰く、自身が育った英国の公営住宅団地(カウンシル・エステート)の上に見える空のことを指す言葉だという。ノエルの日本公式X(旧Twitter)が投稿していたメッセージ動画では、「俺は空想するのが好きで、俺の夢は全部『カウンシル・スカイズ』の下で生まれたんだよ」と語っていた。決して恵まれた境遇ではない幼い頃に抱いていた希望や自由への憧れ、そして現実との葛藤。さまざまな感情を音に落とし込んだのだろう。どこか郷愁も感じさせるハーモニーは美しく、心の中に優しく響き渡る。



前半は、ミドルテンポでメッセージ性の強い「Open the Door, See What You Find」、明るい雰囲気に満ちた「We're Gonna Get There in the End」、思いを込めて歌い上げたバラードソング「Easy Now」と新作アルバム『カウンシル・スカイズ』収録曲が立て続けに披露された。元オアシスのクリス・シャーロック(Dr)、ゲム・アーチャー(G)らバンド陣と3人の女性コーラスも多彩な表現力で盛り立てる。ちなみに色とりどりの花々が飾られた華やかなステージ上になぜか置かれ、一際目立っていたのは、ノエルが敬愛するサッカークラブのマンチェスターシティFC監督ジョゼップ・グアルディオラの等身大パネル。ファンにはお馴染みの光景だが、初めて公演を見た方は「誰?」と困惑したに違いない。公演の成功を終始温かな眼差しで見守ってくれていた。バンドの初期楽曲である「If I Had a Gun...」「AKA... What a Life!」を演奏したあと、「Dead in the Water」はノエルとマイク・ロウ(Key)の二人だけでしっとりと披露。煌びやかなアコギの音色が響き渡るなか、スクリーンには闇夜の海に浮かぶ満月が映し出される。観客たちは船上から月を眺めるかのようにゆったりと過ごし、心地よい演奏に聴き入っていた。













後半は、怒涛のオアシス楽曲コーナーに突入。「Going Nowhere」のイントロで大きな歓声が上がり、「The Importance of Being Idle」では、観客たちがバンドメンバーによる息の合ったプレイに見入っていた。終盤のキメの部分が完璧に決まり、ノエルが得意げな表情を覗かせると、多くのファンから拍手が贈られる。圧巻だったのは、「The Masterplan」の演奏だ。どことなく異国情緒を感じさせる、揺らいだギターの音色が妖しくも美しく、一瞬で引き込まれた。曲中の難易度の高いシンコペーションもピタリと決まっており、バンド陣の能力の高さを改めて示す格好となった。本公演ラストの「Little by Little」では、観客が手を掲げながらサビを歌い上げ、会場が一体となったのを感じた。





アンコールでは、ノエルが尊敬の念を抱いてやまないボブ・ディランのカバー曲「The Mighty Quinn (Quinn, the Eskimo)」を情感たっぷりに歌い上げると、日本でも人気の高い「Live Forever」「Don't Look Back in Anger」を演奏。会場を揺らすほどの大合唱が沸き起こった。「Don't Look Back in Anger」では、この日初めてノエルがギターソロを奏でた。愛機であるチェリーレッドのセミアコースティックギター、ギブソンES-355の上質な歪みとノエルによる絶妙なチョーキングは筆舌に尽くしがたいもので、聞いているだけで自然と涙がこぼれ落ちてきた。心に響く音とはまさにこのことを言うのだろう。おそらく多くの観客が同じような体験をしたに違いない。



新作を中心にオアシス曲もふんだんにセットリストに組み込んだ、新規も昔からのファンも存分に楽しめる内容だった。「Don't Look Back in Anger」では、ノエルが人差し指を最上階に向けて掲げる場面があった。「ちゃんと見えているからな」という合図だったのだろう。会場を見渡すと、客層は年配の方から若者まで幅広く、皆が笑顔でサビをノエルと一緒に歌い上げていたシーンは非常に感動的だった。





MCでは日本語で「こんにちは」と挨拶し、曲間に観客と気軽に会話を楽しんでいた姿も印象的だった。公演中何度もありがとうを伝えていたノエルは、アンコールの演奏を終えると大きく手を振りながら、少しだけ名残り惜しそうな表情でステージを去った。ノエルの最高のパフォーマンスを、この目に焼き付けることができた格別な夜だった。









今回のジャパンツアーは、12月1日、2日の東京ガーデンシアター公演を皮切りに、12月4日に大阪フェスティバルホール、12月6日に愛知県芸術劇場大ホールで公演が行われる。

取材・文:東 純史(BARKS)
撮影:Mitch Ikeda

  ◆  ◆  ◆

セットリスト

<NOEL GALLAGHER’S HIGH FLYING BIRDS 2023 JAPAN TOUR>
2023年12月1日(金)東京ガーデンシアター

1. Pretty Boy
2. Council Skies
3. Open the Door, See What You Find
4. We're Gonna Get There in the End
5. Easy Now
6. You Know We Can't Go Back
7. We're on Our Way Now
8. In the Heat of the Moment
9. If I Had a Gun...
10. AKA... What a Life!
11. Dead in the Water
12. Going Nowhere(Oasis cover)
13. The Importance of Being Idle(Oasis cover)
14. The Masterplan(Oasis cover)
15. Half the World Away(Oasis cover)
16. Little by Little(Oasis cover)
Encore
17. The Mighty Quinn (Quinn, the Eskimo)
(Bob Dylan cover)
18. Live Forever(Oasis cover)
19. Don't Look Back in Anger(Oasis cover)


<NOEL GALLAGHER’S HIGH FLYING BIRDS 2023 JAPAN TOUR>※全公演ソールドアウト

2023年
12月1日(金)東京ガーデンシアター OPEN 18:00 / START 19:00
12月2日(土)東京ガーデンシアター OPEN 17:00 / START 18:00
主催:TV 朝日/J-WAVE Info:HOT STUFF/SMASH
12月4日(月)大阪フェスティバルホール OPEN 18:00 / START 19:00

主催:FM 802/FM COCOLO /Info:SMASH WEST
12月6日(水)愛知県芸術劇場大ホール OPEN 18:00 / START 19:00

主催:ZIP FM /Info:JAILHOUSE
*未就学児童入場不可

来日公演特設サイト:https://smash-jpn.com/noelgallagher2023

Noel Gallagher’s High Flying Birds『Council Skies』

2023年6月2日発売
CD購入・配信ダウンロード・ストリーミング再生リンク:https://lnk.to/NGHFBCouncilSkies

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