【インタビュー】ALAN SHIRAHAMA、1stEP『null』に自分がクラブでかけて戦える曲「目指したかったのはDJの⽩濱亜嵐」

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12月8日、EXILE/GENERATIONSのパフォーマーであり、クリエイティブユニットPKCZ®のメンバーでもある⽩濱亜嵐が、“ALAN SHIRAHAMA”名義で初のソロEP『null』をリリースする。“null”とは「何もない」を表す言葉だが、ダンスミュージックシーンにおける自身の立場を表現したものだという。しかし今回完成した音源はその言葉とは対極にあり、特筆すべき点がいくつもある。

◆撮り下ろし写真

そもそも『null』には、かなり広義のダンスミュージックが鳴っている。なにせ、2曲目の「gnite」からしてトランスなのだ。もちろん本作は触れ込み通り、ベースハウス(※1)、テックハウス(※2)のEPとして聴くことも出来よう。だが、それだけではない。

今回実施したインタビューでは、各所に楽曲提供も行いプロデューサー、アーティストとしての実力をメキメキと向上させている⽩濱亜嵐の「作家性」に全面フィーチャー。パフォーマーとして彼を認識している人にこそ、ぜひ読んで彼のこだわりと思いを知ってもらえたらと思う。

余談だが、この日の彼はフレンチエレクトロの雄・Justiceのインナーを着ていて、筆者はその点にも大変シンパシーを感じた次第である。なお、蛇足かとも思うが念のため、注釈も入れているので参考にしていただけると幸いだ。



※1 テックハウス:文字通りテクノとハウスの中間のニュアンスのサウンド。言葉としては90年代から存在するが、これまで何度かリバイバルを経ている。日本でも、DJ DARUMAとJOMMYが2019年2月から開催する「EDGE HOUSE」を中心に盛り上がりを見せる。

※2 ベースハウス:ハウスのサブジャンルだが、EDMから派生したものと認識される場合がある。代表的なアーティストとしてEphwurdやHoly Goofらが挙げられる。


   ◆   ◆   ◆

■僕がプロデューサーとして“ドチャラな音”とどう向き合うべきかは悩みました

──本EPは、テックハウスとベースハウスが主軸と伺っていたのですが、かなり広くジャンルの幅をとっているように感じました。本作では、どのようにジャンルを詰めていったのでしょうか?

⽩濱亜嵐(以下、⽩濱):僕が得意なジャンルがテックハウスやベースハウスなんですけど、サイケやトランスも聴くんですよ。で、自分でDJをやっていると、BPM150ぐらいまで上げることがあるんですね。そこで1曲欲しいなっていうところから、「gnite」が完成しました。実はこの曲、結構前からストックしてあったんです。できたのは4〜5年ぐらい前なんじゃないかな。元々はPKCZ®の楽曲として提案していたんですけど、なかなか採用されなくて。当時は150まで行くとテンポが速すぎてお客さんもノリにくかったんですね。

──今はテクノの高速化もあって、受け入れられる土壌ができてきたと。

⽩濱:まぁでもこのEPに収録されている他の曲はBPM125前後なので、さすがに浮くから1曲目にしましたけど。

──EPの楽曲はひとつひとつがフロアトラックなのではなく、全体でひとつの流れがあるという設計なんですね。

⽩濱:そうですね。自分がクラブでかけて戦える曲というか、そういう部分は意識しました。それから、この曲はボーカルをちゃんと入れているんですが、元々はサンプルを使って作っていたんです。でもやっぱりリリースするんだったらボーカリストに歌ってもらおうと思って、シンガーソングライターのEmyliさんにお願いしました。

──そのあたりを伺うと、本流のテックハウスとはアプローチが少し異なるように感じます。このジャンルでは、良くも悪くも雑味があって、“ほかの曲から丸々サンプリングしてきてそのまま使う”みたいなやり方も散見されると思うんですが、その意味で『null』は対極にある印象を受けました。ひたすら音がクリアというか。

⽩濱:ちゃんとミックスしてますね(笑)。やっぱり音って綺麗であってほしいんです。他のプロデューサーが作った曲もDJでかけますけど、そこが気になることが多くて……。もちろん粗い音がカッコイイ場合もありますが、僕は質にもこだわりたいんです。一緒に曲を作るSLAYのHirokiともよくその話をします。なので、「Brain jack!」でもサンプリングみたいな音を狙っているんですけど、実際はサンプリングしてないんです。

──なんと……、完全にサンプリングだと思っていました。

⽩濱:僕はNEXUSっていうシンセを使っているんですけど、一度MIDIキーボードで弾いたものを一回オーディオに切り替えて、そこからその音源を加工して使っています。手間もかかるんですが、そういうニュアンスも出したくて。ミックスの話にも通じるんですが、僕はクラブだけじゃなくてフェスにも出たいと思っているんです。


──ビッグルームは結構音がクリアですからね。

⽩濱:そうなんですよ。やっぱり僕にとってはビッグルーム(※3)が入口だったんで、“ドチャラな音”も好きなんです。ただ、僕がプロデューサーとしてそれとどう向き合うべきかは悩みました。僕がそっちに行っちゃうと、世間の見え方としていよいよ「チャラいDJ」になってしまうなと……。トランスも聴くし、ベースハウスもやりたいし、ビッグルームも好きな僕としては、イメージがそこだけに固定されてしまうのは避けたいんです。

※3ビッグルーム:多くの人が「EDM」と聞いて想起するサウンド。ジャンルの名称としては「プログレッシブ・ハウス」や「ダブステップ」、「フューチャーバウンス」などが便宜的に使われた。



──自分が実は⽩濱さんと同世代なので、まさにEDMの一大センセーションを体感しました。Ultraのメインステージでパフォーマンスを行っているDJたちも、最近は様々な方向に細分化しているように見えるのですが、⽩濱さんはどういう方向に進んでいますか? 完全に脱・EDMなのか、それともその流れを引き継ぎつつご自身のカラーを出してゆくのか。

⽩濱:難しいですね……(笑)。今の僕が主軸としたいのはベースハウスやテックハウスなので、やはりオーセンティックなEDMを目指しているわけではないかもしれません。ただ、そういう曲も持っておきたいのもまた事実で、「Unstoppable」はそういった狙いで作りました。

──めちゃくちゃ伝わります。ピアノのラインやボーカルの運び方に往年のHardwellっぽさを感じました。

⽩濱:まさにあのへんのプロデューサーがやっている音を目指しましたね。フェスとかでかけたときに、みんなが口ずさめるような曲が欲しかった。ただ、完全にそこに照準を合わせたくなかったので、ドロップの部分はベースハウスっぽくしたつもりです。あのバースのテンションのままドロップまで持ってゆくと、恐らくプログレシッブ・ハウス(※4)っぽくなっちゃうので。

※4 プログレッシブハウス:原初のプログレッシブハウスは90年代に遡り、サウンドの特徴としてはハウスとトランスの融合、ハーモニーの美しさに重きが置かれていることなどが挙げられる。本稿で使われている「プログレッシブハウス」は主にEDM期のもの。

◆インタビュー(2)へ
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