いい音爆音アワー vol.148「たかがシャラララ、されどウォウウォウ」

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爆音アワー
いい音爆音アワー vol.148「たかがシャラララ、されどウォウウォウ」
2024年2月14日(水)@ニュー風知空知
「シャラララ」とか「ウォウウォウ」といったコーラスは、もうカーペンターズの時代から「Yesterday Once More」な、ノスタルジーの対象だったわけですが、やはり今でも、聴くとなんだかシアワセになってしまう、音楽というものの中の、最良の部分のひとつじゃないかなと思います。もちろん懐メロばかりではなく、そのDNAは――勝手に「シャララ・スピリット」と呼ばせてもらいますが――現在にまで脈々と流れ続けております。
ということで今回は、「シャララ・スピリット」に溢れた名曲・名盤を集めてみました♪


ふくおかとも彦 [いい音研究所]
  • ①The Shirelles「Baby It's You」

    「シャラララ」コーラスの典型を聴けるのが「Baby It's You」です。バート・バカラックの曲で、ビートルズやエルヴィス・コステロも唄っていますが、オリジナルはこのシュレルズ。ただ、このシュレルズ盤がけっこうひどいのです。唄はピッチも危ういし、間奏のオルガンはぶっきらぼうな上に音ばかりデカくて最悪。よくこれでOK出したな―なんて思うのですが、一応、全米8位、R&B 3位とヒットはしているんですよね。でもビートルズ版のほうが100倍よいです。

  • ②The Chords「Sh-Boom」

    doo-wopというジャンルにおける初めてのヒットとされるのが「Sh-Boom」という曲。コーラスのフレーズがそのままタイトルになっています。“ザ・コーズ”という黒人ボーカルグループが1954年に出したデビューシングルのB面でした。この曲はメンバー全員によるオリジナルで、レーベルからA面はヒット曲のカバーでと言われ、 Patti Pageが歌った「Cross Over the Bridge」をdoo-wopアレンジでやったのですが、結局B面のほうが評判がよくて、R&Bチャートで2位、ポップチャートでも9位にまで上がるヒットとなりました。ただし、この頃頻繁にあったことですが、すかさずカナダ出身の白人グループ“The Crew-Cuts”がカバーして、こちらは9週連続全米1位とはるかに大きな売上を上げました。ただ曲はコーズのメンバーの作品だから著作権収入はあったでしょう。そこはよかったですね。この音源、サックスソロが入っていますが、なんと日本で「ムード・テナーの帝王」と呼ばれたサム・テイラーが吹いています。

  • ③Neil Sedaka「Happy Birthday Sweet Sixteen(すてきな16才)」

    13歳の時にアパートの隣に住んでいた16歳のハワード・グリーンフィールドといっしょに曲をつくり始め、1960年前後には、作家としても歌手としても、ヒット曲を連発するようになるという、人生前半は絵に描いたようなサクセスストーリーだったニール・セダカ。ビートルズ米国進出後の「第1次British Invasion」で低迷しますが、それ以前の、いわゆる「ブリル・ビルディング・ポップ」を代表するアーティストのひとりです。
    彼の曲の中でも特に「シャララ・コーラス」が印象的なのが「Happy Birthday Sweet Sixteen(すてきな16才)」です。

  • ④Connie Francis「I'm Gonna Be Warm This Winter(想い出の冬休み)」

    50年代の後半から60年代初めにかけて、世界で最も売れた女性ソロシンガーがコニー・フランシスです。もともと歌手になることについては本人よりもお父さんがすごく熱心で、ステージママならぬステージパパだったんですが、1955年に18歳でMGMレコードからデビューしたものの、シングル9枚、まったく売れませんでした。10枚という契約だったんで、あと1枚売れなかったらおしまいという時に、お父さんは1923年のヒット曲「Who's Sorry Now?」のカバーをやれば、大人はみんな知ってるし、アレンジを今風にすれば若者にも受けるはずだと主張しますが、本人はその曲を好きじゃなくて猛反対。でも結局お父さんが押し切って、これを1957年11月にリリースすると、翌年の正月に、「American Bandstand」という人気番組でディック・クラーク(Dick Clark)がプッシュしてくれたのをきっかけに、全米4位、ミリオンセラーとなりました。MGMはもちろん契約更新、以後やはりビートルズ進出の64年まではヒットを量産しました。
    「I'm Gonna Be Warm This Winter(想い出の冬休み)」は「ウォウウォウ系」のキャッチーな曲です。

  • ⑤The Supremes「(He's) Seventeen」

    “スプリームズ”は最初は4人組だったのですが、4人時代の最後の作品が3rdシングル「Your Heart Belongs to Me」で、そのB面が「(He's) Seventeen」です。レコードジャケットには3人しか写っていませんが、もう辞めることが決まっていたバーバラ・マーティンのお腹が大きくなっていたからです。
    実はこの頃はまだ、誰がリードボーカルを取るかも決まってなくて、デビュー曲「I Want a Guy」はダイアナ・ロス、2ndシングル「Buttered Popcorn」はフローレンス・バラードがリードをとりました。で、「Your Heart Belongs to Me」はプロデューサーのスモーキー・ロビンソンが考えた末にロスをリードにして、そしたらこれが初めてシングルチャートの100以内に入ったので(95位)、以降はロスに固定したというしだいです。
    「(He's) Seventeen」は「ホホッホホ」というコーラスが楽しい、doo-wopナンバーです。

  • ⑥Marvin Gaye「Stubborn Kind of Fellow」

    これも1962年、しかも同じモータウン所属のマーヴィン・ゲイの初めてのヒットシングルです。「イェイェ」コーラスがえらく元気でいいな、と思ったら、この後に“Martha and the Vandellas”と名前を変える“The Del-Phis”が歌っていました。
    作詞作曲はプロデューサーのミッキー・スティーヴェンソンとジョージ・ゴーディ(モータウン社長のベリー・ゴーディの兄)そしてゲイ自身が共作していて、ゲイはドラムとピアノも演奏しています。当時にしてはダイナミックないい音をしていると思いますが、あのフィル・スペクターがこの曲を初めて聴いた時、運転中で、音の良さに感動して、他の車にぶつかりそうになったらしいです。

  • ⑦The Marvelettes「Beechwood 4-5789(恋のビーチウッド)」

    「Stubborn Kind of Fellow」の12日前に発売されたのがこの「Beechwood 4-5789(恋のビーチウッド)」なんですが、なんと作詞作曲とプロデュースが同じ、つまりマーヴィン・ゲイがソングライティングに参加していて、しかもドラムも叩いています。そしてこの曲もヒットしました。
    “マーヴェレッツ”は、デビューシングル「Please Mr. Postman」(1961年8月)がいきなり全米1位という華々しいスタートを切りましたが、これは4枚目のシングル。
    クラブかなんかで出会った男性に自分の電話番号を教えて、「いつでも電話してデートに誘って」という他愛ない歌詞で、タイトルの「Beechwood 4-5789」は電話番号です。昔、米国では各地域の電話通信網のハブに「Beechwood」のような名前をつけて、それと4〜5桁の番号を組み合わせました。で、ダイアルには(iPhoneでも分かるように)、2から9までアルファベットが割り振られていますので、「Beechwood」の頭の2文字「BE」を数字に置き換えて「23」、「Beechwood 4-5789」=「234-5789」となるんです。

  • ⑧The Crystals「Da Doo Ron Ron (When He Walked Me Home)(ハイ,ロンロン)」

    今度はフィル・スペクターがプロデュースした“クリスタルズ”という女性グループ。60年代前半というのはホント、女性ボーカルグループが大流行でした。
    フィル・スペクターは、世の中に初めて「プロデューサー」というものの存在を知らしめた人で、ちょっと行き過ぎてアーティストよりも彼のほうが有名になってしまうんですが、1961年に弱冠ハタチで、フィレスというレコード会社をつくって、自分の理想の音を追求していきます。それが「Wall of Sound」です。クリスタルズは、そのフィレスの第1号アーティストで、この「Da Doo Ron Ron」は7枚目のシングルです。なぜか邦題は「ハイ、ロンロン」。「ハイ」とはなんぞや? 
    スペクターの「Wall of Sound」の最高傑作はあの“The Ronettes”の「Be My Baby」ですが、それが63年8月発売で、これは同年4月発売。作詞作曲も同じメンバーで、チャート的にも「Be My Baby」が全米2位でこちらは3位でした。頂上の一歩手前って感じですかね。

  • ⑨大滝詠一「ウララカ」

    大瀧さんは中2の時にクリスタルズの「Da Doo Ron Ron」をラジオで聴いて、シングルを買ったそうですが、フィル・スペクターの「Wall of Sound」というものを意識したのは、ジョージ・ハリスンの「My Sweet Lord」(1970)だそうです。それで、“はっぴいえんど”の「12月の雨の日」の、アコースティックギターを何本も重ねたシングルバージョンをつくって、そのB面に入れた「はいからはくち」を、72年以降のライブでは、「Da Doo Ron Ron」のコード進行とサウンドに乗せてやっていました。そこに新たなメロディ(と言っても「Da Doo Ron Ron」とほとんど同じですが)と歌詞をつけたのが、初めてのソロアルバム『大瀧詠一』に入れた「ウララカ」です。だから、演奏ははっぴいえんど。コーラスはほんとは“シンガーズ・スリー”とかでやりたかったそうですが、元が「はいからはくち」だということを記念してメンバーでやったそうです。ただし、鈴木慶一さんも加わっています。

  • ⑩The Beatles「When I Get Home(家に帰れば)」

    いきなり「ウォウウォウ」コーラスで始まるビートルズ初期の曲です。3rdアルバム『A Hard Day's Night』に入っていますが、私は高一の、まだビートルズの右も左も分かってない時に『Something New』というアルバムを買いまして、それにも入っていたのです。実はアメリカでは、『A Hard Day's Night』のサントラが映画会社ユナイテッド・アーティスツのレーベルから出たので、Capitolが別編集で出したのが『Something New』。ところが契約上の問題なのか、「A Hard Day's Night」と「Can’t Buy Me Love」というシングル曲が両方とも入ってないんですよ。あとで知って、ガックリ来ましたが、それでも買った時は大満足で聴きまくっていました。だから私的には「A Hard Day's Night」や「Can’t Buy Me Love」よりも、『Something New』に入っている「Tell Me Why」や「And I Love Her」やこの「When I Get Home」のほうが愛着を感じるのです。

  • ⑪沢田研二「おまえにチェックイン」

    沢田研二にも「シャララ・スピリット」の曲があります。ソロデビュー前の大沢誉志幸が作曲した「おまえにチェックイン」。36枚目のシングルで、17枚目のアルバム『A WONDERFUL TIME』にも収録されています。
    「チュルルル チュッチュッチュチューヤー」というコーラスですが、沢田さん自身、大沢、アレンジをした伊藤銀次、なぜか佐野元春の4人によるものです。

  • ⑫AKB48「恋するフォーチュンクッキー」

    本イベントについに“AKB48”の登場です。彼女たちというより、秋元康さんがつくった「AKB」という形が、いろんな意味で日本のポップス史上に残る存在だとは思っていますが、そのレパートリーで私が好きなのはこの1曲だけかな。「シャララ・スピリット」の王道に則った名曲なんで、音楽好きオヤジ連中からの評価も高く、近田春夫さんとか、音楽評論家の田中宗一郎さんとか、文筆家の安田謙一さんなどが絶賛しておりました。桑田佳祐氏も褒めていますが、「1か所だけ、“そんな悪くないよ”のところのメロディーがちょっと…」なんてコメントしているそうです。
    つい最近だと思ってたら、発売からもう10年以上も経ったんですね。

  • ⑬松任谷由実「Choco-language [ショコランゲージ]」

    ユーミンにも何曲か「シャララ・スピリット」曲はありますが、今回はこの、33枚目のアルバム『VIVA! 6×7』に収録された「Choco-language」を選曲しました。
    アルバムのテーマは「ヨーロッパの薫り」だそうで、なるほど、ヨーロッパ映画のサントラみたいな匂いはあるんですが、コーラスとキーボード以外の楽器はすべてアメリカ人です。コーラスは日本人、キーボードはもちろん松任谷正隆さんです。レコーディングはロサンゼルス、ミックスダウンがミネアポリスで行われました。

  • ⑭竹内まりや「もう一度」

    夫婦揃ってオールディーズ好き。1981年10月に休業宣言をしまして、82年4月に結婚したんですが、この曲は84年4月にリリースされた復帰第1弾シングルで、「本気でオンリーユー (Let's Get Married)」と両A面でした。すぐ後に発売された6枚目のアルバム『VARIETY』にも収録されました。休業前は人の曲が半分以上だったのに、書き溜めた曲のクオリティがあまりによくて達郎さんがビックリし、全曲本人の詞曲で制作したとのこと。彼女のソングライターの才能が全面開花した作品です。

  • ⑮宮本浩次「sha・la・la・la」

    これはここでいう「シャララ・スピリット」とはちと違うかもしれませんが、タイトルからして「シャラララ」なんで、好きな宮本くんだし、選んでみました。
    ソロのシングルとして4枚目、2枚目のソロアルバム『縦横無尽』にも収録されました。詞曲はもちろん本人ですが、アレンジ/プロデュースは小林武史さんです。

  • ⑯Van Morrison「Brown Eyed Girl(茶色の眼をした女の子)」

    ヴァン・モリソンのソロデビュー・シングルが「Brown Eyed Girl」なんですが、それまで、"Them"というバンドにいました。それが1966年に解散しまして、これからどうしようと考えていたところに、Themのプロデューサーだったバート・バーンズ(米国人)から電話があって、彼が運営しているBang Recordsと契約することになり、米国に渡って、シングル4枚分ということで、2日間で8曲録音しました。その中の1曲が「Brown Eyed Girl」です。「シャラララ」系の女性コーラスはシシー・ヒューストン(ホイットニーの母、ディオンヌ・ワーウィックの叔母)率いる“The Sweet Inspirations”です。
    で、これが見事全米10位のヒットになると、バーンズはモリソンに断りもせず、シングル4枚だったはずの8曲をアルバムにして発売してしまいました。「話が違う」と怒ったモリソンは抗議しましたが、契約書内容的には問題ないことになっていました。よく読まないでサインしちゃったんですね。ジャケットも勝手につくられて、最初見た時、モリソンは「思わず吐きそうになった」そうです。こういうサイケ調が大嫌いだったみたいです。

  • ⑰Silver「Wham Bam (Shang-A-Lang)(恋のバンシャガラン)」

    “Silver”はアメリカ西海岸で1976年に結成されたバンドです。メンバーには後に“Grateful Dead”に入るブレント・ミッドランドやイーグルスのバーニー・レードンの弟、トム・レードンがいましたが、同じ年にアルバムを出して、それ1枚だけで78年には解散してしまいました。「Wham Bam (Shang-A-Lang)」という曲だけヒットしたので、いわゆる「One-Hit Wonder」(一発屋)ですが、この曲は、アルバムが一応できあがってから、Aristaレコードの社長のクライヴ・デイヴィスが聴いて、「シングルにふさわしい曲が1曲もない」と彼自ら動いて、リック・ジャイルズというカントリーのソングライターに発注して、制作したとのことです。

  • ⑱Hall & Oates「Diddy Doo Wop (I Hear the Voices)」

    80年代は売れまくったホール&オーツですが、72年にデビューして、70年代の間はアリフ・マーディン(Arif Mardin)とかトッド・ラングレン(Todd Rundgren)とかデイヴィッド・フォスター(David Foster)とか、有名どころのプロデューサーが次々と担当しながら、今ひとつ伸び悩んでいました。ならば、と9thアルバム『Voices』をセルフプロデュースでつくったところ、最高17位ながら、100週以上もチャートに残り続けるロングセラーとなり、ここから快進撃が始まりました。
    “Blue-Eyed Soul”の代表的なアーティストですから、「シャララ・スピリット」は当然尊重しているでしょう。この曲はタイトルにまで「doo wop」が入っていますが、doo-wopのいいところと、彼らならではの都会的なサウンドセンスがうまく噛み合ったナイスな作品だと思います。

  • ⑲Carpenters「Yesterday Once More」

    シメはやはりこの曲ですね。ラジオから流れてくる「シャラララ」や「ウォウウォウ」にいつも癒やされてきたと歌う、カーペンターズの「Yesterday Once More」。この曲が収録された5thアルバム『Now & Then』では、この曲に続いて、ラジオ番組風に編成されたオールディーズ曲のカバーのメドレーが展開していくという演出になっています。
    リチャード・カーペンターはこの曲が自分が書いた中でいちばん好きだと言っているそうです。シングルの売上もこの曲はカーペンターズの中でいちばんだそうで、日本でもオリコン洋楽チャート26週連続1位を記録しています。
    そして、カレン・カーペンターがドラムを叩いていて、その柔らかなノリがとてもいい感じです。

次回の爆音アワーは・・・

                        
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